グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第3章 【記憶の結晶】

第3章10 【世界の書庫《ワールド・アーカイブ》】

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「......誰だお前?」

 俺は目の前の少女に向かってそう問いかける。

「誰だ?はこっちのセリフじゃ。どうやって入ってきたのかは知らんが、人の家に勝手に上がり込むなど失礼極まりないぞお主」

 と、言われたところで、俺にもよく分からない。

「お主、顔を見せよ。そして、さっさと失せ......」

 少女がこちらに近づき、俺の顔を見た途端に言葉を失う。

「お主、もしやヴァルではないか?」

 なぜ、俺の名前を知っている。この少女とは絶対に初対面のはずなのに。

「もう一度問う。お主、ヴァルか?」

 少女が俺の顔を覗き込みながら問いかけてくる。

「あ、あぁ、そうだが。なぜ俺の名前を?」

「そうかそうか。久しいのう。まさか、こんな所で会えるとは......元気そうで何よりじゃな」

 少女がさっきまでの嫌悪感を無くし、俺の腕に飛びついてくる。
 やたら、柔らかくて温かみのあるものが......おっとこれ以上は良くない。

「あぁ、えっと......誰だお前?」

 向こうが一方的にこちらを知っていても、俺は知らない。相手が誰なのかを聞いておかねば。

「............」

 そう言った途端、少女の顔から笑みが消え、一歩距離を取られる。

(あれ?言っちゃいけないことだったか?)

「......そうか。よくよく考えてみればこの時代のヴァルはまだ妾のことを知らんのか......すっかり今が何時の時代であるか忘れとったわい」

 少女が何やらブツブツと独り言を発している。

「あの......そろそろお前が何者なのか教えてくれると助かるんだが......後、ついでにここがどこなのかも」

「うむ、そうじゃな......妾の名はね......ツクヨミ。そして、ここは『世界の書庫ワールド・アーカイブ』」

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ワールド......なんて?」

「『世界の書庫ワールド・アーカイブ』じゃ」

 妾はヴァルに向かってもう一度同じことを言う。
 全く、話をよく聞かん癖はこの頃からご健在のようじゃな。

「あぁ......それで、俺はなんでこんなところにいるんだ?」

「それは妾が聞きたいくらいじゃな。少し前までの出来事を思い出してみ。すぐに分かるはず......だと良いんじゃがな」

「そうか......確か、俺はヴェルド達と一緒に山賊退治に出かけて......」

 まだ山賊がおる時代じゃったか。懐かしい。

「確か、そこで二手に分かれて挟み撃ちしようと俺はグランアーク大森林の中に入っていって......」

「うむ、なるほど。大体分かった」

「は?マジで?」

「うむ、マジマジ。あの森はこの世界と繋がってるおるからな。お主がここに何も無しに入ってこれた理由が分かったわい」

「そう......なのか?それで、ここは何なんだ?」

「質問が減らんやつじゃな。まあ良い。妾もそなたと話しておるのは何時だって楽しい。それに免じてここが何なのか教えてやろう」

「なんか、スゲー上から目線な言い方だな」

「こればっかりは仕方ない。まあ、ここの主なのじゃから多少は許しておくれ。それで、この世界のことじゃったな」

「あぁ、そうだ。この本ばっかりがあるこの場所。何なんだ?」

「ここはその名の通り世界のありとあらゆる歴史が詰まっておるところ。神の記憶......とでも言った方がええかのう」

「神の記憶?グランメモリか?」

「あれはこの世界から一部を切り離した物じゃな」

「そうなのか?」

「うむ。と言っても、ここにある情報量はあの記憶媒体の何億倍にも跳ね上がるがな」

「億単位で上がるのか!?あんな強力なもんが」

「多分、お主が言っておるのは人工的に作られた方じゃろう。あっちは戦闘用に改造されておるから強力じゃと感じるんじゃ。実際のメモリはそんな大した力を持っておらん。ただの記憶媒体。中を見ることも出来る」

「そ、そうなのか......」

「試しに見てみるか?」

「何を?」

「グランメモリと呼ばれておるものを」

「マジで見れんの?」

「うむ、ちょっとそこで待っておれ。暇潰しに近くにある本を読んでおってもええぞ」

 そう言い残し、ヴァルの元を離れる。

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 白い。どこまでも続く真っ白な世界。

 街、否地上のどこにでも雪が降り積もり、あちこちで吹雪が地上を凍らせている。

 人々は凍え、農作物は枯れ果て、外に出るものは誰もいない。
 正に世界の終わり。

 しかし、そこに1体の龍が現れ、地上に緑を与える。
 吹雪は止み、人々が外に出て働き、地上に豊かさが戻る。
 これが世界の再生。


「どうじゃ?これがメモリの内部。世界の記憶じゃ」

 目の前に座る少女がそう言う。

「それは分かったんだが、ヒカリはこれを攻撃に使っていた。それはどうやってたんだ?」

「あくまで、人工物に劣るだけで、これは世界の記憶を描いたもの。その記憶にあるものを再現する、ということをして攻撃に利用してたんじゃな」

「へぇー、そうなのか。全然分からん」

「うむ、なんとなく分かっておった」

「んじゃ、俺はそろそろ帰るとするよ」

 俺は立ち上がり様にそう言う。

「なんじゃ、もうちょっとおってもええのに。こっちの世界におれば山賊なんかと戦わんでええと言うのにな」

「そうは言っても、仕事なんでな。みんなの笑顔を守るためのな」

「つまらんのう。まあ、でもそこがお主の良さなんじゃがな」

「......お前は俺の事をどれぐらい知ってるんだ?」

「何も知らんよ。妾がお主と出会ってから今日までのことしか知らん。お主の過去がどうじゃったか、とか知る気にはならんからな」

「そうなのか......なあ、またここに来てもいいか?」

「どうやって来るのかは知らんが、いつでも歓迎するぞ。あ、そうそう。そのメモリは土産として持って帰れ」

「良いのか?こんなもんを」

「その2つのメモリを持ってあの森をウロウロしてくれたら招いてやるから。そんなことせんでもお主は入ってきそうじゃがな」

「そうか。なら、俺が困った時はなんでも知ってそうでやけに俺に対しての好感度高いお前に頼むよ」

「......出口はあっち。暇な時にでも来い」

 ツクヨミが俺の後ろ側を指さしながらそう言う。
 見ると、そこには光の扉が出来ていた。

「また来るよ。お前、面白そうなやつだしな」

 そう言い残して、この場を去る。




「少しだけなら、今のあやつにも協力してやろう。我が契約者」

 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「......い!............ろ!」

 何か、声がする。

「おい!起きろ!ヴァル!」

「んあ?」

 目を覚ますと、ヴェルド達が心配そうな顔をして俺の顔を覗き込んでいた。

「目が覚めたか......」

 近くにたっていたグリードが安堵したようにその場を離れていく。

「俺どうしてた?」

「記憶がねえのか?全くよォ。目が覚めたら色々聞こうと思ってたのにな」

 グリードが悔しそうにそう言う。

「マジで何があった?」

「お前と俺、グリードとライオスで別れて山賊共を挟み撃ちにするってとこは覚えてるか?」

 ヴェルドがそう問いかけてくる。

「ああ、何となくで覚えてるよ」

「そうか。なら状況説明の方がいいか」

 ヴェルドがしばし考えるようにしてこう言った。

「お前と俺で別れたところ、突然お前の姿が消えた。てっきり、ヘマやらかして山賊に捕まったのかと思って縛り上げたが、そうでもない。森の中をしらみ潰しに探していたところ、こんな森の中心部でお前を発見。これが俺たちの状況だな」

「そうなのか......」

「ああ、まあ、記憶がねえなら仕方ない。帰るぞ」

 そう言い終わるとヴェルド達が退散していく。

 俺は、ポケットの当たりを探る。

「あった」

 そこには、ツクヨミに渡された『エターナル』と『リジェネ』のメモリがあった。

「夢じゃなかったのか......」

 突然現れた......いや、招かれた先にいたあの少女は何者だったのだろうか。
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