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第3章 【記憶の結晶】
第3章15 【雷剣の使い手】
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静かな昼時だった。
本来ならこんな時間は昼寝してるはずなのに、全くもって面倒なことを押し付けてきやがって......
「おい、おめえの仲間はいつ来るんだろうねぇ?待てど暮らせど一向に来ねえんだが。まさか、お前見捨てられたんじゃねえか?」
捕らえた小娘の頬をつつきながら俺はそう言う。
「そんなはずありませんわ!」
おぉ、おぉ、威勢のいいガキだ。
「と言っても、もう約束の時間はとっくに過ぎてるんだぜぇ?流石に見捨てられたとしか思えねえよ。んじゃ、帰るか」
俺はゆっくりとその場から起き上がる。
丁度その時だった。
「うおぁぁぁぁぁぁぁ!」
少年少女数人が大岩に追われてこの場に降りてきた。
「あっぶねぇ......マジ死ぬかと思った......」
赤髪の男が額の汗を拭いながらそう言う。
「あぁ?おめえら何もんだ。ここがどこだか分かってんのか?」
こちらに気づく様子がないので威圧たっぷりにそう言う。
「あ?誰だおめえ」
今度は黒色の髪をした男がそう言う。
「質問に質問で返すのかおめえらは?一応答えてやるが、ここは大事な会議をする場所なんだよ。おめえらみたいなガキが来ていい場所じゃねえんだよ」
今日は色んなことが積もってストレスが溜まっている。こいつらが抵抗するようなら久し振りに暴れてやるか......
「ふーん、じゃあ、そこにいる女の子は何なんだ?縄で縛られているのを見た感じ、人質......とかか?」
赤髪の男がそう言う。
やけにキレる頭を持った男だ。
これは、少し本気で潰しといた方が身のためだな。
「いいかおめえら。今ここで見たものを口外しねえってんなら見逃してやる。だが、俺たちの邪魔をしようってんなら......」
俺は鞘に入れてあった雷剣を抜き出し、空に一振する。
「悪ぃが、俺達はそういうの見たら見逃せない集団なんでな」
男達が一斉に構える。
丁度いい暇潰しだ。遠慮なく楽しむか......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
(上手くいったねヴァル)
(何とかって形だけどな)
(入れたのは良いが、数はかなり多めのようだな)
(んなもん、全部倒せば変わんねえだろ)
(それもそうだな)
「おい、おめえら。何小声で話してやがんだ?俺様は今最っ高に気分が悪ぃんだよ。そういう真似をとるなら吊るすぞ」
この間見たのとは明らかに違うような口調でラストが言う。
(んじゃ、とっとと終わらせますか)
ヴェルドが小声でそう言う。
(シアラはいつでもヴェルド様について行きますよ)
(お前ら戦場でイチャつくとかしたら斬るからな)
フウロの威圧がかかった声がヴェルドを襲う。
(うるせぇ!俺だってやりたくてやってんじゃねえんだよ!)
ヴェルドが小声ながらも精一杯の否定の声を上げる。
「うるせえんだよ!」
ラストがヴェルドに向かって剣を振り落としてきた。
「全員、散れ!」
フウロが合図し、それぞれが各方面の敵を倒しにかかる。
ポジション関係なしに今回はヴェルドの荷が重そうではある。やっぱイチャイチャしてたのが原因か......
「おらおら!守ってばっかりか!」
ラストがヴェルドが次々に作り出す氷の壁を打ち砕きながらヴェルドとの距離を詰める。
ヴェルドは、氷の壁を作りながらも円を描くように移動するため、追いつかれることは恐らくないだろう。
ヴェルドが抑えることが出来るならば、私達の仕事はただ一つ。貴族の令嬢ーーリーシアというらしいーーを助け出してさっさと逃げる。ラスト達を倒す必要性はない。というか、倒したら後々ヤバいことになるかもしれないので極力やめろとのこと。
「お願いカグヤ!」
「月光・ムーンライト」
ーーあ、今回は魔法なのねーー
カグヤの作り出した擬似月が帝国兵をまとめて倒す。
「ご主人様。掃討完了致しました」
「うん、ありがと」
さて、他の面々も大分片付けてきたようだし、後は隙を見てリーシアを助け出せれば......
「ああ、めんどくせえ......雷剣・放電の陣」
ヴェルドをずっと追いかけていたラストが突然追いかけるのをやめ、剣を振り回す。
「ご主人様!」
ラストが剣を振り回した数秒後、突然の電撃が周りに襲いかかる。
セリカに当たる直前にカグヤが刀で受け流すが、他の皆は......
「なんだ......今のは......」
フウロは咄嗟に剣を地面に突き刺して受け流していたようだ。
シアラはヴェルドの作った壁でヴェルドと一緒に隠れていたので問題なし。
ヴァルは空高くに飛んで攻撃しようとしていたので、こちらも問題なし。
ただ一つ、問題があるとすれば......
「あ"......あ"......」
私達が殺さない程度に倒した帝国兵の指先から体の全身が焼けており、生きているのがやっと、というか死にかけの状態だった。
「チッ仲間にしか当たらなかったか......まあいい、元々使えねえ奴らだったし当たらねえなら当たるまでやるだけだ」
ラストが剣をペン回しをするかのように振りながらそう言う。
ーーあんなのに当たったらーー
今回はたまたま上手く避けれた。しかし、あんなのを連続でやってこられると考えると......
ーー先に倒しておくべきはラストだったかもしれないーー
これは早々に二軍が必要かもしれない......
私はフウロに目を向ける。すると、フウロは全て理解したように首を縦に振り、ラストに大袈裟な攻撃を仕掛けて空に火の玉を打ち上げる。
「だ、か、ら、おめえらの攻撃は俺様には効かねえんだよ!」
ラストはフウロの攻撃を打ち返すが、合図は打てた。後はほんの少し待つだけ。
「うぁぅうわぁぁぁぁぁぁ!」
ーー来たーー
「あぁ?なんだありゃ?」
ラストが突然聞こえた声がする方を見る。
「ガゥ!ガゥ!」
予定通り、エフィ達が魔獣に追われているのを演出しつつやって来る。
「グルルルルルルル......」
降りた先で魔獣がエフィ達を見据え、唸り声を上げている。魔獣、演技力高過ぎないか?
「まぁた邪魔かよ......んま、関係ねえ。全員ぶった斬れば終わりだ」
さて、援軍を呼んだは良いが、こっからどうしよう。
リーシアを助け出せれば、尻尾巻いて逃げればいいのだが......
「あぁ?おめえらもやる気だってんのか?」
「俺達は魔獣に追われてやってきただけだ。そこらの山賊討伐の依頼を手伝うことはせん」
「おい、パッ金。おめえらがここにいるってんなら俺様の攻撃が当たっても仕方ねえと思えよ」
「当ててきたら貴様も敵とみなす」
「おう、てめえは他の奴らと違って冷静なんだな。殺す」
ライオスとラストがお互いに威圧をかけているが、問題は今リーシアに1番近い人がラストであるということだ。
下手なことをすればリーシアが危ない。さて、どうしたものか......
ホウライを呼んでこっちまで連れてくる、というのが1番安全そうだが、操縦魔法は見た目以上にマナを消費する。ギーグあたりと協力できれば......
「......」
今、ギーグと目が合ったような気がする。しかも、何故かこちらを見て頷いた。もしや、私が取り出した緑色の鍵を見て察してくれたのだろうか......
今はそれにかけるしかないか......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ラスト達帝国兵との戦いが始まってから、戦況は良いように見えるが結構悪い。
早々に二軍を向かわせるはめになったが、本当にリーシアを助けだせれるのだろうか?
「なあ、そこの軍師」
「はい、なんでしょう」
今回の作戦を考えた軍師は双眼鏡で戦場を覗いたまま答える。
「本当に、あんなので助けだせれるのか?」
「さあ?あのラストとかいうやつを攻略できれば確実に助け出せれますね」
「攻略できない場合は?」
「不確定ですが、セリカとギーグが"あの"方法に気づいてくれれば出来ます」
「"あの"方法?」
「操縦魔法でリーシアをこちらに持ってくるってことです」
「なんだ?そんなに難しそうには聞こえないのだが......」
「操縦魔法は見た目以上にマナを消費するのです。セリカかギーグかのどちらかが気づいてやっても、距離的に1人じゃ難しいのです」
「でも、どちらかがやればもう片方が気づくんじゃないのか?」
「もう片方が気づけばラストも気づきますよ。そうなったらこの策は使えなくなります」
「完全に賭けだな」
「だから、ラストを倒した方が確実って言ったんです」
「しかし、そのラストを倒すのは......」
「こちらも厳しいですかね......想像以上にあの雷剣が強いので。一応、万が一のことを考えてレラとグリードを残したのは良いのですが......」
「その万が一を起こさせるわけにはいかないよなぁ......」
やはり、俺達の問題は俺達で解決すべきだったか......しかし、自警団を連れて来れば確実に戦争が始まる。姉さんは"それはダメだ"、と言っているし、俺もそれは望まない。
「ん?」
突然、軍師が身を乗り出して戦場を見る。そんなのしても見える距離は大して変わらないと思うのだが......
「どうした?」
「いえ、セリカとギーグが何やら目線を合わせて頷いてたのが見えたので......」
「あの作戦が出来るかもしれない?」
「上手いこと合わせてくれれば出来ますね。ちょっと撤退の準備をした方が良さそうですね。バレない為にも」
「そうだな。アラン、撤退の準備を始めておけ」
「了解しました」
さて、上手いこといってくれればいいのだが......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「セリカ、一体どうするつもりなんだ?」
隣に立つフウロが問いかけてくる。
「ギーグが合わせてくれればホウライでリーシアを助け出そうと思うのだけど......」
「ラストに気づかれたら終わりだな。よし、私が上手いこと距離をできるだけ離させてみよう」
そう言うと、フウロはラストに向かって一直線に突撃した。
「あぁ?おめえ、トワイライトソーディアンか?面白え。やってやろうじゃねえか」
どうやら、引きつけることが出来たようだ。そうなれば、後は......
「サモンズスピリット・ホウライ!」
「我、この世を操作する者也」
「ホウライ、あの女の子をこっちにまで連れてきて」
私は、リーシアを指さしながらそう伝える。
「しかし、そなたのマナ量ではここまで届かんぞ?」
「そこは大丈夫。できるだけ近づけてくれたらいいから」
「了解した。操緑・疾風の陣」
ホウライが風にのせてリーシアの体を運ぶ。距離的にギーグの丁度真上辺りまで運べそうだ。ただ、ラストが近くにいるのでもっと離さなければならない。
「む、そろそろそなたの魔力が尽きるぞ」
「分かった、ありがとう。ギーグ!」
「操界・移設の陣」
ホウライの操縦魔法を引き継ぎ、ギーグがリーシアの体を私のところに運ぶ。
「させるかてめえら!」
まずい、ラストに気付かれた。
ラストが剣を横に一振し、リーシアめがけて雷が飛んで行く。
「結界・避雷の守り」
雷がリーシアに当たる寸前、デンが結界を張り、リーシアを守る。
デンがこっちに向けてグッドサインを送っている。
「チッ」
作戦は成功。この光景をネイが見ていてくれれば、もう撤退の準備をしてくれてると思うが。
「あの、あなた達は......」
リーシアが問いかけてくる。
「あの王子様から事情は聞いてる。早く逃げよ」
「え、ええ......」
リーシアは戸惑いながらもそう返事する。
「よし、撤退するぞ!」
フウロが声を上げ、皆がこの場から撤退していく。
「あぁ?逃げるってのかおめえら?」
「当たり前だろ。俺達の仕事は誰かを殺すことじゃねえ。誰かを守ることなんでな」
ヴァルがカッコイイことを言ってこっちにやってくる。
「リーシアを運ぶのは俺に任せろ」
「うん」
「頼みましたわよ。私、ちょっと動けないので」
さっきは気づかなかったが、リーシアの足には無数の傷がついている。
「酷いことする奴らだ」
ヴァルが「よいしょ」とリーシアを抱え、持ち前の瞬発力でこの場から離れる。
「逃がすかァ!」
ラストが今までよりもかなり強く横に剣を振る。
「ッ......」
まずい、当たる。
「ハイウォタル!」
目の前に現れた滝状の水が雷を受け止め、セリカに攻撃が当たるのを阻止する。
「セリカさんには指一本触れさせませんよ!ね、ヴェルド様。褒めて下さい」
「うるせぇ!逃げるのが先だし、褒めねえよ!」
あぁ、いつものか。
そう思ってセリカはその場から退散した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「この度は危険を承知ながらも私を助けて頂きありがとうございました」
目の前に座る少女、リーシアが行儀正しく礼をする。
これが貴族なのか......
「俺からも、今回は俺達の仲間を助けてくれてありがとうな」
クロムの言葉遣いは別にもう良いのだが、もうちょっと王子様らしい言葉が使えないのだろうか......
(セリカさん、そんなこと思っても無理ですよ)
だろうね。もう分かっている、というかある日突然言葉遣いがめちゃめちゃ良いクロムが現れたら速攻で倒しにかかるだろうな。
「ーーそういや、なんでリーシアは貴族って立場なのにクロムの自警団に入ったの?」
ずっと気になっていたことを問いかける。
「きっかけはただの恩返しのつもりで入ったのですわよ。ある日、今日みたいに下衆共に囚われていた私をクロム様が助けてくださったのですから。まあ、今回の件でまたしても迷惑をかけてしまいましたけれども......」
「終わった話はもう良いだろ......。彼女はこう見えてもフェルドリーグ家の者だ」
「ふ、フェルドリーグ家!?」
フェルドリーグ家と言えば、イーリアスに本邸があるかなり高位の貴族のはず......なるほど、確かにそれなら山賊に捕まえられるというのがよく分かる。
「あの時はそこまで大変じゃなかったが、今回はかなり厄介だったからな......」
確かに、フェルドリーグ家の娘が見捨てられて殺された、という噂が広まればたまったもんじゃないな。
「帝国は邪龍教と繋がってこれからも様々な野望を企ててくる。そんなわけで、しばらくの間俺はグランアークに滞在することになった」
「なんで」
「奴らの動きを探るためだ。何時、どこで何をするかなんて分かったもんじゃないからな」
「それなら、私もついていきますわ」
「は?何を言ってーー」
「今回、私はまたしても迷惑をかけてしまいましたわ。ですが、今度ばかりはそうならないよう、クロム様に使える身として頑張りますわ」
「はぁ......グランアークでの生活は今より何十倍も厳しいぞ」
「お金に関してなら一切不自由させませんわ」
なんだろう。貴族の令嬢がこんなことを言うとやけに信用出来る。なぜだ?
「分かった。そんなわけで、俺達はしばらくの間グランアークにいるから、街で出会った時は何食わぬ顔をしてくれ」
「は、はい......」
一体どこで何をしようと言うのだ......
(考えても無駄ですよ)
ネイがそっと耳打ちしてくる。
確かに、考えても無駄だな。
本来ならこんな時間は昼寝してるはずなのに、全くもって面倒なことを押し付けてきやがって......
「おい、おめえの仲間はいつ来るんだろうねぇ?待てど暮らせど一向に来ねえんだが。まさか、お前見捨てられたんじゃねえか?」
捕らえた小娘の頬をつつきながら俺はそう言う。
「そんなはずありませんわ!」
おぉ、おぉ、威勢のいいガキだ。
「と言っても、もう約束の時間はとっくに過ぎてるんだぜぇ?流石に見捨てられたとしか思えねえよ。んじゃ、帰るか」
俺はゆっくりとその場から起き上がる。
丁度その時だった。
「うおぁぁぁぁぁぁぁ!」
少年少女数人が大岩に追われてこの場に降りてきた。
「あっぶねぇ......マジ死ぬかと思った......」
赤髪の男が額の汗を拭いながらそう言う。
「あぁ?おめえら何もんだ。ここがどこだか分かってんのか?」
こちらに気づく様子がないので威圧たっぷりにそう言う。
「あ?誰だおめえ」
今度は黒色の髪をした男がそう言う。
「質問に質問で返すのかおめえらは?一応答えてやるが、ここは大事な会議をする場所なんだよ。おめえらみたいなガキが来ていい場所じゃねえんだよ」
今日は色んなことが積もってストレスが溜まっている。こいつらが抵抗するようなら久し振りに暴れてやるか......
「ふーん、じゃあ、そこにいる女の子は何なんだ?縄で縛られているのを見た感じ、人質......とかか?」
赤髪の男がそう言う。
やけにキレる頭を持った男だ。
これは、少し本気で潰しといた方が身のためだな。
「いいかおめえら。今ここで見たものを口外しねえってんなら見逃してやる。だが、俺たちの邪魔をしようってんなら......」
俺は鞘に入れてあった雷剣を抜き出し、空に一振する。
「悪ぃが、俺達はそういうの見たら見逃せない集団なんでな」
男達が一斉に構える。
丁度いい暇潰しだ。遠慮なく楽しむか......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
(上手くいったねヴァル)
(何とかって形だけどな)
(入れたのは良いが、数はかなり多めのようだな)
(んなもん、全部倒せば変わんねえだろ)
(それもそうだな)
「おい、おめえら。何小声で話してやがんだ?俺様は今最っ高に気分が悪ぃんだよ。そういう真似をとるなら吊るすぞ」
この間見たのとは明らかに違うような口調でラストが言う。
(んじゃ、とっとと終わらせますか)
ヴェルドが小声でそう言う。
(シアラはいつでもヴェルド様について行きますよ)
(お前ら戦場でイチャつくとかしたら斬るからな)
フウロの威圧がかかった声がヴェルドを襲う。
(うるせぇ!俺だってやりたくてやってんじゃねえんだよ!)
ヴェルドが小声ながらも精一杯の否定の声を上げる。
「うるせえんだよ!」
ラストがヴェルドに向かって剣を振り落としてきた。
「全員、散れ!」
フウロが合図し、それぞれが各方面の敵を倒しにかかる。
ポジション関係なしに今回はヴェルドの荷が重そうではある。やっぱイチャイチャしてたのが原因か......
「おらおら!守ってばっかりか!」
ラストがヴェルドが次々に作り出す氷の壁を打ち砕きながらヴェルドとの距離を詰める。
ヴェルドは、氷の壁を作りながらも円を描くように移動するため、追いつかれることは恐らくないだろう。
ヴェルドが抑えることが出来るならば、私達の仕事はただ一つ。貴族の令嬢ーーリーシアというらしいーーを助け出してさっさと逃げる。ラスト達を倒す必要性はない。というか、倒したら後々ヤバいことになるかもしれないので極力やめろとのこと。
「お願いカグヤ!」
「月光・ムーンライト」
ーーあ、今回は魔法なのねーー
カグヤの作り出した擬似月が帝国兵をまとめて倒す。
「ご主人様。掃討完了致しました」
「うん、ありがと」
さて、他の面々も大分片付けてきたようだし、後は隙を見てリーシアを助け出せれば......
「ああ、めんどくせえ......雷剣・放電の陣」
ヴェルドをずっと追いかけていたラストが突然追いかけるのをやめ、剣を振り回す。
「ご主人様!」
ラストが剣を振り回した数秒後、突然の電撃が周りに襲いかかる。
セリカに当たる直前にカグヤが刀で受け流すが、他の皆は......
「なんだ......今のは......」
フウロは咄嗟に剣を地面に突き刺して受け流していたようだ。
シアラはヴェルドの作った壁でヴェルドと一緒に隠れていたので問題なし。
ヴァルは空高くに飛んで攻撃しようとしていたので、こちらも問題なし。
ただ一つ、問題があるとすれば......
「あ"......あ"......」
私達が殺さない程度に倒した帝国兵の指先から体の全身が焼けており、生きているのがやっと、というか死にかけの状態だった。
「チッ仲間にしか当たらなかったか......まあいい、元々使えねえ奴らだったし当たらねえなら当たるまでやるだけだ」
ラストが剣をペン回しをするかのように振りながらそう言う。
ーーあんなのに当たったらーー
今回はたまたま上手く避けれた。しかし、あんなのを連続でやってこられると考えると......
ーー先に倒しておくべきはラストだったかもしれないーー
これは早々に二軍が必要かもしれない......
私はフウロに目を向ける。すると、フウロは全て理解したように首を縦に振り、ラストに大袈裟な攻撃を仕掛けて空に火の玉を打ち上げる。
「だ、か、ら、おめえらの攻撃は俺様には効かねえんだよ!」
ラストはフウロの攻撃を打ち返すが、合図は打てた。後はほんの少し待つだけ。
「うぁぅうわぁぁぁぁぁぁ!」
ーー来たーー
「あぁ?なんだありゃ?」
ラストが突然聞こえた声がする方を見る。
「ガゥ!ガゥ!」
予定通り、エフィ達が魔獣に追われているのを演出しつつやって来る。
「グルルルルルルル......」
降りた先で魔獣がエフィ達を見据え、唸り声を上げている。魔獣、演技力高過ぎないか?
「まぁた邪魔かよ......んま、関係ねえ。全員ぶった斬れば終わりだ」
さて、援軍を呼んだは良いが、こっからどうしよう。
リーシアを助け出せれば、尻尾巻いて逃げればいいのだが......
「あぁ?おめえらもやる気だってんのか?」
「俺達は魔獣に追われてやってきただけだ。そこらの山賊討伐の依頼を手伝うことはせん」
「おい、パッ金。おめえらがここにいるってんなら俺様の攻撃が当たっても仕方ねえと思えよ」
「当ててきたら貴様も敵とみなす」
「おう、てめえは他の奴らと違って冷静なんだな。殺す」
ライオスとラストがお互いに威圧をかけているが、問題は今リーシアに1番近い人がラストであるということだ。
下手なことをすればリーシアが危ない。さて、どうしたものか......
ホウライを呼んでこっちまで連れてくる、というのが1番安全そうだが、操縦魔法は見た目以上にマナを消費する。ギーグあたりと協力できれば......
「......」
今、ギーグと目が合ったような気がする。しかも、何故かこちらを見て頷いた。もしや、私が取り出した緑色の鍵を見て察してくれたのだろうか......
今はそれにかけるしかないか......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ラスト達帝国兵との戦いが始まってから、戦況は良いように見えるが結構悪い。
早々に二軍を向かわせるはめになったが、本当にリーシアを助けだせれるのだろうか?
「なあ、そこの軍師」
「はい、なんでしょう」
今回の作戦を考えた軍師は双眼鏡で戦場を覗いたまま答える。
「本当に、あんなので助けだせれるのか?」
「さあ?あのラストとかいうやつを攻略できれば確実に助け出せれますね」
「攻略できない場合は?」
「不確定ですが、セリカとギーグが"あの"方法に気づいてくれれば出来ます」
「"あの"方法?」
「操縦魔法でリーシアをこちらに持ってくるってことです」
「なんだ?そんなに難しそうには聞こえないのだが......」
「操縦魔法は見た目以上にマナを消費するのです。セリカかギーグかのどちらかが気づいてやっても、距離的に1人じゃ難しいのです」
「でも、どちらかがやればもう片方が気づくんじゃないのか?」
「もう片方が気づけばラストも気づきますよ。そうなったらこの策は使えなくなります」
「完全に賭けだな」
「だから、ラストを倒した方が確実って言ったんです」
「しかし、そのラストを倒すのは......」
「こちらも厳しいですかね......想像以上にあの雷剣が強いので。一応、万が一のことを考えてレラとグリードを残したのは良いのですが......」
「その万が一を起こさせるわけにはいかないよなぁ......」
やはり、俺達の問題は俺達で解決すべきだったか......しかし、自警団を連れて来れば確実に戦争が始まる。姉さんは"それはダメだ"、と言っているし、俺もそれは望まない。
「ん?」
突然、軍師が身を乗り出して戦場を見る。そんなのしても見える距離は大して変わらないと思うのだが......
「どうした?」
「いえ、セリカとギーグが何やら目線を合わせて頷いてたのが見えたので......」
「あの作戦が出来るかもしれない?」
「上手いこと合わせてくれれば出来ますね。ちょっと撤退の準備をした方が良さそうですね。バレない為にも」
「そうだな。アラン、撤退の準備を始めておけ」
「了解しました」
さて、上手いこといってくれればいいのだが......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「セリカ、一体どうするつもりなんだ?」
隣に立つフウロが問いかけてくる。
「ギーグが合わせてくれればホウライでリーシアを助け出そうと思うのだけど......」
「ラストに気づかれたら終わりだな。よし、私が上手いこと距離をできるだけ離させてみよう」
そう言うと、フウロはラストに向かって一直線に突撃した。
「あぁ?おめえ、トワイライトソーディアンか?面白え。やってやろうじゃねえか」
どうやら、引きつけることが出来たようだ。そうなれば、後は......
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「我、この世を操作する者也」
「ホウライ、あの女の子をこっちにまで連れてきて」
私は、リーシアを指さしながらそう伝える。
「しかし、そなたのマナ量ではここまで届かんぞ?」
「そこは大丈夫。できるだけ近づけてくれたらいいから」
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ホウライが風にのせてリーシアの体を運ぶ。距離的にギーグの丁度真上辺りまで運べそうだ。ただ、ラストが近くにいるのでもっと離さなければならない。
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「分かった、ありがとう。ギーグ!」
「操界・移設の陣」
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まずい、ラストに気付かれた。
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「チッ」
作戦は成功。この光景をネイが見ていてくれれば、もう撤退の準備をしてくれてると思うが。
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リーシアが問いかけてくる。
「あの王子様から事情は聞いてる。早く逃げよ」
「え、ええ......」
リーシアは戸惑いながらもそう返事する。
「よし、撤退するぞ!」
フウロが声を上げ、皆がこの場から撤退していく。
「あぁ?逃げるってのかおめえら?」
「当たり前だろ。俺達の仕事は誰かを殺すことじゃねえ。誰かを守ることなんでな」
ヴァルがカッコイイことを言ってこっちにやってくる。
「リーシアを運ぶのは俺に任せろ」
「うん」
「頼みましたわよ。私、ちょっと動けないので」
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「酷いことする奴らだ」
ヴァルが「よいしょ」とリーシアを抱え、持ち前の瞬発力でこの場から離れる。
「逃がすかァ!」
ラストが今までよりもかなり強く横に剣を振る。
「ッ......」
まずい、当たる。
「ハイウォタル!」
目の前に現れた滝状の水が雷を受け止め、セリカに攻撃が当たるのを阻止する。
「セリカさんには指一本触れさせませんよ!ね、ヴェルド様。褒めて下さい」
「うるせぇ!逃げるのが先だし、褒めねえよ!」
あぁ、いつものか。
そう思ってセリカはその場から退散した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「この度は危険を承知ながらも私を助けて頂きありがとうございました」
目の前に座る少女、リーシアが行儀正しく礼をする。
これが貴族なのか......
「俺からも、今回は俺達の仲間を助けてくれてありがとうな」
クロムの言葉遣いは別にもう良いのだが、もうちょっと王子様らしい言葉が使えないのだろうか......
(セリカさん、そんなこと思っても無理ですよ)
だろうね。もう分かっている、というかある日突然言葉遣いがめちゃめちゃ良いクロムが現れたら速攻で倒しにかかるだろうな。
「ーーそういや、なんでリーシアは貴族って立場なのにクロムの自警団に入ったの?」
ずっと気になっていたことを問いかける。
「きっかけはただの恩返しのつもりで入ったのですわよ。ある日、今日みたいに下衆共に囚われていた私をクロム様が助けてくださったのですから。まあ、今回の件でまたしても迷惑をかけてしまいましたけれども......」
「終わった話はもう良いだろ......。彼女はこう見えてもフェルドリーグ家の者だ」
「ふ、フェルドリーグ家!?」
フェルドリーグ家と言えば、イーリアスに本邸があるかなり高位の貴族のはず......なるほど、確かにそれなら山賊に捕まえられるというのがよく分かる。
「あの時はそこまで大変じゃなかったが、今回はかなり厄介だったからな......」
確かに、フェルドリーグ家の娘が見捨てられて殺された、という噂が広まればたまったもんじゃないな。
「帝国は邪龍教と繋がってこれからも様々な野望を企ててくる。そんなわけで、しばらくの間俺はグランアークに滞在することになった」
「なんで」
「奴らの動きを探るためだ。何時、どこで何をするかなんて分かったもんじゃないからな」
「それなら、私もついていきますわ」
「は?何を言ってーー」
「今回、私はまたしても迷惑をかけてしまいましたわ。ですが、今度ばかりはそうならないよう、クロム様に使える身として頑張りますわ」
「はぁ......グランアークでの生活は今より何十倍も厳しいぞ」
「お金に関してなら一切不自由させませんわ」
なんだろう。貴族の令嬢がこんなことを言うとやけに信用出来る。なぜだ?
「分かった。そんなわけで、俺達はしばらくの間グランアークにいるから、街で出会った時は何食わぬ顔をしてくれ」
「は、はい......」
一体どこで何をしようと言うのだ......
(考えても無駄ですよ)
ネイがそっと耳打ちしてくる。
確かに、考えても無駄だな。
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