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第3章 【記憶の結晶】
第3章14 【ラグナロク帝国】
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それは、冬の寒い寒い日のこと。
年末が段々と近づいており、みな、貯めたお金で年越しを待つ頃だろう。
今日は12月14日。
そんな時に『厄介事』はこのギルドにやってくる。
「あのー、そろそろわけも分からずに土下座し続けるのをやめてくれませんかー......」
ミラが土下座し続ける男に向かってそう言う。
ちなみに、その男はクロムである。あれからそんなに時間が経っていないのに何の用......というか、土下座し続けても何もわかんないよ!
「おーい、この土下座バカに変わって何があったのか教えてもらえるか」
ヴェルドがクロムの傍らに立ち続けるアランに問いかける。
「土下座バカですか......まあ、今回ばかりはそうなのでしょうか......」
ヴェルドのタメ口に対して今回はうるさくないな、と思う。
「はぁ......今回はかなりの厄介事が我々の元にやって来ましてね......クロム様がこうなってしまうのも致し方ないかと......」
アランが頭を押さえ、躊躇いを見せるかのようにため息をつく。
「そろそろ何があったか教えて欲しいんだが......」
ヴェルドが煮え切らない、といった様子でそう言う。
「なるほど、つまり、自警団の内の1人が帝国兵に捕まったから救出をお願いしたい、と」
話が一向に進まない中、ネイがそう言う。
「すみませんけど、御二方の頭の中を覗かせてもらいました」
ネイが申し訳なさそうにそう言う。
「帝国兵ねぇ......でも、なんでそんなものをうちに?」
ミラが首をを傾げながら言う。
「それは......」
ようやく、クロムが顔を上げ、言いにくそうにこう言う。
「帝国兵に捕まえられたのはうちの自警団でも特に珍しい貴族の令嬢。助けたければ姉さんを連れて来いという」
「それに何の問題があるんだ?」
「姉さんを連れて来いというのは、どう見たって殺す気だ。かといって無視すれば仲間が殺される上に『1人の国民を捨てた国』とか、そんな不名誉な名前が付く。例え、姉さんを殺されずに助けることに成功できたとしても、敵を相応に殺すことになる。そうなりゃ戦争の始まりだ」
何だ、さっきまで一切喋らなかったのに、なぜこんなにもペラペラ喋れてるんだ。最初からそうしてよ。
「それで、俺達にどうしてほしいってんだ?」
「......戦争を起こさないために、偶然通り掛かった正義の味方を演じて俺達の仲間を助けてほしい......」
最初からそう言って。
それにしても、帝国兵に捕えられた貴族の令嬢を助けてほしい......か。なんで、自警団に貴族の令嬢がいるんだ。
「無理を承知でお願いしている」
クロムが再び土下座をする。
「私からも是非とも協力して頂きたい。報酬ならいくらでも積むつもりです」
アランは土下座こそしなかったものの、どれだけ真剣かがすごく伝わってくる礼の仕方だった。
「しかしなぁ、失敗したら戦争が始まっちまうんだろォ?」
後ろからグリードが顔を出してきてそう言う。
「......」
そのことに気づいたみんなが一斉に黙る。
「別に良いんじゃないですか?」
重苦しい空気が流れるギルドでネイ1人がそう言った。
「失敗したらどうこうって考えるんじゃなくて、成功したらって考えた方が良いと思いますけどね」
確かに、その通りかもしれない。
「......場所はどこなんだ?」
それまで、ずっと黙って話を聞いていたヴァルが立ち上がりざまにそう言う。
「い、いいのか?」
顔を上げたクロムが驚きの顔でそう言う。
「何言ってんだ。俺とお前の仲だろ」
いつそんな関係になったのか...それにしても、ネイはあれからなんだか元気そうに見える。目の下のクマも消えてるし......ラヴェリアのお陰かな?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「すー、すー......」
(よく寝てんなぁ)
俺は目の前で気持ち良さそうに眠る少女の顔を見ながらそう思う。
「ぁ......?」
(あ、起きた)
「はぁー......なんで......ここに......お主が......おるんじゃ?招いた覚えは......ないのじゃが......」
もうちょっと、意識がはっきりしてから言え。何言ってるのかが分かりづらい。
「お前に言われた通り、このメモリ持って森をうろちょろしてたら勝手に来てた。そしたら、お前が寝てたから声がかけづらかった」
俺はそう、2本のメモリをぶら下げながらそう言う。
「本当か?お主......まあ、どうでもいい。今日は何の用じゃ?」
「......怒らねえんだな」
「ん?なぜじゃ?」
「いや、普通寝てるところに男がやってきたら誰でも怒るってセリカが言ってたからさ」
最近、セリカが何の気なしに言ってた話だ。
「まあ、お主以外の男じゃったら殺しておるところじゃな。あくまで、お主以外ならな」
「なんだ、その俺に対しての信頼は...」
「お主もいずれ分かるじゃろう。さて、そんな無駄話は放っておいて、今日は何の用じゃ?何でも聞いてやるぞ」
急にツクヨミが目を輝かせて俺の腕に抱きついてくる。
「あー、お前は基本なんでも知ってるんだよなぁ?」
「うむ、何でも知っておるぞ」
「じゃあ、1つ聞きたいんだけど、ラグナロク帝国って知ってるか?」
「うむ、嫌な国じゃったな」
「まるで、経験してきたように言うんだな」
「う、ま、まあ、それは置いといて、そのラグナロク帝国がどうしたんじゃ?」
なんか痛いところでも突いたか?まあ、いいや。
「ラグナロク帝国の兵力って具体的にどんくらいか分かる?」
「徴兵制によって、国民のほぼほぼが兵力となるから、数だけで見ると1億はあるな。中でも、強力なのが帝国兵大将ラスト。彼奴が持っとる剣が中々に強力でな。ほんの一振するだけで周りに電撃を走らせる。当たったら最悪死ぬぞ」
「そ、そんなに分かるのか......それじゃあ、そのラストが持ってる剣ってなんなんだ?」
「雷剣・サリア。クロムが持っておるエクセリアと同じように、龍の力を秘めた剣じゃ」
「龍の剣か......待て、クロムのことも知ってるのか!?」
「何をそんなに慌てておるのじゃ。お主が知る人物は妾も知っておる」
「そ、そうなのか......」
「そうじゃ。後、ラグナロクに関してじゃが、あそこは邪龍教も戦力としておる。数自体は大したことないのじゃが、信者の数は多いし、教徒は皆変な力を持っておる。戦う時はネイあたりに任せるのが良いぞ」
「そうか。そんだけ知れりゃ十分だ」
「あ、ただし、ネイに任せきりにするのは良くないからな」
「そんくらい分かってるさ」
「いや、疲れがどうこういう話じゃないのじゃ。詳しくは話せれんが、あまりネイにはストレスをかけるなよお主」
「?あぁ、分かった......」
「妾の立場上、本来ならお主にあれこれ言うのはダメなのじゃが、歴史が変わるのはもっとダメじゃからな」
歴史が変わる......歴史?
「ーー1つ聞きてえんだが、お前って結局何者なんだ?」
「ーー妾はツクヨミ。歴史の管理者であり、この世界を見守る者。お主もいずれ妾の正体を知ることになる。今はまだ知らんでもええ」
「歴史の......管理者?」
「簡単に言うと、神様みたいなもんじゃな。歴史を正し、間違った歴史を修復する。本当ならこんな仕事放り出したいところなんじゃがな。でも、そうしたら妾達の未来が無くなる。地道な作業じゃが、頑張らにゃダメなのじゃよ」
そう言うツクヨミは少し寂しそうに見えた。
「まあ、とにかくネイにはあまり負荷をかけるでないぞお主。世界が滅んでは妾も困るからな」
「ああ、まあ、なんとなく分かったよ」
「あ、それと次来る時は夜中に来るでないぞ。妾だって寝ておるのじゃからな」
「でも、夜じゃねえと来れねえしなぁ」
「そこは無理して来い」
「えぇー......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あーあ、結局大したことは聞けなかったなぁ......」
いや、正しくは問うことができなかったの方が正しいだろうか。
歴史は変えてはならない。そう言われると、この先起こることを聞く、なんてことは出来なかった。多分、聞いても答えてはくれないだろうが......
「それにしても、やたらネイに関しての注意が多かったな」
話しぶりからしてネイのことを知っているとは思っていたが、聞いてもいないのに色々と言ってくるとはなぁ......あいつ邪龍にでもなるんじゃね?
「そう考えると、ヨミがあんだけ危険を訴えるのは当然か......つか、なんで俺は自分の部屋にいるんだ?」
ずっと気になっていたが、目が覚めた時、目に飛び込んできたのは自分の部屋だった。前はそのまま森にいたというのに......
「気をつかってくれたのかなぁ......まあ、どうでもいいや」
そんな事を考えていたって、腹が減るだけだ。めんどくさい事はネイに考えてもらえば......
「そういや、負担をかけるなって言われてたっけ......」
ネイの力は極力頼らない方が良いか。なんだか、すげー難しいことになってんな。
「寝るか......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ギャハハハハハハ、あいつらが来たらどうしてやろうかねぇ?あの手この手で痛ぶってあげて、奴らの悲鳴を聞けるって今から考えると楽しみだねぇ。ギャハハハハハハ」
「くっ......クロム様は貴方達のような下衆に負けるはずがありませんわ!」
「ギャハハハハ。いいねいいねぇ...面白いな嬢ちゃん。ギャハハハハハハ」
「うっ......」
「あいつ、本当に帝国軍の大将なのか?」
ヴァルが双眼鏡を覗きながら、隣に同じようにするクロムに問いかける。
「俺も、帝国軍の大将があんなだとは思いもしなかったさ。でも、帝国自体変な噂しか聞かなかったからある意味あれで正解なのかもしれん」
何が正解なんだ。というか、何を見てるんだ。
「さて、あいつらがあんなにも分かりやすい位置にいてくれるんだから、今のうちにやるか」
「ああ、そうだな。さっさとケリを付けちまおう、って言いたいんだが......」
その先は言わなくても分かる。
「「「 なんでお前は聖王まで連れてきたんだ? 」」」
ここに来る前からそうだったが、なぜか私達と同じ馬車に聖王セレナ様が乗っていたのである。それに関してクロムに聞こうとすると上手いこと誤魔化され、セレナ様もまるで普通の人間のように私達と会話を楽しもうとしてくる。(事実、会話を私達も楽しんではいたのだが)
「一応、万が一のことを考えてだな」
「その万が一が聖王を殺されることなんだろうが......」
ライオスの言う通りである。
「はぁ、実を言うとだな......」
「良いのですクロム。これは私が言い出したことなのですから」
セレナがクロムを腕で制する。
「民の危機に私がのうのうと玉座に座っている訳にはいきません。私が姿を現せば彼らも我が民を解放してくれると仰っております。万が一作戦が失敗した時のために私が来たのです。どうか、私のわがままをお許しください」
ただの良い人ではないか。これが世界一国民から信用されてる王様か......深く納得。
「という訳でな。万が一ってのはそういう意味での万が一だ」
「奴らが聖王様を出して大人しく解放してくれると思うか?俺は思わねえぞ」
グリードの言うことも最もではある。
「それはお前らの働き次第だ。なるべく、迅速に片付けてくれ」
「それは別に構わないのだが、どうやって奴らのところに殴り込みに行けば良いのだ?普通に行けば怪しまれるぞ」
フウロがそう言う。
「そこは......上手いことやってくれないか?」
「あのなぁ......上手いことやれって......」
「考えがないようでしたら、私の策に乗ってみます?」
悩むヴァルの元にネイがそう言う。
「参考までに聞いとくが、お前が後ろに用意しておる『岩』はなんだ?」
ヴァルがネイの後ろにある『岩』を指さしてそう言う。
「良い感じの大岩があったのでここまで持ってきました」
「あのなぁ、ネイ。もし、その岩を錬金術で丸くした後に転がしてそれから逃げてる俺達を演出しようとするならやめろよ」
「よく私の言いたいことが分かりましたねぇ」
「付き合いなげえんだから、そろそろお前の言いたそうなことくらい分かるわ!」
前に同じく。ネイが考える策は確かに良いものなのだが、その分、危険度があまりにも高いものばかりを考えうるものだ。もっと安全な方法はないのか。
「今回のことに関しては安全な方法なんて無いと思いますよ?捕えられた令嬢さんを殺されてはダメ。聖王さんを殺されてもダメ。怪しまれてもダメ。まともな方法でやってたら失敗しますよ?」
それは、わかっているのだが......
「流石に、大岩に追われるのはちょっと......」
「そっちの方が真剣さをアピールできて良いと思いますけど......あ、ちなみに、やる時は少人数でやってくださいね」
「なんで?」
「こんな大勢で行ったらいくら上手く演技しても怪しまれますよ。奴らだって私達の国のギルドを知らないわけじゃないんですから」
確かに、普通の依頼でこんな大勢で行くことは無いな。
「じゃあ、大半はここで待機するってことになるけど」
「そこは無駄にしませんよ。ね、エフィさん」
「え?エフィ?」
よく見ると、エフィはエフィでかなり大きい魔獣と何やら話をしている。
「もう仕込みは終わりましたよ」
エフィがこちらに振り返りそう言う。
「次はあれか、あの手懐けた魔獣に追われてるのを演技しつつ奴らのところに殴り込む算段か」
「ピンポン大正解。でも、こっちの方は魔獣が手加減してくれる分まだ楽な方とは思いますけど。それに、魔獣も混乱に乗じて敵を攻撃してくれるように手懐けてもらってますし」
もう、ここまで準備されたらこれでやるしかないじゃないか。
「お前らの策士はかなり頭が良い奴だな。是非ともうちに欲しいくらいだ」
「やらねえよ?」
「ただ言ってみただけだ。ヒカリがいなくなってから大分うちの自警団がダメになった気がするんでな。もっと優遇してやるへきだったか......」
それに関しては優遇しても何も変わらなかったと思う。
「な、なんだその目は」
「いや、何でもねえ。作戦はそれで行こう。敵陣に突っ込んだら後はその場その場で考えるか......」
「それが1番ですね」
なんともまあ、詰めの甘い作戦になったものだ。それはそれで仕方ないか......
年末が段々と近づいており、みな、貯めたお金で年越しを待つ頃だろう。
今日は12月14日。
そんな時に『厄介事』はこのギルドにやってくる。
「あのー、そろそろわけも分からずに土下座し続けるのをやめてくれませんかー......」
ミラが土下座し続ける男に向かってそう言う。
ちなみに、その男はクロムである。あれからそんなに時間が経っていないのに何の用......というか、土下座し続けても何もわかんないよ!
「おーい、この土下座バカに変わって何があったのか教えてもらえるか」
ヴェルドがクロムの傍らに立ち続けるアランに問いかける。
「土下座バカですか......まあ、今回ばかりはそうなのでしょうか......」
ヴェルドのタメ口に対して今回はうるさくないな、と思う。
「はぁ......今回はかなりの厄介事が我々の元にやって来ましてね......クロム様がこうなってしまうのも致し方ないかと......」
アランが頭を押さえ、躊躇いを見せるかのようにため息をつく。
「そろそろ何があったか教えて欲しいんだが......」
ヴェルドが煮え切らない、といった様子でそう言う。
「なるほど、つまり、自警団の内の1人が帝国兵に捕まったから救出をお願いしたい、と」
話が一向に進まない中、ネイがそう言う。
「すみませんけど、御二方の頭の中を覗かせてもらいました」
ネイが申し訳なさそうにそう言う。
「帝国兵ねぇ......でも、なんでそんなものをうちに?」
ミラが首をを傾げながら言う。
「それは......」
ようやく、クロムが顔を上げ、言いにくそうにこう言う。
「帝国兵に捕まえられたのはうちの自警団でも特に珍しい貴族の令嬢。助けたければ姉さんを連れて来いという」
「それに何の問題があるんだ?」
「姉さんを連れて来いというのは、どう見たって殺す気だ。かといって無視すれば仲間が殺される上に『1人の国民を捨てた国』とか、そんな不名誉な名前が付く。例え、姉さんを殺されずに助けることに成功できたとしても、敵を相応に殺すことになる。そうなりゃ戦争の始まりだ」
何だ、さっきまで一切喋らなかったのに、なぜこんなにもペラペラ喋れてるんだ。最初からそうしてよ。
「それで、俺達にどうしてほしいってんだ?」
「......戦争を起こさないために、偶然通り掛かった正義の味方を演じて俺達の仲間を助けてほしい......」
最初からそう言って。
それにしても、帝国兵に捕えられた貴族の令嬢を助けてほしい......か。なんで、自警団に貴族の令嬢がいるんだ。
「無理を承知でお願いしている」
クロムが再び土下座をする。
「私からも是非とも協力して頂きたい。報酬ならいくらでも積むつもりです」
アランは土下座こそしなかったものの、どれだけ真剣かがすごく伝わってくる礼の仕方だった。
「しかしなぁ、失敗したら戦争が始まっちまうんだろォ?」
後ろからグリードが顔を出してきてそう言う。
「......」
そのことに気づいたみんなが一斉に黙る。
「別に良いんじゃないですか?」
重苦しい空気が流れるギルドでネイ1人がそう言った。
「失敗したらどうこうって考えるんじゃなくて、成功したらって考えた方が良いと思いますけどね」
確かに、その通りかもしれない。
「......場所はどこなんだ?」
それまで、ずっと黙って話を聞いていたヴァルが立ち上がりざまにそう言う。
「い、いいのか?」
顔を上げたクロムが驚きの顔でそう言う。
「何言ってんだ。俺とお前の仲だろ」
いつそんな関係になったのか...それにしても、ネイはあれからなんだか元気そうに見える。目の下のクマも消えてるし......ラヴェリアのお陰かな?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「すー、すー......」
(よく寝てんなぁ)
俺は目の前で気持ち良さそうに眠る少女の顔を見ながらそう思う。
「ぁ......?」
(あ、起きた)
「はぁー......なんで......ここに......お主が......おるんじゃ?招いた覚えは......ないのじゃが......」
もうちょっと、意識がはっきりしてから言え。何言ってるのかが分かりづらい。
「お前に言われた通り、このメモリ持って森をうろちょろしてたら勝手に来てた。そしたら、お前が寝てたから声がかけづらかった」
俺はそう、2本のメモリをぶら下げながらそう言う。
「本当か?お主......まあ、どうでもいい。今日は何の用じゃ?」
「......怒らねえんだな」
「ん?なぜじゃ?」
「いや、普通寝てるところに男がやってきたら誰でも怒るってセリカが言ってたからさ」
最近、セリカが何の気なしに言ってた話だ。
「まあ、お主以外の男じゃったら殺しておるところじゃな。あくまで、お主以外ならな」
「なんだ、その俺に対しての信頼は...」
「お主もいずれ分かるじゃろう。さて、そんな無駄話は放っておいて、今日は何の用じゃ?何でも聞いてやるぞ」
急にツクヨミが目を輝かせて俺の腕に抱きついてくる。
「あー、お前は基本なんでも知ってるんだよなぁ?」
「うむ、何でも知っておるぞ」
「じゃあ、1つ聞きたいんだけど、ラグナロク帝国って知ってるか?」
「うむ、嫌な国じゃったな」
「まるで、経験してきたように言うんだな」
「う、ま、まあ、それは置いといて、そのラグナロク帝国がどうしたんじゃ?」
なんか痛いところでも突いたか?まあ、いいや。
「ラグナロク帝国の兵力って具体的にどんくらいか分かる?」
「徴兵制によって、国民のほぼほぼが兵力となるから、数だけで見ると1億はあるな。中でも、強力なのが帝国兵大将ラスト。彼奴が持っとる剣が中々に強力でな。ほんの一振するだけで周りに電撃を走らせる。当たったら最悪死ぬぞ」
「そ、そんなに分かるのか......それじゃあ、そのラストが持ってる剣ってなんなんだ?」
「雷剣・サリア。クロムが持っておるエクセリアと同じように、龍の力を秘めた剣じゃ」
「龍の剣か......待て、クロムのことも知ってるのか!?」
「何をそんなに慌てておるのじゃ。お主が知る人物は妾も知っておる」
「そ、そうなのか......」
「そうじゃ。後、ラグナロクに関してじゃが、あそこは邪龍教も戦力としておる。数自体は大したことないのじゃが、信者の数は多いし、教徒は皆変な力を持っておる。戦う時はネイあたりに任せるのが良いぞ」
「そうか。そんだけ知れりゃ十分だ」
「あ、ただし、ネイに任せきりにするのは良くないからな」
「そんくらい分かってるさ」
「いや、疲れがどうこういう話じゃないのじゃ。詳しくは話せれんが、あまりネイにはストレスをかけるなよお主」
「?あぁ、分かった......」
「妾の立場上、本来ならお主にあれこれ言うのはダメなのじゃが、歴史が変わるのはもっとダメじゃからな」
歴史が変わる......歴史?
「ーー1つ聞きてえんだが、お前って結局何者なんだ?」
「ーー妾はツクヨミ。歴史の管理者であり、この世界を見守る者。お主もいずれ妾の正体を知ることになる。今はまだ知らんでもええ」
「歴史の......管理者?」
「簡単に言うと、神様みたいなもんじゃな。歴史を正し、間違った歴史を修復する。本当ならこんな仕事放り出したいところなんじゃがな。でも、そうしたら妾達の未来が無くなる。地道な作業じゃが、頑張らにゃダメなのじゃよ」
そう言うツクヨミは少し寂しそうに見えた。
「まあ、とにかくネイにはあまり負荷をかけるでないぞお主。世界が滅んでは妾も困るからな」
「ああ、まあ、なんとなく分かったよ」
「あ、それと次来る時は夜中に来るでないぞ。妾だって寝ておるのじゃからな」
「でも、夜じゃねえと来れねえしなぁ」
「そこは無理して来い」
「えぇー......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あーあ、結局大したことは聞けなかったなぁ......」
いや、正しくは問うことができなかったの方が正しいだろうか。
歴史は変えてはならない。そう言われると、この先起こることを聞く、なんてことは出来なかった。多分、聞いても答えてはくれないだろうが......
「それにしても、やたらネイに関しての注意が多かったな」
話しぶりからしてネイのことを知っているとは思っていたが、聞いてもいないのに色々と言ってくるとはなぁ......あいつ邪龍にでもなるんじゃね?
「そう考えると、ヨミがあんだけ危険を訴えるのは当然か......つか、なんで俺は自分の部屋にいるんだ?」
ずっと気になっていたが、目が覚めた時、目に飛び込んできたのは自分の部屋だった。前はそのまま森にいたというのに......
「気をつかってくれたのかなぁ......まあ、どうでもいいや」
そんな事を考えていたって、腹が減るだけだ。めんどくさい事はネイに考えてもらえば......
「そういや、負担をかけるなって言われてたっけ......」
ネイの力は極力頼らない方が良いか。なんだか、すげー難しいことになってんな。
「寝るか......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ギャハハハハハハ、あいつらが来たらどうしてやろうかねぇ?あの手この手で痛ぶってあげて、奴らの悲鳴を聞けるって今から考えると楽しみだねぇ。ギャハハハハハハ」
「くっ......クロム様は貴方達のような下衆に負けるはずがありませんわ!」
「ギャハハハハ。いいねいいねぇ...面白いな嬢ちゃん。ギャハハハハハハ」
「うっ......」
「あいつ、本当に帝国軍の大将なのか?」
ヴァルが双眼鏡を覗きながら、隣に同じようにするクロムに問いかける。
「俺も、帝国軍の大将があんなだとは思いもしなかったさ。でも、帝国自体変な噂しか聞かなかったからある意味あれで正解なのかもしれん」
何が正解なんだ。というか、何を見てるんだ。
「さて、あいつらがあんなにも分かりやすい位置にいてくれるんだから、今のうちにやるか」
「ああ、そうだな。さっさとケリを付けちまおう、って言いたいんだが......」
その先は言わなくても分かる。
「「「 なんでお前は聖王まで連れてきたんだ? 」」」
ここに来る前からそうだったが、なぜか私達と同じ馬車に聖王セレナ様が乗っていたのである。それに関してクロムに聞こうとすると上手いこと誤魔化され、セレナ様もまるで普通の人間のように私達と会話を楽しもうとしてくる。(事実、会話を私達も楽しんではいたのだが)
「一応、万が一のことを考えてだな」
「その万が一が聖王を殺されることなんだろうが......」
ライオスの言う通りである。
「はぁ、実を言うとだな......」
「良いのですクロム。これは私が言い出したことなのですから」
セレナがクロムを腕で制する。
「民の危機に私がのうのうと玉座に座っている訳にはいきません。私が姿を現せば彼らも我が民を解放してくれると仰っております。万が一作戦が失敗した時のために私が来たのです。どうか、私のわがままをお許しください」
ただの良い人ではないか。これが世界一国民から信用されてる王様か......深く納得。
「という訳でな。万が一ってのはそういう意味での万が一だ」
「奴らが聖王様を出して大人しく解放してくれると思うか?俺は思わねえぞ」
グリードの言うことも最もではある。
「それはお前らの働き次第だ。なるべく、迅速に片付けてくれ」
「それは別に構わないのだが、どうやって奴らのところに殴り込みに行けば良いのだ?普通に行けば怪しまれるぞ」
フウロがそう言う。
「そこは......上手いことやってくれないか?」
「あのなぁ......上手いことやれって......」
「考えがないようでしたら、私の策に乗ってみます?」
悩むヴァルの元にネイがそう言う。
「参考までに聞いとくが、お前が後ろに用意しておる『岩』はなんだ?」
ヴァルがネイの後ろにある『岩』を指さしてそう言う。
「良い感じの大岩があったのでここまで持ってきました」
「あのなぁ、ネイ。もし、その岩を錬金術で丸くした後に転がしてそれから逃げてる俺達を演出しようとするならやめろよ」
「よく私の言いたいことが分かりましたねぇ」
「付き合いなげえんだから、そろそろお前の言いたそうなことくらい分かるわ!」
前に同じく。ネイが考える策は確かに良いものなのだが、その分、危険度があまりにも高いものばかりを考えうるものだ。もっと安全な方法はないのか。
「今回のことに関しては安全な方法なんて無いと思いますよ?捕えられた令嬢さんを殺されてはダメ。聖王さんを殺されてもダメ。怪しまれてもダメ。まともな方法でやってたら失敗しますよ?」
それは、わかっているのだが......
「流石に、大岩に追われるのはちょっと......」
「そっちの方が真剣さをアピールできて良いと思いますけど......あ、ちなみに、やる時は少人数でやってくださいね」
「なんで?」
「こんな大勢で行ったらいくら上手く演技しても怪しまれますよ。奴らだって私達の国のギルドを知らないわけじゃないんですから」
確かに、普通の依頼でこんな大勢で行くことは無いな。
「じゃあ、大半はここで待機するってことになるけど」
「そこは無駄にしませんよ。ね、エフィさん」
「え?エフィ?」
よく見ると、エフィはエフィでかなり大きい魔獣と何やら話をしている。
「もう仕込みは終わりましたよ」
エフィがこちらに振り返りそう言う。
「次はあれか、あの手懐けた魔獣に追われてるのを演技しつつ奴らのところに殴り込む算段か」
「ピンポン大正解。でも、こっちの方は魔獣が手加減してくれる分まだ楽な方とは思いますけど。それに、魔獣も混乱に乗じて敵を攻撃してくれるように手懐けてもらってますし」
もう、ここまで準備されたらこれでやるしかないじゃないか。
「お前らの策士はかなり頭が良い奴だな。是非ともうちに欲しいくらいだ」
「やらねえよ?」
「ただ言ってみただけだ。ヒカリがいなくなってから大分うちの自警団がダメになった気がするんでな。もっと優遇してやるへきだったか......」
それに関しては優遇しても何も変わらなかったと思う。
「な、なんだその目は」
「いや、何でもねえ。作戦はそれで行こう。敵陣に突っ込んだら後はその場その場で考えるか......」
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処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
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加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
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王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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