グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第3章 【記憶の結晶】

第3章21 【セレナ救出戦】

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「どういうことだ、フェリシア......」

「言葉通りです。天馬騎士隊が壊滅し、セレナ様が拐われてしまいました......」

「なんで......姉さんが......」

「それに関しては、私から説明致しましょう」

 フェリシアの後ろからアランが姿を見せる。

「私は現場にいたわけではないのですが、彼女の話によると王国領へ戻る最中、帝国軍に襲われ、天馬騎士隊が壊滅。恐らく、襲ってきたのは邪龍教の者共でしょう。普通の帝国兵なら負けるはずがありません。そうでしょう、フェリシアさん」

「はい、奴らは得体の知れない『何か』を使って我々騎士隊を攻撃してきました」

「ラスト......」

「間違いねえ。お宅らの騎士隊がどれだけ強ぇのか知らねえけど、訳の分からんモンで潰されたなら、間違いなく教徒だ」

 ラストが言うのなら間違いはないだろう。

「騎士隊の先輩方は私一人を『救援を呼んでこい』と逃がし、必死にセレナ様を取り戻そうと戦っておりました......」

「じゃあ、なんで壊滅したってわかったんだ......」

「最後にとてつもない爆発が起きました。私は自分一人逃げることなど許されないと思い、一度、騎士隊の元へ戻りました......」

「その時には、もう......」

「はい、全員骨も残らないほど無残な姿でした......」

「クソっ......」

 もう手遅れになってしまった。しかし、まだ帝国からは何も情報が出ていない。なら......

「今すぐ姉さんを助けに行こう」

「それに関しては私も賛成なのですが、場所がどこかお分かりですか?」

「その言い方、アランは知っているのか?」

「恐らく、このギルドの皆さんにとっては嫌な場所でしょうね」

 まさか......

「場所は『聖龍の墓場』ヒカリさんが死んでしまわれた場所です」

 前の侵略者騒ぎの時、最後に帝国と侵略者が結びついているような手紙を受け取った。

「まさかとは思うが、奴らは......」

「恐らく、ヒカリさんと同じような犠牲を出すことによって、クロム様に『お前は無力だ』とでも言いたいのでしょう」

 そんなことさせてたまるか。

「よし、今すぐ行こう。フェリシア、アラン。急ぎ準備を進めてくれ」

「「 はっ 」」

「ギルドのお前らも助けてくれ。今は少しでも戦力が欲しい」

「分かってるさ、クロム。こうなった以上、最後まで付き合ってやる」

 ヴァルがそう言う。

「その代わり、終わったらたっぷりと礼を貰うからな」

 ヴェルドがそう言う。

 他にも、ギルドの皆が賛同の声を上げてくれる。

「この礼は倍にして返す。必ず、姉さんを助け出そう!」

「「「 おぉー! 」」」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 さて、戦争をするにあたって重要になってくるのが策だと聞いたことがある。

 どんなに強い兵を持とうが、無策で突っ込んでは返り討ちにあう。

 いつでも相手の上を行き、様々な局面に対する策を整えておく。戦術は多ければ多い方が良い。

「ーー最後にセレナ様を連れ撤退。余計な争いはしない方が良いでしょう。殿は自警団の皆さんに任せてもいいですよね?」

 この軍師は凄い。
 寝起きだというのにも関わらず、誰も思いつかない策を次々に提示していく。そうした上で、俺達とじっくり話し合い、最後に全てを整える。

 この戦いに、このギルドの力を借りれて本当に良かったと思っている。俺達だけではどうにも出来なかった問題を解決する術をこのギルドは持っている。

 本当なら、この龍人の子の力は借りない方が良いのだが、今はそんなことも言っていられない状態になっている。

「大まかな策はこれで大丈夫ですね。後は戦場で何かあった時に私が指示をするという形で良いですか?」

「ああ、今回の指揮はお前に全てを任せる」

 本来なら、俺が指揮を執るべきなのだが、俺にはイレギュラーな事に対応する判断力はない。全てをネイに任せた方が良い。

「クロム様。騎士団の方々の協力もあり、なんとか準備が完了致しました」

 アランが扉を開け、報告する。

「分かった。30分後に出発する。それまでに物資の整理をしておけ」

 俺は時計を見ながらそう言う。

 本当なら、今すぐにでも出発したいのだが、準備は大事だ。今は即席で動くわけにはいかない。

「クロム様。私は何をすれば......」

 フェリシアが、やはり目に少し涙を残し、そう問いかけてくる。

「フェリシア、お前は少し、休んでいろ」

「しかし......」

「お前も貴重な戦力なんだ。ペガサスに乗れるのは現状お前しかいないんだ」

「分かりました......」

 そう言って、フェリシアは下がっていった。

「さて、お前達も少し休んでいてくれ」

「俺は今からちょっと訓練してくるぜ。ヴェルドも付き合え」

「分かってるよ」

「お前ら人の話聞いてたか?」

「聞いてるって。その上で俺達は体鍛えんだよ。少しの時間だって鈍らせるわけにはいかねえだろ」

「程々にしとけよ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「「 お、おえぇぇぇ 」」

 ヴァルとネイが同じような感じで乗り物酔いを起こしている。

「も、もっとゆっくりに出来ねえのか?」

「国の命運がかかってるんだ!それに、ゆっくりにしたところでお前らは変わらんだろ。黙って我慢してろ!」

「き、厳しい......」

 クロムがこうなるのは仕方のない話だろう。むしろ、そんな中でスピードを落とせと言うヴァル達の方がどうかと思うが......

「フェリシア、ペガサスの用意は出来てるか?」

「バッチリですクロム様」

「よし、いつでも出撃できるように準備しとけ」

「はっ」

 まず最初の作戦。それはセレナの周りにいるであろう帝国兵を倒すこと。

 奴らがヒカリを連想させるというのなら、あの高台にセレナを立たせ、近くに何人かが待機している状態を作るであろうことからこうなった。

 フェリシアがペガサスを操り、上に乗せたアルテミスが弓で一掃する。これで多少は時間が稼げるであろう。

 というのが、ネイが考えた初撃の作戦。

 そして、それ以降の攻撃は遠距離で攻めつつ近づくことになる。ネイの考えでは、ここで一番予想外のことが起こるだろうとのこと。

 特に、邪龍教徒は一番イレギュラーな存在であり、ネイも詳しくは知らないので対策ができない。

 そのために連れてきたのが、

「王子様よぉ、本当に俺様を連れてきても良かったのか?後から色々言われることがあるだろ?」

 ラストである。ラストの雷剣ならば、教徒を殺すことは出来なくとも、感電させて動けなくさせることはできるらしい。

「ラスト。お前は死んだことにしてある。だからお前は、今は無名の剣士だ。何の問題もない」

「何の問題もないってよぉ......」

「めんどくさがり屋なヒカリがよくやってたことだ。うちの自警団のメンバーの半数は訳ありで入ってきた奴らだ。全部とまではいかないが、大体は死んだことにしてある。全員名前も変えてるしな」

「マジかよ......」

 これは、私達も聞いたことがある。事実、ヒカリのことは途中で死んだことにしてたし......本当に死んでしまったが......

「クロム様、見えてまいりました」

「よし、フェリシア、アルテミス、出撃だ!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「フラッシング・アロー!」

 淡い光を放つ一本の矢がセレナの傍らにいる帝国兵に向かって放たれる。

 ペガサスの上なので、標準を合わせにくかったが、そこは昔学んだ魔法の力でカバーする。

 外すわけにはいかない。ヒカリと同じような犠牲を出すわけにはいかない。その思いを込めて矢を放った。

「ぐ......」

 当たった。一歩間違えれば、セレナに当たるかもしれなかったが、なんとか狙い通りに当たってくれた。

 これも、先生とヒカリのお陰だ。

「アルテミスさん。一旦降りますよ」

 目の前でペガサスを操るフェリシアが言う。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「よし、当たったな」

 隣で双眼鏡を覗いていたクロムがそう言う。

「とりあえず、第一の作戦は成功した。これから敵陣に突撃する。帝国兵は大したことないだろうが、邪龍教徒は殺しても死なない。見つけたら動けないよう地面に刺しておけ」

 邪龍教徒。ネイに耐え難い苦しみを与え、今も狙い続けている奴ら......

(見つけたら燃やし尽くしてやる)

「ヴァル......」

 しまった、心を読まれていたか......

「悪い、冷静じゃなかったか?俺は」

「いえ、そうじゃないんです。ただ、戦いが始まる前に話しておきたいことが......」

「なんだ?」

「そのーー」

「お前ら、いつまで話してるつもりだ?そろそろ行くぞ」

「あ、はい......」

 クロムのせいで、ネイが何を言いたいのかが分からなかった。まあ、終わったら話してくれるだろうし、気にしなくてもいいか。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「雷剣・放電の陣」

 突撃の合図とともに、ラストが敵陣に真っ先に突っ込み、私達に使ってた技を今度は帝国兵達に向けて撃つ。

「こりゃぁ、改めてすげぇなぁ」

 グリードが感嘆の声を上げる。

 今の攻撃で、前線にいた帝国兵が全員焼け死んだ。

「王子様、雑魚は全員俺に任せて聖王様のところへ行きな。道は作ってやる」

「ありがとう。ヴァル、ヴェルド、アラン。俺について来い」

「分かった」
「分かった」
「了解致しました」

 ヴァル達がそれぞれに返事をする。

「雷剣・線雷の陣」

 ラストが真っ直ぐに剣を振る。
 振った先には雷が落ちたかのような焦げ後が地面にあり、近くにいた帝国兵は全員死んでいた。

 行くなら今しかない。

「待っていてくれ、姉さん......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「さてと、あのアホ共は行っちまったか......」

 敵陣の奥にたった4人で突っ込むのはどうかと思ったが、まあなんとかなるだろう。そうするためにも......

「俺達がサポートしてやらなきゃ、な!」

 隠れて襲ってきた帝国兵を真っ二つに斬る。

「つっても、邪龍教徒は勘弁して欲しいんだが......」

 殆どの帝国兵は倒せた。倒せれないのは全て教徒共。しかも、パッと見で見えていた兵の八割くらいがその教徒共だった。

「こりゃ、骨が折れるぜ......」

「「「 情けない奴だな。あんな奴ら、お前の剣にかかれば一撃だろう? 」」」

 髪色がカラフルな女ーー確か、ネイだったかーーがそう言ってくる。

 やっぱ、龍人は何度見ても慣れねえな。

「うるせえなぁ、あいつらは俺様の剣でもぶった斬れねえんだよ......」

「「「 雑魚だな 」」」

「うるせえ!なら、お前がやってみろよ!」

「「「 ふっ、良いだろう。僕達の力を君に見せてあげよう 」」」

 クソっ、こいつ一々話し方が変わってめんどくせえ!

「「「 魔風戦禍・怠惰一閃 」」」

 突然、邪龍の動きがピタリと止まり、次の瞬間には体が切り裂かれる。

「「「 イクラ、不死ノ力ヲ得ヨウト、我ラニハ勝テレン 」」」

 すっげー......これぞ正しく俺が求めていた強者。

「「「 輝魔幻想・儚き魔の夢 」」」

 たった瞬きの間に、敵がどんどん殺られていく。

「なあ、これ、ギルドの奴ら殆どを連れてくる必要性あったのか?」

「「「 ...... 」」」

 そう言った途端、ネイの動きが止まる。

「こんな危ねぇ戦争、お前1人でこんだけできるんだ。わざわざ危ねぇ場所に仲間を連れて来なくても良かったんじゃねえか?」

「「「 確かに...... 」」」

 おいおいおいおい。軍師がそんなんでどうすんだよ......

「「「 まあ、いざとなった時は頼りになるだろう。問題は、クロム達だが...... 」」」

 そうだな。後ろにいる奴らは全員殺した。なら、後はクロム達がセレナを助け出せれば無事終了。

 一応、アルテミスがセレナの周りに集まる帝国兵を全部撃ち落としてくれてるようだしーー全部正確に撃ち落とすとか人間技じゃねえよ、あの小娘何もんだ?ーー全てはクロム達次第となった。

(マジで頼むぜぇ王子様。あんたがしっかりやってくれねえと俺はどこにも行けなくなっちまうよ......)
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