69 / 434
第4章 【時の歯車】
第4章5 【反乱の時】
しおりを挟む
時は、ヴァルがネイの看病をしている時間と重なる。
ヴァルがいつもの"日課"に出かけると、決まってギルドのみんなで会議を始める。
「どんなに考えて、どんなに策を練っても、奴らの不死の力をどうにかしない限り、防衛は難しい」
ライオスの言うように、今、私達が直面している問題は、邪龍教徒の不死の力である。
この問題を片付けない限りは、どれだけ策を練っても無意味に思える。
「不死だ不死だ言ってるけど、動けないように釘を刺すのはダメなのか?」
ヴェルドが問う。
「それはクロム達がやって、失敗だと実証してくれた。奴らは、どうやってるのかは分からないが、牢に閉じ込めても、地面に突き刺してても逃げれるらしい」
フウロが答える。
「そういえば、前に私達が戦っていた時も、地面に固定していたはずの教徒達がいなくなっていた、っていうのがありましたよね?」
「確かにそうだったな。もしかしたら、奴らは強化されてるのではなく、元からああいった力があったのかもな」
「捕まえることはできない、殺すこともできない、なら、どうやって戦えってんだよ」
ヴェルドの言う通り、どうやって戦えばいいのか......
「一応、奴らには俺の雷が効く。と言っても、痺れを起こして一時的に動けないようにできるだけだが......」
「一時的なのはちょっと足りないな。できることなら、数時間は止めていてほしい」
「数時間止めて、どうやって倒すんだ?」
「倒さなくていい。縄で縛り上げれる時間があれば......」
「あのなぁ、奴らはそうやっても逃げ出せれるんだぞ?それに、縄で縛るにしても数が多すぎんだろうが」
ヴェルドはフウロの言葉を真っ向から否定する。
「「「 ...... 」」」
考えても考えても、何一つ良い案は思い浮かばない。
「やっぱり、ネイりんなのかなぁ......」
「ヴァルの奴が早めに連れ出せれたら勝機はあるな」
「しかし、あいつはもう本当にゆっくりゆっくりとやってるぞ。流石に時間は間に合わないだろう」
「......やめだやめだ。俺はクロムのところに一仕事してくるぞ」
そう言って、ライオスがギルドから出ていった。ついでに、会話には一切混ざってこなかった三馬鹿も。
「俺も、ひとっ走りヴァルのところに行ってみるわ」
そう言い残して、ヴェルドもギルドから出ていった。
「私も、少し訓練場に行ってくる。ここ最近、体を鈍らせすぎたからな」
あらあら、みんな匙を投げ出して別のことをしに行っちゃったよ。
「私も、動物さん達の世話があるので行ってきます」
そう言って、エフィまでもが出ていった。
「私も、ヴェルドの後を付いていけば良かったかな」
ヴァルに任せ切りの状況だが、やはり、ネイのことは気になる。
「でも、今から行って追いつく......そういや、場所はあの森なんだっけ」
前に、ヴァルを止めに行った場所。あそこで間違いないだろう。
「私も行くか......」
誰に言うでもなく、私はそう呟いてギルドを出ていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「よう、ヴァル」
世界の書庫から出た俺を迎えたのはヴェルドだった。
「なんでお前がここにいんだよ」
「暇になったからつい」
「お前が来たところで、あいつはお前に顔すら見せねえぞ」
「その原因が俺の中でめちゃめちゃ暴れてるんだが......」
「なんでだよ。腹パンしただけの記憶だろうが」
「今でも、俺はあいつのことをあんまり良いとは思ってないがな」
「お前、素直な奴だな。お前みたいな奴がいるからあいつも外に出れねえんだよ」
「俺が原因!?」
「5割はお前が原因」
「マジか......俺のどこに問題が......」
「問題だらけだろうが。ネイに対しての暴力、暴言、その他諸々、お前は出るとこ出て更生してこい」
「なんで俺が牢獄に送られなきゃならねえんだよ!」
「そこの答えは自分の胸に手を当ててしっかりと考えとけ」
「最近、お前口が達者になってきてね?」
「多分、ここ2日間、あいつとくだらねえやり取りしてるからかもな」
「ああ、あいつと口喧嘩して勝った奴誰もいなかったな」
「俺とお前だけだよ。口喧嘩したのは」
「そうだっけ?」
「そうだよ。しかも、あいつと口喧嘩をしてたのは主にお前だ。俺はここに来てから。つっても、たったの1回だけだが」
「それで、口喧嘩には勝てたのか?」
「勝てるわけねえし、あいつにとっちゃ、ただ俺を馬鹿にしてるだけだったな」
「お前、元から馬鹿じゃん。それ指摘されただけだろ」
「特大ブーメランがお前に突き刺さってるぞ」
「マジで?どこどこ?」
ヴェルドが本当に馬鹿なのか、辺りを見渡す。
「物理的にじゃなく、お前の言動に対してだよ」
「ごめん、何言ってるのか分からねえ」
「そういうところだよ。お前も馬鹿じゃねえか」
「あ、なるほど」
ようやく理解できたというように、ヴェルドが手を叩く。
「それで、話は変わるんだが、今日の交渉は上手くいったのか?」
ヴェルドが真面目な顔に切り替えて、そう問いかけてくる。
「多分、少し前進したと思う。心の問題はどうにかできる......」
「なら、もう連れ出すだけじゃーー」
「いや、問題はそれだけじゃねえんだ。グランウォーカーっていう神様があいつをあの空間に閉じ込めてるせいで連れ出すことができない。心よりも難しい課題だ」
「グラン......ウォーカー?」
「ああ。なんでも、この世界を創った神様らしい」
「何モンだよ......」
「神様は神様だろ」
「いや、そっちじゃなくて、そんな奴に閉じ込められてるネイの方だよ」
「......ただの、司書かな?」
「......やっぱ、お前に任せ切りだわ。俺には何も理解できねえ」
「俺だってあまり理解できてねえよ。それでも、ちょっとずつ理解していくしかないんだ」
「ちょっとずつ......か」
ヴェルドが急に声のトーンを下げてそう言った。
「?どうした?」
「いや、なんでもねえ。お前はお前で頑張れ。こっちの問題は俺達で解決する......」
「こっちの問題?」
こっちの問題ってなんだ?まさか、邪龍教の生き残りとかに関する問題か?
「あ、やべ......」
そう呟いてヴェルドが逃げ出した。
「あ、待てヴェルド!」
急いであとを追いかける。
「まずい、つい口走っちまった......」
「何を口走ったってんだよ!何か隠してることがあるなら話せ!」
ヴェルドの走りなら、ちょっと本気を出せば簡単に追いつける。
「アイスウォール!」
ヴェルドが俺の行く道を塞ぐように、大きな氷の壁を立てた。
登ろうとしても無理なのは分かっているので、溶かそうと思ったが、思った以上に氷の壁が分厚くて無理だった。
「クソっ、回り道するしかねえ」
急いで氷の壁の回りを迂回してヴェルドのあとを追いかける。
「あ、ヴェルド、それに、ヴァルも......。そんな血相変えてーー」
途中でなぜかセリカとすれ違い、セリカが何かを言っていたが途中までしか聞こえなかった。
「待て!ヴェルド!」
「待てと言われて待つやつがどこにいるか!」
「あ!正面からシアラが!」
「マジで!?」
ヴェルドが意図も簡単に俺の嘘に引っかかって走るのをやめた。
「捕まえたぞヴェルド!」
「あ......」
やっと捕まえることができた。それにしても、なんだってヴェルドはこんなにも必死に逃げたんだ?
「お前、なんか俺に隠してることがあるんだろ?」
「......何もねえよ」
「嘘つけ。『こっちの問題は俺達でどうにかする』って言ってただろうが!」
「いや、あれは......、そうだ、嘘なんだ」
「目が泳ぎまくってるぞ」
本当に、これでもかというくらい、ヴェルドの目がキョロキョロ動き回っていた。必死に言い訳の言葉を探しているといった感じだろう。
「もう、ヴァルもヴェルドもそんな血相変えた顔して何やってんの......」
セリカがゼェゼェと呼吸をしながらやって来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ーーと、いうわけなんだ......」
ヴェルドがうっかり口を滑らせてしまったことを、一通りヴァルに説明し終える。
「はぁ......もう、なんでそんなことを口走ってしまうかなぁ......。内緒って言い出したのヴェルドじゃん」
「すまねえ......」
「そんなことをわざわざ隠すとか、何考えてたんだ、お前ら」
「いや、お前がネイを連れ出そうとするのに必死だから、こんなことを話しちまうと、それもどうにかしようと両手が塞がっちまうだろ?」
「別に、ネイに関しちゃゆっくりやればいいし、そこまで切羽詰まった状態にならねえと思うがなぁ......」
「いや、ヴァルのことだから絶対そっちもどうにかしようと頑張るでしょ」
「まあ、多分、そっちの方に力を入れるだろうな。ネイに関しちゃ、ここに来ればいつでも会える」
「「 ...... 」」
「まさかとは思うが、まだ何か隠してることがあるんじゃないだろうな?」
「......こっちを話したら、本当にお前が切羽詰まった状態になる」
「さっきも言った通りだが、別にそんなことにはーー」
「邪龍教の生き残りの討伐。今のところ、奴らの倒し方が分からねえんだ」
「そんなもん縛って牢に入れりゃーー」
「それはクロム達がやって無理だと実証済みだ」
「それで、それが俺に負担をかけることとどう繋がるんだ?」
「......邪龍教徒を唯一倒せれる方法がある」
「なん......まさか、その方法って」
「そうだ。察しの通りネイを使うことだ」
「外に出れねえあいつの力を借りるとか、無理だろ」
「だから、お前に負担をかけることになるって言ったんだ。街があいつらの手によって壊滅させられる、それで、止めれるのがお前の交渉次第ってなったらお前はどれだけボロボロの体になってもあいつを連れ出してくるだろ」
「......」
ヴァルは何も言い返さない。
「今日は上手くいったのか知らねえけど、傷を負うことなく出てきた。でも、明日は違うかもしれねえ。お前がゆっくりやろうとしてる理由も分かる。ちょっとずつやらずに強引に行ったら、あいつは話すらしなくなるだろうな。でも、奴らがここに来るのは時間の問題だ。それでお前が焦ればーー」
「分かったよ。ヴェルド」
早口になるヴェルドをヴァルが肩に手を置くことで制する。
「お前らの気持ちは十分に分かった。なら、俺は早めに解決できるよう頑張るさ」
「......死ぬなよ」
「......死なないでね」
2人でヴァルに向かって同じことを言う。
「そんなに、俺って危険なことしてるかね?」
「いや、ゆっくりやっていかねえと殺されるかもしれねえ問題を早めに解決しろって言ってんだ。それくらいの心配はしてやる」
「別に、あいつはそんなすぐに殺してくるような奴じゃねえぞ?事実、今日は無傷だったろ?昨日も」
「それは......ゆっくりとやっていくって決心したからじゃないかなぁ?前までだと、少し力みすぎて連れ出すことしか考えていないようだったし......」
「それも......そうだな。まあ、でも、ちょっとずつ前進してるから期待しててくれ」
「期待は物凄くしてるんだが、グランウォーカーとかいう訳の分からない驚異があるんだろ?」
「......」
「どういうこと?ヴェルド」
これに関しては初耳だ。てっきり、ネイりんの心を開くだけで解決できるものだと思っていたのに......
「こいつがな、ネイの心は大丈夫だが、グランウォーカーとかいう新しい問題が出てきたって言い出したんだよ。ぶっちゃけ、俺は1割も理解できていない」
「どういうことなの?ヴァル」
「えーっとだな......つまり......まだまだ時間がかかるってこと」
そう言って、ヴァルは都合が悪くなったのか逃げ出した。
「流石に追いかける気にはなれねえ......。あいつ、無茶苦茶早いし......」
同感だ。
「とりあえず、あいつに話したってのはみんなに内緒な。まあ、あいつが自分からフウロ達に聞いちまったらダメなんだが、見たところ、話さねえと思うし、むしろ話されると困るッ!」
「うん。フウロになんて言われるか......」
「セリカはまだいい方だろ。俺のことを考えろ。やべ、耳鳴りがしてきた......」
それは......ヴェルドの日頃の行いが原因じゃないかな?それに、先に口走ったのはヴェルドだし......
そういえば、グランウォーカーって何なの?
その辺に関して、すっかり聞き忘れていた。
(まあいいか。ネイりんが戻ってくればすぐに分かる話だし......なんなら、後でヴァルにも聞けれる)
ヴァルがいつもの"日課"に出かけると、決まってギルドのみんなで会議を始める。
「どんなに考えて、どんなに策を練っても、奴らの不死の力をどうにかしない限り、防衛は難しい」
ライオスの言うように、今、私達が直面している問題は、邪龍教徒の不死の力である。
この問題を片付けない限りは、どれだけ策を練っても無意味に思える。
「不死だ不死だ言ってるけど、動けないように釘を刺すのはダメなのか?」
ヴェルドが問う。
「それはクロム達がやって、失敗だと実証してくれた。奴らは、どうやってるのかは分からないが、牢に閉じ込めても、地面に突き刺してても逃げれるらしい」
フウロが答える。
「そういえば、前に私達が戦っていた時も、地面に固定していたはずの教徒達がいなくなっていた、っていうのがありましたよね?」
「確かにそうだったな。もしかしたら、奴らは強化されてるのではなく、元からああいった力があったのかもな」
「捕まえることはできない、殺すこともできない、なら、どうやって戦えってんだよ」
ヴェルドの言う通り、どうやって戦えばいいのか......
「一応、奴らには俺の雷が効く。と言っても、痺れを起こして一時的に動けないようにできるだけだが......」
「一時的なのはちょっと足りないな。できることなら、数時間は止めていてほしい」
「数時間止めて、どうやって倒すんだ?」
「倒さなくていい。縄で縛り上げれる時間があれば......」
「あのなぁ、奴らはそうやっても逃げ出せれるんだぞ?それに、縄で縛るにしても数が多すぎんだろうが」
ヴェルドはフウロの言葉を真っ向から否定する。
「「「 ...... 」」」
考えても考えても、何一つ良い案は思い浮かばない。
「やっぱり、ネイりんなのかなぁ......」
「ヴァルの奴が早めに連れ出せれたら勝機はあるな」
「しかし、あいつはもう本当にゆっくりゆっくりとやってるぞ。流石に時間は間に合わないだろう」
「......やめだやめだ。俺はクロムのところに一仕事してくるぞ」
そう言って、ライオスがギルドから出ていった。ついでに、会話には一切混ざってこなかった三馬鹿も。
「俺も、ひとっ走りヴァルのところに行ってみるわ」
そう言い残して、ヴェルドもギルドから出ていった。
「私も、少し訓練場に行ってくる。ここ最近、体を鈍らせすぎたからな」
あらあら、みんな匙を投げ出して別のことをしに行っちゃったよ。
「私も、動物さん達の世話があるので行ってきます」
そう言って、エフィまでもが出ていった。
「私も、ヴェルドの後を付いていけば良かったかな」
ヴァルに任せ切りの状況だが、やはり、ネイのことは気になる。
「でも、今から行って追いつく......そういや、場所はあの森なんだっけ」
前に、ヴァルを止めに行った場所。あそこで間違いないだろう。
「私も行くか......」
誰に言うでもなく、私はそう呟いてギルドを出ていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「よう、ヴァル」
世界の書庫から出た俺を迎えたのはヴェルドだった。
「なんでお前がここにいんだよ」
「暇になったからつい」
「お前が来たところで、あいつはお前に顔すら見せねえぞ」
「その原因が俺の中でめちゃめちゃ暴れてるんだが......」
「なんでだよ。腹パンしただけの記憶だろうが」
「今でも、俺はあいつのことをあんまり良いとは思ってないがな」
「お前、素直な奴だな。お前みたいな奴がいるからあいつも外に出れねえんだよ」
「俺が原因!?」
「5割はお前が原因」
「マジか......俺のどこに問題が......」
「問題だらけだろうが。ネイに対しての暴力、暴言、その他諸々、お前は出るとこ出て更生してこい」
「なんで俺が牢獄に送られなきゃならねえんだよ!」
「そこの答えは自分の胸に手を当ててしっかりと考えとけ」
「最近、お前口が達者になってきてね?」
「多分、ここ2日間、あいつとくだらねえやり取りしてるからかもな」
「ああ、あいつと口喧嘩して勝った奴誰もいなかったな」
「俺とお前だけだよ。口喧嘩したのは」
「そうだっけ?」
「そうだよ。しかも、あいつと口喧嘩をしてたのは主にお前だ。俺はここに来てから。つっても、たったの1回だけだが」
「それで、口喧嘩には勝てたのか?」
「勝てるわけねえし、あいつにとっちゃ、ただ俺を馬鹿にしてるだけだったな」
「お前、元から馬鹿じゃん。それ指摘されただけだろ」
「特大ブーメランがお前に突き刺さってるぞ」
「マジで?どこどこ?」
ヴェルドが本当に馬鹿なのか、辺りを見渡す。
「物理的にじゃなく、お前の言動に対してだよ」
「ごめん、何言ってるのか分からねえ」
「そういうところだよ。お前も馬鹿じゃねえか」
「あ、なるほど」
ようやく理解できたというように、ヴェルドが手を叩く。
「それで、話は変わるんだが、今日の交渉は上手くいったのか?」
ヴェルドが真面目な顔に切り替えて、そう問いかけてくる。
「多分、少し前進したと思う。心の問題はどうにかできる......」
「なら、もう連れ出すだけじゃーー」
「いや、問題はそれだけじゃねえんだ。グランウォーカーっていう神様があいつをあの空間に閉じ込めてるせいで連れ出すことができない。心よりも難しい課題だ」
「グラン......ウォーカー?」
「ああ。なんでも、この世界を創った神様らしい」
「何モンだよ......」
「神様は神様だろ」
「いや、そっちじゃなくて、そんな奴に閉じ込められてるネイの方だよ」
「......ただの、司書かな?」
「......やっぱ、お前に任せ切りだわ。俺には何も理解できねえ」
「俺だってあまり理解できてねえよ。それでも、ちょっとずつ理解していくしかないんだ」
「ちょっとずつ......か」
ヴェルドが急に声のトーンを下げてそう言った。
「?どうした?」
「いや、なんでもねえ。お前はお前で頑張れ。こっちの問題は俺達で解決する......」
「こっちの問題?」
こっちの問題ってなんだ?まさか、邪龍教の生き残りとかに関する問題か?
「あ、やべ......」
そう呟いてヴェルドが逃げ出した。
「あ、待てヴェルド!」
急いであとを追いかける。
「まずい、つい口走っちまった......」
「何を口走ったってんだよ!何か隠してることがあるなら話せ!」
ヴェルドの走りなら、ちょっと本気を出せば簡単に追いつける。
「アイスウォール!」
ヴェルドが俺の行く道を塞ぐように、大きな氷の壁を立てた。
登ろうとしても無理なのは分かっているので、溶かそうと思ったが、思った以上に氷の壁が分厚くて無理だった。
「クソっ、回り道するしかねえ」
急いで氷の壁の回りを迂回してヴェルドのあとを追いかける。
「あ、ヴェルド、それに、ヴァルも......。そんな血相変えてーー」
途中でなぜかセリカとすれ違い、セリカが何かを言っていたが途中までしか聞こえなかった。
「待て!ヴェルド!」
「待てと言われて待つやつがどこにいるか!」
「あ!正面からシアラが!」
「マジで!?」
ヴェルドが意図も簡単に俺の嘘に引っかかって走るのをやめた。
「捕まえたぞヴェルド!」
「あ......」
やっと捕まえることができた。それにしても、なんだってヴェルドはこんなにも必死に逃げたんだ?
「お前、なんか俺に隠してることがあるんだろ?」
「......何もねえよ」
「嘘つけ。『こっちの問題は俺達でどうにかする』って言ってただろうが!」
「いや、あれは......、そうだ、嘘なんだ」
「目が泳ぎまくってるぞ」
本当に、これでもかというくらい、ヴェルドの目がキョロキョロ動き回っていた。必死に言い訳の言葉を探しているといった感じだろう。
「もう、ヴァルもヴェルドもそんな血相変えた顔して何やってんの......」
セリカがゼェゼェと呼吸をしながらやって来た。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ーーと、いうわけなんだ......」
ヴェルドがうっかり口を滑らせてしまったことを、一通りヴァルに説明し終える。
「はぁ......もう、なんでそんなことを口走ってしまうかなぁ......。内緒って言い出したのヴェルドじゃん」
「すまねえ......」
「そんなことをわざわざ隠すとか、何考えてたんだ、お前ら」
「いや、お前がネイを連れ出そうとするのに必死だから、こんなことを話しちまうと、それもどうにかしようと両手が塞がっちまうだろ?」
「別に、ネイに関しちゃゆっくりやればいいし、そこまで切羽詰まった状態にならねえと思うがなぁ......」
「いや、ヴァルのことだから絶対そっちもどうにかしようと頑張るでしょ」
「まあ、多分、そっちの方に力を入れるだろうな。ネイに関しちゃ、ここに来ればいつでも会える」
「「 ...... 」」
「まさかとは思うが、まだ何か隠してることがあるんじゃないだろうな?」
「......こっちを話したら、本当にお前が切羽詰まった状態になる」
「さっきも言った通りだが、別にそんなことにはーー」
「邪龍教の生き残りの討伐。今のところ、奴らの倒し方が分からねえんだ」
「そんなもん縛って牢に入れりゃーー」
「それはクロム達がやって無理だと実証済みだ」
「それで、それが俺に負担をかけることとどう繋がるんだ?」
「......邪龍教徒を唯一倒せれる方法がある」
「なん......まさか、その方法って」
「そうだ。察しの通りネイを使うことだ」
「外に出れねえあいつの力を借りるとか、無理だろ」
「だから、お前に負担をかけることになるって言ったんだ。街があいつらの手によって壊滅させられる、それで、止めれるのがお前の交渉次第ってなったらお前はどれだけボロボロの体になってもあいつを連れ出してくるだろ」
「......」
ヴァルは何も言い返さない。
「今日は上手くいったのか知らねえけど、傷を負うことなく出てきた。でも、明日は違うかもしれねえ。お前がゆっくりやろうとしてる理由も分かる。ちょっとずつやらずに強引に行ったら、あいつは話すらしなくなるだろうな。でも、奴らがここに来るのは時間の問題だ。それでお前が焦ればーー」
「分かったよ。ヴェルド」
早口になるヴェルドをヴァルが肩に手を置くことで制する。
「お前らの気持ちは十分に分かった。なら、俺は早めに解決できるよう頑張るさ」
「......死ぬなよ」
「......死なないでね」
2人でヴァルに向かって同じことを言う。
「そんなに、俺って危険なことしてるかね?」
「いや、ゆっくりやっていかねえと殺されるかもしれねえ問題を早めに解決しろって言ってんだ。それくらいの心配はしてやる」
「別に、あいつはそんなすぐに殺してくるような奴じゃねえぞ?事実、今日は無傷だったろ?昨日も」
「それは......ゆっくりとやっていくって決心したからじゃないかなぁ?前までだと、少し力みすぎて連れ出すことしか考えていないようだったし......」
「それも......そうだな。まあ、でも、ちょっとずつ前進してるから期待しててくれ」
「期待は物凄くしてるんだが、グランウォーカーとかいう訳の分からない驚異があるんだろ?」
「......」
「どういうこと?ヴェルド」
これに関しては初耳だ。てっきり、ネイりんの心を開くだけで解決できるものだと思っていたのに......
「こいつがな、ネイの心は大丈夫だが、グランウォーカーとかいう新しい問題が出てきたって言い出したんだよ。ぶっちゃけ、俺は1割も理解できていない」
「どういうことなの?ヴァル」
「えーっとだな......つまり......まだまだ時間がかかるってこと」
そう言って、ヴァルは都合が悪くなったのか逃げ出した。
「流石に追いかける気にはなれねえ......。あいつ、無茶苦茶早いし......」
同感だ。
「とりあえず、あいつに話したってのはみんなに内緒な。まあ、あいつが自分からフウロ達に聞いちまったらダメなんだが、見たところ、話さねえと思うし、むしろ話されると困るッ!」
「うん。フウロになんて言われるか......」
「セリカはまだいい方だろ。俺のことを考えろ。やべ、耳鳴りがしてきた......」
それは......ヴェルドの日頃の行いが原因じゃないかな?それに、先に口走ったのはヴェルドだし......
そういえば、グランウォーカーって何なの?
その辺に関して、すっかり聞き忘れていた。
(まあいいか。ネイりんが戻ってくればすぐに分かる話だし......なんなら、後でヴァルにも聞けれる)
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる