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第4章 【時の歯車】
第4章12 【魔女の時】
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「魔女?」
俺は、先を行くネイに確認するように問いかける。
「はい。この屍を作り出す力。色々と考えてみたのですが、1000年前にいた魔女の力が1番有り得る力です」
「魔女か......なんでそんなものが今の世にいるんだよ」
「魔女というのは、色々と特殊で、"常識"が一切通用しないんです」
「その魔女様が、この戦い......いや、前の邪龍復活の時から暗躍していたとはな......。名前は分かるのか?」
「レイジ・スカイローズ。それが彼女の名です」
スカイローズ......、スカイローズって、確か......
「フウロ......の家名だよな?」
「はい。フウロの祖先に当たる人ですね」
「なるほどな。通りでフウロがめちゃめちゃ強いはずだ」
「いえ、フウロが強いのは彼女の努力の量です。魔女の力は基本受け継がれないので。ちなみに、こうやって話す私も魔女と呼ばれていた存在ですよ?」
「だろうな。今の話聞いてたらなんとなくそうなんじゃないかと思う。ついでに、ゼラもそうだったんだうぇ」
「一体いつまで酔ってるんですか......」
仕方ねえだろ。ちょっとの揺れでもうダメな体なんだから......。せめて、揺れを無くしてくれ......
「......ヴァル!避けて!」
ネイが俺の体を横に突き飛ばす。いや、避けるも何も、突き飛ばされたんですが......
「おい、どうしたんだよ!」
「......」
「おい、なんか言え......よ?」
ネイの目線の先、そこに赤色の髪をした女が立っていた。そして、やっと気づいたことだが、俺とネイが伝ってきた家は無残な形で破壊されていた。
「憤怒の魔女。レイジ・スカイローズ......」
あの女がそうなのか......。フウロと全然似てねえ......。
「あらあら、そちらにいるのは、元邪龍の怠惰の魔女様じゃありませんか」
声は、フウロに似ている。似ている分、背筋が凍るような感覚に襲われる。多分、普段からフウロを怖い相手だと認識しているからだろうか?
「怠惰の魔女。懐かしい名前ですね」
「そうよ。いつもいつもめんどくさがり屋で、ずーっと本を読んでいたあなたにはピッタリな名前じゃない。めんどくさがりな性格は、1000年で治せれた?」
「レイジの方こそ、少しは怒りを抑えられるようになりましたか?」
「これでも、少しは怒りを爆発させないようにできたのよ?」
「そうですか。愛すべき夫の浮気性はどうにかなりました?」
「フンっ、あんな男、切り刻んでやったよ」
「そうですか。まあ、ダメな男でしたからね。と言っても、1割くらいはあなたの性格が原因でしょうが」
「お前はいい男ができて嬉しそうだな。どうせ、その喋り方もその男から頼まれたのだろ?可愛こぶりやがって......。昔の男はどうした?戦争で死んでいったあの男は」
「彼の話をしたところで、私は怒り狂いませんよ?私には、ヴァルという素敵なパートナーがいるのですから」
「そんなダメ男そうなやつがいいのか。そうかそうか。まあ、あんたは昔からそんな奴だったからね」
「彼の悪口は許しませんよ」
うわぁ......。女って怖い。改めてそう思った。前にそう思った時のことは忘れたが。
「死ね。全員死んでしまえ。私は憤怒の魔女。この世の全てに怒っている」
「はぁ、めんどうじゃな。妾は怠惰の魔女。それだけ言っておこうか」
なんかやばそうな気配がする。ここに、生身の人間がいて大丈夫なのか。大丈夫なのか?
「ヴァル。彼女の相手は私に任せてください。ヴァルは周りの教徒を近づけないようにしてれば大丈夫です」
「お、おお。分かった」
「アマルナの加護を解放しておきました。くれぐれも、焼きすぎには注意してくださいね」
アマルナ......。あれか、邪龍の祭壇で突発的に使えたやつ。あれも、こいつの力だって言うのか......
「何イチャイチャしてんだ。あんたの相手は私だろうが!」
「相変わらずのめんどうな性格じゃなお主。少しばかりその性格を治せば夫が振り向いてくれたかもしれんのに。お主、ちとめんどくさすぎる性格をしておるぞ」
「お前には関係のない話だろうが!」
レイジの激しい攻撃が始まる。
ネイは、その攻撃全てを軽く無効化している。
「お主、やっぱ全然強うなってないな。未だに妾の方が強い」
「邪龍様は良いよなァ?そうやって、人知を超えた業を使えて、何もかもを破壊できる力があって。良いよなァ?」
「そうか。お主、妾の力が欲しかったんじゃな。じゃから、邪龍復活なんぞを行って、その身に邪龍の力を入れようとしたわけか」
「誰がお前の力なんぞを求めるか!私が欲しいのは全てを破壊する力だ!喰らえ!」
「まずい!」
レイジも、ただ闇雲に攻撃していたわけではない。しっかりと隙を見定め、不意打ちをしている。
「輝月の世界」
時間が止まる。敵の動きも、味方の動きも。この中で動けるのは俺とネイだけ。
「私に、その力は効かない!」
レイジは、時間静止の力を無視してネイに攻撃する。
「そうじゃったな。お主にこれは効かんかったか。1000年も前のことじゃから忘れておった」
「随分と余裕そうだなァ?」
「余裕じゃ。お主が妾に勝てたことなぞ1度たりとしてあるまい」
「舐めやがって。お前が1000年も眠ってる間に、こっちは色々と力をつけたんだよ!」
「それがこの力とはな。ガッカリじゃ。後、1000年ではなく800年じゃお主」
「100年も200年も、お前にとっちゃ瞬きのような時間だろうが!」
レイジの怒りの攻撃が、やっとネイに当たる。
「瞬き?」
「ああそうさ。6兆年も生きてきたお前にとっちゃ瞬きのような時間だろうが!」
「確かに、お主から見たらそんな時間かもしれんな」
ネイが、仕舞っていたもう1本の剣を抜き出す。
「でも、妾にとっては、生きてきた時間全てが大事なのじゃ!」
ネイの剣がレイジの胸を突き刺し、レイジの胸元から鮮血が滲み出る。
「くたばれ」
剣を抜いた後、ネイはレイジの体を一蹴りする。
「それしきで、私が死ぬと思うなよ」
レイジの胸の傷がみるみる回復していっている。
「ああ、それしきでくたばるような奴じゃとは思っていない。お主は強いからな」
「そうだろう。私は強い。あなたより強い。だから、私は全てを破壊する」
「「「 残念ですが、あなたは私達には勝てません 」」」
ネイの髪色が6色に染まる。
「なんだ......、その姿は......」
「「「 ヴァル、俺達は1人じゃねえんだ。俺とアマツとラナとシズとラヴェリアとお嬢。5体と1人いるから大丈夫だ。1人のあいつには負けねえよ 」」」
「ジーク......」
「「「 ソウイウコトダ。我等ハ常ニ1人デハナイ 」」」
「そうだよな。俺達人間は1人じゃ何も出来ねえ生き物だからな」
「「「 酷く悲しい生き物だ。普通なら、1人で生きるくらいの術は身につけてほしいものだが、まあ、そんな人間が僕達は好きだ 」」」
「ラナは、少しくらいネイに負担をかけるのをやめろ。これからは俺に対しても迷惑なことになる」
「「「 すまぬな。本来なら、我等が力を合わせて主を守らねばならぬというのに...... 」」」
「さっきからゴチャゴチャとやかましいな」
そろそろ、レイジの傷も治ってきた頃か......
「「「 いいか。私達は1人じゃない。1人のあいつに負けはしない 」」」
「俺達は強い。負けはしねえ。絶対に勝つ。勝って、ギルドで祝杯を上げるんだ」
「「「 今からフラグを建てるのはやめてください。死にますよ? 」」」
「負けフラグしゃねえよ。勝ちフラグだ」
「「「 そうなると良いのですけど 」」」
「全員、死んでしまえー!」
ゆっくり話をする時間が中々見つからない。どうして、世の中の人々はみな、ゆっくりしていられないのだろうか。
「そういやお前の体って、今何歳だ」
ふと気になったことを尋ねる。祝杯を上げるにしても、18歳を超えていないと酒が飲めないのがこの国のルールだったからな。
「「「多分、14くらいだと思います」」」
「はぁぁぁぁ......、その体で14って本気か?」
「死ね!」
「「「 よっと......。はい、本気です。龍人は成長が早いので、14でもこれくらいになってしまうのでしょう 」」」
ネイがレイジを軽く薙ぎ払ってからそう言う。
「マジか。龍人って、14でそんなワガママボディになれるんだな」
俺も、レイジの後ろに回り込んでから、地面に向けて叩き落とす。
「「「 ヴァル、その言い方は、いくらあなたの言葉でも傷つきますよ 」」」
ネイが落下地点に先回りし、空に向けて打ち上げる。
「悪ぃ。言葉の選び方間違えた。以後気をつける」
おお、これは凄い。ネイと俺でラリーができている。
「「「 まあ、ヴァルが望むのなら、この体を好きにしてもらっても構いませんけど 」」」
ネイが顔を赤くしてそう言う。
「あ......」
やべ、変なこと考えてしまったせいで手が滑った。
レイジが、その隙を逃さまいと瞬時に逃げ出す。
「はぁ、はぁ、はぁ......。随分と私を無視して楽しんでくれたね......」
「「「 何やってんだヴァル。あいつを逃がしちまったじゃねえか! 」」」
「それならネイに言え!あいつが急に変なこと言い出すのが悪いんだよ!」
「「「 流石にだな、ヴァル。私は今、若干引いている 」」」
「なんでラヴェリアが引く必要があるんだよ。俺は普通の"男"なんだよ!仕方ねえだろ!」
「「「 ヴァル......、私のことを妄想でどうにかするのは構わないのですが、ここは戦場ですよ 」」」
お 前 の せ い だ ろ う が。
「いつまで私を無視し続けるつもりだ!」
レイジが、別の意味で顔を赤くしてこちらに突進してくる。
「「「「 あ、お前邪魔だから 」」」」
「グァァァ!」
レイジが、口から血を吐いて飛んでいった。
「く......どこまでも私を滑稽にしやがって......」
「別に、バカにした覚えはないんだがなぁ......」
「お前らの行動一つ一つに腹が立つんだよ!どこまでも私を無視しやがって!そんなに2人でいることが楽しいか!」
「「「 はい、楽しいです 」」」
ネイが即答した。
「「「 ヴァルといることが楽しいから、それ以外のことにあまり時間を費やしたくないのですよ?あなたなんて、その気になれば一瞬で蒸発させられますし、今はただのおもちゃです 」」」
よくもまあ、そこまで相手をバカにできる言葉が思いつくもんだ。
「ふざけるな!私がお前らなぞにやられてたまるか!私が勝つ。私が勝って、貴様らをおもちゃにしてやる!」
レイジも、負けずまいと口で返してくる。
「「「 あらあら。あなたにそんなことができますかね?素直に、ここで降参した方が身のためだと思いますよ? 」」」
「うるせえ!そこの男から潰してやる!」
レイジが教徒達を生み出す。
しかし、生み出された教徒達は、全員動きがかなり鈍そうに見える。
「なぜだ?なぜ、私の下僕たちが......」
当のレイジも困惑している。
「よく分からねえが、チャンスだな。アマルナ!」
街を焼き付くさんとばかりの炎をレイジに向けて放つ。
できるだけ加減したつもりだが、屋根など、街の所々が焦げていた。
「クソっ......どうなってやがる......。なぜ、下僕共が......」
「なあ、ネイ。本当にどうなってんだ?」
「「「 ちょっと待っててくださいね。今からこの街の状態を検索しますので......」」」
ネイが両耳に手を当て、目も瞑ってぶつぶつと何かを呟いている。
「「「 分かりました。これは、聖龍の力です 」」」
「聖龍ってことはクロム達が......」
「はい、私達では手に負えないところを、彼らが潰してくれています」
そうか。やっとクロム達も助けに来れたか......。遅すぎるぜ。
「聖龍だと......。なぜ、そんなものが今の世に......」
あれ?なんか、似たようなセリフを数時間前に言った気がするのだが......。というか、よくもあんなに焦げてるのに立っていられるな。凄まじい生命力だ。
「「「 正直な話、私も聖龍とは関わりたくありませんね 」」」
「ああそうか。確か、お前を殺せれる唯一の存在だっけ?」
「「「 いえ、殺せはしませんけど、フェノンだった時の殺されかけた記憶が災いしてて...... 」」」
「クロムの野郎には後から言っておくわ」
「死ね。全員死ね。何もかも死ね。それが嫌なら、私の前にひれ伏せ......」
「お前、自分の立場分かってる?」
「うるさい人間。私が、負けるはずなどない。デスピアル・ファイア」
闇のような炎が、俺の体を包み込む。
「はあ、はあ、はあ......、やっと殺せーー」
「「「 残念ですが、彼には1本たりとも指は触れさせませんよ? 」」」
レイジの攻撃は、全てネイが無効にできる。ここまで来たら、もうレイジの怒りは火山が二度連続で噴火するくらいにまできてるだろう。
俺は、先を行くネイに確認するように問いかける。
「はい。この屍を作り出す力。色々と考えてみたのですが、1000年前にいた魔女の力が1番有り得る力です」
「魔女か......なんでそんなものが今の世にいるんだよ」
「魔女というのは、色々と特殊で、"常識"が一切通用しないんです」
「その魔女様が、この戦い......いや、前の邪龍復活の時から暗躍していたとはな......。名前は分かるのか?」
「レイジ・スカイローズ。それが彼女の名です」
スカイローズ......、スカイローズって、確か......
「フウロ......の家名だよな?」
「はい。フウロの祖先に当たる人ですね」
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「いえ、フウロが強いのは彼女の努力の量です。魔女の力は基本受け継がれないので。ちなみに、こうやって話す私も魔女と呼ばれていた存在ですよ?」
「だろうな。今の話聞いてたらなんとなくそうなんじゃないかと思う。ついでに、ゼラもそうだったんだうぇ」
「一体いつまで酔ってるんですか......」
仕方ねえだろ。ちょっとの揺れでもうダメな体なんだから......。せめて、揺れを無くしてくれ......
「......ヴァル!避けて!」
ネイが俺の体を横に突き飛ばす。いや、避けるも何も、突き飛ばされたんですが......
「おい、どうしたんだよ!」
「......」
「おい、なんか言え......よ?」
ネイの目線の先、そこに赤色の髪をした女が立っていた。そして、やっと気づいたことだが、俺とネイが伝ってきた家は無残な形で破壊されていた。
「憤怒の魔女。レイジ・スカイローズ......」
あの女がそうなのか......。フウロと全然似てねえ......。
「あらあら、そちらにいるのは、元邪龍の怠惰の魔女様じゃありませんか」
声は、フウロに似ている。似ている分、背筋が凍るような感覚に襲われる。多分、普段からフウロを怖い相手だと認識しているからだろうか?
「怠惰の魔女。懐かしい名前ですね」
「そうよ。いつもいつもめんどくさがり屋で、ずーっと本を読んでいたあなたにはピッタリな名前じゃない。めんどくさがりな性格は、1000年で治せれた?」
「レイジの方こそ、少しは怒りを抑えられるようになりましたか?」
「これでも、少しは怒りを爆発させないようにできたのよ?」
「そうですか。愛すべき夫の浮気性はどうにかなりました?」
「フンっ、あんな男、切り刻んでやったよ」
「そうですか。まあ、ダメな男でしたからね。と言っても、1割くらいはあなたの性格が原因でしょうが」
「お前はいい男ができて嬉しそうだな。どうせ、その喋り方もその男から頼まれたのだろ?可愛こぶりやがって......。昔の男はどうした?戦争で死んでいったあの男は」
「彼の話をしたところで、私は怒り狂いませんよ?私には、ヴァルという素敵なパートナーがいるのですから」
「そんなダメ男そうなやつがいいのか。そうかそうか。まあ、あんたは昔からそんな奴だったからね」
「彼の悪口は許しませんよ」
うわぁ......。女って怖い。改めてそう思った。前にそう思った時のことは忘れたが。
「死ね。全員死んでしまえ。私は憤怒の魔女。この世の全てに怒っている」
「はぁ、めんどうじゃな。妾は怠惰の魔女。それだけ言っておこうか」
なんかやばそうな気配がする。ここに、生身の人間がいて大丈夫なのか。大丈夫なのか?
「ヴァル。彼女の相手は私に任せてください。ヴァルは周りの教徒を近づけないようにしてれば大丈夫です」
「お、おお。分かった」
「アマルナの加護を解放しておきました。くれぐれも、焼きすぎには注意してくださいね」
アマルナ......。あれか、邪龍の祭壇で突発的に使えたやつ。あれも、こいつの力だって言うのか......
「何イチャイチャしてんだ。あんたの相手は私だろうが!」
「相変わらずのめんどうな性格じゃなお主。少しばかりその性格を治せば夫が振り向いてくれたかもしれんのに。お主、ちとめんどくさすぎる性格をしておるぞ」
「お前には関係のない話だろうが!」
レイジの激しい攻撃が始まる。
ネイは、その攻撃全てを軽く無効化している。
「お主、やっぱ全然強うなってないな。未だに妾の方が強い」
「邪龍様は良いよなァ?そうやって、人知を超えた業を使えて、何もかもを破壊できる力があって。良いよなァ?」
「そうか。お主、妾の力が欲しかったんじゃな。じゃから、邪龍復活なんぞを行って、その身に邪龍の力を入れようとしたわけか」
「誰がお前の力なんぞを求めるか!私が欲しいのは全てを破壊する力だ!喰らえ!」
「まずい!」
レイジも、ただ闇雲に攻撃していたわけではない。しっかりと隙を見定め、不意打ちをしている。
「輝月の世界」
時間が止まる。敵の動きも、味方の動きも。この中で動けるのは俺とネイだけ。
「私に、その力は効かない!」
レイジは、時間静止の力を無視してネイに攻撃する。
「そうじゃったな。お主にこれは効かんかったか。1000年も前のことじゃから忘れておった」
「随分と余裕そうだなァ?」
「余裕じゃ。お主が妾に勝てたことなぞ1度たりとしてあるまい」
「舐めやがって。お前が1000年も眠ってる間に、こっちは色々と力をつけたんだよ!」
「それがこの力とはな。ガッカリじゃ。後、1000年ではなく800年じゃお主」
「100年も200年も、お前にとっちゃ瞬きのような時間だろうが!」
レイジの怒りの攻撃が、やっとネイに当たる。
「瞬き?」
「ああそうさ。6兆年も生きてきたお前にとっちゃ瞬きのような時間だろうが!」
「確かに、お主から見たらそんな時間かもしれんな」
ネイが、仕舞っていたもう1本の剣を抜き出す。
「でも、妾にとっては、生きてきた時間全てが大事なのじゃ!」
ネイの剣がレイジの胸を突き刺し、レイジの胸元から鮮血が滲み出る。
「くたばれ」
剣を抜いた後、ネイはレイジの体を一蹴りする。
「それしきで、私が死ぬと思うなよ」
レイジの胸の傷がみるみる回復していっている。
「ああ、それしきでくたばるような奴じゃとは思っていない。お主は強いからな」
「そうだろう。私は強い。あなたより強い。だから、私は全てを破壊する」
「「「 残念ですが、あなたは私達には勝てません 」」」
ネイの髪色が6色に染まる。
「なんだ......、その姿は......」
「「「 ヴァル、俺達は1人じゃねえんだ。俺とアマツとラナとシズとラヴェリアとお嬢。5体と1人いるから大丈夫だ。1人のあいつには負けねえよ 」」」
「ジーク......」
「「「 ソウイウコトダ。我等ハ常ニ1人デハナイ 」」」
「そうだよな。俺達人間は1人じゃ何も出来ねえ生き物だからな」
「「「 酷く悲しい生き物だ。普通なら、1人で生きるくらいの術は身につけてほしいものだが、まあ、そんな人間が僕達は好きだ 」」」
「ラナは、少しくらいネイに負担をかけるのをやめろ。これからは俺に対しても迷惑なことになる」
「「「 すまぬな。本来なら、我等が力を合わせて主を守らねばならぬというのに...... 」」」
「さっきからゴチャゴチャとやかましいな」
そろそろ、レイジの傷も治ってきた頃か......
「「「 いいか。私達は1人じゃない。1人のあいつに負けはしない 」」」
「俺達は強い。負けはしねえ。絶対に勝つ。勝って、ギルドで祝杯を上げるんだ」
「「「 今からフラグを建てるのはやめてください。死にますよ? 」」」
「負けフラグしゃねえよ。勝ちフラグだ」
「「「 そうなると良いのですけど 」」」
「全員、死んでしまえー!」
ゆっくり話をする時間が中々見つからない。どうして、世の中の人々はみな、ゆっくりしていられないのだろうか。
「そういやお前の体って、今何歳だ」
ふと気になったことを尋ねる。祝杯を上げるにしても、18歳を超えていないと酒が飲めないのがこの国のルールだったからな。
「「「多分、14くらいだと思います」」」
「はぁぁぁぁ......、その体で14って本気か?」
「死ね!」
「「「 よっと......。はい、本気です。龍人は成長が早いので、14でもこれくらいになってしまうのでしょう 」」」
ネイがレイジを軽く薙ぎ払ってからそう言う。
「マジか。龍人って、14でそんなワガママボディになれるんだな」
俺も、レイジの後ろに回り込んでから、地面に向けて叩き落とす。
「「「 ヴァル、その言い方は、いくらあなたの言葉でも傷つきますよ 」」」
ネイが落下地点に先回りし、空に向けて打ち上げる。
「悪ぃ。言葉の選び方間違えた。以後気をつける」
おお、これは凄い。ネイと俺でラリーができている。
「「「 まあ、ヴァルが望むのなら、この体を好きにしてもらっても構いませんけど 」」」
ネイが顔を赤くしてそう言う。
「あ......」
やべ、変なこと考えてしまったせいで手が滑った。
レイジが、その隙を逃さまいと瞬時に逃げ出す。
「はぁ、はぁ、はぁ......。随分と私を無視して楽しんでくれたね......」
「「「 何やってんだヴァル。あいつを逃がしちまったじゃねえか! 」」」
「それならネイに言え!あいつが急に変なこと言い出すのが悪いんだよ!」
「「「 流石にだな、ヴァル。私は今、若干引いている 」」」
「なんでラヴェリアが引く必要があるんだよ。俺は普通の"男"なんだよ!仕方ねえだろ!」
「「「 ヴァル......、私のことを妄想でどうにかするのは構わないのですが、ここは戦場ですよ 」」」
お 前 の せ い だ ろ う が。
「いつまで私を無視し続けるつもりだ!」
レイジが、別の意味で顔を赤くしてこちらに突進してくる。
「「「「 あ、お前邪魔だから 」」」」
「グァァァ!」
レイジが、口から血を吐いて飛んでいった。
「く......どこまでも私を滑稽にしやがって......」
「別に、バカにした覚えはないんだがなぁ......」
「お前らの行動一つ一つに腹が立つんだよ!どこまでも私を無視しやがって!そんなに2人でいることが楽しいか!」
「「「 はい、楽しいです 」」」
ネイが即答した。
「「「 ヴァルといることが楽しいから、それ以外のことにあまり時間を費やしたくないのですよ?あなたなんて、その気になれば一瞬で蒸発させられますし、今はただのおもちゃです 」」」
よくもまあ、そこまで相手をバカにできる言葉が思いつくもんだ。
「ふざけるな!私がお前らなぞにやられてたまるか!私が勝つ。私が勝って、貴様らをおもちゃにしてやる!」
レイジも、負けずまいと口で返してくる。
「「「 あらあら。あなたにそんなことができますかね?素直に、ここで降参した方が身のためだと思いますよ? 」」」
「うるせえ!そこの男から潰してやる!」
レイジが教徒達を生み出す。
しかし、生み出された教徒達は、全員動きがかなり鈍そうに見える。
「なぜだ?なぜ、私の下僕たちが......」
当のレイジも困惑している。
「よく分からねえが、チャンスだな。アマルナ!」
街を焼き付くさんとばかりの炎をレイジに向けて放つ。
できるだけ加減したつもりだが、屋根など、街の所々が焦げていた。
「クソっ......どうなってやがる......。なぜ、下僕共が......」
「なあ、ネイ。本当にどうなってんだ?」
「「「 ちょっと待っててくださいね。今からこの街の状態を検索しますので......」」」
ネイが両耳に手を当て、目も瞑ってぶつぶつと何かを呟いている。
「「「 分かりました。これは、聖龍の力です 」」」
「聖龍ってことはクロム達が......」
「はい、私達では手に負えないところを、彼らが潰してくれています」
そうか。やっとクロム達も助けに来れたか......。遅すぎるぜ。
「聖龍だと......。なぜ、そんなものが今の世に......」
あれ?なんか、似たようなセリフを数時間前に言った気がするのだが......。というか、よくもあんなに焦げてるのに立っていられるな。凄まじい生命力だ。
「「「 正直な話、私も聖龍とは関わりたくありませんね 」」」
「ああそうか。確か、お前を殺せれる唯一の存在だっけ?」
「「「 いえ、殺せはしませんけど、フェノンだった時の殺されかけた記憶が災いしてて...... 」」」
「クロムの野郎には後から言っておくわ」
「死ね。全員死ね。何もかも死ね。それが嫌なら、私の前にひれ伏せ......」
「お前、自分の立場分かってる?」
「うるさい人間。私が、負けるはずなどない。デスピアル・ファイア」
闇のような炎が、俺の体を包み込む。
「はあ、はあ、はあ......、やっと殺せーー」
「「「 残念ですが、彼には1本たりとも指は触れさせませんよ? 」」」
レイジの攻撃は、全てネイが無効にできる。ここまで来たら、もうレイジの怒りは火山が二度連続で噴火するくらいにまできてるだろう。
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普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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