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第4章 【時の歯車】
第4章15 【思い出の場所】
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長かった戦いが終わり、それを象徴するかのように夜が明ける。
邪龍教の真の親玉はネイの手によって殺され、宗教としての形は消滅した。
宗教としての形は消えたが、まだ生き残りの幹部が残っている。それをクロム達が殲滅に向かっている。
まあ、数はそんなに多くないし時間もそんなにかからないだろう。
ただ、それ以上に深刻な問題がある。
それは、街の一部と言えど、かなり壊滅状態に陥っていることである。
前回と違って金はない。復興なんて一応イーリアスの支援があるが、難しい部分もある。
「あなた達人間って、つくづく不便な存在ですね」
今朝、街の復興作業を見ていたネイが漏らした言葉である。その後、ヴァルに「そういうところから直せ。毒舌すぎんぞ」と言われて不貞腐れていたが......
今回の唯一の収穫はネイといったところだろうか?
「よう、セリカ。1人で何考えてんだ?」
噂をすればなんとやら。ヴァルがやって来た。
「いや、別になんでも......。ヴァルの方は何か収穫でもあったの?」
「ああ、大分遠くの街にまで行くことになったがな」
「そんなに遠くに?何しに行ってたのよ?」
「こいつが買いたいものがあるってさ」
ヴァルが隣にいるネイの方を指差して言う。
「花?」
ネイがピンク色の花束を持っている。
「花なんて買って何するの?」
「......墓参り......です」
「墓参り?誰の?」
「ゼラです。800年間ずっと墓参りに行けれませんでしたから......」
ゼラ?確か、このギルドの初代マスターだったっけ?
「墓ってどこにあるの?」
「それ聞いてどうするんですか?」
「いや、折角なら私も行きたいなって」
「そうですか。船で行く小島にあるんですけど......」
「船?2人が?大丈夫なの?」
「「 ...... 」」
それを聞いた瞬間、2人の周りがどんよりしたような感じがした。
「ごめん。聞いちゃいけないことだったね」
「いえ、大丈夫でおぇ」
大丈夫ってなんだっけ?と、最近思うことがある。
「なんだ?墓参りに行くのか?」
外野が入ってきた......
「ヴェルド。墓参りは遊びじゃないんだ。そんな気楽に聞くな」
なんか選ぶ言葉が違う気がする言葉を使ってフウロがそう言う。
「行くなら好きについて来て構いませんけど、そろそろ時間です」
「そうなのか?じゃあ、俺もついて行くわ」
結局5人で行くことになった。墓参りって言ってもヴェルド達にはにも関係が......いや、私もあまり関係ないけど......
「「 おえ...... 」」
だから、あんた達は想像だけで吐きそうになるな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
再霊島。
ゼラが生まれた場所である。
元々、この島には名前が無い。私が勝手にそう呼んでいるだけ。
「800年も経つと、随分とこの島は植物まみれになってしまうのじゃな」
ゼラが出てからこの島には誰も来ていないはず。
人が住むには、少し環境が良くないからだ。
それでも、800年以上前までは人が住んでいたらしい。
「なあ、このツル植物本当に燃やしちゃダメなのか?」
「ダメです。そんなことしたらこの島が丸々燃えてしまうでしょ」
「別に、そこまでならないよう力抑えるからさ」
「ダメなものはダメです。頑張って掻き分けてください」
「はぁ......分かったよ。つっても、あとどんくらいだ?」
「多分、5分くらい?ですかね......」
「お前、道に迷うなよ。俺達は道を完全に知らねえんだからな」
「うっ......え、ええ大丈夫ですよ。多分......」
「「「 ......迷ったんだな 」」」
ヤバい。気づかれた。
「すみません。800年も経ってるから忘れてて......」
「多分、800年前に来ても迷ってただろお前」
「そ、そんなわけ......あるかもしれません......」
「お前の方向音痴には呆れが出るな」
「ヴェルドは黙っててください」
「お前、俺に対してだけ厳しくない?」
「なんでそうなったのか自分の胸に手を当ててよく考えといてください」
「......ネイりんって割と根に持つタイプだね」
「う、うるさいです!別に、私だって、そんな根に持ってるわけじゃありませんし......。ただ、その......ヴェルドはあまり近寄りたくないんです」
「やっぱ根に持ってるじゃん......」
「......」
別に、根に持ってるわけじゃ......。でも、ヴェルドをあの日から嫌ってるのって、やっぱ根に持ってるように見えるのかな?
「ん?あれってその墓なんじゃねえか?」
目の前に開けた視界が広がる。
「あ、あれです」
確かに、あの墓800年前に見ていたものだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
興味本位で来てしまったけれど、私は墓参りの作法的なものは何一つ知らない。
故に、自分が今、どうしておくべきなのかが分からずこの場に佇んでいる。
「ゼラ、すまんな。800年もお主の墓をほっといてしまったわい」
ネイが墓周りを水(魔法で生み出したもの)洗いしている。
「まあ、妾にも色々と都合があったから許しておくれ」
(ねえ、ネイりんって喋り方結構変えるけどなんか意味あるの?)
私は隣のヴァルに小声で問いかける。
(俺も、ですます口調の方が似合ってるって言ったんだが、こういう時は妾口調に変えるらしい)
ごめん。ちょっとだけ何言ってるのか分かんない。
「話したいことがたくさんあるんじゃが、そんなに話してる余裕もなさそうじゃ」
ネイが苔に覆われた瓶に買ってきた花を供える。
「ゼラ、お主が望んだ『楽しそうなギルド』は、今も形を留めておるよ」
「......」
「アホでバカでどうしようもない奴らが、楽しそうに賑わっとるギルドがな......。人間というのは、少しは良いものなのかもしれんな。そうやって、バカやりながらも楽しそうで、お主が、いや、妾が望んどったのは、そういうものじゃったのかな」
泣いてる。ネイの横顔に、涙の線が見える。
「......ようやく気づけたんじゃ。妾は1人じゃなかったんじゃな。ずっと1人じゃと思っとったのに、妾は、怠惰で自意識過剰で、傲慢で、どうしようもない奴らの1人じゃったのに、妾には『友』がいた。お主もその1人じゃが、今の妾にも、『友』ができたよ。バカでアホでどうしようもない奴らじゃがな」
ネイが、これで終わりとばかりに立ち上がる。
「さて、そろそろ帰っても良いのですが」
「まだなんか用があるのか?正直暇なんだけど」
じゃあ、ついて来なければ良かったじゃん。
「そんな暇してるヴェルドに朗報です」
「おお、なんかあるのか」
「これから私と一戦交えましょう」
「「「 は? 」」」
突然何を言い出すの?え?戦う?なんで?
「昔はですね。最上級魔導師になるための試練の一つに、魔女と戦うことがあったのですよ?」
「へ、へぇー......そうなのか......。一応聞いとくんだけど、どんくらいやったら合格なの?」
「私にかすり傷一つでも付けれたら合格です」
かすり傷か......それくらいなら......
「ちなみに、合格率はどれくらいだ?」
フウロがいかにもやる気満々といった感じで問いかける。
「私が覚えている限り、他の試練は突破できても私で詰まってる人が全てでしたから0ですね」
「無理じゃん......」
「まあ、あの時は心理の魔法も使ってましたし、今はかなり弱体化されてるので大丈夫だと思いますよ?」
「それは、別にどうでもいいんだけど、なんで今ここでやるの?」
「昔からここを試練の場にしてたからですよ。あの時は転移魔法も完璧に使えたので船も要らなかったんですよ。ちなみに、合格しても今の時代の公式じゃないから無駄とか思わないでくださいね?私にかすり傷付けれたらかなり強い方ですから自信もつくと思いますよ」
「じゃ、全員で挑んでいいか?」
「めんどくさいからむしろそうしてください」
「分かった。いくらお前でも、手加減はしねえからな」
「手加減したら、多分秒でケリがつくのでやめた方がいいです」
「ふぅ......炎龍の鉄砕!」
ヴァルが自ら先制で攻撃を仕掛ける。
「よっと」
「おあァ!」
なんとなく読めてたことだけど、勢いそのままに後ろ側に飛ばされた。
「お前、契約者の俺に対して容赦がないな......」
「すみません。試練なんで、私心を鬼にしますから」
「余所見してたら簡単に傷がーー」
「1人ずつやって来たら全員でやる意味がないと思うのですが......」
フウロもまた、簡単に攻撃を避けられて飛ばされた。わざとかどうかは分からないが、ヴァルに当たった。
「一応言っておきますが、私は闇魔法も黒魔法も使いません。あなた達が諦めるまで付き合ってあげます」
めちゃめちゃ舐められてる。
もう、そこまで言われたら、
「遠慮しないからね!カグヤ!」
「月光・ムーンライト!」
よし、今の不意打ちなら......
「魔法の無効化は許してくださいね」
ああ、そういえばそうだった......
「合格率0って、普通に納得できる......」
ネイは大分弱体化されていると言った。でも、弱体化されてこれって......勝てる気がしない。
「アイスニードル!」
「暴風剣!」
「せや、とぅっ!」
「痛ってぇ......なんでフウロのは避けるだけなのに、俺には反撃してきたんだよ!」
「なんか、ムカつく顔してたので」
「酷ぇ......」
まあ、ヴェルドが悪い。うん。
「みなさん大したことありませんね。800年前はもっと骨のある人がいましたよ」
「ああもう、当てるまで続けてやらァ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あぁ......もうダメだ......。当てるどころかお前を1歩ですら動かせれねえ......」
3時間ほど攻撃し続けたが、何一つとして成果が上がらなかった。
「お前、改めて強ぇな」
「ヴァルの方が強いですよ。私をあの場から救い出せるほどの力があったのですから」
「いや、そっちじゃなくて純粋な力比べの方」
「言っておきますけど、私に魔法と剣禁止って言ったら簡単に倒せれますよ」
「そんなんで勝っても嬉しくねえ......」
手加減なんてレベルじゃない。それはただの虐めに等しい。
「......強くなりてぇ」
今回、どうしてもネイの圧倒的な力にしか頼ることが出来なかった。
せめて、ネイの足でまといにならないくらい、強くなりたい。
「ヴァルは強くある必要はありません。私を傍で守ってくれるだけでいいんです。みんなで幸せな未来を描く。そのために、私が必要だから私と契約したのでしょう?」
「お前がいないと『みんな』が完成しねえからそう言ったんだ」
「その、『幸せな未来を』に力は必要なんですか?」
「......分からねえ。でも、今回みたいな戦いが続くんだったら、俺は強くなりたい。お前と、息を合わせて最強のコンビになれるくらい」
「それは嬉しいのですが、やっぱりヴァルに力は必要ないと思います」
「なんでそう思うんだ?」
俺は、やっと体を起こしてそう問いかける。
「だって、ヴァルには『優しさ』という強さがあるじゃないですか。私は、一生その優しさに包まれて生きて生きたいのです」
ネイが隣に座り、俺の腕を抱き締める。
「みんながいる前であんまりそういうのはやめろ」
「いいじゃないですか。どうせ、この先もずっとこれなんだし」
「俺は何年生きてやりゃいいんだ。なんだ?いっその事不老不死にでもさせてくれる?」
「無理です。流石に私の血を浴びても324年が限界ですからね」
324年か......中途半端だな。
「感謝......してるんですよ」
突然、ネイが声を小さくしてそう言ってきた。
「感謝?」
「ええ。私が拒絶するにも関わらず、毎日毎日しつこいほどにやって来て......」
「それは悪かった。マジで悪かった」
「いえ、別にいいんです。私は、ヴァルが私の話を聞いてくれたことが嬉しかったんです」
「別に、そんなの誰だってできるだろ」
「聞く側はそうでしょうね。でも、私はこんな性格してますから、人と話すことさえ難しいのですよ」
「引き籠もりしてるからだろうな」
「そ、それは関係ないですよ!」
「あのなネイ。人と話すことが難しくなるのは、人と話さねえからだ。引き籠もってたら誰とも話さなくなるだろ。ましてや6兆年もの間だぞ?つか、そんなんでよく初代と仲良くなれたな」
「べ、別に、自分が強い。自分が上だと思って相手を見下して話すのならできるんです......」
うぅわ。性格悪っ。こんなに可愛い子なのに......
「でも、そんなんじゃいけないって分かってるんです……」
「……ゆっくり直していこう。お前の性格は俺が死ぬまでにどうにかしてやるさ」
「60年も直らない性格って、もう直しようがないと思いますけど」
「それ言うなら6兆年もその性格で通してきたんだから今更変えるなんて無理になるだろ」
「だから言ってるんですよ」
「と・に・か・く。お前は、そのですます口調を意識して、毒舌は可能な限りやめろ。それだけで大分変わると思うから」
「……ヴァルが言うなら頑張ってみます」
見た目は可愛いのに、中身に問題がありすぎかな。同年代なのに、まるで1から悪ガキを育ててる気分だ。元悪ガキの俺が言っていいのか怪しいけど……
「さて、そろそろ帰りますか」
「そうするか……」
「「 おぇ…… 」」
「「「 だからお前らは仲良しか 」」」
静かに見守っていたセリカ達が口を揃えてそう言った。
邪龍教の真の親玉はネイの手によって殺され、宗教としての形は消滅した。
宗教としての形は消えたが、まだ生き残りの幹部が残っている。それをクロム達が殲滅に向かっている。
まあ、数はそんなに多くないし時間もそんなにかからないだろう。
ただ、それ以上に深刻な問題がある。
それは、街の一部と言えど、かなり壊滅状態に陥っていることである。
前回と違って金はない。復興なんて一応イーリアスの支援があるが、難しい部分もある。
「あなた達人間って、つくづく不便な存在ですね」
今朝、街の復興作業を見ていたネイが漏らした言葉である。その後、ヴァルに「そういうところから直せ。毒舌すぎんぞ」と言われて不貞腐れていたが......
今回の唯一の収穫はネイといったところだろうか?
「よう、セリカ。1人で何考えてんだ?」
噂をすればなんとやら。ヴァルがやって来た。
「いや、別になんでも......。ヴァルの方は何か収穫でもあったの?」
「ああ、大分遠くの街にまで行くことになったがな」
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「こいつが買いたいものがあるってさ」
ヴァルが隣にいるネイの方を指差して言う。
「花?」
ネイがピンク色の花束を持っている。
「花なんて買って何するの?」
「......墓参り......です」
「墓参り?誰の?」
「ゼラです。800年間ずっと墓参りに行けれませんでしたから......」
ゼラ?確か、このギルドの初代マスターだったっけ?
「墓ってどこにあるの?」
「それ聞いてどうするんですか?」
「いや、折角なら私も行きたいなって」
「そうですか。船で行く小島にあるんですけど......」
「船?2人が?大丈夫なの?」
「「 ...... 」」
それを聞いた瞬間、2人の周りがどんよりしたような感じがした。
「ごめん。聞いちゃいけないことだったね」
「いえ、大丈夫でおぇ」
大丈夫ってなんだっけ?と、最近思うことがある。
「なんだ?墓参りに行くのか?」
外野が入ってきた......
「ヴェルド。墓参りは遊びじゃないんだ。そんな気楽に聞くな」
なんか選ぶ言葉が違う気がする言葉を使ってフウロがそう言う。
「行くなら好きについて来て構いませんけど、そろそろ時間です」
「そうなのか?じゃあ、俺もついて行くわ」
結局5人で行くことになった。墓参りって言ってもヴェルド達にはにも関係が......いや、私もあまり関係ないけど......
「「 おえ...... 」」
だから、あんた達は想像だけで吐きそうになるな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
再霊島。
ゼラが生まれた場所である。
元々、この島には名前が無い。私が勝手にそう呼んでいるだけ。
「800年も経つと、随分とこの島は植物まみれになってしまうのじゃな」
ゼラが出てからこの島には誰も来ていないはず。
人が住むには、少し環境が良くないからだ。
それでも、800年以上前までは人が住んでいたらしい。
「なあ、このツル植物本当に燃やしちゃダメなのか?」
「ダメです。そんなことしたらこの島が丸々燃えてしまうでしょ」
「別に、そこまでならないよう力抑えるからさ」
「ダメなものはダメです。頑張って掻き分けてください」
「はぁ......分かったよ。つっても、あとどんくらいだ?」
「多分、5分くらい?ですかね......」
「お前、道に迷うなよ。俺達は道を完全に知らねえんだからな」
「うっ......え、ええ大丈夫ですよ。多分......」
「「「 ......迷ったんだな 」」」
ヤバい。気づかれた。
「すみません。800年も経ってるから忘れてて......」
「多分、800年前に来ても迷ってただろお前」
「そ、そんなわけ......あるかもしれません......」
「お前の方向音痴には呆れが出るな」
「ヴェルドは黙っててください」
「お前、俺に対してだけ厳しくない?」
「なんでそうなったのか自分の胸に手を当ててよく考えといてください」
「......ネイりんって割と根に持つタイプだね」
「う、うるさいです!別に、私だって、そんな根に持ってるわけじゃありませんし......。ただ、その......ヴェルドはあまり近寄りたくないんです」
「やっぱ根に持ってるじゃん......」
「......」
別に、根に持ってるわけじゃ......。でも、ヴェルドをあの日から嫌ってるのって、やっぱ根に持ってるように見えるのかな?
「ん?あれってその墓なんじゃねえか?」
目の前に開けた視界が広がる。
「あ、あれです」
確かに、あの墓800年前に見ていたものだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
興味本位で来てしまったけれど、私は墓参りの作法的なものは何一つ知らない。
故に、自分が今、どうしておくべきなのかが分からずこの場に佇んでいる。
「ゼラ、すまんな。800年もお主の墓をほっといてしまったわい」
ネイが墓周りを水(魔法で生み出したもの)洗いしている。
「まあ、妾にも色々と都合があったから許しておくれ」
(ねえ、ネイりんって喋り方結構変えるけどなんか意味あるの?)
私は隣のヴァルに小声で問いかける。
(俺も、ですます口調の方が似合ってるって言ったんだが、こういう時は妾口調に変えるらしい)
ごめん。ちょっとだけ何言ってるのか分かんない。
「話したいことがたくさんあるんじゃが、そんなに話してる余裕もなさそうじゃ」
ネイが苔に覆われた瓶に買ってきた花を供える。
「ゼラ、お主が望んだ『楽しそうなギルド』は、今も形を留めておるよ」
「......」
「アホでバカでどうしようもない奴らが、楽しそうに賑わっとるギルドがな......。人間というのは、少しは良いものなのかもしれんな。そうやって、バカやりながらも楽しそうで、お主が、いや、妾が望んどったのは、そういうものじゃったのかな」
泣いてる。ネイの横顔に、涙の線が見える。
「......ようやく気づけたんじゃ。妾は1人じゃなかったんじゃな。ずっと1人じゃと思っとったのに、妾は、怠惰で自意識過剰で、傲慢で、どうしようもない奴らの1人じゃったのに、妾には『友』がいた。お主もその1人じゃが、今の妾にも、『友』ができたよ。バカでアホでどうしようもない奴らじゃがな」
ネイが、これで終わりとばかりに立ち上がる。
「さて、そろそろ帰っても良いのですが」
「まだなんか用があるのか?正直暇なんだけど」
じゃあ、ついて来なければ良かったじゃん。
「そんな暇してるヴェルドに朗報です」
「おお、なんかあるのか」
「これから私と一戦交えましょう」
「「「 は? 」」」
突然何を言い出すの?え?戦う?なんで?
「昔はですね。最上級魔導師になるための試練の一つに、魔女と戦うことがあったのですよ?」
「へ、へぇー......そうなのか......。一応聞いとくんだけど、どんくらいやったら合格なの?」
「私にかすり傷一つでも付けれたら合格です」
かすり傷か......それくらいなら......
「ちなみに、合格率はどれくらいだ?」
フウロがいかにもやる気満々といった感じで問いかける。
「私が覚えている限り、他の試練は突破できても私で詰まってる人が全てでしたから0ですね」
「無理じゃん......」
「まあ、あの時は心理の魔法も使ってましたし、今はかなり弱体化されてるので大丈夫だと思いますよ?」
「それは、別にどうでもいいんだけど、なんで今ここでやるの?」
「昔からここを試練の場にしてたからですよ。あの時は転移魔法も完璧に使えたので船も要らなかったんですよ。ちなみに、合格しても今の時代の公式じゃないから無駄とか思わないでくださいね?私にかすり傷付けれたらかなり強い方ですから自信もつくと思いますよ」
「じゃ、全員で挑んでいいか?」
「めんどくさいからむしろそうしてください」
「分かった。いくらお前でも、手加減はしねえからな」
「手加減したら、多分秒でケリがつくのでやめた方がいいです」
「ふぅ......炎龍の鉄砕!」
ヴァルが自ら先制で攻撃を仕掛ける。
「よっと」
「おあァ!」
なんとなく読めてたことだけど、勢いそのままに後ろ側に飛ばされた。
「お前、契約者の俺に対して容赦がないな......」
「すみません。試練なんで、私心を鬼にしますから」
「余所見してたら簡単に傷がーー」
「1人ずつやって来たら全員でやる意味がないと思うのですが......」
フウロもまた、簡単に攻撃を避けられて飛ばされた。わざとかどうかは分からないが、ヴァルに当たった。
「一応言っておきますが、私は闇魔法も黒魔法も使いません。あなた達が諦めるまで付き合ってあげます」
めちゃめちゃ舐められてる。
もう、そこまで言われたら、
「遠慮しないからね!カグヤ!」
「月光・ムーンライト!」
よし、今の不意打ちなら......
「魔法の無効化は許してくださいね」
ああ、そういえばそうだった......
「合格率0って、普通に納得できる......」
ネイは大分弱体化されていると言った。でも、弱体化されてこれって......勝てる気がしない。
「アイスニードル!」
「暴風剣!」
「せや、とぅっ!」
「痛ってぇ......なんでフウロのは避けるだけなのに、俺には反撃してきたんだよ!」
「なんか、ムカつく顔してたので」
「酷ぇ......」
まあ、ヴェルドが悪い。うん。
「みなさん大したことありませんね。800年前はもっと骨のある人がいましたよ」
「ああもう、当てるまで続けてやらァ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あぁ......もうダメだ......。当てるどころかお前を1歩ですら動かせれねえ......」
3時間ほど攻撃し続けたが、何一つとして成果が上がらなかった。
「お前、改めて強ぇな」
「ヴァルの方が強いですよ。私をあの場から救い出せるほどの力があったのですから」
「いや、そっちじゃなくて純粋な力比べの方」
「言っておきますけど、私に魔法と剣禁止って言ったら簡単に倒せれますよ」
「そんなんで勝っても嬉しくねえ......」
手加減なんてレベルじゃない。それはただの虐めに等しい。
「......強くなりてぇ」
今回、どうしてもネイの圧倒的な力にしか頼ることが出来なかった。
せめて、ネイの足でまといにならないくらい、強くなりたい。
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「......分からねえ。でも、今回みたいな戦いが続くんだったら、俺は強くなりたい。お前と、息を合わせて最強のコンビになれるくらい」
「それは嬉しいのですが、やっぱりヴァルに力は必要ないと思います」
「なんでそう思うんだ?」
俺は、やっと体を起こしてそう問いかける。
「だって、ヴァルには『優しさ』という強さがあるじゃないですか。私は、一生その優しさに包まれて生きて生きたいのです」
ネイが隣に座り、俺の腕を抱き締める。
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「いいじゃないですか。どうせ、この先もずっとこれなんだし」
「俺は何年生きてやりゃいいんだ。なんだ?いっその事不老不死にでもさせてくれる?」
「無理です。流石に私の血を浴びても324年が限界ですからね」
324年か......中途半端だな。
「感謝......してるんですよ」
突然、ネイが声を小さくしてそう言ってきた。
「感謝?」
「ええ。私が拒絶するにも関わらず、毎日毎日しつこいほどにやって来て......」
「それは悪かった。マジで悪かった」
「いえ、別にいいんです。私は、ヴァルが私の話を聞いてくれたことが嬉しかったんです」
「別に、そんなの誰だってできるだろ」
「聞く側はそうでしょうね。でも、私はこんな性格してますから、人と話すことさえ難しいのですよ」
「引き籠もりしてるからだろうな」
「そ、それは関係ないですよ!」
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うぅわ。性格悪っ。こんなに可愛い子なのに......
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「だから言ってるんですよ」
「と・に・か・く。お前は、そのですます口調を意識して、毒舌は可能な限りやめろ。それだけで大分変わると思うから」
「……ヴァルが言うなら頑張ってみます」
見た目は可愛いのに、中身に問題がありすぎかな。同年代なのに、まるで1から悪ガキを育ててる気分だ。元悪ガキの俺が言っていいのか怪しいけど……
「さて、そろそろ帰りますか」
「そうするか……」
「「 おぇ…… 」」
「「「 だからお前らは仲良しか 」」」
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驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
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