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第4章 【時の歯車】
第4章16 【平和の時】
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なんやかんやで長かった戦いが終わり、世間は年越しムード。こんな寒い日に仕事ーー一応お使いだがーーに出た俺達は、多分バカの部類だろう。
「……」
ギルドまで何もなく辿り着いたのだが、ネイが扉を開けようとしては躊躇い、また開けようとしてはまた躊躇う。
「お前はいつまでそうしてるんだ」
「い、いえ別に......。ただ、なんか開けづらいなぁって」
「いつまでビビってんだよ。変わるって決めたんじゃねえのか」
本当に、ネイは性格に難あり。変なところで躊躇うし、俺以外とあまり話をしないし......。6兆年も引き籠もりを続けた奴がいきなり変わるなんてやっぱり難しかったのか。
「いいからさっさと開けろ。俺は両手が塞がって開けられねえんだよ!」
両手には袋いっぱいの食材がある。
レジラ、牛肉、ジンシラ、豆腐、その他諸々。鍋でもするつもりか。
「分かりましたよ。開ければいいんでしょ開ければ」
なんでお前がヤケになる必要がある......
そんなこんなでやっと扉を開けてくれた。めんどうな奴だ。
「お帰りなさい。ヴァル、ネイ。ちゃんとメモ書き通りの物は手に入った?」
丁度テーブルを拭いていたミラがやって来る。
「ああ。なんとか手に入った。めちゃめちゃ余計に時間がかかったが......」
「何があったのか......大体分かるね」
買い物途中でネイが龍人であると騒ぎが起こる。色々と説得して納得してもらう。なのに、騎士団が出払ってくる羽目にまでなって......
「こいつといるとスゲーしんどい......」
俺は荷物を全てテーブルの上に置いてそう言う。
「私の手を取ったんですから、それくらいは覚悟しててくださいよ」
「とりあえず、前の認識阻害のコートはねえのか?お前に対して騒ぎ起こす奴が普通にいてやかましいから、せめてバレないようにしてほしいんだけど......」
「ないです。前の服諸共燃え尽きたので」
燃え尽きたって何があったんだよ......。別に、自殺する時に燃える様子なんて無かったし......
「私にだって何があったのかは知りませんけど、気がついたらあの書庫に全裸でいたんですから」
「それで、服は着なきゃと思って記憶から適当に作り出したのか......なんでコートは作れねえんだよ」
「あのコートは特殊すぎて私にもよく分からないんです。というか、私の服装ってダサいですか?」
「いや、そんなことねえ。可愛い可愛い」
適当に頭でも撫でてやる。そうすると、ネイは嬉しさを半分隠したような反応をするので、これがまた面白い。
「そういや全然関係ないけど、お前の右目ってどうしたんだ?」
「あ、それは私も気になるかも。もう金色じゃなくなってるし」
ミラが同意の声を上げる。
「ヴァルが助けに来る前に自分でメモリの中に封じておきました。これでも、自分でできることはないかって探したんですよ」
「そうなのか......」
まあ、その選択は間違いじゃないと思う。他人の心が見えるがために抱えてしまった苦痛もある。それを無くせれるのなら、そっちの方がいい。
「あ、ヴァル、それにネイりんもただいまー」
セリカが帰ってきた。
「お前もかなりの大荷物だな」
セリカもまた、両手にいっぱいの荷物。よく見たら中身は全部酒瓶......どんだけ人が来る予定なんだ......
「いやぁ、なんか、クロムが自警団のみんなも連れてくるって言うしさ、ラストはなんか見た目的にたくさん飲みそうだし......そんなこんなで余っても良いくらいに買ってきちゃった」
「たくっふざけんなよ。何が余ってもいいくらいだァ。これで貯めてた金が全部飛んじまったじゃねえか」
グリードもまた、両手にいっぱいの荷物ーー中身はもちろん酒瓶であるーーを持っている。
「まあ、今日はたくさん飲んでいいから」
「なんで許可出される形になってんだァ。飲むに決まってんだろ。俺の金からも結構出したんだしよォ」
鍋用の食材と酒瓶の数が、圧倒的に酒瓶の方が多いように見えるのだが......
「ざっと33:4くらいの比率ですね」
なんでや、阪○関係ないやろ。
絶対適当に言ってるなこいつ。
「そういや、さっきね。街で龍人の女の子を見かけなかったかって聞かれたんだけど......」
「なんて答えたんだ。ことによっちゃ俺こいつと隠居しなきゃならねえんだが......」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと、このギルドと正反対の方で見たって伝えといたから。多分、信じてくれてる」
多分ってなんだ。マジでギルドに押し寄せられたら終わるんだが(色んな意味で)
「まあ、そんなこと気にしない気にしない。どうせ、来たところでネイりんの力じゃ簡単に追い返せれるでしょ」
「それはそれで大問題になる」
ネイが街中で闇魔法でも使ってみろ。王国中に噂が広まる。今はなぜか広がってなくていい感じの状態なのに......
「まあ、そんなことはほっといて。ミラ、さっさと作っちゃお」
「ええそうね。酒瓶は......とりあえず、全部冷蔵庫にでも入れといてグリード」
「まだ働かせるつもりかよ......」
グリードが渋々といった感じで酒瓶を運んで行く。
セリカとミラも、調理室に向かう。
「ヴァル。一言言いたいんですけど、セリカにあまり料理はやらせるべきじゃないと思います」
「なんでだ?」
「彼女の作る料理、ビックリするほど不味いですから。美味しくないとかじゃなく、"不味い"のです」
そんなになのか......。俺は食ったことねえから知らないけど、ネイは食べたことがあるのか......
「あれは人類の食べ物ではありませんし、ましてや神様が食べれるものでもありませんよ......」
ネイが体を震わせながらそう言う。
「そんなに深刻なほど不味いのか!?」
「ん?誰か私の料理にケチつけてるー?」
「いや、なんでもねえー!」
危ない危ない。危うくセリカにフライパンで殴られるかもしれないところだった。
「レシピ通りに作らせてるのに、なぜか上手く出来ないんですよね、彼女の料理。記憶を取り戻す前の話ですけど、1回私の監視下で本当にレシピ通りに作らせたことがあるんですよ」
「そんなことしてたのか......」
「はい。それで、本当にレシピ通りのものが完成したんです。それを食べてみたんです」
なんか、モヤのかかった記憶の中からそれらしき記憶が引っ張り出される。
「気がついたらエフィが凄く深刻そうな顔して回復魔法かけてました」
「ああ、あの時のか......って俺はてっきり何かの病気にやられたのかと思ってたよ!」
まさか、あの時突然ネイが倒れたと聞いたことがあったが、そんなことだったとは......
「おい、それ俺達が食べて大丈夫なものなのか?」
「まあ、ミラもあの時のことは知っていますし、セリカが調理することはないでしょう」
なんだろう。すごく不安なんだが......
セリカが料理下手なのは初めて知ったが、そこまで深刻な程なのは予想外だ。せめて、女の子なら少しくらい料理は出来ていてほしい。
「お前はなんか作れるのか?監視下でどうちゃらこうちゃら言ってたけど」
「一応できますよ。なぜかは知りませんが」
「そこら辺は6兆年の技とかじゃねえのか」
「昔の私は料理なんてしたことありませんよ。そもそも、食べなくても生きていけれる体でしたし」
「......もしかしてお前、その体になってからの記憶が無い?」
「......」
この反応、何かあるな?記憶を取り戻したと言えど、聞いたのはその体になる前の記憶の話。その体になってから何をしてたかとか話してくれてもおかしくないとは思っていたんだが......
「やっぱ、お前は隠し事が下手だな」
「別に、隠してるつもりはありません。ただ、まだ無い記憶があるとかそんなこと話して、また思い出しても嫌な記憶しか無いような気がするんです......」
「......それもそうか」
今回、ネイを苦しめた最大の原因は『記憶』
龍人として生まれ変わった身だ。何か嫌な記憶がたくさんあってもおかしくない。
「できることなら、もう思い出すことは要らないかな?って。ダメですか?」
「ダメとかそんなん俺に聞くなよ。お前が新しく思い出したことがあっても、俺達に利益がある情報とは限らねえし、それを思い出すことによって、またお前が不幸になるのなら、逆に不利益になる」
「そう......ですよね」
そうだそうだ。思い出したところで、どうせ不幸な人生なんだ。思い出さない方がいい。今の状態に困っているわけじゃないんだし......
そう言おうと思ったが、それを言っていいのかどうかが分からない。言ったところでネイは何も悲しみなどしやしないだろうが、俺には疑問が残る点がある。
ネイの体は14歳程度。多分、そろそろ15になるだろう。それでもってヒカリも14歳。姿形、性格ーーいや、性格は若干似てるけどーーは全くもって違うが、ネイがヒカリである否定の説は無い。龍人として7月頃からの記憶しかないし、ヒカリが死んだと思われる日と時期的にはズレがない。
ただ、記憶を無くすというのはショックか何かなのだろうが、姿形を変えるというのはどう考えてもヒカリじゃ無理なように思える。
一応、彼女はアルテミスの話じゃピンク色の髪だったらしいが、俺達と出会った時は青緑。まあ、ここら辺は髪色を染めたかなんかしたのだろう。でも、体格などは変わっていないとアルテミスは言う。
「ヒカリの胸ってここまででかくなかったよなぁ......」
「い、いきなり何言うんですか!」
やべ、つい口に出して言ってしまった。
「いや、お前がヒカリであるっていうのを完全に否定できないし、むしろお前のその体になってからしばらくの間がヒカリであっても不思議なことはないしさー、ってそんなこと考えてて」
「ラクが......どうしたの?」
話を聞いていたのか、アルテミスがやって来た。
「多分だけど、ネイりんはラクじゃないと思うよ。ラクとネイりんの年齢は確かに近いけど、こんなに胸でかくなかったし」
「あなた達目の付け所そこだけですか!?もっと他に明確な違いとかあるんじゃないのですか!?」
「悪ぃ。パッと見で思いつく違いがそこだからさ。髪色にかんしちゃ染めりゃどうにでもなるし、服装も同じでーー」
「この翼、この尻尾、この角はなんなんですか!それも飾りだって言うんですか!あと、一応言っておきますけど私の髪色は地毛ですからね!?」
ネイが言葉に合わせて体の各所を触りながら強調してくる。
「分かってるって。ほんの冗談だろ」
「本当ですか?」
ネイが、確認するように俺の顔を下から覗き込んでくる。しかも、しれっと腕も掴んでくるし......
「仲良し......だね」
「ああ、めちゃめちゃ仲良いぞ。こいつの頭とか撫でてやると、スゲー嬉しさを必死に隠そうとする顔するんだ。面白えだろ?」
そう言いながらネイの頭を撫でてやる。
「からかわないでください。別に私だって嬉しいとかそんなこと思ってませんよ......(もっと撫でてください」
小声でそう言うあたり、やっぱ嬉しいんじゃねえか。
そう言おうと思ったけど、やめておいた。
「そういやアルテミス。ヒカリに関して新しい情報とかねえのか?」
「あぅ......今のところは無いね。本当に、ラクの死には疑問が残るのよねぇ......。ネイりんがラクとかだったら早い話なんだけど......」
「無理矢理14になるまでの記憶を掘り起こさせるのはやめとけ。ヒカリであっても、そうじゃなくても不幸な記憶しかねえだろうからさ」
「うん。そうだよね。せめて、ラクの遺体でも見つかれば諦めがつくのになぁ......」
それは痛いほどに分かる。無いと思ってても、ついネイがヒカリなんじゃないかと思うのは"死んだ"という明確な形が見つからないからだ。
俺達が見たのは、あくまで身投げしたところでしかない。死んだところを見たわけではない。
「そういや、敵はグランメモリを持ってたな」
「うん。そうだったね......」
「あれって、確かヒカリが付けた名前だったよな。じゃあ、なんでネイも同じ名前で言ってるんだ?」
俺はネイの頭を撫でるのをやめ、そう問いかける。
「ヴァル達がそう呼んでいるからですね。付けたヒカリさんが何に影響されたのかは知りませんが、元々あれは、『世界の欠片』っていうのが正しい名前なんですよ」
「欠片......欠片かぁ......」
「この世界の記憶の一部ですからね。それを断片的に形として作ったんですから欠片と呼んでも間違いではないでしょう」
そういや、ヨミに見せてもらったことがあったな。世界の記憶の断片。確かに、あれは世界が刻んだ時の一部だった。そして、グランメモリはその記憶にある力を使って普通では不可能な魔法ーー魔法と呼んでいいのか怪しいがーーを使うことができた。
「そうか。だからヒカリは"天然"の方はまともに扱うことができないなんて言ってたのか」
人工物は、自分達で使えるようメモリから出る力を加減できるようにして作られたらしい。でも、天然は改造することができない。その記憶をそのまま使うことしかできないから扱えない。
「でも、そうやって考えたら、あの銃凄くない?その"天然"のやつの力を抑えて使えれてたんだよ」
確かにそうだ。あの銃は天然のグランメモリを扱うことができていた。
「ん?俺達今、何話してたんだっけ?」
「ヒカリさんと私がイコールかそうでないかって話でしょ。脱線しすぎですよ」
「そうだったそうだった。つっても、これ以上考えたところで何も分からねえな」
「忘れるのが1番ですよ。忘れてしまえばその苦痛から開放されるのですから」
記憶によって苦しんだ奴が言うと、かなりの説得力がある。でも、ヒカリのことを忘れるわけにはいかない。俺達が選択を間違えてしまった結果があれなのだから......
「ちょ、ちょっとセリカ。それはダメだってぇ!」
「ええいいじゃん別に......味が薄いよりも濃い方が良いでしょ?」
「い、いや、それを入れるのはダメなんだって!」
調理室からミラの涙声?が聞こえる。
「これ以上酷くなる前にセリカを止めに行くか」
ネイの話が本当なら、全員食中毒で腹を抱えてもおかしくない。緊急ミッションだ......
「……」
ギルドまで何もなく辿り着いたのだが、ネイが扉を開けようとしては躊躇い、また開けようとしてはまた躊躇う。
「お前はいつまでそうしてるんだ」
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「いつまでビビってんだよ。変わるって決めたんじゃねえのか」
本当に、ネイは性格に難あり。変なところで躊躇うし、俺以外とあまり話をしないし......。6兆年も引き籠もりを続けた奴がいきなり変わるなんてやっぱり難しかったのか。
「いいからさっさと開けろ。俺は両手が塞がって開けられねえんだよ!」
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レジラ、牛肉、ジンシラ、豆腐、その他諸々。鍋でもするつもりか。
「分かりましたよ。開ければいいんでしょ開ければ」
なんでお前がヤケになる必要がある......
そんなこんなでやっと扉を開けてくれた。めんどうな奴だ。
「お帰りなさい。ヴァル、ネイ。ちゃんとメモ書き通りの物は手に入った?」
丁度テーブルを拭いていたミラがやって来る。
「ああ。なんとか手に入った。めちゃめちゃ余計に時間がかかったが......」
「何があったのか......大体分かるね」
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「こいつといるとスゲーしんどい......」
俺は荷物を全てテーブルの上に置いてそう言う。
「私の手を取ったんですから、それくらいは覚悟しててくださいよ」
「とりあえず、前の認識阻害のコートはねえのか?お前に対して騒ぎ起こす奴が普通にいてやかましいから、せめてバレないようにしてほしいんだけど......」
「ないです。前の服諸共燃え尽きたので」
燃え尽きたって何があったんだよ......。別に、自殺する時に燃える様子なんて無かったし......
「私にだって何があったのかは知りませんけど、気がついたらあの書庫に全裸でいたんですから」
「それで、服は着なきゃと思って記憶から適当に作り出したのか......なんでコートは作れねえんだよ」
「あのコートは特殊すぎて私にもよく分からないんです。というか、私の服装ってダサいですか?」
「いや、そんなことねえ。可愛い可愛い」
適当に頭でも撫でてやる。そうすると、ネイは嬉しさを半分隠したような反応をするので、これがまた面白い。
「そういや全然関係ないけど、お前の右目ってどうしたんだ?」
「あ、それは私も気になるかも。もう金色じゃなくなってるし」
ミラが同意の声を上げる。
「ヴァルが助けに来る前に自分でメモリの中に封じておきました。これでも、自分でできることはないかって探したんですよ」
「そうなのか......」
まあ、その選択は間違いじゃないと思う。他人の心が見えるがために抱えてしまった苦痛もある。それを無くせれるのなら、そっちの方がいい。
「あ、ヴァル、それにネイりんもただいまー」
セリカが帰ってきた。
「お前もかなりの大荷物だな」
セリカもまた、両手にいっぱいの荷物。よく見たら中身は全部酒瓶......どんだけ人が来る予定なんだ......
「いやぁ、なんか、クロムが自警団のみんなも連れてくるって言うしさ、ラストはなんか見た目的にたくさん飲みそうだし......そんなこんなで余っても良いくらいに買ってきちゃった」
「たくっふざけんなよ。何が余ってもいいくらいだァ。これで貯めてた金が全部飛んじまったじゃねえか」
グリードもまた、両手にいっぱいの荷物ーー中身はもちろん酒瓶であるーーを持っている。
「まあ、今日はたくさん飲んでいいから」
「なんで許可出される形になってんだァ。飲むに決まってんだろ。俺の金からも結構出したんだしよォ」
鍋用の食材と酒瓶の数が、圧倒的に酒瓶の方が多いように見えるのだが......
「ざっと33:4くらいの比率ですね」
なんでや、阪○関係ないやろ。
絶対適当に言ってるなこいつ。
「そういや、さっきね。街で龍人の女の子を見かけなかったかって聞かれたんだけど......」
「なんて答えたんだ。ことによっちゃ俺こいつと隠居しなきゃならねえんだが......」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと、このギルドと正反対の方で見たって伝えといたから。多分、信じてくれてる」
多分ってなんだ。マジでギルドに押し寄せられたら終わるんだが(色んな意味で)
「まあ、そんなこと気にしない気にしない。どうせ、来たところでネイりんの力じゃ簡単に追い返せれるでしょ」
「それはそれで大問題になる」
ネイが街中で闇魔法でも使ってみろ。王国中に噂が広まる。今はなぜか広がってなくていい感じの状態なのに......
「まあ、そんなことはほっといて。ミラ、さっさと作っちゃお」
「ええそうね。酒瓶は......とりあえず、全部冷蔵庫にでも入れといてグリード」
「まだ働かせるつもりかよ......」
グリードが渋々といった感じで酒瓶を運んで行く。
セリカとミラも、調理室に向かう。
「ヴァル。一言言いたいんですけど、セリカにあまり料理はやらせるべきじゃないと思います」
「なんでだ?」
「彼女の作る料理、ビックリするほど不味いですから。美味しくないとかじゃなく、"不味い"のです」
そんなになのか......。俺は食ったことねえから知らないけど、ネイは食べたことがあるのか......
「あれは人類の食べ物ではありませんし、ましてや神様が食べれるものでもありませんよ......」
ネイが体を震わせながらそう言う。
「そんなに深刻なほど不味いのか!?」
「ん?誰か私の料理にケチつけてるー?」
「いや、なんでもねえー!」
危ない危ない。危うくセリカにフライパンで殴られるかもしれないところだった。
「レシピ通りに作らせてるのに、なぜか上手く出来ないんですよね、彼女の料理。記憶を取り戻す前の話ですけど、1回私の監視下で本当にレシピ通りに作らせたことがあるんですよ」
「そんなことしてたのか......」
「はい。それで、本当にレシピ通りのものが完成したんです。それを食べてみたんです」
なんか、モヤのかかった記憶の中からそれらしき記憶が引っ張り出される。
「気がついたらエフィが凄く深刻そうな顔して回復魔法かけてました」
「ああ、あの時のか......って俺はてっきり何かの病気にやられたのかと思ってたよ!」
まさか、あの時突然ネイが倒れたと聞いたことがあったが、そんなことだったとは......
「おい、それ俺達が食べて大丈夫なものなのか?」
「まあ、ミラもあの時のことは知っていますし、セリカが調理することはないでしょう」
なんだろう。すごく不安なんだが......
セリカが料理下手なのは初めて知ったが、そこまで深刻な程なのは予想外だ。せめて、女の子なら少しくらい料理は出来ていてほしい。
「お前はなんか作れるのか?監視下でどうちゃらこうちゃら言ってたけど」
「一応できますよ。なぜかは知りませんが」
「そこら辺は6兆年の技とかじゃねえのか」
「昔の私は料理なんてしたことありませんよ。そもそも、食べなくても生きていけれる体でしたし」
「......もしかしてお前、その体になってからの記憶が無い?」
「......」
この反応、何かあるな?記憶を取り戻したと言えど、聞いたのはその体になる前の記憶の話。その体になってから何をしてたかとか話してくれてもおかしくないとは思っていたんだが......
「やっぱ、お前は隠し事が下手だな」
「別に、隠してるつもりはありません。ただ、まだ無い記憶があるとかそんなこと話して、また思い出しても嫌な記憶しか無いような気がするんです......」
「......それもそうか」
今回、ネイを苦しめた最大の原因は『記憶』
龍人として生まれ変わった身だ。何か嫌な記憶がたくさんあってもおかしくない。
「できることなら、もう思い出すことは要らないかな?って。ダメですか?」
「ダメとかそんなん俺に聞くなよ。お前が新しく思い出したことがあっても、俺達に利益がある情報とは限らねえし、それを思い出すことによって、またお前が不幸になるのなら、逆に不利益になる」
「そう......ですよね」
そうだそうだ。思い出したところで、どうせ不幸な人生なんだ。思い出さない方がいい。今の状態に困っているわけじゃないんだし......
そう言おうと思ったが、それを言っていいのかどうかが分からない。言ったところでネイは何も悲しみなどしやしないだろうが、俺には疑問が残る点がある。
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ただ、記憶を無くすというのはショックか何かなのだろうが、姿形を変えるというのはどう考えてもヒカリじゃ無理なように思える。
一応、彼女はアルテミスの話じゃピンク色の髪だったらしいが、俺達と出会った時は青緑。まあ、ここら辺は髪色を染めたかなんかしたのだろう。でも、体格などは変わっていないとアルテミスは言う。
「ヒカリの胸ってここまででかくなかったよなぁ......」
「い、いきなり何言うんですか!」
やべ、つい口に出して言ってしまった。
「いや、お前がヒカリであるっていうのを完全に否定できないし、むしろお前のその体になってからしばらくの間がヒカリであっても不思議なことはないしさー、ってそんなこと考えてて」
「ラクが......どうしたの?」
話を聞いていたのか、アルテミスがやって来た。
「多分だけど、ネイりんはラクじゃないと思うよ。ラクとネイりんの年齢は確かに近いけど、こんなに胸でかくなかったし」
「あなた達目の付け所そこだけですか!?もっと他に明確な違いとかあるんじゃないのですか!?」
「悪ぃ。パッと見で思いつく違いがそこだからさ。髪色にかんしちゃ染めりゃどうにでもなるし、服装も同じでーー」
「この翼、この尻尾、この角はなんなんですか!それも飾りだって言うんですか!あと、一応言っておきますけど私の髪色は地毛ですからね!?」
ネイが言葉に合わせて体の各所を触りながら強調してくる。
「分かってるって。ほんの冗談だろ」
「本当ですか?」
ネイが、確認するように俺の顔を下から覗き込んでくる。しかも、しれっと腕も掴んでくるし......
「仲良し......だね」
「ああ、めちゃめちゃ仲良いぞ。こいつの頭とか撫でてやると、スゲー嬉しさを必死に隠そうとする顔するんだ。面白えだろ?」
そう言いながらネイの頭を撫でてやる。
「からかわないでください。別に私だって嬉しいとかそんなこと思ってませんよ......(もっと撫でてください」
小声でそう言うあたり、やっぱ嬉しいんじゃねえか。
そう言おうと思ったけど、やめておいた。
「そういやアルテミス。ヒカリに関して新しい情報とかねえのか?」
「あぅ......今のところは無いね。本当に、ラクの死には疑問が残るのよねぇ......。ネイりんがラクとかだったら早い話なんだけど......」
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「うん。そうだよね。せめて、ラクの遺体でも見つかれば諦めがつくのになぁ......」
それは痛いほどに分かる。無いと思ってても、ついネイがヒカリなんじゃないかと思うのは"死んだ"という明確な形が見つからないからだ。
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「そういや、敵はグランメモリを持ってたな」
「うん。そうだったね......」
「あれって、確かヒカリが付けた名前だったよな。じゃあ、なんでネイも同じ名前で言ってるんだ?」
俺はネイの頭を撫でるのをやめ、そう問いかける。
「ヴァル達がそう呼んでいるからですね。付けたヒカリさんが何に影響されたのかは知りませんが、元々あれは、『世界の欠片』っていうのが正しい名前なんですよ」
「欠片......欠片かぁ......」
「この世界の記憶の一部ですからね。それを断片的に形として作ったんですから欠片と呼んでも間違いではないでしょう」
そういや、ヨミに見せてもらったことがあったな。世界の記憶の断片。確かに、あれは世界が刻んだ時の一部だった。そして、グランメモリはその記憶にある力を使って普通では不可能な魔法ーー魔法と呼んでいいのか怪しいがーーを使うことができた。
「そうか。だからヒカリは"天然"の方はまともに扱うことができないなんて言ってたのか」
人工物は、自分達で使えるようメモリから出る力を加減できるようにして作られたらしい。でも、天然は改造することができない。その記憶をそのまま使うことしかできないから扱えない。
「でも、そうやって考えたら、あの銃凄くない?その"天然"のやつの力を抑えて使えれてたんだよ」
確かにそうだ。あの銃は天然のグランメモリを扱うことができていた。
「ん?俺達今、何話してたんだっけ?」
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「そうだったそうだった。つっても、これ以上考えたところで何も分からねえな」
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「ちょ、ちょっとセリカ。それはダメだってぇ!」
「ええいいじゃん別に......味が薄いよりも濃い方が良いでしょ?」
「い、いや、それを入れるのはダメなんだって!」
調理室からミラの涙声?が聞こえる。
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――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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