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第5章 【黒の心】
第5章23 終節【黒の旅立ち】
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少女の叫び声が聞こえていた。
ずっと傍で聞き続けていた嫌な声だ。でも、今ではそれが唯一安心できる声になっている。
俺、まだ生きてんだな。
ネイ達の助けが間に合ったのか......。でも、確かに死んだ感覚はしたんだけどな。死なんて誰にも分からねえし、気のせいか。
「......生きた心地がしねぇ」
「......」
俺の周りを、いつの間にかみんなが囲ってるな。あの敵は、ちゃんと始末してくれたか。
「なあ、ユミはどこだ?」
周りにはユミだけがいない。この状況下で流石のあいつも逃げ出さないとは思うのだが。
「俺、まだあいつに話してやらなきゃならねえ事があるんだ」
「......」
「なんで、誰も答えてくれないんだ」
「......」
起き上がってみなの顔を見ると、全員暗い顔をしている。
俺は死んでない。なのに、みんなは暗い顔。ユミがいない。
ここまでくれば、頭の悪い奴でも察しがつくだろう。
「おい、ユミはどこだ!」
「......ユミは......」
なんで黙るんだよ。そんな態度を取られると、嫌でも気づいちまうじゃねえか。
「クソっ......」
「......あなたを生き返らせるために、ユミは......」
なんでだ。
人を生き返らせるなんて、そんな業ができるはずがないのに。
わざわざ自分の命を使ってまで、なんで俺なんかを......。この短い命に、なんの価値があるってんだ。
「クソっ......!」
「あ、待て」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
走り出したユミ......いやミイを追いかけていた。
雪原を降りた先には、ちょっとした林が拡がっていた。
そして、林を抜けた先には、小さな崖があった。さっきまで戦っていた場所と、少し小さいだけでよく似ている。
「......なあ、俺の体って、今どうなってんだ」
「......」
「分かってんだよ。ユミが何をしたかなんて......」
「......鏡を見てください」
魔法で、ごく普通の鏡を生み出す。
ミイは、「分かってる」と言いたげな顔をして、鏡の中の自分を覗きみる。
「あなたの体は、今はユミの体」
「......なんで、あいつはこんな事をしたんだ」
「......」
「あいつには、まだやるべき事があったはずだろ?それに、俺を生き返らせるくらいなら、あいつのばあちゃんを生き返らせるべきだっただろ!」
「......私には、分かりません」
ミイの言うべき事は最もである。自分の人生と引き換えに、生き返らせる人がいるのなら、彼女はユナを選んだはず。それでも、ミイを選んだのは、生き返ったユナが幸せかどうかを考えた結果だろう。
それに、ユナの魂は、もうこの世にいない。ミイと違って、彼女の魂はデータにする事が出来ない。
「......俺は、どう生きていけばいいんだ」
「......ユミは、私のことも、覚えていてくださいと言ってました」
「......」
「私には、どうすることも出来ません。これからどうするかは、あなたが決める事です。ユミも、それを望んでいるはずです」
「......そうかい。分かったよ」
もう、別人なんだなと思う。
体は、ユミの体になって、性格は元々反対で、体に似合わぬ男っぽさで。
「......」
「ミイ。どうするかはーー」
「なあ、ミイって名前、やめてくれないか?」
「......それはどういうーー」
「今日から俺がユミだ。ユミの人生を奪ったミイは、もう死んだ。死んで、ユミに新しい人生を与えたんだ」
「......」
「俺の名前はユミだ。ユミとして、俺は死んだミイに償わなければならない。それに、こんなにしてくれたあの組織を、俺は必ずぶっ潰す。それが、俺のやるべき事だ」
「......それで、いいと思いますよ。ユミさん」
「ふっ。悪くねえ名前だ。......ありがとな、ユミ。俺はもう少し足掻いてみせる」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
悲惨なことがあった日の翌日だが、ギルドはいつもと変わらない様子でいた。あの光景を見た人が少ないからだろう。
ただ、ヴァルとネイと、ユミはまだやって来ない。
ユミによる治療が始まった時、ミイの死体は変わらずで、代わりにユミの体に異変が起きた。
ミイの体は消滅して、小さな光がユミの体を包み込んでいる様子だった。まもなくして、ユミが倒れ、再び起き上がった時には中身がミイに変わっていた。
ミイの狂乱ぶりは凄まじかった。なんせ、自分の体がユミになっているのだから。鏡で直接見ることはなくても、首から下に見える胴体が物語っている。嫌でも気付いてしまう。
「騎士団の方では、他国の事だから関われない、だそうだ。あの組織が何だったのかは分からないらしい」
フウロが調べてきた事も、分からない終いだ。結局のところ、私達は何も出来なかった。
ユミの仇を追うことも、未知なる脅威から身を守ることさえ出来ない。
「結局、あいつらは何だったんだろうな?」
「それは私には分かりかねない。ただ、邪龍教の他に、別の組織が動いていることは事実だ」
「別の組織ねぇ......」
「私も、狙われてるんだよね......?」
「多分な。精霊魔導師で妥協するとかそんなことも話していたし、何より、一番不気味なのはーー」
「目的が分からない、ことですよね?」
ネイとヴァルが並んで入って来た。
「目的が分からないことは、敵の次の動きを掴めません。先回りして抑えるってことはできないんですよね」
「......ユミは?」
「......これが、置いてあったんです」
ネイが取り出したのは、小さな紙切れだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「『ユミの人生を奪ってしまった俺に、何が出来るのだろうかと考えた末の決断がこれだ。何も話さずに出ちまって悪いが、時間が無限にあるわけじゃない。俺は、俺が思ったままの事をしたいと思った。だから、俺は、旅に出ることにした。俺が持つ転移の力で、この世界以外の場所も見てみたいと思った。もちろん、敵の調査を忘れたわけじゃねえ。そっちの調査も、こっちで進めておく。敵は、何もお前らの世界だけにいるとは思ってない。だから、俺は色んな世界を見て、この体に記憶して、いつか強くなって帰ってくる。だから、それまで誰も死なないでくれ。ーーユミ』」
小さな紙切れに、小さな文字でそう書いてあった。
内容は、ユミの旅立ち。自分の生きる目的を見つけたと言ったところか。
「急で驚きましたけど、これで良かったと思ってます」
「ミイらしい......のかな?」
「今はユミですよ。ミイは、一度死んだんですし」
それがよく分からないが、覚悟を決めたってことで解釈していいのだろうか。
「色々とありましたけど、ユミが自分の存在を見出したのだから、大満足......とまではいきませんが、これでいいんです」
「そう......だね。ユミは、幸せに生きてるんだよね?」
「はい。もう殺人鬼のような性格は消してると思いますよ。口調は治らなくても、多少は女の子っぽくなってると思います」
「その調子で、お前の毒舌も治ればいいんだけどな」
「えへへ......」
「なんでデレてんだよ......」
ユミは変わったが、ネイは変わらない......のかな?
まあ、ネイは口の悪ささえ目を瞑ってあげれば普通に良い子ではある。これでいいと思う。口の悪さなんて意識しても治しにくいんだから。
「......他の世界に敵がいるか」
「なんか気になることでもあるのか?」
「いや、今回の騒ぎで出てきた敵は、全員それほど強くはなかった。あれほどの施設を構えていたくらいだ。もっと強い奴がいてもおかしくはない」
「俺たちが倒したのは、その端っこに過ぎねえってことか」
「ああそうだ。もっと中枢に近づかないことには、敵の規模が分からないな」
なんか、龍王祭だなんだと騒いでいた私達がアホらしく思えてきた。
敵はまだまだいて、私達が見たのも端っこに過ぎない。ユミが調査すると言っても、一体何年かかることやら。それに、敵には私達の存在がバレている。
邪魔な存在だと認識されれば、ここもいつかは襲われるだろう。
「敵がいつ来てもいいように、俺達はもっと強くならねえとな。結局、今回はネイに任せ切りだったわけだし」
「私だってそんな万能じゃありませんよ。過度な魔法の使いすぎは、オーバーヒートを起こしますから。そうなったら、しばらくは戦えません」
「走り込みでもするか?お前は体力が無さすぎる」
「意味ありませんよ。私は、これで固定されてますから。ユミと違って、体が成長することはないんですよ」
「「「 ......え? 」」」
なんか、とんでもない事を聞いてしまった気がする。
「じゃあお前、このまま身長は伸びねえし、太りもしねえってことか」
「太る前提で話すのは、ちょっとイラッとしますね」
太らない体なんて、女の憧れではないか。しかも、その言い方だと病気には......あれ?頻繁に風邪はひいてるよね?
「ただ、体か弱いので病気にはなりやすいんですよね。成長しないから免疫力も強くならないんですよ」
「......なんか不便な体だな。要は不老不死か」
「そういう事ですね。というか、ヴァルには1度、話したと思うんですけど」
「そういや、そんなことも聞いた気がする」
この人は人の話を聞くことを覚えるべきだな。大事な事を忘れすぎだって。
「まあ、ヴァルが死ぬ時に、私も邪龍になるか、死ぬかの2択を選びますから」
「前者は選ぶな。絶対だぞ!」
「老衰か病死だったら後者にしてあげますよ」
世界の命運は、この2人にかけられている。そう言っても過言じゃない。
最悪、クロムがどうにか出来ると思うが、それではまたネイに悲しみを背負わせるだけだ。
......。今から死後の事考えるのやめよう。まだまだ若いんだし。
「まあ、とにかくユミは旅に出た。私達は、彼女に負けないよう強くなるだけです。ただし私を除く」
文句は言えない。ネイはこれ以上強くなる必要はないと思うからだ。むしろ、もっと強くなられたら私達の立場は一体......。
季節は、冬もようやく終わりを見せ、春が近づいてきている。
龍王祭は夏だが、むしろそれはチャンスだ。まだまだ時間はある。旅に出たユミに負けないよう、私達は大会で優勝する。それが第一目標だ。
「そうそう、ユミからこれを預かってるんですよ」
そう言いながら、どこかで見た綺麗なネックレスを取り出す。
「どうやら、ここが狙われる危険性は、普通にあるようです」
綺麗なネックレス。それは、ユミが持っていた未来視の物だった。
わざわざ危険物を置いていかなくても......。
「ユミからは、これはお前が持っておけ。俺は、この剣1本で大丈夫だから、だそうです」
そう言いながら、ネックレスを本来の使い方で首につける。悔しいことに似合ってる。というか、それってあの組織の人達に襲ってと言ってるようなもんじゃないか!
「私が肌身離さず持っているので、狙われる心配はありませんね」
それは、ネイの力を知ってる人だけだろう。そして、その力を知ってるのは、現状私達だけだ。
「まあいいか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「■■▣■、■■■■゛■■■■■?■■■■゛▣■■、■▣■■■■■■■゛■■゛」
会いたいか?なら、会わせてやるぞ。
綺麗になったもんじゃな。随分と女の子らしうなった。
これも、ユミが変えてくれたお陰なのじゃろうかな?
ずっと傍で聞き続けていた嫌な声だ。でも、今ではそれが唯一安心できる声になっている。
俺、まだ生きてんだな。
ネイ達の助けが間に合ったのか......。でも、確かに死んだ感覚はしたんだけどな。死なんて誰にも分からねえし、気のせいか。
「......生きた心地がしねぇ」
「......」
俺の周りを、いつの間にかみんなが囲ってるな。あの敵は、ちゃんと始末してくれたか。
「なあ、ユミはどこだ?」
周りにはユミだけがいない。この状況下で流石のあいつも逃げ出さないとは思うのだが。
「俺、まだあいつに話してやらなきゃならねえ事があるんだ」
「......」
「なんで、誰も答えてくれないんだ」
「......」
起き上がってみなの顔を見ると、全員暗い顔をしている。
俺は死んでない。なのに、みんなは暗い顔。ユミがいない。
ここまでくれば、頭の悪い奴でも察しがつくだろう。
「おい、ユミはどこだ!」
「......ユミは......」
なんで黙るんだよ。そんな態度を取られると、嫌でも気づいちまうじゃねえか。
「クソっ......」
「......あなたを生き返らせるために、ユミは......」
なんでだ。
人を生き返らせるなんて、そんな業ができるはずがないのに。
わざわざ自分の命を使ってまで、なんで俺なんかを......。この短い命に、なんの価値があるってんだ。
「クソっ......!」
「あ、待て」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
走り出したユミ......いやミイを追いかけていた。
雪原を降りた先には、ちょっとした林が拡がっていた。
そして、林を抜けた先には、小さな崖があった。さっきまで戦っていた場所と、少し小さいだけでよく似ている。
「......なあ、俺の体って、今どうなってんだ」
「......」
「分かってんだよ。ユミが何をしたかなんて......」
「......鏡を見てください」
魔法で、ごく普通の鏡を生み出す。
ミイは、「分かってる」と言いたげな顔をして、鏡の中の自分を覗きみる。
「あなたの体は、今はユミの体」
「......なんで、あいつはこんな事をしたんだ」
「......」
「あいつには、まだやるべき事があったはずだろ?それに、俺を生き返らせるくらいなら、あいつのばあちゃんを生き返らせるべきだっただろ!」
「......私には、分かりません」
ミイの言うべき事は最もである。自分の人生と引き換えに、生き返らせる人がいるのなら、彼女はユナを選んだはず。それでも、ミイを選んだのは、生き返ったユナが幸せかどうかを考えた結果だろう。
それに、ユナの魂は、もうこの世にいない。ミイと違って、彼女の魂はデータにする事が出来ない。
「......俺は、どう生きていけばいいんだ」
「......ユミは、私のことも、覚えていてくださいと言ってました」
「......」
「私には、どうすることも出来ません。これからどうするかは、あなたが決める事です。ユミも、それを望んでいるはずです」
「......そうかい。分かったよ」
もう、別人なんだなと思う。
体は、ユミの体になって、性格は元々反対で、体に似合わぬ男っぽさで。
「......」
「ミイ。どうするかはーー」
「なあ、ミイって名前、やめてくれないか?」
「......それはどういうーー」
「今日から俺がユミだ。ユミの人生を奪ったミイは、もう死んだ。死んで、ユミに新しい人生を与えたんだ」
「......」
「俺の名前はユミだ。ユミとして、俺は死んだミイに償わなければならない。それに、こんなにしてくれたあの組織を、俺は必ずぶっ潰す。それが、俺のやるべき事だ」
「......それで、いいと思いますよ。ユミさん」
「ふっ。悪くねえ名前だ。......ありがとな、ユミ。俺はもう少し足掻いてみせる」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
悲惨なことがあった日の翌日だが、ギルドはいつもと変わらない様子でいた。あの光景を見た人が少ないからだろう。
ただ、ヴァルとネイと、ユミはまだやって来ない。
ユミによる治療が始まった時、ミイの死体は変わらずで、代わりにユミの体に異変が起きた。
ミイの体は消滅して、小さな光がユミの体を包み込んでいる様子だった。まもなくして、ユミが倒れ、再び起き上がった時には中身がミイに変わっていた。
ミイの狂乱ぶりは凄まじかった。なんせ、自分の体がユミになっているのだから。鏡で直接見ることはなくても、首から下に見える胴体が物語っている。嫌でも気付いてしまう。
「騎士団の方では、他国の事だから関われない、だそうだ。あの組織が何だったのかは分からないらしい」
フウロが調べてきた事も、分からない終いだ。結局のところ、私達は何も出来なかった。
ユミの仇を追うことも、未知なる脅威から身を守ることさえ出来ない。
「結局、あいつらは何だったんだろうな?」
「それは私には分かりかねない。ただ、邪龍教の他に、別の組織が動いていることは事実だ」
「別の組織ねぇ......」
「私も、狙われてるんだよね......?」
「多分な。精霊魔導師で妥協するとかそんなことも話していたし、何より、一番不気味なのはーー」
「目的が分からない、ことですよね?」
ネイとヴァルが並んで入って来た。
「目的が分からないことは、敵の次の動きを掴めません。先回りして抑えるってことはできないんですよね」
「......ユミは?」
「......これが、置いてあったんです」
ネイが取り出したのは、小さな紙切れだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「『ユミの人生を奪ってしまった俺に、何が出来るのだろうかと考えた末の決断がこれだ。何も話さずに出ちまって悪いが、時間が無限にあるわけじゃない。俺は、俺が思ったままの事をしたいと思った。だから、俺は、旅に出ることにした。俺が持つ転移の力で、この世界以外の場所も見てみたいと思った。もちろん、敵の調査を忘れたわけじゃねえ。そっちの調査も、こっちで進めておく。敵は、何もお前らの世界だけにいるとは思ってない。だから、俺は色んな世界を見て、この体に記憶して、いつか強くなって帰ってくる。だから、それまで誰も死なないでくれ。ーーユミ』」
小さな紙切れに、小さな文字でそう書いてあった。
内容は、ユミの旅立ち。自分の生きる目的を見つけたと言ったところか。
「急で驚きましたけど、これで良かったと思ってます」
「ミイらしい......のかな?」
「今はユミですよ。ミイは、一度死んだんですし」
それがよく分からないが、覚悟を決めたってことで解釈していいのだろうか。
「色々とありましたけど、ユミが自分の存在を見出したのだから、大満足......とまではいきませんが、これでいいんです」
「そう......だね。ユミは、幸せに生きてるんだよね?」
「はい。もう殺人鬼のような性格は消してると思いますよ。口調は治らなくても、多少は女の子っぽくなってると思います」
「その調子で、お前の毒舌も治ればいいんだけどな」
「えへへ......」
「なんでデレてんだよ......」
ユミは変わったが、ネイは変わらない......のかな?
まあ、ネイは口の悪ささえ目を瞑ってあげれば普通に良い子ではある。これでいいと思う。口の悪さなんて意識しても治しにくいんだから。
「......他の世界に敵がいるか」
「なんか気になることでもあるのか?」
「いや、今回の騒ぎで出てきた敵は、全員それほど強くはなかった。あれほどの施設を構えていたくらいだ。もっと強い奴がいてもおかしくはない」
「俺たちが倒したのは、その端っこに過ぎねえってことか」
「ああそうだ。もっと中枢に近づかないことには、敵の規模が分からないな」
なんか、龍王祭だなんだと騒いでいた私達がアホらしく思えてきた。
敵はまだまだいて、私達が見たのも端っこに過ぎない。ユミが調査すると言っても、一体何年かかることやら。それに、敵には私達の存在がバレている。
邪魔な存在だと認識されれば、ここもいつかは襲われるだろう。
「敵がいつ来てもいいように、俺達はもっと強くならねえとな。結局、今回はネイに任せ切りだったわけだし」
「私だってそんな万能じゃありませんよ。過度な魔法の使いすぎは、オーバーヒートを起こしますから。そうなったら、しばらくは戦えません」
「走り込みでもするか?お前は体力が無さすぎる」
「意味ありませんよ。私は、これで固定されてますから。ユミと違って、体が成長することはないんですよ」
「「「 ......え? 」」」
なんか、とんでもない事を聞いてしまった気がする。
「じゃあお前、このまま身長は伸びねえし、太りもしねえってことか」
「太る前提で話すのは、ちょっとイラッとしますね」
太らない体なんて、女の憧れではないか。しかも、その言い方だと病気には......あれ?頻繁に風邪はひいてるよね?
「ただ、体か弱いので病気にはなりやすいんですよね。成長しないから免疫力も強くならないんですよ」
「......なんか不便な体だな。要は不老不死か」
「そういう事ですね。というか、ヴァルには1度、話したと思うんですけど」
「そういや、そんなことも聞いた気がする」
この人は人の話を聞くことを覚えるべきだな。大事な事を忘れすぎだって。
「まあ、ヴァルが死ぬ時に、私も邪龍になるか、死ぬかの2択を選びますから」
「前者は選ぶな。絶対だぞ!」
「老衰か病死だったら後者にしてあげますよ」
世界の命運は、この2人にかけられている。そう言っても過言じゃない。
最悪、クロムがどうにか出来ると思うが、それではまたネイに悲しみを背負わせるだけだ。
......。今から死後の事考えるのやめよう。まだまだ若いんだし。
「まあ、とにかくユミは旅に出た。私達は、彼女に負けないよう強くなるだけです。ただし私を除く」
文句は言えない。ネイはこれ以上強くなる必要はないと思うからだ。むしろ、もっと強くなられたら私達の立場は一体......。
季節は、冬もようやく終わりを見せ、春が近づいてきている。
龍王祭は夏だが、むしろそれはチャンスだ。まだまだ時間はある。旅に出たユミに負けないよう、私達は大会で優勝する。それが第一目標だ。
「そうそう、ユミからこれを預かってるんですよ」
そう言いながら、どこかで見た綺麗なネックレスを取り出す。
「どうやら、ここが狙われる危険性は、普通にあるようです」
綺麗なネックレス。それは、ユミが持っていた未来視の物だった。
わざわざ危険物を置いていかなくても......。
「ユミからは、これはお前が持っておけ。俺は、この剣1本で大丈夫だから、だそうです」
そう言いながら、ネックレスを本来の使い方で首につける。悔しいことに似合ってる。というか、それってあの組織の人達に襲ってと言ってるようなもんじゃないか!
「私が肌身離さず持っているので、狙われる心配はありませんね」
それは、ネイの力を知ってる人だけだろう。そして、その力を知ってるのは、現状私達だけだ。
「まあいいか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
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会いたいか?なら、会わせてやるぞ。
綺麗になったもんじゃな。随分と女の子らしうなった。
これも、ユミが変えてくれたお陰なのじゃろうかな?
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