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外伝 【夢幻の道】
外伝1 【夢と幻】
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夢というものはなんだろうか。
自分の過去?それとも未来?はたまた偽の世界?
分かるわけないじゃろうな。だって、夢なんて曖昧なもの、考えても仕方ない。それでも人は、心の安寧と記憶の整理のために、夢を見る。
私も、長い長い夢を見ていた。
覚めることのない、悪夢を......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「起きて......デルシア......起きて」
耳元で聞きなれた声がする。
「痛た......」
「2回目なんだから慣れてなさい。あなたが1番最後よ」
この衝撃に、2回目だからといって、慣れる人がいるだろうか。
「ほら、向こうでみんなが待ってるわよ」
ミューエに連れられるがままにみんなが集まっているという洞窟に向かう。多分、ここは前に私達が使った場所だ。
「やっとお目覚めか」
「全く。先導者のお前がこんな体たらくでどうする」
2人の兄に怒られてしまった。
「全く、デルシアはお寝坊さんなんだから」
「姉さんは早起きすることを習慣化した方がいいな」
「みんなしてそこまで言わなくても......」
「言われたくないのなら、今度からは早起きすることだな」
......ご最もです。
「さて、雑談はこのくらいにして、デルシアにも見てほしいものがある」
見てほしいもの?なんだろう。
「あの霧の向こう、デカい建物があるのが見えるか」
「......見えます」
前来た時は、霧のせいで見えなかった建物。城のように見える。
「どうやら、こちら側の世界に敵がいるというのは本当のようだ。幸い、奴らはここまで攻めてきてはないが、我らがここにいると知れば、攻めてくるのは時間の問題だろう」
「それまでに、あの城を攻め落とす。敵の増え方が分からないが、この手のものは大元を潰せばどうにかなる」
「なるほど」
「兵の数が少ないのが気がかりだが、そこは気合いでどうにかしよう」
気合いでって......えぇ......。
「大丈夫よ、デルシア。なんせ、こっちには因縁の仲だった最強の部隊が力を合わせてるんだから、負ける心配なんてないのよ」
「......そうですね」
確かに、白陽と黒月の両国が手を取りあったんだ。これで負けたら洒落にならない。
それに、向こうに残してきた仲間のこともある。向こうで戦ってくれてるのに、私達が負けて、はい残念でした、という展開にはしたくない。
「みなさん、そろそろ軍議の時間でーす」
ネイも無事みたいだ。体の弱い彼女だから、私と同じように長時間気絶してるかと思ってた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「それだと犠牲の数が多くなるのが目に見える」
「我々の部隊を舐めるな」
「そっちの暗殺隊は大丈夫だろうが、うちの軍隊は普通の人間なんだ。化け物じみた身体能力も、魔法の適性もない」
軍議が始まって小一時間。一向に戦い方が決まらないでいた。
お互いに戦い方が全くもって違うせいで、反発が起きている。こんな展開を誰が予想できたであろうか。
一応軍師のネイも、この状況には困惑している。発言力のない子だし、こんなに王族が並んでいたら引けを取ってしまうだろうし。
「......なら、部隊を2つに分けて攻略するのはどう?」
「「 2つ? 」」
「戦い方が違うのなら、それぞれの部隊に分けて、攻略すればいいじゃない。敵の規模が分からないのなら、わざわざ固まって動くんじゃなく、別々から攻めるってのも手だと思う」
「......なるほど、その手があったか」
「確かに、わざわざ固まって動く必要はないな。それより、固まって動いて全滅というのが1番良くない形だな」
ミューエの機転で、話がまとまったようだ。
「そうなると、今度は戦力をどう分けるかだな。俺とアルフレアの2人が別れるのは必須だとして」
「暗殺隊と奇兵隊、白陽軍をどう分けるべきか。白陽軍はシンゲンの指揮下。暗殺隊は俺の指揮下に入れるとして、奇兵隊をどう分けるべきか」
「それも、アルフレアの方に入れればいいんじゃないのか?」
「いや、奇兵隊は様々な動きをすることが出来る。白陽に少しでも入れておけば、なんかの時に役に立つかもしれん」
「そういう事か。なら、白陽に6くらいは欲しいな。こっちは奇妙な動きで攻めることが出来ない」
「6でいいのか。7くらいやっても良かったんだがな」
「余裕そうだな」
「余裕だ。殺しに長けたうちの部隊を舐めるな」
「......3にしたの、後悔しても知らねえからな」
「良かろう。むしろ、もっと多くしてれば良かったとか言うなよ」
「うちの部隊だって舐めるんじゃねえ」
競い合う姿勢は変わらないが、この調子なら負ける心配はしないで良さそうだ。むしろ、心配するべきは敵の規模。これは、早々に掴む必要がある。
「となると、俺、カンナ、サツキ、シータ、カイナで、アルフレアとゼータ、レイ、イグシロナで分けよう」
「ああ、それが最善だろうな」
「......?あれ?私達は......?」
「デルシア達は第3部隊として、敵に見つからずに進む隠密部隊だ。俺達が双方で騒いでいる間に、デルシア達には親玉までの道を確保してほしい」
となると、今呼ばれなかったメンバーは......私と、ミューエ、ベルディア姉さん、ガンマ、ネイの5人か......。
「そっちに部隊を回す事は難しい。極力、敵に見つからないよう行動し、遭遇した敵は速やかに撃退してくれ」
「......分かりました」
上手くできるかどうかは分からないが、チームのバランスはよく出来ている。
「......霧が濃くなってきたな」
「不味いな。視界が悪いと向こうまで行けなくなる」
城の形も、ぼんやりと見えなくなってきた。これでは方向感覚を狂わせてしまう。
霧がやむまではここで待機か......。
「......聞こえる」
「......ネイさん?」
「呼ばれてる......」
ネイが、不自然な様子で洞窟を出ていく。
「あちょ、ネイさん!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイさん!待ってください!」
ネイはこちらの声が聞こえていないのか、止まることなく歩き続けている。
「ネイさん!」
正面に回り込んでネイの両肩を押さえる。
目に色が灯ってない。正気じゃないようだ。
「ネイさん!」
肩を揺らしてみるが、これといった反応はない。
「呼ばれてる......」
ネイが私を突き飛ばしてまで前に進む。
そういえば、みんながついてきてない。私だけが、ネイの後をついて行っている。
おかしい。この状況はおかしい。ネイが謎の意識不明?状態になっているのもそうだが、普通、こうなれば他のみんなも何人かはついてきているはずだ。なのに、誰一人として私の後ろにはいない。もちろん、ネイの前にもだ。
霧が濃い。一体、この状況はなんだと言うのだ。
「兄さん!姉さん!ミューエ!」
ダメだ。声が届いてる実感がない。
「ネイさん!」
目に見えているネイにも、声が届いていない。
「......ついて来い」
「......え?」
「......」
ネイの様子が変わったかと思えば、またすぐに先を進んで行く。よく分からないが、ついて来いと彼女?は言った。ならば、今はついて行くべきか......。
「......」
「......ネイさん?」
「お前は、もしもの世界を考えたことはないか?」
「......突然何を?」
「白を選んでいた世界。黒を選んでいた世界。もしかしたら、その道があったんじゃないのか」
私の脳裏に、あるはずもない記憶が蘇る。
△▼△▼△▼△▼
「......俺の......負けだ」
アルフレア兄さんが、私の前で血を流して膝まついている。
「お兄様、もうやめましょう、もう戦う意味なんてないのよ!」
「裏切り者が、何を言う......」
「私は、この子を信じた。私達のお父様は、もうお父様じゃないの!」
「そんなの分かっている!分かってるんだ......。だが、俺はあの人を裏切ることが出来ない。だから......だから、その刃で、俺を殺してくれ」
嫌だ。出来ない。兄さんを殺すなんて、そんなこと......。
でも、私の体は刃を構えたままの姿勢で兄さんの元へと向かう。
「......これでも、愛していたんだがな」
△▼△▼△▼△▼
△▼△▼△▼△▼
「俺が、どれだけ鍛えても、お前には勝つことが出来なかったな......」
今度は白の兄さんの姿が見える。
「俺の......負けだ......」
これは、私がアルフレア兄さんと共に戦う道を選んだ世界......。
「俺の......最期の勇姿......しかと見届けよ......!」
切腹。兄さんらしい最期だが、こんな世界を私は知らない。なのに、なぜか涙が溢れ出てくる。
「......デルシア、行くぞ」
肩に手を置くアルフレア兄さんが、少しだけ震えていた。
もしかしたら、争い続けていた世界でも、この2人は小さな友情を感じていたのかもしれない。なのに、状況が普通の友になることを許さなかった。
私が、どちらの道を選んでも、誰かが死んでしまう。
今の世界は、どうだろうか。大切な人は誰も死んでいない。でも、どちらも取らないなどと言ったせいで、異界の敵との戦いが始まった。
もしかしたら、もっと平和的な解決法があったのかもしれない。
△▼△▼△▼△▼
「どうだデルシア。これは、夢や幻なんかではない。お前が、過去に経験してきたことだ」
「......あなたは、誰なんですか?」
「来い」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
目の前に広がる本棚の数々。
ネイに連れられてきた場所は、これまた不可思議な場所だった。
「......」
静かにネイがその場に倒れる。
「ネイさん!?」
「安心なされ」
「......誰......ですか?」
そう言うと、本棚が辺りに散っていって、巨大なドラゴン?が現れる。
「ほっほっほ。これまた不思議な客人だな」
敵意は無さそうだ。だが、万が一のために剣を構える。
「警戒されておるな。まあ仕方ない。我の名はエクストリーム。この世界を創想せし創界神だ」
「グラン......ウォーカー?」
「理解はせんでええ。じゃが、お前さんにこれだけは理解してほしい」
「......何を?」
「この世界の理をじゃ」
「もしかして、さっき見た記憶......?」
「うむ。あれは、お前さんが実際に経験してきたことだ」
「......そんなわけない。だって、あれはもしもの世界で......」
「そのもしもを過去に繰り返してきたと言えば?」
そんなことがあるのだろうか。
仮に、世界をループする力があるとして、そんなものをどこで......?
「今、世界は終わりを繰り返しておる。とある、邪悪なる龍の存在によって。名を、リエンドと呼ぶ」
もしかして、そいつが私達が戦おうとしている相手なのだろうか。
「お前さん達は、何度も繰り返してきた世界で、やっと答えを掴みかけている。あいつを倒すのは、お前さんらにしか出来んことじゃ」
「......それを言うためだけに、ここに呼んだのですか?」
「......奴を倒すためには、専用の武器がいる。検索、リエンド、エクストリーム、終わり......」
周りにそびえ立っていた本棚が散っていき、エクストリームの前に1冊だけ残る。
「終焉の刃。これが、奴を倒すための知識」
私の目の前に、閻王の刃に似た形の剣が現れる。
「我は彼奴に手を出すことが出来ん。奴を倒せるのは、その剣を持った道を示す勇者のみ」
勇者......。
「他の仲間は、もう既に城に乗り込んでおるところじゃ。引き止めてしまって悪かったが、まだ誰も死んではおらん」
「......私が、勝つことが出来るでしょうか」
「......仲間を信じて動け。道を選びし勇者よ。そなたの道は、輝きに照らされておるぞ」
......
......
......
「分かりました。あなたが、こうして力を分け与えてくれたこと、感謝します」
「ふっ......。最後に、何か聞きたい事でもあるか?」
「......どうして、ネイさんをここの案内人にしたんですか?」
「お前さんが、この戦いを終え、世界の終焉を止めることが出来た時にその答えを教えてやろう。じゃあな」
本棚の世界が消えていく。そして、次に光が見えてきた時には、遠目に見えていた城のすぐ近くだった。
自分の過去?それとも未来?はたまた偽の世界?
分かるわけないじゃろうな。だって、夢なんて曖昧なもの、考えても仕方ない。それでも人は、心の安寧と記憶の整理のために、夢を見る。
私も、長い長い夢を見ていた。
覚めることのない、悪夢を......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「起きて......デルシア......起きて」
耳元で聞きなれた声がする。
「痛た......」
「2回目なんだから慣れてなさい。あなたが1番最後よ」
この衝撃に、2回目だからといって、慣れる人がいるだろうか。
「ほら、向こうでみんなが待ってるわよ」
ミューエに連れられるがままにみんなが集まっているという洞窟に向かう。多分、ここは前に私達が使った場所だ。
「やっとお目覚めか」
「全く。先導者のお前がこんな体たらくでどうする」
2人の兄に怒られてしまった。
「全く、デルシアはお寝坊さんなんだから」
「姉さんは早起きすることを習慣化した方がいいな」
「みんなしてそこまで言わなくても......」
「言われたくないのなら、今度からは早起きすることだな」
......ご最もです。
「さて、雑談はこのくらいにして、デルシアにも見てほしいものがある」
見てほしいもの?なんだろう。
「あの霧の向こう、デカい建物があるのが見えるか」
「......見えます」
前来た時は、霧のせいで見えなかった建物。城のように見える。
「どうやら、こちら側の世界に敵がいるというのは本当のようだ。幸い、奴らはここまで攻めてきてはないが、我らがここにいると知れば、攻めてくるのは時間の問題だろう」
「それまでに、あの城を攻め落とす。敵の増え方が分からないが、この手のものは大元を潰せばどうにかなる」
「なるほど」
「兵の数が少ないのが気がかりだが、そこは気合いでどうにかしよう」
気合いでって......えぇ......。
「大丈夫よ、デルシア。なんせ、こっちには因縁の仲だった最強の部隊が力を合わせてるんだから、負ける心配なんてないのよ」
「......そうですね」
確かに、白陽と黒月の両国が手を取りあったんだ。これで負けたら洒落にならない。
それに、向こうに残してきた仲間のこともある。向こうで戦ってくれてるのに、私達が負けて、はい残念でした、という展開にはしたくない。
「みなさん、そろそろ軍議の時間でーす」
ネイも無事みたいだ。体の弱い彼女だから、私と同じように長時間気絶してるかと思ってた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「それだと犠牲の数が多くなるのが目に見える」
「我々の部隊を舐めるな」
「そっちの暗殺隊は大丈夫だろうが、うちの軍隊は普通の人間なんだ。化け物じみた身体能力も、魔法の適性もない」
軍議が始まって小一時間。一向に戦い方が決まらないでいた。
お互いに戦い方が全くもって違うせいで、反発が起きている。こんな展開を誰が予想できたであろうか。
一応軍師のネイも、この状況には困惑している。発言力のない子だし、こんなに王族が並んでいたら引けを取ってしまうだろうし。
「......なら、部隊を2つに分けて攻略するのはどう?」
「「 2つ? 」」
「戦い方が違うのなら、それぞれの部隊に分けて、攻略すればいいじゃない。敵の規模が分からないのなら、わざわざ固まって動くんじゃなく、別々から攻めるってのも手だと思う」
「......なるほど、その手があったか」
「確かに、わざわざ固まって動く必要はないな。それより、固まって動いて全滅というのが1番良くない形だな」
ミューエの機転で、話がまとまったようだ。
「そうなると、今度は戦力をどう分けるかだな。俺とアルフレアの2人が別れるのは必須だとして」
「暗殺隊と奇兵隊、白陽軍をどう分けるべきか。白陽軍はシンゲンの指揮下。暗殺隊は俺の指揮下に入れるとして、奇兵隊をどう分けるべきか」
「それも、アルフレアの方に入れればいいんじゃないのか?」
「いや、奇兵隊は様々な動きをすることが出来る。白陽に少しでも入れておけば、なんかの時に役に立つかもしれん」
「そういう事か。なら、白陽に6くらいは欲しいな。こっちは奇妙な動きで攻めることが出来ない」
「6でいいのか。7くらいやっても良かったんだがな」
「余裕そうだな」
「余裕だ。殺しに長けたうちの部隊を舐めるな」
「......3にしたの、後悔しても知らねえからな」
「良かろう。むしろ、もっと多くしてれば良かったとか言うなよ」
「うちの部隊だって舐めるんじゃねえ」
競い合う姿勢は変わらないが、この調子なら負ける心配はしないで良さそうだ。むしろ、心配するべきは敵の規模。これは、早々に掴む必要がある。
「となると、俺、カンナ、サツキ、シータ、カイナで、アルフレアとゼータ、レイ、イグシロナで分けよう」
「ああ、それが最善だろうな」
「......?あれ?私達は......?」
「デルシア達は第3部隊として、敵に見つからずに進む隠密部隊だ。俺達が双方で騒いでいる間に、デルシア達には親玉までの道を確保してほしい」
となると、今呼ばれなかったメンバーは......私と、ミューエ、ベルディア姉さん、ガンマ、ネイの5人か......。
「そっちに部隊を回す事は難しい。極力、敵に見つからないよう行動し、遭遇した敵は速やかに撃退してくれ」
「......分かりました」
上手くできるかどうかは分からないが、チームのバランスはよく出来ている。
「......霧が濃くなってきたな」
「不味いな。視界が悪いと向こうまで行けなくなる」
城の形も、ぼんやりと見えなくなってきた。これでは方向感覚を狂わせてしまう。
霧がやむまではここで待機か......。
「......聞こえる」
「......ネイさん?」
「呼ばれてる......」
ネイが、不自然な様子で洞窟を出ていく。
「あちょ、ネイさん!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネイさん!待ってください!」
ネイはこちらの声が聞こえていないのか、止まることなく歩き続けている。
「ネイさん!」
正面に回り込んでネイの両肩を押さえる。
目に色が灯ってない。正気じゃないようだ。
「ネイさん!」
肩を揺らしてみるが、これといった反応はない。
「呼ばれてる......」
ネイが私を突き飛ばしてまで前に進む。
そういえば、みんながついてきてない。私だけが、ネイの後をついて行っている。
おかしい。この状況はおかしい。ネイが謎の意識不明?状態になっているのもそうだが、普通、こうなれば他のみんなも何人かはついてきているはずだ。なのに、誰一人として私の後ろにはいない。もちろん、ネイの前にもだ。
霧が濃い。一体、この状況はなんだと言うのだ。
「兄さん!姉さん!ミューエ!」
ダメだ。声が届いてる実感がない。
「ネイさん!」
目に見えているネイにも、声が届いていない。
「......ついて来い」
「......え?」
「......」
ネイの様子が変わったかと思えば、またすぐに先を進んで行く。よく分からないが、ついて来いと彼女?は言った。ならば、今はついて行くべきか......。
「......」
「......ネイさん?」
「お前は、もしもの世界を考えたことはないか?」
「......突然何を?」
「白を選んでいた世界。黒を選んでいた世界。もしかしたら、その道があったんじゃないのか」
私の脳裏に、あるはずもない記憶が蘇る。
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「......俺の......負けだ」
アルフレア兄さんが、私の前で血を流して膝まついている。
「お兄様、もうやめましょう、もう戦う意味なんてないのよ!」
「裏切り者が、何を言う......」
「私は、この子を信じた。私達のお父様は、もうお父様じゃないの!」
「そんなの分かっている!分かってるんだ......。だが、俺はあの人を裏切ることが出来ない。だから......だから、その刃で、俺を殺してくれ」
嫌だ。出来ない。兄さんを殺すなんて、そんなこと......。
でも、私の体は刃を構えたままの姿勢で兄さんの元へと向かう。
「......これでも、愛していたんだがな」
△▼△▼△▼△▼
△▼△▼△▼△▼
「俺が、どれだけ鍛えても、お前には勝つことが出来なかったな......」
今度は白の兄さんの姿が見える。
「俺の......負けだ......」
これは、私がアルフレア兄さんと共に戦う道を選んだ世界......。
「俺の......最期の勇姿......しかと見届けよ......!」
切腹。兄さんらしい最期だが、こんな世界を私は知らない。なのに、なぜか涙が溢れ出てくる。
「......デルシア、行くぞ」
肩に手を置くアルフレア兄さんが、少しだけ震えていた。
もしかしたら、争い続けていた世界でも、この2人は小さな友情を感じていたのかもしれない。なのに、状況が普通の友になることを許さなかった。
私が、どちらの道を選んでも、誰かが死んでしまう。
今の世界は、どうだろうか。大切な人は誰も死んでいない。でも、どちらも取らないなどと言ったせいで、異界の敵との戦いが始まった。
もしかしたら、もっと平和的な解決法があったのかもしれない。
△▼△▼△▼△▼
「どうだデルシア。これは、夢や幻なんかではない。お前が、過去に経験してきたことだ」
「......あなたは、誰なんですか?」
「来い」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
目の前に広がる本棚の数々。
ネイに連れられてきた場所は、これまた不可思議な場所だった。
「......」
静かにネイがその場に倒れる。
「ネイさん!?」
「安心なされ」
「......誰......ですか?」
そう言うと、本棚が辺りに散っていって、巨大なドラゴン?が現れる。
「ほっほっほ。これまた不思議な客人だな」
敵意は無さそうだ。だが、万が一のために剣を構える。
「警戒されておるな。まあ仕方ない。我の名はエクストリーム。この世界を創想せし創界神だ」
「グラン......ウォーカー?」
「理解はせんでええ。じゃが、お前さんにこれだけは理解してほしい」
「......何を?」
「この世界の理をじゃ」
「もしかして、さっき見た記憶......?」
「うむ。あれは、お前さんが実際に経験してきたことだ」
「......そんなわけない。だって、あれはもしもの世界で......」
「そのもしもを過去に繰り返してきたと言えば?」
そんなことがあるのだろうか。
仮に、世界をループする力があるとして、そんなものをどこで......?
「今、世界は終わりを繰り返しておる。とある、邪悪なる龍の存在によって。名を、リエンドと呼ぶ」
もしかして、そいつが私達が戦おうとしている相手なのだろうか。
「お前さん達は、何度も繰り返してきた世界で、やっと答えを掴みかけている。あいつを倒すのは、お前さんらにしか出来んことじゃ」
「......それを言うためだけに、ここに呼んだのですか?」
「......奴を倒すためには、専用の武器がいる。検索、リエンド、エクストリーム、終わり......」
周りにそびえ立っていた本棚が散っていき、エクストリームの前に1冊だけ残る。
「終焉の刃。これが、奴を倒すための知識」
私の目の前に、閻王の刃に似た形の剣が現れる。
「我は彼奴に手を出すことが出来ん。奴を倒せるのは、その剣を持った道を示す勇者のみ」
勇者......。
「他の仲間は、もう既に城に乗り込んでおるところじゃ。引き止めてしまって悪かったが、まだ誰も死んではおらん」
「......私が、勝つことが出来るでしょうか」
「......仲間を信じて動け。道を選びし勇者よ。そなたの道は、輝きに照らされておるぞ」
......
......
......
「分かりました。あなたが、こうして力を分け与えてくれたこと、感謝します」
「ふっ......。最後に、何か聞きたい事でもあるか?」
「......どうして、ネイさんをここの案内人にしたんですか?」
「お前さんが、この戦いを終え、世界の終焉を止めることが出来た時にその答えを教えてやろう。じゃあな」
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