グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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外伝 【夢幻の道】

外伝6 【月と太陽】

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「本当に、デルシアを、知らないのか......?」

「何度も言うが、それに関しては記憶がないという理由じゃない。本当に、私は死ぬ前に3人も産んだ記憶はない。シンゲンとサツキ。お前ら2人だけだ。というか、その話はどこで聞いたんだ?」

 そういえば、俺はデルシアの出産に立ち会ってない。全部、父さんに聞いた話だった。赤ん坊のデルシアを俺に預けた後、父さんは戦いで死んだ。

「父さんに......父さんに聞けば分かるかもしれない」

「スサノオか......。あの人は隠し事が多いからな。隠し子だったら許さん」

 隠し子......その可能性もあるのか......。いや、だとしたらなんで俺に渡してきたんだ?母さんの目に映る可能性もあったというのに。何にせよ、デルシアの生い立ちは父さんに聞くのが手っ取り早い。

「この先が、リエンドの構える場所だ。お前の仲間の到着を待った方が......いや、その必要はなさそうだな」

「シンゲン殿......!」

 後ろからベルディアとネイを背負ったガンマがやって来た。

「無事だったか......」

「ええ。ですが、ネイ様が......」

「ネイがどうかしたかにゃ?」

「嫌......嫌......嫌......」

 異変は一目見ただけで分かった。

「どうしたんだ?」

「私達には分からないわよ。ただ、ネイを見つけた時にはもうこの状態。オマケに、一緒にいると思ってたデルシアもいなくなってるし......どうなってんのよ」

「ネイー!おーい、ネイー!」

 どうなってるのか聞きたいのはこちらだな。

 カイナがどれだけ呼びかけても反応はなし。ずっと嫌々言ってるだけだ。

「カンナ、様子を見てやってくれ」

「は、はい......」

 ただの精神疾患なら、カンナがどうにか出来るだろうが、これをただの精神疾患と言っていいのだろうか......?

「......すみません。これは私にはどうすることも出来ません」

 やはり......か......。なんとなくそんな予感はしていた。

「ちょっと私に見せてくれないか?」

「だ、誰よあんた」

「ああ、この人は俺の母さんだ。死人らしい」

「し、死人......!?」

 まあ、そんなのを急に言われて理解出来るわけがないだろうな。そもそも、俺だって理解していない。

「......これは、ただの精神疾患ではないな。極度のトラウマによる人格障害が出ている」

「「「 人格障害? 」」」

「この子。2つ以上人格があるんじゃないのか?」

「......ああ。確かそうだったよな?」

「ええ。オッサンみたいな人格と、暗殺者みたいな人格と、普段の臆病な人格ね。でも、それがどうかしたの?」

「他の人格が、この子の通常の人格に影響を与えている。恐らく、その暗殺者みたいな人格が、この臆病な人格のトラウマになるような光景を見せたんじゃないだろうか?」

「そういえば、確かに私達が見つけた時には周りが血だらけだったわね」

 それが、こいつのトラウマになるものか......。よく分からんな。

「どれほどのものかは分からないが、これは時間をかけて治すしかない。治癒術ではどうにも出来ないな」

「そうか......という事は......」

 単純に戦力ダウンか。ネイは俺から見ても強かったし、かなりの痛手だ。

 それに、ここまで奇跡的に負傷者0で来れたのに、ここに来て負傷者を抱えた状態で戦うことになる。厳しい戦いになりそうだ。

「これからどうするの?」

「この先に行けば親玉に会えるらしい。アルフレア達が到着するのを待とう」

「......そうね」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ん......あれは......?」

 目の前に大勢の軍隊が薄らと見える。敵か......?

「おーい、アルフレアー!」

 シンゲン達か......。

「無事に来れたようだな」

「ああ。こっちは負傷者0だ」

「こちらもだ。で、そこに見覚えのない女性がいるのだが」

「これは俺の母さんだ。死人だ」

「......?」

 聞き間違えではなければ、今死人と言ったな。

 ......

 ......

 ......

「あれか、ピノキオと同じ奴か」

「ピノキオを倒したのか」

「......あ、ああ」

 死人......だけど、味方......なのか......?

「あいつは厄介な奴だったな。まさか、仇であるお前に2度も殺されるとはな」

「......俺を知っているのか?」

「黒月の王子と言えば、アルフレアだろ。幼い頃の写真しか見たことはないが、顔立ちはあの頃とよく似ている」

「シンゲン。この方は信じていいんだな」

「ああ。お前が戦ったピノキオと同じ存在だが、俺達の味方だ」

「では、全員揃ったことだし、進むか」

「待て」

「どうしたの?お兄様」

「......1つ聞きたいことがある。さっきから嫌々言ってるのは誰だ」

 ずっと小さな声で嫌々聞こえてくる。これがただの幻聴でないと信じたい。

「......ネイだ。詳しいことを話す暇はないが、もうこいつは戦えない」

「......そうか」

 負傷者0とはなんだ......。

 まあいいか。戦力が1つ減ったところで、戦い方に影響はしない。後方で待機させておけばそれで十分だ。

「では行くぞ」

 巨大な扉が、嫌な音を立てて開く。

「......誰もいないな」

「本当にここに親玉がいるのか?」

 誰もいない......。

「終わりを求める者よ......」

「「「 ......! 」」」

「我の姿を求める者よ。まずは、汝らの力を示せ」

 力を示す......?まるで、試練みたいな口ぶりだな。

 そう思えたのは一瞬だった。

 力を示す相手として現れたのは......

「「 ......デルシア? 」」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 あれが、デルシア......。

 シンゲンが、私が産んだと勘違いしていた相手。

 あの姿は泳龍の龍人か......。覚醒遺伝でも、あんな純血に近い龍人の姿で産まれるわけがない。記憶違いではないな。

「おい、デルシア!」

 シンゲンが呼びかけるが、反応はなし。

 なるほど、リエンドの血を引いた龍人か......。

「シンゲン。この娘はリエンドの血族だ」

「リエンドの......?」

「ああ。お前らと血の繋がった家族じゃないって話だ。邪龍リエンド。あれが地上に産み落とした化け物だ」

「「 なんだと......!? 」」

 まさか、地上に自分の遺伝子を置くとは......。こればっかりは予想出来なかった。だが、あれをシンゲンの妹と言ったのはスサノオ......。いや、だとしたら、なんで私がサツキを産むまでの間にデルシアを見たことがないのだ......?まだ病気にはなってなかった頃だ。1度くらい見ててもおかしくはない。

「裏切り者のアマテラスよ。貴様の役目はここで終わりだ」

 この声......スサノオ......!

「何故だスサノオ!」

「まさか、本気で生者の世界を守るとでも思っていたのか......?残念だが、俺はそんなつもりはない。デルシア、こいつは、俺とリエンドが逆転のために残した兵器だ。地上にいる間は、上手いことお前の前に姿を見せなかったらしいな」

「地上に残した、兵器......?」

 まさか、私の考えていることがリエンドに筒抜けだったとは......。

「スサノオー!」

「お前が俺に勝てた事などあったか?」

「くっ......」

「安心しろ。お前も直に生者として生き返る」

「何を馬鹿なことを言っている!私達は死人だ!死人は二度と生を得てはならん!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 一体、何が起きてるのよ......。

 味方の名前だと思っていたスサノオは、実は敵で、デルシアは敵の親玉の娘で......。

「デルシア......?」

 デルシアの様子もおかしい。

「うぅっ......」

「デルシアさん!」

「デルシア!」

「姉さん!」

 声は聞こえてないみたいだ。

「どうするんだい?デルシアをぶっ飛ばせばいいのかにゃ?」

「そんな乱暴な方法を取れるわけないでしょカイナ」

 しかし、どう手をつけるべきか。信じたくはないが、仮にもリエンドの娘。下手に近寄るべきではないと思う。

「ベルディア、ここは俺とシンゲンに任せてろ。デルシアの事は兄貴達でどうにかする」

 ここはお兄様達に任せておいた方が良さそうね。私がどうにかしたい気持ちはあるが、私の力でどうにか出来る問題ではないと気づいている。

「デルシア......血が繋がってなくとも、俺達は家族だ!」

「白に同じく!」

 2人の兄が一斉にデルシアに詰め寄る。

「グァァァ!」

「なっ......」

 羽が大きい。尾も大きくなってる。それに、肌も鱗みたいになっていて......

「「 ......龍? 」」

 その姿は、まさしく龍と呼ぶに相応しい姿だった。

「なんだ......あれは......」

「言っただろ?リエンドの娘だと。リエンドは邪龍だと」

 親が龍だから、子も龍だということか。

「グァァァ!」

「くっ......」

「なんて力だ......」

 デルシアの雄叫びは、辺り一帯を揺らすほどの圧がある。地響きだって起きている。

「......やるしかないか」

「だな......」

「待って!」

 お兄様達の前に、角を生やした男女が現れる。

「誰だ貴様ら」

 あの姿......羅刹とアイリス......。それに、セルカまで......?

「お兄様、その子達は敵じゃないわ......多分」

「......あんたが、アイリスとセルカを苦しめ続けてきた王子様だな」

「......その話は、後々謝ろう。貴様らも味方だと言うのなら、今はデルシアだ」

「あのドラゴンがデルシアか......有り得ねぇ......」

「羅刹さん。あれは原始化と呼ばれるものです。デルシアさんがリエンドの娘だと決定づけてるものですよ」

「ちっちぇくせに物知りだな。まあいいや。ぶっ飛ばせば解決だな」

「ちょっと羅刹。そんな乱暴なものはダメだよ」

「うるせえな。そうするしかねってうお!」

 話し込んでる羅刹の元に、デルシアが放った息吹が襲いかかる。

「あっぶね。当たってたら溶けてたな」

 全員、間一髪で避けるが、あれは本当にデルシアが放ったものか......?

 さっきまで羅刹達が立っていた場所はすっかり溶けきって、茶色い地面を映している。

「なんていう威力だ」

「仮にもリエンドの娘だ。それくらいの力は持っててもらわないとな」

「スサノオ......」

 どうする......?どうするべきだ?

 アマテラスはスサノオの相手で手一杯。羅刹達が加わったといえど状況は良くなってない。

「そうだ。セルカ、デルシアをどうにかする方法、あなたなら分かるんじゃない?」

「......ごめんお姉ちゃん。流石に、こんなになってたら、これをどうにか出来る未来は見えない。このまま全滅」

「全滅だなんて、洒落にならないわよ!」

「もういい。姉さんは私達でどうにかする」

 白陽軍だけで抑えられるわけがない。となれば、暗殺隊も動かさなければ......。

「グァァァァァァァ!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 気がついた時。周りは全て溶けきっていた。

 私達の助けは間に合わなかったのか......。

 セルカの言うように、世界を正すためにやって来たのに......。全て、間に合わなかったと言うのか......。

「アマテラス。これが、生者のあるべき姿だ」

「ふざけるな!」

 まだ戦いの音は聞こえる。

「グァァァ、ア"ァァァァ」

 デルシアの叫び声も聞こえてくる。

 体の所々に火傷の痕はあるが、まだ生きてる。セルカも庇いきれた。

「お姉ちゃん。デルシア、叫んでる。助けてって叫んでる」

 それくらい、なんとなくで気づく。でも私達にはどうすることも出来ない。

 所詮、力無き者には物事を解決することは出来ない。

「こんなところで、倒れてるわけにはいかねえだろ。なあ、王子さん達よォ!」

「......そうだな。妹を助けるのは、兄の務めだ」

「血が繋がってなくても、俺達は家族だ。絶対に変わらん!」

 強いな。

 私には、もう立ち上がる力もないと言うのに......。

「グァァァ!」

「うぁぁぁ!」

「くっ......情けねえ声上げるな。白の王子」

「お前も......似たようなもんだろ」

「お前ら本当に王子様かよ......」

 こんなにも力が欲しいと思ったのは、セルカを救う前、デルシア達と対峙する前以来の気持ちだ。

 力が......欲しい......。

「アマテラス。お前も終わりだ」

「......」

「いいや。終わるのはお主らの方じゃな」
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