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外伝 【夢幻の道】
外伝8 【嘘と裏】
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「よく分からない事が起きたが、ここで一旦状況を整理したいと思う。デルシアも何も知らないと思うし」
シンゲンの提案で、一旦の状況報告会が始まった。
兄さんの言うように、私は何も知らない。
「まずは、どこから整理していくべきか......」
「俺はアマテラスの話を聞きたい。なんだかんだで落ち着いて聞くことが出来なかったからな」
「そうか。じゃあ、話せるか?母さん」
「ああ。むしろ、まだ話せてないこともある。話させてくれ」
......この人が、兄さんとサツキのお母さん。
死人だというのに、生きてる人のように生気を感じる。
「まずは、私の正体。私は、何度も言うが死人だ。もうそこに関しては聞かなくても分かるよな?」
「ああ。なんとなくだが、こっちの世界は死人の世界なんだろ」
「そうだ。死んだ者は全員いる。あの獣の姿となって存在している」
表の世界で戦っていた獣達は、全員死者だったのか......。通りで死を恐れずに突っ込んできたのか。
「邪龍リエンド。奴は私達、死者に生者と終わりを入れ替えるなどとくだらないことを吹き込んでいる」
「「「 終わりを入れ替える? 」」」
「要は、生きてる者が死人に、死人は生者になるというわけだ」
「そうなると、母さんが生き返って、俺達が死ぬわけか......。本当に、そんな事が可能なのか?」
「分からない。だが、ここにいる死者はそれだけを信じて戦っている。ここにいる死者は、未練タラタラの奴らばかりだからな。表の世界が恋しくて仕方ないんだ」
でも、世界は何度も繰り返している。ある地点を境に。リエンドの目的が死者と生者の入れ替えなら、そんなものは1周目で終わってる。しかし、世界は何度も何度も繰り返している。
リエンドの目的は、死者の蘇生などではない。
「死者を蘇らせるだけなら、世界は何度も繰り返されん」
「その、世界を繰り返すということについて聞きたいのだが」
「......私にも、何が起きているのかは分からない。だが、世界はリエンドによって繰り返されている。表の世界と裏の世界。それぞれに前の周回の記憶を一部引き継いでいる者もいる。それが、デルシアとセルカ。お前達だ」
時々使えた未来視の力か......。便利な力だと思っていたが、あれもグラン・ウォーカーが残したちょっとした力だったのかもしれない。
「私も、この先の未来を少しだけ見える。スサノオが裏切るとは思わなかったから、ここまで苦戦してしまったがな」
「それは、この周で初めて起こったことだったのか」
「ああ。スサノオと協力して、リエンドを止めようと思ったのは、確実にこの周が初めてのはずだ」
この城に攻め込んだ周は何度もある。だけど、私が龍になって暴走したのも、アマテラスが味方となっているのもこの周が初めて。
繰り返す時間の中で、確実に答えに近づいている証拠かもしれない。
「リエンドが何を企んでいるのかは分からない。繰り返した時間の中でもそれだけは分からなかった」
リエンドが死なないループなんて何度もあった。むしろ、リエンドが死んだ周は前回のみ。
リエンドは、時間を繰り返して、何をしようと言うのだろうか。
「もしかして、セルカもデルシアも今までの事を思い出してるのか」
「はい。全部、見えたんです」
「そうか......」
「全部見えたと言っても、もうほぼほぼ最終局面だ。後はリエンドしか残っていない」
「......もう敵はそいつしかいないのか」
「多分な。ここが最上階の1歩手前。残るのはリエンドが構える最上階だけだと思う」
「ねえ。リエンドって龍なんでしょ?デルシアのがまだ序の口だとスサノオの口振りから想定して、城の最上階に龍が構えていたら、いくらこの城でも崩れるんじゃないの?」
「リエンドは通常の状態の時は幽霊だ。いや、この世界にいるもの全員が幽霊だが、奴は少し違う。簡単に言ってしまえば、幽霊らしく物理的な攻撃が効かない」
「浄化魔法しか効かないというわけか......」
今のメンバーで浄化魔法が使えるのは......、誰もいない?
そもそも魔法が使えるのは、ベルディア姉さんとカンナとミューエ......そういえば、ミューエの姿が見えない。
「色々と厄介なことになったな......」
「浄化魔法程度なら私が使える。だが、奴は幽霊の状態から、龍に戻してからが本番だ。あれは、正直に言えばこの面子で倒せる奴じゃない。出来ることなら、あの未来から来た3人の力を借りたかったくらいだ」
それは無い物ねだりだろう......そんな事よりも。
「ミューエさんは、どこに行ったんですか」
「......そう言えば、すっかり忘れてたわ!」
「どうしたベルディア」
「先に謝っておくわ。ごめん。ミューエが拐われちゃったの」
「拐われた!?誰に!」
「よく分からない影男に」
「影男......カゲロウのことか」
「カゲロウ......それが、奴の名前?」
「多分な。あいつは不思議な奴だ。異界から来てそのまま死んだ奴だ。まあ、あれ程度なら簡単に倒せる」
「本当にそうかな」
黒い影が、いつの間にかそこに立っていた。
「スサノオを倒したくらいで、調子に乗るんじゃないわよ。ねえ、ゼータ、ガンマ」
「エルドラ......」
ガンマの仇......!
「おちおち話していられないな」
「怪我人は全員下がってろ。あいつらは、今度こそ俺達でやる」
「あらあら随分と余裕な態度なこと。ゼータとガンマは手を出さなくて良いのかしら?」
「......ここは、アルフレア様とシンゲン様にお任せします」
「私らが直接手を出さなくとも、我らが主が一瞬で消し炭してくれる」
「任せてろ。ゼータ、ガンマ。貴様らの想いは俺が背負う」
「......つまらない話ね。もっと生々しいものを見せてくれると思ったのに。いいわ、カゲロウ。やっちゃいましょう」
「......」
《ビートル》
あれは......小さな箱?マナの気配も感じないし、それを何に使うんだ?
そう考えていたら、影の男は自身の体にその小さな箱を突き挿した。
人間だったはずの体がカブトムシのような姿に変わる。まるで、私が龍になった時のような感じで。
「気をつけろ、シンゲン、アルフレア。あの姿は、見せかけではない」
「そうか。だが、デカブツになった分戦いやすいな」
「調子に乗るなよクズ共が......」
エルドラとカゲロウはシンゲンとアルフレアに向かってバカ正直に突っ込む。
2人に対して、その攻撃は無謀そのもの。あの2人を知ってる者なら、まずそんな作戦で攻めない。
「斬る!」
「グァッ......」
カゲロウの方はあっさりと殺られてしまった。あれはもう立てそうにないな。うん。なんか本編の方でも無残な死に方した人がいた気がする......気のせいか。
「もう、カゲロウ。あんた、本当肝心な時に出オチしかしないわね!」
そういうキャラなの!?
「いいわ。私がここにいる奴ら全員焼き払ってやる!」
こっちは本当の強さを持っている。
あの炎は、本気で全てを燃やしかねない勢いだ。
「知ってるか?魔法は魔法で消せるらしい」
「ええ知ってるわよ。でもそれは、相性が有利な属性だけでしょ!見たところ、あんたは火属性っぽいけど」
「ああそうだ。だがな、それ程の強力な魔法、そこに低火力の魔法を撃ち込めばどうなると思う?」
昔、何かの魔導書で読んだ気がする......なんだったっけ?
「フィア」
「そんなのどうってこと」
アルフレアが放った低火力の火の魔法が、エルドラの両手に構えられている火の中に入り込む。
「低火力が故に高火力の魔法の中に入ると、小さなマナは力を集めようとして周りのマナを食い散らかす」
「やめろ!や、やめるんだ!」
「やがて、小さなマナは異色のマナを取り込んで拒絶反応を示す。小さな量に対して、膨大な量のマナだ。打ち消すどころじゃないだろうな」
爆発を起こす......それも、マナの集まる魔法の使用者を中心に......。
「うわぁぁぁぁ!」
デカい態度で登場した割には、情けない断末魔を上げて倒れてゆく。
「やめろ......私は......まだ......」
「妻の仇だ」
「やめろ......やめろ......!」
「お前は昔、我が妻に対してこのような状況だったんじゃないのか?今の俺がお前で、ここに倒れているお前が妻」
「私は......この先の世界で......」
「ゼータ。一思いに殺ってしまえ!」
「......死ね」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「とんだ邪魔が入ったが、今ので1つ思いだしたことがある」
「何を?」
「俺達の親父のことだ」
「ギリス......」
なんだかんだあってすっかり忘れていたが、今エルドラが現れたことを考えると、ギリスもこちらの世界に来ている可能性が高い。どこかで戦闘になるかもしれない。
「上が最上階と言えど、ギリスが構えている可能性がある。エルドラとカゲロウがそこまでの強さではなかったが、あれは今でも俺を圧倒する強さを持っている」
「ギリスか......。何度か顔を見たことはあるが、実際に戦う姿を見たことはないな」
「いくらお前と言えど、簡単にやられる。1人勝手に突っ走るのだけはやめろ」
「分かってるさ。お前が負ける相手なら俺も負ける。でも、ここには数で押し切れるだけの人員があるだろ?」
その人員が、全員死を恐れず体力を気にしなくてもいい化け物だったら良かったんだがな。
現実はそう甘くない。デルシアの一撃で全員憔悴しきっている。カンナによる回復も時間がかかっている。
エルドラとカゲロウは一瞬で倒せられたが、このまま敵がやって来ないとも限らない。無い物ねだりするようだが、あの未来人達に回復までしもらいたかったものだ。
「厳しいな。ここまで辿り着くだけでも、これ程のくたびれ具合だ。最後には、これまでの比にならない敵が待ち構えていると言うのに、このままでは戦えれんな。幸い、死人は0だが、この状況をお前はどう思う?」
どう思う......か。
俺からすれば、暗殺隊と奇兵隊が両方疲れていることに驚きだ。彼らもまた、人間であるということを証明された気がする。
「正直、暗殺隊と奇兵隊がここまで憔悴しているのは予想外だ。最終的には彼らの力を借りると思っていた分、この穴は大きい。それに、疲れているのは彼らだけではない。レイ、サツキ、シータとカイナ。彼女らが、未来人の治療を受けたとは言えど重傷に近い状態なのも深刻だ。これ以上の戦いは難しいな」
「お前もそう思うか。デルシアだってまだこんなだしな」
「私も......もう少し休めば......戦えますよ」
無理してるな。総指揮なんて重たい仕事を背負わせるべきではなかったか。
「厳しいことは分かっています。でも、ここまで来たからには勝たなきゃダメなんです。表の世界で戦ってるオメガさんとロウラさん。それに、私達に希望を託してくれた鬼族の人達や獣人の人達。その人達のためにも、私がここでのんびりしてるわけにはいかないんです」
デルシアが立ち上がる。
「根性だけは見上げたものだな」
「それだけが取り柄です。ミューエさんを救うためにも、私は立ち上がります。何度だって立ち上がってみせます」
いや、こいつは総指揮として何かを持っている。
皆を導く何かを......。
「カンナ、そっちはどうだ?」
「は、はい。みなさんの回復は済ませました。ただ、重傷のレイさん達は少し厳しそうです」
重傷組はもう戦闘不能か。精鋭揃いだからここで失いたくはなかったが、もう仕方ないと割り切るしかないか。
「いつまでもここで休憩しているわけにはいかんな。そのうち、痺れを切らしたリエンドがやって来るかもしれん」
「今戦えそうなのは、俺とアルフレア。デルシア、ベルディア、ゼータ、イグシロナ、ガンマ。これくらいか。カンナはここで続き治療に当たってくれ」
「は、はい!」
改めて数えると4人失うことになったか。いや、ネイも含めて5人か。
「それでは、今動けるメンバーでリエンドの討伐に向かう。デルシア、指揮を」
「......これが、最後の戦いになると思います。表の世界で待っていてくれてる人達のためにも、絶対に、勝って、生きて帰りましょう!」
「ああ。そうだな」
「ここで死んだら、謝るべき奴らに謝れなくなるな」
「そうねぇ。お兄様は謝るところが一杯あるもんねぇ」
「姉さん、絶対に、勝ってくれ」
「はい!」
やはり、こいつは何か持ってるな。
リエンドの娘といえど、俺達の仲間である以前に家族であることに変わりはない。
白も黒も関係ないな。
「待って......ください......」
「ネイさん......!?」
「正直、自分がどうすればいいのかは分かりません。でも、ここまで来たからには最後まで戦いたいんです」
記憶を消されたはずでは......?
「ネイさん......」
「まだ......戦えます。こんな状態だけど......」
「分かりました」
シンゲンの提案で、一旦の状況報告会が始まった。
兄さんの言うように、私は何も知らない。
「まずは、どこから整理していくべきか......」
「俺はアマテラスの話を聞きたい。なんだかんだで落ち着いて聞くことが出来なかったからな」
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「ああ。むしろ、まだ話せてないこともある。話させてくれ」
......この人が、兄さんとサツキのお母さん。
死人だというのに、生きてる人のように生気を感じる。
「まずは、私の正体。私は、何度も言うが死人だ。もうそこに関しては聞かなくても分かるよな?」
「ああ。なんとなくだが、こっちの世界は死人の世界なんだろ」
「そうだ。死んだ者は全員いる。あの獣の姿となって存在している」
表の世界で戦っていた獣達は、全員死者だったのか......。通りで死を恐れずに突っ込んできたのか。
「邪龍リエンド。奴は私達、死者に生者と終わりを入れ替えるなどとくだらないことを吹き込んでいる」
「「「 終わりを入れ替える? 」」」
「要は、生きてる者が死人に、死人は生者になるというわけだ」
「そうなると、母さんが生き返って、俺達が死ぬわけか......。本当に、そんな事が可能なのか?」
「分からない。だが、ここにいる死者はそれだけを信じて戦っている。ここにいる死者は、未練タラタラの奴らばかりだからな。表の世界が恋しくて仕方ないんだ」
でも、世界は何度も繰り返している。ある地点を境に。リエンドの目的が死者と生者の入れ替えなら、そんなものは1周目で終わってる。しかし、世界は何度も何度も繰り返している。
リエンドの目的は、死者の蘇生などではない。
「死者を蘇らせるだけなら、世界は何度も繰り返されん」
「その、世界を繰り返すということについて聞きたいのだが」
「......私にも、何が起きているのかは分からない。だが、世界はリエンドによって繰り返されている。表の世界と裏の世界。それぞれに前の周回の記憶を一部引き継いでいる者もいる。それが、デルシアとセルカ。お前達だ」
時々使えた未来視の力か......。便利な力だと思っていたが、あれもグラン・ウォーカーが残したちょっとした力だったのかもしれない。
「私も、この先の未来を少しだけ見える。スサノオが裏切るとは思わなかったから、ここまで苦戦してしまったがな」
「それは、この周で初めて起こったことだったのか」
「ああ。スサノオと協力して、リエンドを止めようと思ったのは、確実にこの周が初めてのはずだ」
この城に攻め込んだ周は何度もある。だけど、私が龍になって暴走したのも、アマテラスが味方となっているのもこの周が初めて。
繰り返す時間の中で、確実に答えに近づいている証拠かもしれない。
「リエンドが何を企んでいるのかは分からない。繰り返した時間の中でもそれだけは分からなかった」
リエンドが死なないループなんて何度もあった。むしろ、リエンドが死んだ周は前回のみ。
リエンドは、時間を繰り返して、何をしようと言うのだろうか。
「もしかして、セルカもデルシアも今までの事を思い出してるのか」
「はい。全部、見えたんです」
「そうか......」
「全部見えたと言っても、もうほぼほぼ最終局面だ。後はリエンドしか残っていない」
「......もう敵はそいつしかいないのか」
「多分な。ここが最上階の1歩手前。残るのはリエンドが構える最上階だけだと思う」
「ねえ。リエンドって龍なんでしょ?デルシアのがまだ序の口だとスサノオの口振りから想定して、城の最上階に龍が構えていたら、いくらこの城でも崩れるんじゃないの?」
「リエンドは通常の状態の時は幽霊だ。いや、この世界にいるもの全員が幽霊だが、奴は少し違う。簡単に言ってしまえば、幽霊らしく物理的な攻撃が効かない」
「浄化魔法しか効かないというわけか......」
今のメンバーで浄化魔法が使えるのは......、誰もいない?
そもそも魔法が使えるのは、ベルディア姉さんとカンナとミューエ......そういえば、ミューエの姿が見えない。
「色々と厄介なことになったな......」
「浄化魔法程度なら私が使える。だが、奴は幽霊の状態から、龍に戻してからが本番だ。あれは、正直に言えばこの面子で倒せる奴じゃない。出来ることなら、あの未来から来た3人の力を借りたかったくらいだ」
それは無い物ねだりだろう......そんな事よりも。
「ミューエさんは、どこに行ったんですか」
「......そう言えば、すっかり忘れてたわ!」
「どうしたベルディア」
「先に謝っておくわ。ごめん。ミューエが拐われちゃったの」
「拐われた!?誰に!」
「よく分からない影男に」
「影男......カゲロウのことか」
「カゲロウ......それが、奴の名前?」
「多分な。あいつは不思議な奴だ。異界から来てそのまま死んだ奴だ。まあ、あれ程度なら簡単に倒せる」
「本当にそうかな」
黒い影が、いつの間にかそこに立っていた。
「スサノオを倒したくらいで、調子に乗るんじゃないわよ。ねえ、ゼータ、ガンマ」
「エルドラ......」
ガンマの仇......!
「おちおち話していられないな」
「怪我人は全員下がってろ。あいつらは、今度こそ俺達でやる」
「あらあら随分と余裕な態度なこと。ゼータとガンマは手を出さなくて良いのかしら?」
「......ここは、アルフレア様とシンゲン様にお任せします」
「私らが直接手を出さなくとも、我らが主が一瞬で消し炭してくれる」
「任せてろ。ゼータ、ガンマ。貴様らの想いは俺が背負う」
「......つまらない話ね。もっと生々しいものを見せてくれると思ったのに。いいわ、カゲロウ。やっちゃいましょう」
「......」
《ビートル》
あれは......小さな箱?マナの気配も感じないし、それを何に使うんだ?
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人間だったはずの体がカブトムシのような姿に変わる。まるで、私が龍になった時のような感じで。
「気をつけろ、シンゲン、アルフレア。あの姿は、見せかけではない」
「そうか。だが、デカブツになった分戦いやすいな」
「調子に乗るなよクズ共が......」
エルドラとカゲロウはシンゲンとアルフレアに向かってバカ正直に突っ込む。
2人に対して、その攻撃は無謀そのもの。あの2人を知ってる者なら、まずそんな作戦で攻めない。
「斬る!」
「グァッ......」
カゲロウの方はあっさりと殺られてしまった。あれはもう立てそうにないな。うん。なんか本編の方でも無残な死に方した人がいた気がする......気のせいか。
「もう、カゲロウ。あんた、本当肝心な時に出オチしかしないわね!」
そういうキャラなの!?
「いいわ。私がここにいる奴ら全員焼き払ってやる!」
こっちは本当の強さを持っている。
あの炎は、本気で全てを燃やしかねない勢いだ。
「知ってるか?魔法は魔法で消せるらしい」
「ええ知ってるわよ。でもそれは、相性が有利な属性だけでしょ!見たところ、あんたは火属性っぽいけど」
「ああそうだ。だがな、それ程の強力な魔法、そこに低火力の魔法を撃ち込めばどうなると思う?」
昔、何かの魔導書で読んだ気がする......なんだったっけ?
「フィア」
「そんなのどうってこと」
アルフレアが放った低火力の火の魔法が、エルドラの両手に構えられている火の中に入り込む。
「低火力が故に高火力の魔法の中に入ると、小さなマナは力を集めようとして周りのマナを食い散らかす」
「やめろ!や、やめるんだ!」
「やがて、小さなマナは異色のマナを取り込んで拒絶反応を示す。小さな量に対して、膨大な量のマナだ。打ち消すどころじゃないだろうな」
爆発を起こす......それも、マナの集まる魔法の使用者を中心に......。
「うわぁぁぁぁ!」
デカい態度で登場した割には、情けない断末魔を上げて倒れてゆく。
「やめろ......私は......まだ......」
「妻の仇だ」
「やめろ......やめろ......!」
「お前は昔、我が妻に対してこのような状況だったんじゃないのか?今の俺がお前で、ここに倒れているお前が妻」
「私は......この先の世界で......」
「ゼータ。一思いに殺ってしまえ!」
「......死ね」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「とんだ邪魔が入ったが、今ので1つ思いだしたことがある」
「何を?」
「俺達の親父のことだ」
「ギリス......」
なんだかんだあってすっかり忘れていたが、今エルドラが現れたことを考えると、ギリスもこちらの世界に来ている可能性が高い。どこかで戦闘になるかもしれない。
「上が最上階と言えど、ギリスが構えている可能性がある。エルドラとカゲロウがそこまでの強さではなかったが、あれは今でも俺を圧倒する強さを持っている」
「ギリスか......。何度か顔を見たことはあるが、実際に戦う姿を見たことはないな」
「いくらお前と言えど、簡単にやられる。1人勝手に突っ走るのだけはやめろ」
「分かってるさ。お前が負ける相手なら俺も負ける。でも、ここには数で押し切れるだけの人員があるだろ?」
その人員が、全員死を恐れず体力を気にしなくてもいい化け物だったら良かったんだがな。
現実はそう甘くない。デルシアの一撃で全員憔悴しきっている。カンナによる回復も時間がかかっている。
エルドラとカゲロウは一瞬で倒せられたが、このまま敵がやって来ないとも限らない。無い物ねだりするようだが、あの未来人達に回復までしもらいたかったものだ。
「厳しいな。ここまで辿り着くだけでも、これ程のくたびれ具合だ。最後には、これまでの比にならない敵が待ち構えていると言うのに、このままでは戦えれんな。幸い、死人は0だが、この状況をお前はどう思う?」
どう思う......か。
俺からすれば、暗殺隊と奇兵隊が両方疲れていることに驚きだ。彼らもまた、人間であるということを証明された気がする。
「正直、暗殺隊と奇兵隊がここまで憔悴しているのは予想外だ。最終的には彼らの力を借りると思っていた分、この穴は大きい。それに、疲れているのは彼らだけではない。レイ、サツキ、シータとカイナ。彼女らが、未来人の治療を受けたとは言えど重傷に近い状態なのも深刻だ。これ以上の戦いは難しいな」
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「いつまでもここで休憩しているわけにはいかんな。そのうち、痺れを切らしたリエンドがやって来るかもしれん」
「今戦えそうなのは、俺とアルフレア。デルシア、ベルディア、ゼータ、イグシロナ、ガンマ。これくらいか。カンナはここで続き治療に当たってくれ」
「は、はい!」
改めて数えると4人失うことになったか。いや、ネイも含めて5人か。
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「ああ。そうだな」
「ここで死んだら、謝るべき奴らに謝れなくなるな」
「そうねぇ。お兄様は謝るところが一杯あるもんねぇ」
「姉さん、絶対に、勝ってくれ」
「はい!」
やはり、こいつは何か持ってるな。
リエンドの娘といえど、俺達の仲間である以前に家族であることに変わりはない。
白も黒も関係ないな。
「待って......ください......」
「ネイさん......!?」
「正直、自分がどうすればいいのかは分かりません。でも、ここまで来たからには最後まで戦いたいんです」
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