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第6章 【龍の涙】
第6章6 【1VS.19】
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街のあちこちに巨大建造物が並び、魔法による光や、水のアーチで華やかさが醸し出される王都。
ついにやって来ました!
昔、何回かやって来たことはあったけど、今回は理由が理由だけに、いつもより輝いて見える。
とは言っても、予選参加組は、自身のチームが所属するグループのエリアからは出られないんだけどね。
話によると、予選のバトルロワイヤル開始の時間は鐘で知らせられるらしい。それまでは自由行動だが、いつ始まってもいいように、なるべく固まって動く必要がある。当たり前の話だが、民間人への危害、及び時間外の敵チームへの攻撃は強制失格。ヴァルとヴェルドが暴れすぎないことを祈る。
「やっぱ、王都はシグルアの街と全然違うねー」
「そらそうだろ。国の端っこと中央じゃ発展具合が比べもんにならねえよ」
そうヴェルドが冷たく返してくる。
「まあそんなことを言うな。折角の王都だ。予選まで観光でもしようじゃないか。......そこの2人には、難しいかもしれんが」
もうみんな分かっていると思うが、ヴァルとネイである。
5日間も馬車に揺られて大丈夫なわけがない。幸いにも吐くまでには至らなかったが、中々にキツかっただろう。
「エフィはどこか行きたいところある?王都は初めてでしょう?」
「はい。えーっと、この王都で有名なクレープ屋さんに行きたいなって」
あれか。凄くオシャレなクレープ屋だ。
「よし、ではまずはそこに行くか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はァ、王都つっても、大した事ねえな」
「あら、グリードが住んでるシグルアの街よりも豪勢だと思うけれど」
「向こうの方がいいわ。こっちは、なんか鼻がムズムズする」
「それ、多分、花粉症じゃない?王都はサギの木がたくさん植えられてることでも有名だから」
通りで鼻がムズムズするわけだ。住みにくい街だな。
それに、街の至る所に光の当たるキラキラしたものがあるし、目にも悪い街だな。
「グリード、いい物をくれてやろう」
「なんだァ?」
これは、白いマスクか?
「花粉症はマスクでどうにか出来る」
「それが出来たら誰も苦労しねえんだよ」
花粉症がマスク1つで楽になれるのなら、世の中の花粉症患者はみんな苦労してない。マスクのちょっとした隙間とかから花粉が入ってきて、それが鼻とかから入っていって以下無限ループ。
なんで、世の中花粉症とそうじゃない人で別れるんだろうな。神様って奴は意地悪なもんだ。
......そういや、その神様がうちのギルドにいるんだっけ?まあ、どうでもいいか。
「ねえ、予選まで時間はあるだろうし、どこかに行ってみない?」
「それはどうでもいいんだけどよォ、水属性グループのエリアって何も無くねえか?」
「あれ?そうだったっけ?お姉ちゃんガイドマップ見せて」
「はい」
「......本当だ。これと言って何も無い」
ハズレくじを引いちまったわけだな。ヴァル達が入った光属性エリアは色々あるだろうな。まあ、あそこの乗り物酔い2人が落ち着いて観光できるかは知らねえが。
「どうする?お姉ちゃん」
「そうねぇ。あ、ここサギの木が写真写りに良い場所だったはずよ。そこに行って記念撮影でもしましょ」
「おいおい殺す気かァ。俺が花粉症だって話をさっきしたばっかじゃねえかァ」
「あら?そうだったかしら」
こいつの脳ミソはどうなってやがんだ......。
「うぅ......ヴェルド様ぁ......」
「おめぇもおめぇでいつまでもめそめそしてやがんだァ」
「だって......だって......」
なんでこんな組み合わせになっちまったんだろうなァ。ライオスとヴェルドあたりを入れ替えても大した問題は無かっただろうに。
あの巫女軍師とマスターが考えることもよく分からねえな。
「儂はこのクレープ屋さんにでも行ってみたいのう」
「それ光属性エリアだからァ、予選突破してからにしろォ」
「ちぇっ」
「1つ、確認しておきたいのだが、爺さん戦えんのか?」
「何を言うとる若造共が!儂はグランメモリーズ6代目ギルドマスターじゃろうがぁ!ハッハッハ!」
予選ルールのうちの1つ。
予選は監督者も参加していい。ぶっちゃけ、殆どのギルドはこの監督者の強さで突破できるかどうかが変わるな。
一応はギルドマスターのじっちゃんだ。多少は期待しても良いのだが、なんせ歳がな......。向こうのツクヨミ率いてるフウロ達が羨ましいぜ畜生。
「まあ、お前らが頑張らにゃ決勝なんて勝つことなんぞ出来んからな!ハッハッハ!」
それもそうだな。
ただ、何をどう言おうが予選はギルドマスターも参加出来る。決勝はそうでなくとも予選は激しい戦いになるのだから、マジでじっちゃん頼むぞ?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
王都に来て数時間経つが、一向に鐘は鳴らない。もう夕暮れ時だって言うのに、一体いつになったら戦いが始まるのだろうか。
そう考えてるせいで、落ち着いて観光も出来ないし、ネイりんに言っても「知らない」の一点張り。それどころか、疲れたとヴァルの背中に乗る始末。これから戦う人を疲弊させてどうするのだろうか。
「もう殆ど見て回っちゃったね」
「そうだな。まさか、夕暮れ時になっても始まらんとは......」
「つっても、こうやって怠けてる奴らの不意をついて、いきなり鐘を鳴らすんだろ?意地が悪いぜ」
「とりあえず、ネイ、一旦降りてくれないか?」
「はぅ......」
本当に、いつになったら始まるのだろうか。まあ、こんな事を考えてる時に限って鐘が鳴るとかするんだけどね。
《ゴーン》
とか考えてたら鳴っちゃったよ。
「え?始まっちゃった?」
「恐らく、今の鐘がそうだろうな。それに、住人が一切いなくなってる」
あれか。毎年似たようなもんだから、みんな気づいているのか。
「って事は、こっからは見えた人間全員ぶっ飛ばせば良いんだな」
「そういう事だな。とりあえず、ここは周りから見えやすい。一旦、身を隠せるところに移動しよう」
「そうはさせねえよ!」
突然、屋根からの奇襲。
「もう戦いは始まってんだよ!弱小ギルド!ハッハッ!」
なるほど。確かに、街のあちらこちらで戦いの音が聞こえてくる。
「サモンズスピリット!カグヤ!」
「お呼びでしょうか。ご主人様」
「カグヤ、出番よ!やっちゃって!」
「了解致しました」
「精霊魔導師!?」
「まずは貴様からだ!爆炎剣!」
「グアッ!」
まずは1人。
「月光・ムーンライト!」
「グハッ!」
2人目!
「地獄龍の咆哮!」
「アイスブレス!」
「「 グアァァァァ! 」」
同時に2人アウト!
「ふぁ~」
「欠伸してんじゃね、グハッ!」
ネイりんに近づいただけで最後の1人が吹き飛ばされた。
「これ、監督者も参加して良かったですよね?」
「ああ、問題ないはずだ。だが、このチームのマスターらしき者がいないな」
そういえばそうだ。
私達は早くも5人倒したが、全チームにマスター的な人がいるはずだ。
「全く、小僧共がだらしねえな!とおっ!」
うちのマスターと同じような見た目のお爺さんが降ってきた。
「ランドクリエイト......」
「ニルヴァーナ」
「グァッ」
容赦ないネイりんの一撃。
これで1チーム脱落したというわけだ。残り、私達含めて19チーム。所々で戦いが起きてるから、次に戦い出す時には、10くらいまでは減ってそう。
「こうやって、いきなり始まるところは、何年経っても変わらないな」
「だな。まあ、敵がちょっと弱すぎたが」
「あんた達、これ予選だよ?こんなところで弱いとか言ってられないよ」
「そうだな。もっともっと叩き潰してやるぜ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「地龍の鉄砕!」
「砲雷撃!」
よし、これで1チーム陥落だ。
「懐かしいわね。こうやっていきなり始まるのは」
住人の姿を見なくなったあたりから警戒していた方が良かったな。
住人には、予め開始時間が知らされていたのだろう。そして、何年も参加しているギルドはそれを分かっている。だから、こうやって奇襲を仕掛けられたわけか。
「確か、俺達含めて20チームだったか」
「ええ。他のところでも戦いが始まってるから、次に相手を見つけた時には10くらいまで減ってそうね」
「この戦いって、最後まで生き残ったチームの勝ちなんでしょう?だったら、そこら辺に隠れて、最後の2チームになるのを待てばいいじゃん」
「それが上手く出来たらの話だな。実際は、こうやって奇襲を仕掛けられてお陀仏だ。幸い、今回は返り討ちに出来たが、毎回こうなるとは限らん。敵を見つけてこちらから奇襲を仕掛けた方が勝ちに繋がる」
「そういう事じゃ!敵は皆殺し!野郎共!かかれぇ!ゴホッゴホッ」
勢い余って大きな声を出すからそうなる。
「おや?戦いの音が鳴り止んだなァ」
「一先ずの戦いは終わったみたいね。じゃあ、ここからは敵に気をつけて、奇襲ね」
「そうだな。屋根上にでも登って、辺りを見渡せた方が良いかもしれん」
「?でもそれって、周りのギルドからも見えるんじゃない?」
「俺だけが上から監視する。それを見た敵が攻めてきたところを、下で構えてるお前らが一網打尽にする。探して余計な体力を使うよりも効率がいい」
「あ、そういうことね」
「というわけだから、お前らは下で構えてろ。ただし、横から来るかもしれん。警戒は怠るな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「蛇炎無双!」
「暴風剣!」
「地獄龍の、天災!」
「アイススピアレイン!」
戦いもいよいよ大詰め。残ってるギルドは3チーム。意外に苦戦することなく敵を減らし続けられた。
「エキドナ、もう戻っていいわよ」
「いつでもあたしを呼んでね」
ぶっちゃけ、ネイりんが最初に考えてた作戦は考える必要などなかった。
全員、力任せに敵をぶっ飛ばし続けてきたため、床を凍らせるとか、エフィに回復を頼むとか、そんなのは無かった。
ヴァルの鼻と、ネイりんの耳の良さで敵の位置はもろ分かり。奇襲ばっかり仕掛けてきたので本当に苦戦はなしだ。
「よし、次だ次!」
「ネイりん、次は?」
「待ってください......こっちの方角で戦いが終わったようです」
となると、残り1チームか。ってことは、これに勝ったら決勝に進出!
「......!全員しゃがんで!」
《ビュンッ!》
危なかった......。ネイりんに頭を押えられてなかったら、今頃あの閃光で退場だったところだ......。
「まさか、もう敵!?」
「どうやら、向こうもこちらの存在には気がついてるようですね。ルフォー・ア・ヒューマノイド・エリアID・Kingcity・Shine」
「何その呪文?」
「見つけました。メテオ・ブラストインパクト・指定エリアID・Kingcity・ローカル140・27・358。ディスチャージ!」
「「「 ヒグァァァァ! 」」」
遠くで変な叫び声が聞こえたな。
「先制攻撃は済ませました。行きましょう」
「火炎ブースト!」
「疾風!」
「アイスフィールド!」
「あ、ちょっと待って!」
3人が無理矢理に自身のスピードを上げて走り出す。
「さっきの叫び声からして、ギルドマスターもやられてますよ。あの3人で十分です」
「そう......でも、心配だな」
確かに、あの3人は強いが、あんな閃光を放ってきたほどだ。心配しなくても大丈夫とは思えない。
というわけで、ヴァル達になんとか追いついたが、もう敵はボロボロ。うわぁ......と思ってしまった。
「ほら、心配しなくても大丈夫って言ったでしょ?」
「アハハ......そうだね......」
「よし、これで何人目だ?」
「多分、ここにいるので最後だろう。他に敵の気配は感じない」
「まあ、隠れてたとしても、これで終わりです!」
「グハッ......」
ちゃっかり、もう1人隠れていた。流石ネイりんの聴力。ほんのちょっとの雑音も聞き逃さない。
《光属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
アナウンスが流れた。
「私達の勝ち?」
「アナウンスは嘘をつきませんから。私達の勝ちでしょう」
なんという事だ!これといった苦戦をせずに勝ち上がってしまった。これでいいのだろうか?いや、楽できた分いいに決まってる。
「おっしゃぁ!俺達の勝ちだー!」
「......やったな」
「私達の勝ちだー!わーい!」
「わ、わーい!」
「お前ら......まあいいか。今は浮かれていても」
やったぁ!私達の勝ちだー!
そういえば、水属性エリアのミラさん達はどうなってるんだろう?同じギルドから2チームが決勝進出っていうのは有り得るのだろうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《光属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
「おっとォ、もう向こうは決着が着いちまったみたいだなァ」
「そうね。と言っても、私達もあともうちょっとよ」
「そうだな。ふんっ!」
あら、敵の奇襲ね。
ミラ「変身!ライオン!」
レラ「変身!クマ!」
体を獣に変えて敵に襲いかかる。
「グアァァァ!」
なんだか、悪者が倒された時のような断末魔を上げられる。
「地龍の鉄砕!」
「雷雨!」
「クソっ、ただの弱小ギルドが......」
「何が弱小ギルドじゃ!ふんっ!」
マスターの地属性魔法は相変わらず便利ね。敵を土壁で挟み込んじゃった。
「力を上げたな。ヴァハト」
「昔から儂は何も変わっとらんわ!お前らが弱くなっただけじゃ!風塵!」
「ミラーアーマー!」
あれは、魔法を全て弾き返す最強のカウンター技。でも、返せるのは魔法だけ。
「ガオー!」
「レラ、クマはガオーと言うよりもブッフォーよ」
「何その変な鳴き声」
「そういうものなの。ガオーは私ねガオー!」
「バカなことやってねェでさっさとケリを付けるぞォ。地龍鉄砕牙!」
そんな張り切っても、残ってるのは向こうのマスターだけなんだけどね。名前はなんて言ったかな......?
「終わりじゃシグルドぉ!」
そうそう。シグルドって名前のマスターだったわね。
《水属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
今ので本当に最後だったようね。
じゃあ、これで私達も決勝大会......?
「あれ?グランメモリーズが2つとも決勝に進んじまったわけだがァ、これ大丈夫なのか?」
「......まあ、どうにかなるじゃろ。今は喜べ!ハッハッハ!」
「そうだな。俺達の勝ちは勝ちだもんな」
「やったよお姉ちゃん!」
「ええ。割と、あっさり勝っちゃったわね」
「ヴェルド様、シアラ、勝ちましたよ!」
ついにやって来ました!
昔、何回かやって来たことはあったけど、今回は理由が理由だけに、いつもより輝いて見える。
とは言っても、予選参加組は、自身のチームが所属するグループのエリアからは出られないんだけどね。
話によると、予選のバトルロワイヤル開始の時間は鐘で知らせられるらしい。それまでは自由行動だが、いつ始まってもいいように、なるべく固まって動く必要がある。当たり前の話だが、民間人への危害、及び時間外の敵チームへの攻撃は強制失格。ヴァルとヴェルドが暴れすぎないことを祈る。
「やっぱ、王都はシグルアの街と全然違うねー」
「そらそうだろ。国の端っこと中央じゃ発展具合が比べもんにならねえよ」
そうヴェルドが冷たく返してくる。
「まあそんなことを言うな。折角の王都だ。予選まで観光でもしようじゃないか。......そこの2人には、難しいかもしれんが」
もうみんな分かっていると思うが、ヴァルとネイである。
5日間も馬車に揺られて大丈夫なわけがない。幸いにも吐くまでには至らなかったが、中々にキツかっただろう。
「エフィはどこか行きたいところある?王都は初めてでしょう?」
「はい。えーっと、この王都で有名なクレープ屋さんに行きたいなって」
あれか。凄くオシャレなクレープ屋だ。
「よし、ではまずはそこに行くか」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はァ、王都つっても、大した事ねえな」
「あら、グリードが住んでるシグルアの街よりも豪勢だと思うけれど」
「向こうの方がいいわ。こっちは、なんか鼻がムズムズする」
「それ、多分、花粉症じゃない?王都はサギの木がたくさん植えられてることでも有名だから」
通りで鼻がムズムズするわけだ。住みにくい街だな。
それに、街の至る所に光の当たるキラキラしたものがあるし、目にも悪い街だな。
「グリード、いい物をくれてやろう」
「なんだァ?」
これは、白いマスクか?
「花粉症はマスクでどうにか出来る」
「それが出来たら誰も苦労しねえんだよ」
花粉症がマスク1つで楽になれるのなら、世の中の花粉症患者はみんな苦労してない。マスクのちょっとした隙間とかから花粉が入ってきて、それが鼻とかから入っていって以下無限ループ。
なんで、世の中花粉症とそうじゃない人で別れるんだろうな。神様って奴は意地悪なもんだ。
......そういや、その神様がうちのギルドにいるんだっけ?まあ、どうでもいいか。
「ねえ、予選まで時間はあるだろうし、どこかに行ってみない?」
「それはどうでもいいんだけどよォ、水属性グループのエリアって何も無くねえか?」
「あれ?そうだったっけ?お姉ちゃんガイドマップ見せて」
「はい」
「......本当だ。これと言って何も無い」
ハズレくじを引いちまったわけだな。ヴァル達が入った光属性エリアは色々あるだろうな。まあ、あそこの乗り物酔い2人が落ち着いて観光できるかは知らねえが。
「どうする?お姉ちゃん」
「そうねぇ。あ、ここサギの木が写真写りに良い場所だったはずよ。そこに行って記念撮影でもしましょ」
「おいおい殺す気かァ。俺が花粉症だって話をさっきしたばっかじゃねえかァ」
「あら?そうだったかしら」
こいつの脳ミソはどうなってやがんだ......。
「うぅ......ヴェルド様ぁ......」
「おめぇもおめぇでいつまでもめそめそしてやがんだァ」
「だって......だって......」
なんでこんな組み合わせになっちまったんだろうなァ。ライオスとヴェルドあたりを入れ替えても大した問題は無かっただろうに。
あの巫女軍師とマスターが考えることもよく分からねえな。
「儂はこのクレープ屋さんにでも行ってみたいのう」
「それ光属性エリアだからァ、予選突破してからにしろォ」
「ちぇっ」
「1つ、確認しておきたいのだが、爺さん戦えんのか?」
「何を言うとる若造共が!儂はグランメモリーズ6代目ギルドマスターじゃろうがぁ!ハッハッハ!」
予選ルールのうちの1つ。
予選は監督者も参加していい。ぶっちゃけ、殆どのギルドはこの監督者の強さで突破できるかどうかが変わるな。
一応はギルドマスターのじっちゃんだ。多少は期待しても良いのだが、なんせ歳がな......。向こうのツクヨミ率いてるフウロ達が羨ましいぜ畜生。
「まあ、お前らが頑張らにゃ決勝なんて勝つことなんぞ出来んからな!ハッハッハ!」
それもそうだな。
ただ、何をどう言おうが予選はギルドマスターも参加出来る。決勝はそうでなくとも予選は激しい戦いになるのだから、マジでじっちゃん頼むぞ?
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
王都に来て数時間経つが、一向に鐘は鳴らない。もう夕暮れ時だって言うのに、一体いつになったら戦いが始まるのだろうか。
そう考えてるせいで、落ち着いて観光も出来ないし、ネイりんに言っても「知らない」の一点張り。それどころか、疲れたとヴァルの背中に乗る始末。これから戦う人を疲弊させてどうするのだろうか。
「もう殆ど見て回っちゃったね」
「そうだな。まさか、夕暮れ時になっても始まらんとは......」
「つっても、こうやって怠けてる奴らの不意をついて、いきなり鐘を鳴らすんだろ?意地が悪いぜ」
「とりあえず、ネイ、一旦降りてくれないか?」
「はぅ......」
本当に、いつになったら始まるのだろうか。まあ、こんな事を考えてる時に限って鐘が鳴るとかするんだけどね。
《ゴーン》
とか考えてたら鳴っちゃったよ。
「え?始まっちゃった?」
「恐らく、今の鐘がそうだろうな。それに、住人が一切いなくなってる」
あれか。毎年似たようなもんだから、みんな気づいているのか。
「って事は、こっからは見えた人間全員ぶっ飛ばせば良いんだな」
「そういう事だな。とりあえず、ここは周りから見えやすい。一旦、身を隠せるところに移動しよう」
「そうはさせねえよ!」
突然、屋根からの奇襲。
「もう戦いは始まってんだよ!弱小ギルド!ハッハッ!」
なるほど。確かに、街のあちらこちらで戦いの音が聞こえてくる。
「サモンズスピリット!カグヤ!」
「お呼びでしょうか。ご主人様」
「カグヤ、出番よ!やっちゃって!」
「了解致しました」
「精霊魔導師!?」
「まずは貴様からだ!爆炎剣!」
「グアッ!」
まずは1人。
「月光・ムーンライト!」
「グハッ!」
2人目!
「地獄龍の咆哮!」
「アイスブレス!」
「「 グアァァァァ! 」」
同時に2人アウト!
「ふぁ~」
「欠伸してんじゃね、グハッ!」
ネイりんに近づいただけで最後の1人が吹き飛ばされた。
「これ、監督者も参加して良かったですよね?」
「ああ、問題ないはずだ。だが、このチームのマスターらしき者がいないな」
そういえばそうだ。
私達は早くも5人倒したが、全チームにマスター的な人がいるはずだ。
「全く、小僧共がだらしねえな!とおっ!」
うちのマスターと同じような見た目のお爺さんが降ってきた。
「ランドクリエイト......」
「ニルヴァーナ」
「グァッ」
容赦ないネイりんの一撃。
これで1チーム脱落したというわけだ。残り、私達含めて19チーム。所々で戦いが起きてるから、次に戦い出す時には、10くらいまでは減ってそう。
「こうやって、いきなり始まるところは、何年経っても変わらないな」
「だな。まあ、敵がちょっと弱すぎたが」
「あんた達、これ予選だよ?こんなところで弱いとか言ってられないよ」
「そうだな。もっともっと叩き潰してやるぜ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「地龍の鉄砕!」
「砲雷撃!」
よし、これで1チーム陥落だ。
「懐かしいわね。こうやっていきなり始まるのは」
住人の姿を見なくなったあたりから警戒していた方が良かったな。
住人には、予め開始時間が知らされていたのだろう。そして、何年も参加しているギルドはそれを分かっている。だから、こうやって奇襲を仕掛けられたわけか。
「確か、俺達含めて20チームだったか」
「ええ。他のところでも戦いが始まってるから、次に相手を見つけた時には10くらいまで減ってそうね」
「この戦いって、最後まで生き残ったチームの勝ちなんでしょう?だったら、そこら辺に隠れて、最後の2チームになるのを待てばいいじゃん」
「それが上手く出来たらの話だな。実際は、こうやって奇襲を仕掛けられてお陀仏だ。幸い、今回は返り討ちに出来たが、毎回こうなるとは限らん。敵を見つけてこちらから奇襲を仕掛けた方が勝ちに繋がる」
「そういう事じゃ!敵は皆殺し!野郎共!かかれぇ!ゴホッゴホッ」
勢い余って大きな声を出すからそうなる。
「おや?戦いの音が鳴り止んだなァ」
「一先ずの戦いは終わったみたいね。じゃあ、ここからは敵に気をつけて、奇襲ね」
「そうだな。屋根上にでも登って、辺りを見渡せた方が良いかもしれん」
「?でもそれって、周りのギルドからも見えるんじゃない?」
「俺だけが上から監視する。それを見た敵が攻めてきたところを、下で構えてるお前らが一網打尽にする。探して余計な体力を使うよりも効率がいい」
「あ、そういうことね」
「というわけだから、お前らは下で構えてろ。ただし、横から来るかもしれん。警戒は怠るな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「蛇炎無双!」
「暴風剣!」
「地獄龍の、天災!」
「アイススピアレイン!」
戦いもいよいよ大詰め。残ってるギルドは3チーム。意外に苦戦することなく敵を減らし続けられた。
「エキドナ、もう戻っていいわよ」
「いつでもあたしを呼んでね」
ぶっちゃけ、ネイりんが最初に考えてた作戦は考える必要などなかった。
全員、力任せに敵をぶっ飛ばし続けてきたため、床を凍らせるとか、エフィに回復を頼むとか、そんなのは無かった。
ヴァルの鼻と、ネイりんの耳の良さで敵の位置はもろ分かり。奇襲ばっかり仕掛けてきたので本当に苦戦はなしだ。
「よし、次だ次!」
「ネイりん、次は?」
「待ってください......こっちの方角で戦いが終わったようです」
となると、残り1チームか。ってことは、これに勝ったら決勝に進出!
「......!全員しゃがんで!」
《ビュンッ!》
危なかった......。ネイりんに頭を押えられてなかったら、今頃あの閃光で退場だったところだ......。
「まさか、もう敵!?」
「どうやら、向こうもこちらの存在には気がついてるようですね。ルフォー・ア・ヒューマノイド・エリアID・Kingcity・Shine」
「何その呪文?」
「見つけました。メテオ・ブラストインパクト・指定エリアID・Kingcity・ローカル140・27・358。ディスチャージ!」
「「「 ヒグァァァァ! 」」」
遠くで変な叫び声が聞こえたな。
「先制攻撃は済ませました。行きましょう」
「火炎ブースト!」
「疾風!」
「アイスフィールド!」
「あ、ちょっと待って!」
3人が無理矢理に自身のスピードを上げて走り出す。
「さっきの叫び声からして、ギルドマスターもやられてますよ。あの3人で十分です」
「そう......でも、心配だな」
確かに、あの3人は強いが、あんな閃光を放ってきたほどだ。心配しなくても大丈夫とは思えない。
というわけで、ヴァル達になんとか追いついたが、もう敵はボロボロ。うわぁ......と思ってしまった。
「ほら、心配しなくても大丈夫って言ったでしょ?」
「アハハ......そうだね......」
「よし、これで何人目だ?」
「多分、ここにいるので最後だろう。他に敵の気配は感じない」
「まあ、隠れてたとしても、これで終わりです!」
「グハッ......」
ちゃっかり、もう1人隠れていた。流石ネイりんの聴力。ほんのちょっとの雑音も聞き逃さない。
《光属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
アナウンスが流れた。
「私達の勝ち?」
「アナウンスは嘘をつきませんから。私達の勝ちでしょう」
なんという事だ!これといった苦戦をせずに勝ち上がってしまった。これでいいのだろうか?いや、楽できた分いいに決まってる。
「おっしゃぁ!俺達の勝ちだー!」
「......やったな」
「私達の勝ちだー!わーい!」
「わ、わーい!」
「お前ら......まあいいか。今は浮かれていても」
やったぁ!私達の勝ちだー!
そういえば、水属性エリアのミラさん達はどうなってるんだろう?同じギルドから2チームが決勝進出っていうのは有り得るのだろうか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
《光属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
「おっとォ、もう向こうは決着が着いちまったみたいだなァ」
「そうね。と言っても、私達もあともうちょっとよ」
「そうだな。ふんっ!」
あら、敵の奇襲ね。
ミラ「変身!ライオン!」
レラ「変身!クマ!」
体を獣に変えて敵に襲いかかる。
「グアァァァ!」
なんだか、悪者が倒された時のような断末魔を上げられる。
「地龍の鉄砕!」
「雷雨!」
「クソっ、ただの弱小ギルドが......」
「何が弱小ギルドじゃ!ふんっ!」
マスターの地属性魔法は相変わらず便利ね。敵を土壁で挟み込んじゃった。
「力を上げたな。ヴァハト」
「昔から儂は何も変わっとらんわ!お前らが弱くなっただけじゃ!風塵!」
「ミラーアーマー!」
あれは、魔法を全て弾き返す最強のカウンター技。でも、返せるのは魔法だけ。
「ガオー!」
「レラ、クマはガオーと言うよりもブッフォーよ」
「何その変な鳴き声」
「そういうものなの。ガオーは私ねガオー!」
「バカなことやってねェでさっさとケリを付けるぞォ。地龍鉄砕牙!」
そんな張り切っても、残ってるのは向こうのマスターだけなんだけどね。名前はなんて言ったかな......?
「終わりじゃシグルドぉ!」
そうそう。シグルドって名前のマスターだったわね。
《水属性エリア!勝利チームはグランメモリーズ!》
今ので本当に最後だったようね。
じゃあ、これで私達も決勝大会......?
「あれ?グランメモリーズが2つとも決勝に進んじまったわけだがァ、これ大丈夫なのか?」
「......まあ、どうにかなるじゃろ。今は喜べ!ハッハッハ!」
「そうだな。俺達の勝ちは勝ちだもんな」
「やったよお姉ちゃん!」
「ええ。割と、あっさり勝っちゃったわね」
「ヴェルド様、シアラ、勝ちましたよ!」
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