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第6章 【龍の涙】
第6章17 【休息】
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「姫様、これは......?」
「ダークソウルへの対応のため、明日の試合は中止とします」
「......良いのでしょうか?」
「大した影響はありません。それよりも、他ギルドの方達から何か言われるのではないかと思われます。それを抑えるためにも、姿勢だけでも見せておく必要があります」
「......分かりました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「と、言うわけで、明日は休みになった。以上」
「休みかー。つっても、やる事ねえな」
「女共がどっかで女子会をやっとると聞いたが、明日までには伝えておけよ。んじゃ、儂は寝る!」
短い話だったな。
宿に戻ってきた時、マスターが入口で構えていた。そんな事してまでだから、きっと何かあるんじゃないかと思ったが、実際は大したこと無かった。それなら、明日にでも伝えてくれればいいものを。
さて、ネイ達に伝えなければならないのだが......、ちょっと待てよ。マスターがそれ聞いてるってことは、ネイも監督者として聞きに行かなければならないはずでは?あいつ、職務、放棄してるだろ!
......まあどうでもいいか。どうせ大した理由じゃないし。
「ヴェルド、どうするよー。明日暇だぜ」
「知らね。俺はシアラに見つからないよう休んでおく」
「おうそうか。頑張って休め」
そうして、ヴェルドはそのまま宿へ、俺は......、ネイのところにまで戻るか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
セリカ「そうそう、それでヴァルったら、私がいるのに思いっきり攻撃してたんだよ?ちょっとは私がいるってことを意識してほしいよ」
フウロ「懐かしい話だな。すまんが、あの時は私も手を抜いていられなかったからな」
ピアナ「何それ、面白ーい!」
アルテミス「で、セリカ無事だったの?」
セリカ「うん。なんとか、エフィのお陰でね。なんか、私って死ぬかもって思う経験をたくさんしてる気がする......」
フウロ「セリカが入ってくるまではこんな大きなことは起こらなかったんだけどな」
何それ、私が悪いって言うの!?私、ただ巻き込まれてるだけだよね?そんなに戦えないのに、いつも戦いの中心に近いところにいる気がするし、そんなに不運になった覚えはないんだけどなぁ。
最初のグランメモリの時は、なぜか私が人質になるし、異世界人の時は、私がヒカりんと出会った事がキッカケにも近いし、その次のネイりんだって......
ネイ「......」
ネイりんは愛想笑いをしてるだけで、なんだかつまらなさそうである。話が分からないっていうのもあるんだろうけど、こうやってワイワイ話をするのが苦手なんだろうなぁ。
ヴァル「おーい、そこの女子5人組ー!」
セリカ「ヴァルどうしたの?わざわざ戻ってきて」
ヴァル「マスターから伝言。明日の試合は中止。そして、ネイ。お前は何職務放棄してんだ」
ネイ「あ、しまった......」
もしかして、今日も報告会みたいなものがあった?だとしたら、ここで引き止めておいたのはまずかったのでは?
ヴァル「伝えたいのはそれだけだ。じゃあ、時間を忘れず程々に楽しめよー」
ネイ「あ、ちょっと待ってくださーい」
ネイが席を立ってヴァルの方に向かって行く。
ネイ「じゃあ、皆さん。楽しかったですよー」
あ、なるほど、そういう事ねって帰るんかい!
ヴァル「もうちょっと居ても良いんだぞ?」
ネイ「居てもつまらないですから」
はっきり言うな!この子。そんなにつまらなかったか!
ピアナ「変わった......子だね」
セリカ「そうね......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネ~イりん!起きてー!9時だよー!」
「......あと10時間寝かせてください......」
「どんだけ寝るつもりなのよあんた。永眠を疑うわよ!?」
朝からうるさい声が耳元で鳴り響く。
声の主がセリカだって、とっくに分かっているからこそ起きたくなくなる。意識がはっきりする前にどこかに連れて行こうとするつもりだろうが、今日ばかりはそうはさせない。今日は寝る!何としてでも寝る!
「......起きないと、こうするぞ~?」
「ひっ、あ、ちょっ、やめ、やめてくださいセリカさん!あひゃ、あひゃははは」
「なんか、変な笑い方するね」
布団の中に潜り込んで、私の体を弄くり回すセリカ。思わず変な声が出てしまう。本当に思わずだ。普段はこんな変な笑い方をしない!
「ちょ、いきなり、何するんですか!」
「起きないと、こうするって言ったじゃん。それで、起きたね」
「あ......」
「じゃ、行こうか?大丈夫、カグヤも呼んでるから」
セリカの後ろで、服を何点か持ってニッコリと笑っている、精霊カグヤ。それを見ただけで、何をされるかの9割を察した。
「いやぁぁぁぁぁ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はぁ......なんでこんな事に......」
「いいじゃんいいじゃん。その服、似合ってるよ」
カグヤのファッションセンスは完璧そのもの。見事にその人の個性を引き出している。龍人隠しのために着ているパーカーも、それを見事に利用していい具合に調整している。
「それで、こんな天気のめちゃめちゃ良い日に私を連れ出して、何をしようって言うんですか」
「折角の休日なんだから、王都の観光でもしようよ」
「セリカさんの場合、ずっと休日でしょう」
「え!?まさかの私、出場予定無し!?」
「当たり前でしょう。変な病気で魔法が大会レベルで使えないんですし、出すメリットがありません」
病気じゃなくて事故だけどね。精霊の召喚って、意外とマナを消費するんだよね。
まさか、予選のためだけに選ばれてたとは......。それに、私は全然戦ってなかったし......。
「せめて、ウラノスを余裕で召喚出来るほどなら話は別だったんですけどね......」
それは、ちょっと難しいかな?試しに召喚しようとしたら猛烈な嘔吐感が襲ってきたくらいだし。
「あ、ここのカフェ!」
「どうかしましたか?見たところ、普通のカフェですけど」
ネイりんは何も分かっていない。この、どこにでもありそうな雰囲気のカフェが、意外と名店として有名なのである。まあ、見れば見るほど普通のカフェに見えるのだが。
「ここで休憩していこうよ。どうせ疲れてるんだろうし」
「......半年も過ごすと、よく分かってくるんですね」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ズズズズ......不味い」
いや、いきなりそんな事言わないでよ。折角の珈琲が美味しくないように感じてしまうじゃん。
「......でもこれ、普通に美味しいよ。流石、名店と呼ばれるだけあるよ」
「そうですか?私の舌にはただただ苦い飲み物にしか感じられません」
ああ、なるほど。ネイりん苦い物が嫌いなタイプか。子供じゃん!とか、そんな事は言わないようにしておく。
ミラさんが淹れる珈琲も、ちょっと苦い方だからな。ネイりんの口には合わないんだろう。
「......?あそこにいるのって、コールドミラーのベルメルさんじゃないですか?」
「どこどこ?」
「ほら、あそこの席で憂鬱そうにしてる方」
店内の方にひっそりと構える少女。確かに、あれはコールドミラーのベルメルだった。
「あ、こっちに気づきましたね」
「本当だ。近づいてくる」
「セリカさん、何かやらかしました?」
「なんで私!?」
「いや、同じ十二級精霊魔導師ですから」
「それ関係あるかな?」
「あの、セリカさん......ですよね?」
「わっ!?」
気づいたら、すぐそこにベルメルが来ていた。
「ベルメル......さん?」
「......」
黙るベルメル。どうしたらいいのか分からない状況。ネイりんに助け舟を求めようとしても、彼女はこういう時の対策を何一つ知らない。
「セリカ・ライトフィリアさん。私の鍵を、全部受け取ってほしいんです」
「......?どういう事......?それに、なんでライトフィリアって名前を知ってるの!?」
「ベルメル・ライトリア。ライトリアの名前に、覚えはありませんか?」
......確か、親戚の中にその名前があった気がする。
「確かに、覚えはあるけど、それとこれとが何の関係があるの?」
「......私、ギルドを追い出されてしまったんです」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ベルメルから一通りの話を聞いた。
ベルメルは、私のお父さんが経営するライトグルーブの1つ、ライトリア家で産まれた子供。
私がギルドに入ったと聞いて、同じように自分もギルドに入ろうと思ったこと。そこで、精霊魔導師としてこの大会に出たこと。そして、惨めな負け方をしたせいで、ギルドから追い出されたこと。
コールドミラーは、最強のギルドだと聞いていた。だが、ここまで最強に拘るギルドだとは思わなかった。
「私......、セリカさんに憧れて......ギルドに入ったんですけど......」
「な、泣かないでよ......」
「すみません......でも......、私、悔しくて悔しくて......」
ただただ負けただけで追い出すギルド。コールドミラーには、仲間意識というものが無いのだろうか?
「私、また他のギルドを探して入ろうとは思っています。でも、この精霊の鍵はセリカさんに持っていてほしいんです」
「こ、こんなの貰えないよ!」
「......でも、セリカさんが持ってる鍵と合わせて、10個の鍵になるはずです。その鍵で、復讐してほしいとは言いません。ですが、この子達を大事にしてほしいんです......」
そうか。私が家から持ち出したのは7個だけ。その他2つは色々とあって入手したもの。ベルメルはそれを知らない。
......この3つの鍵があれば、12個の特殊精霊が全て揃う。
「......この鍵は貰えない。この精霊達は、ベルメルの相棒だから。私が貰っていい物じゃない」
「......でも、私にこの精霊達は、勿体ないです」
「そんな事ない!この精霊達は、きっとあなたの事を愛してる!そんな簡単に私には要らないとか言わないで!精霊達は道具じゃない!」
「......すみません。変な事を話してしまいました」
「......精霊は、私達の相棒。どんな事があっても、離れちゃいけないの」
「......やっぱり、セリカさんは凄い人です」
さっきまでの沈んだ顔が、雨が晴れたかのように清々しい表情に変わってる。
「突然の話に付き合ってくださり、ありがとうございました。私、まだ諦めないことにしますから」
「うん。頑張って」
ベルメルの足取りは、新しい未来に向かっているのか、とても軽やかに見える。
「......精霊が相棒ですか」
「ネイりんだって、龍としてヴァルの相棒じゃん」
「......まあ、そうですね」
「ねえ、ネイりん!次の試合、私を出して!」
「え?え?えぇ!?」
ベルメルの頑張る姿を見てたら、私も頑張らないといけない気がしてきた。
「ねえ、お願い!」
ネイりんの手を握って、懇願するように頼む。
「わ、分かりましたよ......」
「やったー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あー、暇だなー。暇すぎて死にそう」
「んじゃ、死んだら」
「俺が死んだらお前の飼い主が暴走すんだろ」
「難しい飼い主だよね、ネイって。オイラ、あんなだとは思わなかったよ」
「逆に、お前は何に惹かれたんだよ」
「んー、おっ○いかな」
「やめろ!この作品が18禁指定されるからやめろ!つか、なんで小動物がそんな事考えてんだよ!」
「えへへ......ごめんね」
クッソ、この小動物何考えてやがんだ......マジ怖ぇよ。つか、意外と重いなコノヤロウ。首が凝るわ。
「もしかして、君、ヴァル君ではないか?」
突然声をかけてきたオッサン。
「オッサン誰だ?」
「私はヴァーリア・ライトフィリアだ。君のギルドに、『セリカ』という人物はいないかい?」
「......まあ、いるっちゃいるけど」
「そうか。ありがとう。時間を取らせて悪かったね」
そう言って、オッサンは立ち去って行く。
「何だったんだ?」
「ダークソウルへの対応のため、明日の試合は中止とします」
「......良いのでしょうか?」
「大した影響はありません。それよりも、他ギルドの方達から何か言われるのではないかと思われます。それを抑えるためにも、姿勢だけでも見せておく必要があります」
「......分かりました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「と、言うわけで、明日は休みになった。以上」
「休みかー。つっても、やる事ねえな」
「女共がどっかで女子会をやっとると聞いたが、明日までには伝えておけよ。んじゃ、儂は寝る!」
短い話だったな。
宿に戻ってきた時、マスターが入口で構えていた。そんな事してまでだから、きっと何かあるんじゃないかと思ったが、実際は大したこと無かった。それなら、明日にでも伝えてくれればいいものを。
さて、ネイ達に伝えなければならないのだが......、ちょっと待てよ。マスターがそれ聞いてるってことは、ネイも監督者として聞きに行かなければならないはずでは?あいつ、職務、放棄してるだろ!
......まあどうでもいいか。どうせ大した理由じゃないし。
「ヴェルド、どうするよー。明日暇だぜ」
「知らね。俺はシアラに見つからないよう休んでおく」
「おうそうか。頑張って休め」
そうして、ヴェルドはそのまま宿へ、俺は......、ネイのところにまで戻るか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
セリカ「そうそう、それでヴァルったら、私がいるのに思いっきり攻撃してたんだよ?ちょっとは私がいるってことを意識してほしいよ」
フウロ「懐かしい話だな。すまんが、あの時は私も手を抜いていられなかったからな」
ピアナ「何それ、面白ーい!」
アルテミス「で、セリカ無事だったの?」
セリカ「うん。なんとか、エフィのお陰でね。なんか、私って死ぬかもって思う経験をたくさんしてる気がする......」
フウロ「セリカが入ってくるまではこんな大きなことは起こらなかったんだけどな」
何それ、私が悪いって言うの!?私、ただ巻き込まれてるだけだよね?そんなに戦えないのに、いつも戦いの中心に近いところにいる気がするし、そんなに不運になった覚えはないんだけどなぁ。
最初のグランメモリの時は、なぜか私が人質になるし、異世界人の時は、私がヒカりんと出会った事がキッカケにも近いし、その次のネイりんだって......
ネイ「......」
ネイりんは愛想笑いをしてるだけで、なんだかつまらなさそうである。話が分からないっていうのもあるんだろうけど、こうやってワイワイ話をするのが苦手なんだろうなぁ。
ヴァル「おーい、そこの女子5人組ー!」
セリカ「ヴァルどうしたの?わざわざ戻ってきて」
ヴァル「マスターから伝言。明日の試合は中止。そして、ネイ。お前は何職務放棄してんだ」
ネイ「あ、しまった......」
もしかして、今日も報告会みたいなものがあった?だとしたら、ここで引き止めておいたのはまずかったのでは?
ヴァル「伝えたいのはそれだけだ。じゃあ、時間を忘れず程々に楽しめよー」
ネイ「あ、ちょっと待ってくださーい」
ネイが席を立ってヴァルの方に向かって行く。
ネイ「じゃあ、皆さん。楽しかったですよー」
あ、なるほど、そういう事ねって帰るんかい!
ヴァル「もうちょっと居ても良いんだぞ?」
ネイ「居てもつまらないですから」
はっきり言うな!この子。そんなにつまらなかったか!
ピアナ「変わった......子だね」
セリカ「そうね......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ネ~イりん!起きてー!9時だよー!」
「......あと10時間寝かせてください......」
「どんだけ寝るつもりなのよあんた。永眠を疑うわよ!?」
朝からうるさい声が耳元で鳴り響く。
声の主がセリカだって、とっくに分かっているからこそ起きたくなくなる。意識がはっきりする前にどこかに連れて行こうとするつもりだろうが、今日ばかりはそうはさせない。今日は寝る!何としてでも寝る!
「......起きないと、こうするぞ~?」
「ひっ、あ、ちょっ、やめ、やめてくださいセリカさん!あひゃ、あひゃははは」
「なんか、変な笑い方するね」
布団の中に潜り込んで、私の体を弄くり回すセリカ。思わず変な声が出てしまう。本当に思わずだ。普段はこんな変な笑い方をしない!
「ちょ、いきなり、何するんですか!」
「起きないと、こうするって言ったじゃん。それで、起きたね」
「あ......」
「じゃ、行こうか?大丈夫、カグヤも呼んでるから」
セリカの後ろで、服を何点か持ってニッコリと笑っている、精霊カグヤ。それを見ただけで、何をされるかの9割を察した。
「いやぁぁぁぁぁ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はぁ......なんでこんな事に......」
「いいじゃんいいじゃん。その服、似合ってるよ」
カグヤのファッションセンスは完璧そのもの。見事にその人の個性を引き出している。龍人隠しのために着ているパーカーも、それを見事に利用していい具合に調整している。
「それで、こんな天気のめちゃめちゃ良い日に私を連れ出して、何をしようって言うんですか」
「折角の休日なんだから、王都の観光でもしようよ」
「セリカさんの場合、ずっと休日でしょう」
「え!?まさかの私、出場予定無し!?」
「当たり前でしょう。変な病気で魔法が大会レベルで使えないんですし、出すメリットがありません」
病気じゃなくて事故だけどね。精霊の召喚って、意外とマナを消費するんだよね。
まさか、予選のためだけに選ばれてたとは......。それに、私は全然戦ってなかったし......。
「せめて、ウラノスを余裕で召喚出来るほどなら話は別だったんですけどね......」
それは、ちょっと難しいかな?試しに召喚しようとしたら猛烈な嘔吐感が襲ってきたくらいだし。
「あ、ここのカフェ!」
「どうかしましたか?見たところ、普通のカフェですけど」
ネイりんは何も分かっていない。この、どこにでもありそうな雰囲気のカフェが、意外と名店として有名なのである。まあ、見れば見るほど普通のカフェに見えるのだが。
「ここで休憩していこうよ。どうせ疲れてるんだろうし」
「......半年も過ごすと、よく分かってくるんですね」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ズズズズ......不味い」
いや、いきなりそんな事言わないでよ。折角の珈琲が美味しくないように感じてしまうじゃん。
「......でもこれ、普通に美味しいよ。流石、名店と呼ばれるだけあるよ」
「そうですか?私の舌にはただただ苦い飲み物にしか感じられません」
ああ、なるほど。ネイりん苦い物が嫌いなタイプか。子供じゃん!とか、そんな事は言わないようにしておく。
ミラさんが淹れる珈琲も、ちょっと苦い方だからな。ネイりんの口には合わないんだろう。
「......?あそこにいるのって、コールドミラーのベルメルさんじゃないですか?」
「どこどこ?」
「ほら、あそこの席で憂鬱そうにしてる方」
店内の方にひっそりと構える少女。確かに、あれはコールドミラーのベルメルだった。
「あ、こっちに気づきましたね」
「本当だ。近づいてくる」
「セリカさん、何かやらかしました?」
「なんで私!?」
「いや、同じ十二級精霊魔導師ですから」
「それ関係あるかな?」
「あの、セリカさん......ですよね?」
「わっ!?」
気づいたら、すぐそこにベルメルが来ていた。
「ベルメル......さん?」
「......」
黙るベルメル。どうしたらいいのか分からない状況。ネイりんに助け舟を求めようとしても、彼女はこういう時の対策を何一つ知らない。
「セリカ・ライトフィリアさん。私の鍵を、全部受け取ってほしいんです」
「......?どういう事......?それに、なんでライトフィリアって名前を知ってるの!?」
「ベルメル・ライトリア。ライトリアの名前に、覚えはありませんか?」
......確か、親戚の中にその名前があった気がする。
「確かに、覚えはあるけど、それとこれとが何の関係があるの?」
「......私、ギルドを追い出されてしまったんです」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ベルメルから一通りの話を聞いた。
ベルメルは、私のお父さんが経営するライトグルーブの1つ、ライトリア家で産まれた子供。
私がギルドに入ったと聞いて、同じように自分もギルドに入ろうと思ったこと。そこで、精霊魔導師としてこの大会に出たこと。そして、惨めな負け方をしたせいで、ギルドから追い出されたこと。
コールドミラーは、最強のギルドだと聞いていた。だが、ここまで最強に拘るギルドだとは思わなかった。
「私......、セリカさんに憧れて......ギルドに入ったんですけど......」
「な、泣かないでよ......」
「すみません......でも......、私、悔しくて悔しくて......」
ただただ負けただけで追い出すギルド。コールドミラーには、仲間意識というものが無いのだろうか?
「私、また他のギルドを探して入ろうとは思っています。でも、この精霊の鍵はセリカさんに持っていてほしいんです」
「こ、こんなの貰えないよ!」
「......でも、セリカさんが持ってる鍵と合わせて、10個の鍵になるはずです。その鍵で、復讐してほしいとは言いません。ですが、この子達を大事にしてほしいんです......」
そうか。私が家から持ち出したのは7個だけ。その他2つは色々とあって入手したもの。ベルメルはそれを知らない。
......この3つの鍵があれば、12個の特殊精霊が全て揃う。
「......この鍵は貰えない。この精霊達は、ベルメルの相棒だから。私が貰っていい物じゃない」
「......でも、私にこの精霊達は、勿体ないです」
「そんな事ない!この精霊達は、きっとあなたの事を愛してる!そんな簡単に私には要らないとか言わないで!精霊達は道具じゃない!」
「......すみません。変な事を話してしまいました」
「......精霊は、私達の相棒。どんな事があっても、離れちゃいけないの」
「......やっぱり、セリカさんは凄い人です」
さっきまでの沈んだ顔が、雨が晴れたかのように清々しい表情に変わってる。
「突然の話に付き合ってくださり、ありがとうございました。私、まだ諦めないことにしますから」
「うん。頑張って」
ベルメルの足取りは、新しい未来に向かっているのか、とても軽やかに見える。
「......精霊が相棒ですか」
「ネイりんだって、龍としてヴァルの相棒じゃん」
「......まあ、そうですね」
「ねえ、ネイりん!次の試合、私を出して!」
「え?え?えぇ!?」
ベルメルの頑張る姿を見てたら、私も頑張らないといけない気がしてきた。
「ねえ、お願い!」
ネイりんの手を握って、懇願するように頼む。
「わ、分かりましたよ......」
「やったー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あー、暇だなー。暇すぎて死にそう」
「んじゃ、死んだら」
「俺が死んだらお前の飼い主が暴走すんだろ」
「難しい飼い主だよね、ネイって。オイラ、あんなだとは思わなかったよ」
「逆に、お前は何に惹かれたんだよ」
「んー、おっ○いかな」
「やめろ!この作品が18禁指定されるからやめろ!つか、なんで小動物がそんな事考えてんだよ!」
「えへへ......ごめんね」
クッソ、この小動物何考えてやがんだ......マジ怖ぇよ。つか、意外と重いなコノヤロウ。首が凝るわ。
「もしかして、君、ヴァル君ではないか?」
突然声をかけてきたオッサン。
「オッサン誰だ?」
「私はヴァーリア・ライトフィリアだ。君のギルドに、『セリカ』という人物はいないかい?」
「......まあ、いるっちゃいるけど」
「そうか。ありがとう。時間を取らせて悪かったね」
そう言って、オッサンは立ち去って行く。
「何だったんだ?」
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