グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第7章 【悪魔の科学者】

第7章2 【南方の連合国】

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 さて、今は8月の丁度半ば。そして、目指しているのは南方の連合国。そう、ここまで来れば、何が起こるのか分かる人もいるんじゃないだろうか?

「あ"ぁ......もう......ダメ......です......」

 自警団の中でも、とびきり薄着になっているネイ。なのに、熱中症を起こしたのはこいつだけ。メイがいなけりゃ、あたふたしてたところだったな。

「お兄ちゃんがありったけの水と氷を構えて行くって言ってたけど、その意味がよく分かったよ」

 俺としては、南方の国々に行くにあたり、何人かバテるだろうと踏んで積んだのだがな、結果としては、まさかのネイただ1人だけだった。これなら、量を少なくしても良かったかもしれない。

ダギル「おい、聖王。こいつァ、本当にアポカリプスって言う、バケモンをぶっ飛ばした奴なのか?とてもそうには見えないんだが......」

クロム「あー、そうだな。これが通常。アポカリプスをぶっ飛ばしたのが、異常。そういう事にしといてくれ」

ダギル「......全っ然バケモンに見えねぇな。それっぽいのが、この、後遺症で現れたっていう龍の鱗か」

クロム「あまり、しつこくそういう事を言うなよ?こいつだって、一応は女だ」

メイ「お兄ちゃん、その物言いなんか酷いよ?」

 そうか?俺としては、普段通りの話し方だと思うが。

メイ「お兄ちゃんねぇ、前々から言ってるけど、女の子の事を言う時は、なるべくオブラートに包んで言うべきだよ?ネイさんだって、この傷さえ治ればすっごい美人なんだから!龍がうんたらかんたらってのは気にしちゃ負け。はい、分かった?」

クロム「お、おう......」

ダギル「へっ、妹に説教されるのは、何年経っても変わんねぇなぁ!ははっ」

 イマイチ、何に関して怒られてるのかは分からないのだがな。

アラン「皆様、まもなくセツノ連邦に入ります。一応言っておきますが、普段通りの騒がしい雰囲気はやめて、相手方に当たり障りのないようにお願いします」

 もうすぐか......

 何やら、でっかい壁がそびえ立ってるな。オマケに、奥行きもかなりありそうな雰囲気。要塞か?

「待て!貴様ら!」

 おや?その要塞の上の方から何やら声がする......女の声か?

アラン「我々は、イーリアス聖王国の使者でございます。そちらの代表に、既に話は伝わっているはずです」

「ああ、話は来ている。だが、最近はそれに扮して我が国に立ち入るバカが増えてきてな。イーリアスの遣いならば、我と勝負しても余裕で勝ちをもぎ取れるだろう」

 入りたいのなら力づくでってことか。

アラン「如何なされますか、クロム様」

クロム「......仕方ない。俺の力を示せば、門を開いてくれるだろう」

アラン「くれぐれも、無茶をなされないように」

 分かってる。怪我をしたら大人しく引くさ。

「ほう、その積荷には、お前のようなひよっこしかおらんのか」

クロム「生憎、ここの代表は俺なんでな。部下にやらせる訳にはいかないのさ」

「なるほどな。よかろう、我が名はサナラ。この国の北の絶対的守護を務める者。その事から、代表に付けて貰った2つ名は、ノーザンガーディアンだ」

 そのままだな。ネイの意識がはっきりしてたら、腹を抱えて笑っていそうな名前だ。全く、付けてやるならもっとカッコイイ名前をつけてやれよ、その代表って奴はさ。

サナラ「いざ、参る!」

 高い壁から、奴は飛び降りてくる。俺は、剣を構えて奴の攻撃を受け止める。

クロム「......」

 驚く事に、奴は必死で押し込もうとしているのだが、一切力が入ってるように感じない。

クロム「ふざけてるのか?」

サナラ「なっ......私は、ふざけてなどいない!」

 本当か?力を見ると言ったのに、そうしてるように見えないぞ?

クロム「よっと......」

 剣を軽く弾くだけで、奴は後ろの壁にまで吹き飛んでいく。

(クロム、また無意識に凶刃の加護を使っていますよ)

クロム「なっ......」

 しまった......それのせいか......

クロム「あー、えーっと、すまない。もう一度やり直してくれ」

サナラ「......認めよう、そなたらが、本物の使者であることを」

 あれ?なんかすんなりと行ってしまったぞ???

サナラ「そなたらを、イーリアスの正式な使者として認める。ここまでの無礼、お許しください」

クロム「お、おう。ありがとな」

 ......これで良いのか?これが、俺達を装った山賊で、尚且つめちゃくちゃ強いのがいたら、あっさりと入られてしまうぞ?

 まあ、いいか。俺達は本物なわけだし。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ハッハッハッ!すまないねー!うちのサナラがいきなり武力行使に出ちゃってー!」

「は、はぁ......」

「まさかまさか、現イーリアス聖王に刃を向けるとか、アンタ相当肝が据わってるよー!あたしの傍に置いて正解だったよー!ハッハッハッ!」

「お褒めに預かり恐縮です」

「あー、で、ザガル侵攻に向けての協力要請だったねー」

「そ、そうだが......」

 まずい、話が進んでるようで進んでる気がしない!なんだこの代表は!?俺が言うのもあれだが、国のトップだよな!?

 ちなみに、俺が話している相手は、このセツノ連邦のトップである、『ガルナ』。姉さんが交渉してた時は、他国の人間を嫌う人だったらしいから、この人はそいつとは別人で間違いない。

「ザガルの侵攻を抑えるのは、セツノ連邦としても意義があるはずだ。だからーー」

「あー、それは分かってんだけどさー、無理なんだよねー」

 ......

 ......

 ......?

「えっと......無理というのは......」

「だーかーらー、あたしゃ今は王様じゃないんだよ!ただの4人の代表のうちの1人。これから、王選が始まるのよー。で、そんなタイミングであんたらが親書送ってきたってわけ。普通、この国の王選時期に親書を送ってくる奴なんていないからさー、あたしが引き受けてやってんのよ」

 ......

 おい、ちょっと待て。そんな話聞いてないぞ?

 あれか、俺達の下調べが足りず、偶然に偶然が重なって、こんな状況になってるってことか?って事は、俺は今は何の影響力も無い相手に媚びてるだけなのか?

「まあ、でも安心なさいよ!次の王はあたしがなってやるからさー!そしたら、あんたらとすぐに国交結んで、ザガルの山猿共にギャフンと言わせてやるんだからー!」

 頼もしいのか頼もしくないのか。よく分からない相手だが、要は、この人が王様になってくれれば協力関係を結べられる、実に簡単な話だ。

「よし、じゃあ、その王選というのは、いつから始まるんだ?」

「明日だよ」

「......?えーっと......」

「明日から、その王選だよ」

「......」

 ちょっと待て。

 今の話が本当ならば、俺達は本当の本当に大事な時期に来てしまったということになる。なんで、この人は受け入れてくれたんだ?あれか?未来への投資みたいなものか?

 誰でもいいから、こいつの脳内を理解できる奴は今すぐに現れて俺に説明しろ。

「おい、本当にこんな時期に俺達を招き入れて良かったのか。もしかしたら、イーリアスの使者を装ったライバル達かもしれないんだぞ」

「大丈夫大丈夫。こんな時期にライバル潰そうとする肝の据わった奴なんていないからさ。それに、こんな時期だからこそ、あたし達の国と国交を結ぼうとする奴はいないもんなんだよ。そんな中で、唯一の命知らずであるあんた達に、あたしは投資したわけ。なれるかどうかはまだ分かんないけどさ、今のうちから友好関係を結んでおくのも大事じゃないか?」

「そういうものなのか......」

 早口過ぎてよく分からなかったが、要は俺が勝つから黙って見てろみたいなもんだろ?

「......で、一応聞いておくのだが、王選の内容はどんなものなんだ?」

「殺し合いだよ」

「......???」

 よし落ち着け。一々考えるのはやめよう。ここはそういうところだ。

「アハハ、鵜呑みにしちゃってるねー。残念だけど、殺し合いって言っても血が出るまで殺るもんじゃないよ。それぞれの代表が、選びに選び抜いた精鋭を使って、擬似的な戦争をすんだよ。もちろん、四つ巴でね。で、最後まで生き残った陣営がその年から4年間トップの座に君臨するってわけ。実に分かりやすい方法だろ?」

 確かに、分かりやすい内容ではあるが、力づくで従わせるって事だろ?そんなのでいいのか......

「......まあいいか。それで、お前にはちゃんと勝算があるのか?」

「ないよ」

「......そんなんで、よく次の王になるって言えたもんだな」

「なんであたしがあんたらを受け入れたのか。その理由、今の発言でよぉく分かると思うんだけどね」

「まさか、俺達に出ろと!?」

「そういうことさ」

「おいおい、他国の王族を出していいわけがーー」

「問題ないよ。勝つためなら手段を選ばない。これも、この国の王になる為には必要な力だからね。わざわざ国境の壁で、向かってくるもの全員薙ぎ払ってるのは、真に強い奴を呼び込むためだよ。そしたら、まさかまさかの最強剣士到来!これはもう、あたし達の時代が来たって感じだよねー!」

 随分とガバガバな王選だな。一応は王を決める戦いだろ?それに他国の王族を出すとか......

「......本気なのか?」

「本気だよ」

「本気なのか」

「うん、本気の本気。アンタに出て欲しいと願ってる。どうだい?そこで、アンタらが勝てば、めでたくあたしが王になって、即アンタらと同盟関係。悪くない話だろ?」

 確かに、悪くはないな。信用するかどうかっていう問題はあるが、この人は信用できる。というか、姉さんなら信用する。

 ここは、1発俺達自警団が他3組を倒して、この人に王になってもらうとするか。それが1番早いし、確実だ。

「......よし、乗った」

「マジか!?ありがとー!本当に困ってたんだよー!」

「......よくよく考えたら、明日が本番だと言うのに、今日までなんの準備もしなかったわけだろ?そんなので、本当に王を目指す気はあったのか?」

「あるよ。あるからこそ、アンタらみたいな強い奴が現れるのをギリギリまで待ってたのさ。万が一、今日になっても現れなかったら、あたしは大人しく白旗振ってるところだったさ。そういう意味でも、アンタもあたしも運が良かったのさ」

 まあ、確かに運は良かったよな。

「それじゃ、あたしは明日の準備があるから、サナラ、後は任せたよー」

「承知しました」

 明日の準備......いや、大事な事なんだから、1週間くらい前には終わらせてろよ......

 一国の王として、っていうわけでもないがそう思った。
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