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第7章 【悪魔の科学者】
第7章4 【正体】
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セツノ連邦と同盟を正式に結んでから早1週間。
この間、驚くくらいにザガルは動きを見せなかった。
流石のザガルも、イーリアスとセツノが同盟を結んだとなれば下手な動きは出来ないか。なんせ、北と東で挟み撃ちにされてるわけだしな。殺るなら双方を同時に壊滅させるくらいの勢いでやらないとならないしな。
「おい、ネイ。足は順調か?」
「..................」
「......なあ、メイ。これはどういう状況だ?」
リハビリ部屋に入ると、いきなり倒れ込んだ状態のネイと、青ざめた顔のメイ。いや、何があった?
「......リハビリを初めてから早1ヶ月。何も回復する予兆は見えないし、この城暑いし、ヴァル達は見舞いに来ないし、ザガルの対策を何故か私が考えることになるし、その流れで何故かイーリアスの政策まで任されブツブツブツブツ」
「おい、落ち着け。禁断症状が出始めてるぞ」
「流石に、根を詰めすぎたかな?アハハハ......」
おい、ちょっと待て。まさかとは思うが、不眠不休でやらせたとかそうじゃないだろうか?
「1日の寝る時間はたったの8時間。そんなので、こんなきつい事を続けられるわけないじゃないですか」
なるほどな。メイによって生活リズムを整えられたネイは、それについて行けなかったようだ。まあ、普段15時間とか寝てるらしいからな。無理はない。
「......流石に、睡眠不足は成長期のこいつに良くはない。あまり無理させないようにな」
「......そうね。お兄ちゃん、またネイさんを外に連れてったら?」
「今の流れでなぜそうなる?」
「だって、しばらくは外に出てないし」
「......まあ、いいか。ほら、ネイ。起き上がれ」
「あの......起き上がれない体だって知ってます?」
「自力で起きてみろ。じゃないと、いつまで経っても治らないぞ」
「......ん"ん」
腹筋でもするかのように立ち上がろうとするが、腰に力が入らないらしく、やはり起き上がれなかった。
「やっぱりダメなのよね」
「ああ、そうみたいだな」
全く、いつになったら回復の兆しが見えるのやら......
今のところ、あいつらが見舞いに来ることはないが、明日にでも来てみろ。この状態だぞ?なんて言われるかが容易に想像できる。
「ん"......はぁ......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あ"ぁ......眠い」
「なら寝ればいいじゃないか」
「こんな太陽の光がサンサンとしてる中で、寝られるわけがないじゃないですか」
「そうか?俺は寝られるぞ」
あなたと同じにしないでください。
なんて事を言っても、この天然聖王には通じない。それくらい、もう分かっている。
こうやって、車椅子に乗せられてイーリアスの王都を見てるが、やはり何もない街並み。唯一あるとすれば、クロムさんに馴れ馴れしく話しかける住民だけかな。
はっきり言って、目障りではある。一々私の顔を覗こうとしてくるし、変に質問ばっかしてくるし......
あーあ、ヴァルのところに帰りたーい。こんなところにいても、足が治る気がしないし、何もないし、毎日退屈だし、好きなだけ寝られないし......あれ?よくよく考えたら、いい事何もない......
「おい、ネイ。何全てを察した賢者の顔をしてるんだ?」
「別に......ただ、退屈な毎日だなって思ってただけですよ」
「退屈な毎日か......なら、何があれば退屈じゃなくなるんだ?」
「そりゃあ、ヴァル達と過ごす、刺激のある毎日ですね。こんな平和を形にしたような国にいて楽しいわけがないでしょ」
「悪かったな、平和そのものの国で」
「あれから、ザガル王国も攻めてきませんし」
「それはいい事だろ」
「きっと、一気に侵攻をするために力を溜めてますよ。今のうちに叩くのが吉です」
「だとしてもな、俺達はなるべく争い事は無しで生きたいんだ。何も起こらないうちから戦いには行きたくない」
「チキンですね」
「勝手に言ってろ」
もう、ヴァルだったら、すぐに殴りに行くって言って、誰の制止も聞かずに飛び出すのに......
私は、そういうのが好きなのに、この王様とは馬が合わない。
「へぇー......だったら、刺激のある日を過ごしてもらおうか?」
「っ......誰だ!」
突然聞こえた、ダミのかかった男の声。しかし、この人通りの多い大通りで、その声の主を見つけることは出来ない。
「ここだよここ。お前らの目の前」
「......お前は、確か」
「エンマだよエンマ。1週間ぶりだな、イーリアスの聖王」
仮面を着た男。怪しげな雰囲気を感じる。
「何の用だ」
セツノ連邦の王選で見た謎の男。あの時は気にしなかったけど、こんな至近距離で目を合わせれば感じることが出来る圧倒的マナの量。
この男、只者じゃない......
「クロムさん、警戒してください」
「ああ、分かってる」
「おやおや、随分と警戒されてるみたいだなぁ。俺はただ、そこの聖王と決着をつけに来ただけなんだがなぁ」
「決着?」
「そうだよ。セツノ連邦の王選じゃぁ、本気でやれなかったしなぁ。ここで決着をつけようや?」
「待て、ここは人の多い大通りだ。やるなら城の訓練場でやろう」
「......面白くねえなぁ。市街地でやるからこそ、刺激があるんだろうが」
急速に、手のひらにマナを溜めてる?
「......!クロムさん避けて!」
「っ......!」
「俺が臨むのは、殺し合いだ」
その直後、辺り一帯を巻き込んでの大爆発が起きた。
......
......
......
「っ......」
咄嗟のことで、防衛陣を敷くことが出来なかった。
何とか動く腕で、匍匐前進をして、倒れているクロムさんの元に行く。
「クロム......さん......」
酷い怪我だ。急いで治さないと......
「ほう......流石は、邪龍だな。今の爆発で動けるとは、流石だ」
「っ......お前......」
「どうだ?刺激のある1日だったろ?」
「私が望んでるのはそういう事じゃない!」
「変わんねえだろ。俺とお前は敵対関係。ギルドの依頼なんざ、基本はそういう関係で戦うんだしよ、何も変わらねえだろ」
確かに、やってる事は変わらないかもしれない。でも、これは規模が大きすぎる......
これは、普段私達がやってるようなこととは違う。ただの、テロに過ぎない......
「ほらよ、グランメモリーズの魔導士。お前らは、こういう状況をどうにかするんだろ?やってみせろよ。俺を倒して、平和をもたらしてみせろよ」
「......あなた、自分が何やってるのか分かってるんですか」
「ああ、分かってるよ?俺も、刺激のある毎日を送りてぇからなぁ。それで、久々に現れたやり甲斐のある相手。なのに、そいつは戦いを拒んだ。なら、こうでもして戦うしかねえだろ?」
狂ってる......
こいつは、ただただ退屈だからと街を破壊した。許せない......
「おう?やる気か?」
「......ニルヴァーナ!」
「よっと」
「うわぁっ......!」
指でデコピンするみたいにして魔法を弾き返された。
「ったくよ、そんな低火力の魔法じゃ、俺には効かねえよ。返り討ちに遭うだけだ」
「っ......」
足さえ、足さえ動いてくれれば......
体に力が入らない。不安定な姿勢で魔法を撃つことは、あまり良くないことである。特に、私の場合は魔法の出し方が出し方だけに、ちゃんと立って撃つ必要がある。
誰でもいい。私達を助けに来てよ......
私じゃ、今の私じゃこいつには勝てない。論理的にではない。本能でそう感じる。
「っ......貴様......」
「ほう、もうお目覚めか。そうでなくちゃ、盛り上がらねえからな」
「クロムさん......」
「下がってろ......って言っても下がれねえか。いいか、俺がお前を守る。この命に変えてでもだ」
「いいねぇ、その覚悟。俺はこういう展開、嫌いじゃねえよ」
ダメだ。私の治癒術でも、体のあちこちから出血してる状態で戦えるわけがない。
「聖龍・覚醒......」
「ほう......」
赤い炎......?
青々としていたオーラが、赤く染まっている。
「......聖龍・オーバーレイ」
その赤々ととした炎が、剣にまで走っていってエンマに強烈な一撃を喰らわす。
「......っ、中々やるじゃねえか」
「お前は、俺の民を殺した。俺はお前を許さない......」
「いいねぇ、その覚悟。熱いねぇ。だが、これならどうだ?」
何をする気だ?
「え......?あれ、ちょっと......」
「ほらよ、つーかまーえたー」
「きやぁぁぁっ......」
「ネイっ!」
体に、不思議な浮遊感が働いたと思ったら、その矢先、一瞬でエンマの元にまで引き寄せられた。
「人間は、こういう展開を人質って言うんだよな?」
「クソっ......ネイを解放しろ!」
「って言われて、大人しく返す極悪人がいるか?」
こいつ、自覚のあるタイプだ。
自覚のある悪人は、頭が妙にキレてタチが悪い。それに、こいつはとんでもない魔導士である事を、私に示している。
「くっ......」
人道的であるクロムさんには、この状況で下手に手出しすることが出来ない。
「......そうだ、お前らに良い話をしてやろう」
「良い話......?」
「そうだ。多分、聞いたらお前ら2人とも黙ってねえ話だ」
「......」
「......」
「ほう、黙ったな。まあいいや。ちゃんと話してやるよ。お前ら、いや、クロム。お前がよく知ってるヒカリについての話だ」
「ヒカリ......?」
「ああそうだ。1年前、聖龍の墓場で身投げした奴。そいつの遺体が、なぜ見つからないのか分かるか?」
「......さあ?近くには大きな川もあったし、流されたんじゃ......」
「ま、普通はそう考えるよな。だがな、実際は違うんだ」
「......」
エンマは、私の顔をチラリと見て、ニヤついた後にこう言った。
「ヒカリの遺体が見つからない理由。それは、ここにいる龍人のネイが、そのヒカリだからだ」
......
......
......
「どういう事だ......?」
「そのまんまの意味だよ。こいつの正体がヒカリ。それだけだ」
そんな......はずが......
「お前、14になるまでの記憶がねえだろ?」
「......」
「それは、俺が消してやったからだ。第2の人生を送るには、その記憶は邪魔だと思ったんでな」
「......なん......で」
「身投げしたあの日、お前は辛うじて生きてたんだ。俺は、体を治してやって、ついでに元の姿に戻してやっといた。あと、お前が持ってるべき剣も添えてな」
剣......これか、龍王達と繋がるための剣。
『to nei』
そう書いてあるから、私は『ネイ』という名なのだと思ってた。
でも、実際はヴァル達の心にこびりついて離れない『ヒカリ』だったなんて......
私は、いてはいけない者。
「私は......私は......」
「お前が、世界から恐れられた悪魔の科学者なんだよ。グランメモリとかいう、人間をバケモンに変えちまう装置を作りやがって。まあ、俺から見れば楽しい演劇だったがな」
「......」
「エンマぁぁぁぁぁぁ!」
「おっと、ここに、ヒカリがいるんだぞ?それ以上近づいて大丈夫なのか?」
「くっ......クソっ......」
「いいねぇ、その顔。面白いねぇ......」
「......お前は、何を望んでるんだ!こんな事をして、何がしたい!?」
「何がしたい......か......まあ、俺は楽しければ何でもいいんだよ」
楽しければ......そんな理由で......
「邪龍のほうこーー」
「お前は寝てろ」
「あっ......」
最後に、エンマの不気味すぎる笑みが見えて、私の意識は消えた。
この間、驚くくらいにザガルは動きを見せなかった。
流石のザガルも、イーリアスとセツノが同盟を結んだとなれば下手な動きは出来ないか。なんせ、北と東で挟み撃ちにされてるわけだしな。殺るなら双方を同時に壊滅させるくらいの勢いでやらないとならないしな。
「おい、ネイ。足は順調か?」
「..................」
「......なあ、メイ。これはどういう状況だ?」
リハビリ部屋に入ると、いきなり倒れ込んだ状態のネイと、青ざめた顔のメイ。いや、何があった?
「......リハビリを初めてから早1ヶ月。何も回復する予兆は見えないし、この城暑いし、ヴァル達は見舞いに来ないし、ザガルの対策を何故か私が考えることになるし、その流れで何故かイーリアスの政策まで任されブツブツブツブツ」
「おい、落ち着け。禁断症状が出始めてるぞ」
「流石に、根を詰めすぎたかな?アハハハ......」
おい、ちょっと待て。まさかとは思うが、不眠不休でやらせたとかそうじゃないだろうか?
「1日の寝る時間はたったの8時間。そんなので、こんなきつい事を続けられるわけないじゃないですか」
なるほどな。メイによって生活リズムを整えられたネイは、それについて行けなかったようだ。まあ、普段15時間とか寝てるらしいからな。無理はない。
「......流石に、睡眠不足は成長期のこいつに良くはない。あまり無理させないようにな」
「......そうね。お兄ちゃん、またネイさんを外に連れてったら?」
「今の流れでなぜそうなる?」
「だって、しばらくは外に出てないし」
「......まあ、いいか。ほら、ネイ。起き上がれ」
「あの......起き上がれない体だって知ってます?」
「自力で起きてみろ。じゃないと、いつまで経っても治らないぞ」
「......ん"ん」
腹筋でもするかのように立ち上がろうとするが、腰に力が入らないらしく、やはり起き上がれなかった。
「やっぱりダメなのよね」
「ああ、そうみたいだな」
全く、いつになったら回復の兆しが見えるのやら......
今のところ、あいつらが見舞いに来ることはないが、明日にでも来てみろ。この状態だぞ?なんて言われるかが容易に想像できる。
「ん"......はぁ......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「あ"ぁ......眠い」
「なら寝ればいいじゃないか」
「こんな太陽の光がサンサンとしてる中で、寝られるわけがないじゃないですか」
「そうか?俺は寝られるぞ」
あなたと同じにしないでください。
なんて事を言っても、この天然聖王には通じない。それくらい、もう分かっている。
こうやって、車椅子に乗せられてイーリアスの王都を見てるが、やはり何もない街並み。唯一あるとすれば、クロムさんに馴れ馴れしく話しかける住民だけかな。
はっきり言って、目障りではある。一々私の顔を覗こうとしてくるし、変に質問ばっかしてくるし......
あーあ、ヴァルのところに帰りたーい。こんなところにいても、足が治る気がしないし、何もないし、毎日退屈だし、好きなだけ寝られないし......あれ?よくよく考えたら、いい事何もない......
「おい、ネイ。何全てを察した賢者の顔をしてるんだ?」
「別に......ただ、退屈な毎日だなって思ってただけですよ」
「退屈な毎日か......なら、何があれば退屈じゃなくなるんだ?」
「そりゃあ、ヴァル達と過ごす、刺激のある毎日ですね。こんな平和を形にしたような国にいて楽しいわけがないでしょ」
「悪かったな、平和そのものの国で」
「あれから、ザガル王国も攻めてきませんし」
「それはいい事だろ」
「きっと、一気に侵攻をするために力を溜めてますよ。今のうちに叩くのが吉です」
「だとしてもな、俺達はなるべく争い事は無しで生きたいんだ。何も起こらないうちから戦いには行きたくない」
「チキンですね」
「勝手に言ってろ」
もう、ヴァルだったら、すぐに殴りに行くって言って、誰の制止も聞かずに飛び出すのに......
私は、そういうのが好きなのに、この王様とは馬が合わない。
「へぇー......だったら、刺激のある日を過ごしてもらおうか?」
「っ......誰だ!」
突然聞こえた、ダミのかかった男の声。しかし、この人通りの多い大通りで、その声の主を見つけることは出来ない。
「ここだよここ。お前らの目の前」
「......お前は、確か」
「エンマだよエンマ。1週間ぶりだな、イーリアスの聖王」
仮面を着た男。怪しげな雰囲気を感じる。
「何の用だ」
セツノ連邦の王選で見た謎の男。あの時は気にしなかったけど、こんな至近距離で目を合わせれば感じることが出来る圧倒的マナの量。
この男、只者じゃない......
「クロムさん、警戒してください」
「ああ、分かってる」
「おやおや、随分と警戒されてるみたいだなぁ。俺はただ、そこの聖王と決着をつけに来ただけなんだがなぁ」
「決着?」
「そうだよ。セツノ連邦の王選じゃぁ、本気でやれなかったしなぁ。ここで決着をつけようや?」
「待て、ここは人の多い大通りだ。やるなら城の訓練場でやろう」
「......面白くねえなぁ。市街地でやるからこそ、刺激があるんだろうが」
急速に、手のひらにマナを溜めてる?
「......!クロムさん避けて!」
「っ......!」
「俺が臨むのは、殺し合いだ」
その直後、辺り一帯を巻き込んでの大爆発が起きた。
......
......
......
「っ......」
咄嗟のことで、防衛陣を敷くことが出来なかった。
何とか動く腕で、匍匐前進をして、倒れているクロムさんの元に行く。
「クロム......さん......」
酷い怪我だ。急いで治さないと......
「ほう......流石は、邪龍だな。今の爆発で動けるとは、流石だ」
「っ......お前......」
「どうだ?刺激のある1日だったろ?」
「私が望んでるのはそういう事じゃない!」
「変わんねえだろ。俺とお前は敵対関係。ギルドの依頼なんざ、基本はそういう関係で戦うんだしよ、何も変わらねえだろ」
確かに、やってる事は変わらないかもしれない。でも、これは規模が大きすぎる......
これは、普段私達がやってるようなこととは違う。ただの、テロに過ぎない......
「ほらよ、グランメモリーズの魔導士。お前らは、こういう状況をどうにかするんだろ?やってみせろよ。俺を倒して、平和をもたらしてみせろよ」
「......あなた、自分が何やってるのか分かってるんですか」
「ああ、分かってるよ?俺も、刺激のある毎日を送りてぇからなぁ。それで、久々に現れたやり甲斐のある相手。なのに、そいつは戦いを拒んだ。なら、こうでもして戦うしかねえだろ?」
狂ってる......
こいつは、ただただ退屈だからと街を破壊した。許せない......
「おう?やる気か?」
「......ニルヴァーナ!」
「よっと」
「うわぁっ......!」
指でデコピンするみたいにして魔法を弾き返された。
「ったくよ、そんな低火力の魔法じゃ、俺には効かねえよ。返り討ちに遭うだけだ」
「っ......」
足さえ、足さえ動いてくれれば......
体に力が入らない。不安定な姿勢で魔法を撃つことは、あまり良くないことである。特に、私の場合は魔法の出し方が出し方だけに、ちゃんと立って撃つ必要がある。
誰でもいい。私達を助けに来てよ......
私じゃ、今の私じゃこいつには勝てない。論理的にではない。本能でそう感じる。
「っ......貴様......」
「ほう、もうお目覚めか。そうでなくちゃ、盛り上がらねえからな」
「クロムさん......」
「下がってろ......って言っても下がれねえか。いいか、俺がお前を守る。この命に変えてでもだ」
「いいねぇ、その覚悟。俺はこういう展開、嫌いじゃねえよ」
ダメだ。私の治癒術でも、体のあちこちから出血してる状態で戦えるわけがない。
「聖龍・覚醒......」
「ほう......」
赤い炎......?
青々としていたオーラが、赤く染まっている。
「......聖龍・オーバーレイ」
その赤々ととした炎が、剣にまで走っていってエンマに強烈な一撃を喰らわす。
「......っ、中々やるじゃねえか」
「お前は、俺の民を殺した。俺はお前を許さない......」
「いいねぇ、その覚悟。熱いねぇ。だが、これならどうだ?」
何をする気だ?
「え......?あれ、ちょっと......」
「ほらよ、つーかまーえたー」
「きやぁぁぁっ......」
「ネイっ!」
体に、不思議な浮遊感が働いたと思ったら、その矢先、一瞬でエンマの元にまで引き寄せられた。
「人間は、こういう展開を人質って言うんだよな?」
「クソっ......ネイを解放しろ!」
「って言われて、大人しく返す極悪人がいるか?」
こいつ、自覚のあるタイプだ。
自覚のある悪人は、頭が妙にキレてタチが悪い。それに、こいつはとんでもない魔導士である事を、私に示している。
「くっ......」
人道的であるクロムさんには、この状況で下手に手出しすることが出来ない。
「......そうだ、お前らに良い話をしてやろう」
「良い話......?」
「そうだ。多分、聞いたらお前ら2人とも黙ってねえ話だ」
「......」
「......」
「ほう、黙ったな。まあいいや。ちゃんと話してやるよ。お前ら、いや、クロム。お前がよく知ってるヒカリについての話だ」
「ヒカリ......?」
「ああそうだ。1年前、聖龍の墓場で身投げした奴。そいつの遺体が、なぜ見つからないのか分かるか?」
「......さあ?近くには大きな川もあったし、流されたんじゃ......」
「ま、普通はそう考えるよな。だがな、実際は違うんだ」
「......」
エンマは、私の顔をチラリと見て、ニヤついた後にこう言った。
「ヒカリの遺体が見つからない理由。それは、ここにいる龍人のネイが、そのヒカリだからだ」
......
......
......
「どういう事だ......?」
「そのまんまの意味だよ。こいつの正体がヒカリ。それだけだ」
そんな......はずが......
「お前、14になるまでの記憶がねえだろ?」
「......」
「それは、俺が消してやったからだ。第2の人生を送るには、その記憶は邪魔だと思ったんでな」
「......なん......で」
「身投げしたあの日、お前は辛うじて生きてたんだ。俺は、体を治してやって、ついでに元の姿に戻してやっといた。あと、お前が持ってるべき剣も添えてな」
剣......これか、龍王達と繋がるための剣。
『to nei』
そう書いてあるから、私は『ネイ』という名なのだと思ってた。
でも、実際はヴァル達の心にこびりついて離れない『ヒカリ』だったなんて......
私は、いてはいけない者。
「私は......私は......」
「お前が、世界から恐れられた悪魔の科学者なんだよ。グランメモリとかいう、人間をバケモンに変えちまう装置を作りやがって。まあ、俺から見れば楽しい演劇だったがな」
「......」
「エンマぁぁぁぁぁぁ!」
「おっと、ここに、ヒカリがいるんだぞ?それ以上近づいて大丈夫なのか?」
「くっ......クソっ......」
「いいねぇ、その顔。面白いねぇ......」
「......お前は、何を望んでるんだ!こんな事をして、何がしたい!?」
「何がしたい......か......まあ、俺は楽しければ何でもいいんだよ」
楽しければ......そんな理由で......
「邪龍のほうこーー」
「お前は寝てろ」
「あっ......」
最後に、エンマの不気味すぎる笑みが見えて、私の意識は消えた。
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