グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第7章 【悪魔の科学者】

第7章9 【忌まわしき記憶】

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 悪魔ってのは、休む間もなく働くもんだな、と俺はつくづく思っていた。

「よう、今回も駆けつけるのが早かったな」

ヒカリ「今日という今日はあなたを倒します!」

「へぇ......やけに、やる気に満ちた声だな。昨日とは大違いだ」

ヒカリ「ふっ......今回は、秘策があるんですよ」

 そう言って、ヒカリが、昨日爆発音と共に生み出したグランメモリを取り出す。

 まともな使い方をするものではないと分かっているが、それでも心配になってくる。

「へぇ......グランメモリか......」

ヒカリ「ただのメモリじゃありませんよ。今回のはお前を倒すためだけに生み出した兵器です!」

「なるほどな。じゃあ、ちょっとだけ待っててやるから、見せてみろよ。俺を倒す兵器ってやつを」

ヒカリ「その言葉、後悔するといいわ!」

 お前が後悔することにならなければいいのだがな。

クロム「全員、今のうちに奴を囲んでおけ」

「「「 了解! 」」」

 今日は、自警団全員が、完全な状態で揃えられている。ヒカリが作り出したメモリがどれほどの物かは分からないが、絶好のチャンスだ。

ヒカリ「行きますよー!えい!」

 カチッと音はしたが、いつものメモリみたいに、そのメモリを指す言葉が聞こえてこない。

 カチッ......

 カチッ......

 カチッ......

ヒカリ「あ、あれ......?」

クロム「おい、ヒカリ。ふざけてるのなら大概にしろ。俺達は本気なんだ」

ヒカリ「わ、私は至って本気です」

 カチッ......

 本当か?俺の目には悪ふざけしてるようにしか見えないぞ?

「......おいおい、俺を倒せる物を作り上げたんだろ?ふざけてないでさっさと見せろよ」

 カチッ......

 カチッ......

ヒカリ「え、えーっと......」

 ヒカリの顔から、段々と自信がなくなってくるのが見える。

クロム「おいおい......」

 まさか、未完成品だったのか?昨日、あれだけ自信満々に言っといて......

ヒカリ「なんで、なんで起動しないのよ!」

 遂にメモリを固く握り締めて、メモリに向かって叫んでる。

「おいおい、折角楽しみにしてやったってのにこの様か」

ヒカリ「......こんなはずが......」

 もう、こいつに任せてはいられない。

 聖龍の力が使えなくなったとは言えど、剣の腕は健在だ。それに、自警団全員が、エンマを取り囲むように配置されている。

クロム「ヒカリ、下がってろ。俺達でこいつを倒す!」

ヒカリ「......ごめんなさい」

 謝ることはない。お前のお陰で、奴を取り囲むくらいの事前準備は出来たからな。

「おい聖王。聖龍の力を失ったお前に、俺が倒せるとでも思ってるのか?」

クロム「......お前を倒す。それが、俺の使命だ」

アラン「罪なき人々に手を下したその罪、ここで償ってもらいます!」

「......やめだやめだ」

クロム「待て!逃がすわけにはいかん!」

「うるせぇな。折角の相手があの様だ。今日は、もう暴れる気分じゃねえ。じゃあな」

 また、瞬きをする間に奴が消えた。

クロム「......クソっ!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヒカリ「ごめんなさい......」

 自警団本部に戻ってから、早速反省会......と言っても、今回は何も無かったがな。運がいいのか悪いのか分からないな。

ヒカリ「私が、これを使えていたら、あいつを倒せたのに......」

クロム「今更そんな事を気に病んでも仕方ない。次こそは倒す。それでいいだろ」

バアル「とは言っても、次現れたらまた火の海になっている可能性がある。せめて、奴が次に現れる場所を予測出来ればな......」

ダギル「楽しさだけを求めて動き回ってる奴の次なんて分かんねえだろ。爆弾魔みたいに、何か目的があって動き回ってる訳じゃないんだしさ」

メノア「本当よねー。あいつには目的が無いってことが、腹立たしいポイントの1つよねー」

 目的か......

 あいつの行動理由は、ただ1つ、快楽を求めてだ。俺や、ヒカリがあいつをぶっ飛ばせるほどの力を手に入れれば、奴はそれに釣られて姿を現すかもしれない。だが、今の俺達では奴の餌にはならない。

 一体どうすれば......

サラ「あの......街の様子を見に行きたいのですが、よろしいでしょうか?」

ダギル「街の様子?んなもん見て何になるんだ?」

サラ「私は、戦闘においては一切役に立ってません。でも、瓦礫の撤去とか、皆さんの話を聞いて回ることくらいなら出来ます。私にも、出来ることをしたいんです」

クロム「......分かった。今日は一旦解散だ。だが、いつ奴が現れるか分からん。何かあったらすぐに信号弾を打ち上げろ。以上だ」

 全員、少し俯き気味に部屋を出ていく。中でも、1番落ち込んでるのはヒカリだ。

 そらそうだろうな。あれだけ自信満々に『勝てる』って言っといて、この有様だからな。幸い、奴が興醒めで何もせずに去っていったが、あのまま暴れられていたと考えると、とても恐ろしいものである。

アラン「クロム様......」

クロム「何も言うな。そして、あいつにも何も言ってやるな。1番気にしてるのは、あいつ自身だ」

アラン「......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 その日の夜。

クロム「......寝るか」

 灯りを消して、久し振りに落ち着いた感じでベッドに潜り込む。

 色々と考え事をしていたが、結局はどれも無意味であると結論づいた。

 どうやってエンマを倒すべきか。正直なところ、ヒカリに期待していた部分もある。あいつならどうにかしてくれるんじゃないか。そう考えていた。

 何をやってんだろうな。仲間を信じてやるのは大事な事だが、信じすぎて自分が何もしないというのは避けたい事態だ。

《コンコン......》

 ノックの音......メイか?

クロム「ヒカリ......?」

 返事も待たずに入ってきたのは、メイではなくヒカリだった。

ヒカリ「その......別に、怖いとかそういうわけじゃないんですけど......」

 ......あぁ、そういう事か。

クロム「お前、ここまでどうやって来たんだ?」

ヒカリ「......杖があれば、ギリギリ歩くことくらいできます」

 そこまで回復していたか。引き籠もってばっかなのに、治る部分は治るんだな。

ヒカリ「......隣で......寝ていいですか」

 よくそこまで言い切れたな。1年前とは大きな違いだ。

クロム「......言っとくが、俺の隣は狭いぞ」

ヒカリ「......分かってますよ。それくらい」

 静かにあいつが入ってくる。目を合わせるのもあれだし、俺は壁側に顔を向ける。なんか、すごく気まずい......。

ヒカリ「......」

 気にしてるなこりゃ。

 何も、お前が気にすることではないのに、こいつは『責任』というのを一身に背負ってる気がする。

 本来、責任を負うのは団長である俺のはずなんだがな。

クロム「......」

 いかん。考え事の多さと、隣でヒカリが寝てるせいで、寝辛い。

ヒカリ「嫌......嫌......嫌......嫌嫌嫌嫌嫌!」

クロム「......!ヒカリ!どうした!?ヒカリ!」

 辺りは暗いが、狭くもないし、俺が近くにいる。なのに、急に症状を起こしやがった......

クロム「おい!落ち着けヒカリ!」

ヒカリ「嫌!嫌......!嫌なの!もう......1人は......嫌......」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヒカリ「お"ぇぇぇぇ......」

 この作品は、サブヒロインに嘔吐シーンを見せることで有名なのか、とツッコミたくなるが、我慢しよう。作者の性癖がよく分からんな。

クロム「落ち着いたか......?」

ヒカリ「......はい」

クロム「ほら、これで顔を拭け」

 タオルを差し出すと、こいつは躊躇うかのような素振りを見せてから受け取る。

 そして、そのまま自室へと戻る。

クロム「1人は嫌か......」

ヒカリ「......聞こえてたんですか」

クロム「あんな半狂乱になって大声で叫んでたからな。嫌でも聞こえてくる」

ヒカリ「......」

クロム「......」

ヒカリ「......クロムさんに、私が人体錬成をした時の話ってしましたっけ?」

クロム「......いや、そんな話は聞いたことないな」

 人体錬成......絶対禁忌の錬金術......

 またぶっ飛んだ話だな。

ヒカリ「私が、なんで人外の魔法を使えるのか。なぜ、他の人が絶対に思い浮かばないような事を思いつくのか。なぜ、私だけが『グランメモリ』を生み出せたのか」

クロム「......まさか、それが人体錬成と繋がってるのか?」

ヒカリ「......普通、人体錬成という絶対禁忌を犯せば、その人は歴史から消えてしまいます。それでも、私はこの世に残った」

 人体錬成をしたという実例がないのは、そういう事なのか。1つ、世界の疑問が埋まったな。......なんて事を考えるべきではないのだが。

ヒカリ「......人体錬成。私が創ろうとしたのは、私のお姉ちゃん。それ自体に特に意味はありません。ですが、それを行えば、一時的に世界の書庫ワールドアーカイブに接続出来る。そして、そこに接続した者は歴史から消される。私は、なぜかこの世に残った。そうして、世界に残った私は、それ以来、自由に世界の書庫ワールドアーカイブに接続できるようになった」

クロム「......そこから、グランメモリが生まれたと」

ヒカリ「正式な名前は『創界の記憶』ですけどね」

 そこはどうでも良くないか?

ヒカリ「私は、グランメモリを作って以来、解放軍の中で上の地位に就きました。そこから、なんだかんだあって、この世界を侵略する1歩としてクロムさん達に近づいたというわけです」

 それが2年前。あの日、道端で倒れてるところを俺が拾った日だな。

ヒカリ「そこからの私は、クロムさん達が知ってる通りの私です」

 1年経ったくらいの時に、突然城を出て行って、次に見つけた時は侵略者として立ち塞がるヒカリ。そして、アルテミスによって説得できたかと思えば、敵によって操られる。最終的には死ぬことになって......いや、死にはしなかったが。

 不運な人生だな。人体錬成をしたが故に、グランメモリとかいう訳の分からない物を作って、それが他人に利用されて一時的に死ぬ。

ヒカリ「......私、なんでこんな事になってしまったのでしょうか」

クロム「......俺には分からん。お前の過去は、まるで知らんからな」

ヒカリ「そう......ですよね......。すみません。変なことを話してしまって......」

 ......姉さんなら、こいつの気持ちを分かってやれたのかな。

 同じ女で、人の気持ちを読む事が上手い姉さんなら、こいつを縛っているものを、解いてやれるのかな。

ヒカリ「私は......ただ......幸せになりたかった......だけなのに......」

 俺の肩に頭を置いて、涙を流している。

ヒカリ「なんで......なんで私ばっかが......こんな目に......私だって、普通の女の子として......生きたいだけなのに......」

 どうすればいいのか。俺には、ちょっと重すぎる問題だな。

 ただ、優しく抱きしめてやるしかできない。

ヒカリ「ごめんなさい......ごめんなさい......」

クロム「......俺は、お前を1人にはしない。それだけは約束する」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヒカリ「グランメモリーズ?」

クロム「ああそうだ。あいつらのところに行けば、何か見えるかもしれんからな」

ヒカリ「......」

クロム「行かないと言うのなら、自警団のメンバー全員に昨日のことをバラすぞ」

ヒカリ「あ!それはズルいですよ!」

クロム「なら、大人しくついてくることだな」

ヒカリ「むぅ......」

 また1つ、こいつの弱みを握れたな。プライドが高すぎることは、時に自分の意見を捻じ曲げないといけなくなるんだ。

 さて、結局のところ、ヴァル達にはなんの連絡もしてないが、まあいるだろう。そう思って、俺は転移の術式を発動させる。
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