194 / 434
第8章√NH 【星界の家族】
第8章7 【失われた記憶】
しおりを挟む
翌日。
シリウス「君が、イデアルの妹と自称する人物か」
ネイ「じ、自称って......」
シリウス「イデアルの家系に、妹がいたなどという記実はない。怪しんで当然だ」
そうまで言われると、私の生い立ちが益々気になる。
知っているのは、龍人の少女が結界のヴァルガのところへ連れて行ったという歴史のみ。
本当の母の姿は知らないし、私があの屋敷で過ごしていたのかも分からない。もしかしたら、その龍人が母なのかもしれないが、実際がどうなのかは分からない。
世界の書庫では、使用者の過去を知ることはできない。
シリウス「......イデアルには、この先の部屋で待機させている。聞いてるとは思うが、彼女の記憶は総隊長が人工的に生み出したもの。何かのきっかけで元の記憶が蘇るかもしれないから、くれぐれも変なことは言わないようにしてくれ」
ネイ「分かりました」
この軍の人は、人体錬成をないがしろにすることがイデアルの幸せだと考えている。
歴史なんて無かったことにはできない。それが人間。私だって、過去のことを全てなかったことにはできない。
写真で見ただけのお姉ちゃん。私は、ゆっくりとお姉ちゃんが待つ部屋の扉を開ける。
イデアル「次はここ。そして最後に氷のマナを配置......」
たくさんの本と魔法陣に囲まれてブツブツと何かの研究をしている少女。
これが、私のお姉ちゃん。
イデアル「シリウス様、ご用でしょうか」
こちらに気づいたお姉ちゃんは、魔法陣と浮かせていた本を床に落として、こちらにやって来る。
イデアル「こちらの御方は?」
シリウス「お前の妹と名乗る人物だ。お前に会いたくて来たらしい」
ネイ「......」
イデアル「私の......妹ですか......?」
不思議そうな目で見てくるお姉ちゃん。
本当に、私のことは一切知らないんだ......
分かっていたことだけど、改めて認識されてないとなると悲しくなる。
イデアル「......シリウス様、用はそれだけでしょうか?」
シリウス「......!もっと他にないのか?生き別れの家族だぞ?」
イデアル「興味ございません。それだけなら、私は研究を続行します」
そう言うと、先程と同じ体勢になって、魔法陣を広げる。
シリウス「......記憶を人工的に作った時に、戦い以外の情報は要らないと判断させたんだ。そのせいで、こうして無感情な奴になってしまった」
ネイ「......」
イデアル「なんですか?」
お姉ちゃんの頭を触って、記憶を覗き見る。
2年前。
お姉ちゃんは、軍に入ってから久し振りの帰省をしていた。
屋敷に住むのは、たった1人のメイド、スピカ。そこに、母の姿はない。
スピカの話によれば、母は、昔何者かによって殺されてしまった。スピカは、母が死ぬ前に雇った長期のメイドらしい。
スピカの話を聞き、たった1人だった家族を失ったお姉ちゃんのショックは大きかったようだ。
後は、大体予想通り。人体錬成によって作り出したのは、母だ。
ネイ「......なるほど」
人体錬成後に見える記憶は、血溜まりの中に浮かぶ黒い影。心を壊し、そこからは人工的に作られた記憶を元に生活してきた日々。
お姉ちゃん......。
ネイ「......汝、罪から逃れるな。汝の犯した罪は、その身に纏い、一生離れぬ鎧となる。認めよ、汝の罪を。逃げるな、己の罪から」
イデアル「っ......!あ"......あ"ぁ"っ......」
頭を押さえてその場に踞るお姉ちゃん。
......大丈夫。お姉ちゃんなら、きっと立ち直れる。
シリウス「イデアル......!イデアル!?おい、お前!何をした!?」
ネイ「......お姉ちゃんに、作り物の記憶は要りません」
シリウス「......!まさか、お前......」
作り物の記憶なんてあっていいものじゃない。
お姉ちゃんにはお姉ちゃんの人生がある。誰にも邪魔させない。
ミルキーウェイ「何事じゃ、シリウス」
慌てて現場に駆けつけてきたミルキーウェイ。
ミルキーウェイ「どうしたんじゃ?」
シリウス「この者が......イデアルの記憶を......」
ミルキーウェイ「何!?」
そう言えば、記憶を作り出したのは、ミルキーウェイだったか。
ミルキーウェイ「お主、なんて事をしてくれたのじゃ......イデアルに記憶を植え付けたのは、この子を守るため。分かっておるじゃろ?」
ネイ「罪から逃れるのが正しいことですか?」
ミルキーウェイ「たまには逃げねばならぬこともある」
ネイ「......残念です。これだから人間は愚かで嫌いなんですよ」
もうここに用はない。私は、ミルキーウェイと入れ替わりに部屋を出ていく。
ネイ「仲間になるって話でしたっけ?残念ですけど、無理そうです」
ミルキーウェイ「っ......!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルタイル「......」
マース「......」
部隊長が刀を肩の上に構え、マースも同じように刀を構える。
アルタイル「むっ......!」
小さな雨粒の音と共に、2人が刀をぶつけ合う。
部隊長は、どっしりとした構えで受け止め、マースは素早い動きでのらりくらりと攻撃をかわしつつ、攻撃する。
俺達が手出しできる戦いじゃない。それは、一目見ただけで分かった。
ただ、これは戦争。正々堂々とした戦いを見続けるわけにもいかない。
カストル「行くぞ、アンタレス、アルレシャ」
アンタレス「了解」
アルレシャ「合わせるよーせーっの!」
「「「 星天・三魔の法! 」」」
火、水、闇の合わせ技。
足元を水で浸し、太陽の如く熱い炎によって周囲の気温を上昇させる。そして、闇の障壁によって、俺達はこの異常気象から守られる。
マース「なるほど。天候操作ってわけかい」
カストル「隊長、今のうちに」
アルタイル「待て。これしきで攻めることなど出来ん」
マース「そうだよ。若造、これしきであたしが不利になるとは考えない方が良いよ」
周りの水が全て蒸発した......?
マース「あたしにとって、炎も水も全て自由な資源。暑さも寒さも感じない。あんたら若造の攻撃は、全て無駄ってことさ」
アルタイル「むぅ............」
まさか、我らの部隊長が押されている......
マース「アルタイルや。ジジイになっても動けるのは良い事だが、ちょっと感覚が鈍ったかい?」
アルタイル「ジジイにもなれば、多少は動きが鈍る。じゃが、こんなところで膝をつくほど、老いぼれてはおらん」
マース「随分やる気なジジイだねぇ」
アルタイル「マース。お前の方は何も変わらんな。お前と出会ってから、40年は経っておると言うのに、何一つ変わらぬその容姿。何をしたらそうなるのやら」
マース「これかい?世の人間は、皆不老不死に憧れる。あたしは一足先にそれを手に入れただけさ」
不老不死の技術など、この世界にない。
だが、部隊長が言った、『40年前』にはマースが存在していたとなると、あの若々しい容姿では不老不死というのも納得してしまう。
綺麗な赤髪に、豊満な胸。そして、露出の多い赤い服装と、若々しさを十分に感じさせる。
カストル「隊長、この者は......」
アルタイル「昔、どこかで手に入れた不老不死の法をその身に纏いし者。我と奴とは、長年の好敵手」
マース「だけど、あんたはすっかりと老いぼれて私の勝利が多くなってきたねぇ」
アルタイル「......その戦いも、今日、この日をもって終わりとする。貴様をここで討ち、我ら星界軍の勝利への糧とする」
マース「ハッ......やれるもんならやってみな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
イデアル「う"......あ"......嫌......嫌......」
ミルキーウェイ「なんて事じゃ......」
あの小娘、自らの姉を苦しめて平気なのか。
分からぬ。彼奴が考えておることが、妾には分からぬ。
シリウス「総隊長、どうするつもりですか......このままでは、イデアルが......」
ミルキーウェイ「そんなもの、もう一度作り直すに決まっておる」
もう一度過去の記憶を消し、新たな記憶を植え付ける。昔に一度行ったこと。もう1回やるなど経でもない。
ミルキーウェイ「......?これは......?」
シリウス「どうされましたか?」
ミルキーウェイ「......記憶部分への接続が不可能となっておる。あの小娘が、妾達が手を出せぬよう、外部からの接触を阻止しておるのじゃ」
シリウス「......という事は、イデアルは......」
ミルキーウェイ「もう、妾達ではどうしようもない。このまま、苦しんでおる姿を眺めることしか出来ぬ」
シリウス「そんな......」
っ......なんて事じゃ。
何も手出しが出来ぬ。このまま、イデアルが苦しむだけの姿を見るなど、妾には出来ぬ。
どうにかして記憶部分に介入できないかと探るが、どう足掻いても、記憶に触れることが出来ぬ。
こんなことが出来るなど、あの小娘、何者じゃ?ただの人間ではあるまい。それに、顔だけ見れば幼いその姿も、数々の戦場を潜り抜けてきた老騎士のように、戦場の痕が残されておる。
何をその目で見てきたのか。どんな生き方をしてきたのか。直接、確かめねばならぬ。
ミルキーウェイ「シリウス、ネイを追え。そして捕らえよ」
シリウス「了解!」
「失礼します!」
こんな時じゃというのに何事じゃ。
ミルキーウェイ「どうした、アルキオネ」
アルキオネ「プルトからの報告です。たった今、我らが抑えた領地それぞれに、太陽系八人衆が攻め込んでくるそうです!」
ミルキーウェイ「太陽系の者共か......」
いつかはそういう作戦を取ってくるとは思ったが、なんとも中途半端な時期を選んだのう。
アルキオネ「敵の規模は、太陽系1人につき5000。そして、早いところには明日にでも到着するそうです!」
ミルキーウェイ「明日じゃと!?」
早い。早すぎる。
プルトの奴、情報を掴むのに遅れを生じさせたか......
アルキオネ「時間がありません総隊長!今、本部に残っているのは、第1部隊と第3部隊のみ。如何なされますか?」
兵が枯渇しとる時期を見計らっての進行。オマケに、第1部隊の要とも言えるイデアルがこんな状態。
せめて、部隊長であるベガが帰ってくれば完全な状態で出陣させることが出来るが......
シリウス「総隊長、考えている暇はありません。領地の幾つかは捨てることになりますが、奴らがここに侵攻する際に重要となる拠点に兵を置くべきです!」
ミルキーウェイ「......そうじゃな」
ただ、太陽系1人につき5000か......
最重要拠点ともなれば、そこまで侵攻して来る頃には何人かが集まっておるはず。とても、第1部隊と第3部隊だけでどうにか出来るとは思えん。
ミルキーウェイ「第1部隊を西の砦に。第3部隊を東の砦に配置。ベガには速達を届けよ」
アルキオネ「了解」
第2部隊は、マースと対峙しているはず。だが、8人全員が侵攻して来るとなると、敗北した可能性が極めて高い。もしくは、マースだけが一足先に来た可能性もある。ただ、それはあくまで可能性の話。現状、妾達が不利なことに変わりはない。
ミルキーウェイ「シリウス、太陽系は倒さなくてもいい。出来るだけ、敵に損害を与えてから本部まで撤退じゃ。敵を攻め込ませることになるが、この街で総力戦を行う」
シリウス「し、しかしそれでは......」
ミルキーウェイ「これしか方法がない。今のうちに、住人の避難を妾が行っておく。お前は早くに行け」
シリウス「......了解......致しました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
暗い暗い、真っ暗な空間。
ここに閉じ込められて、何年の月日が経っただろう。
外で私を呼ぶ声がする。
周りで、この世界から脱出しようとする龍の叫び声がする。
遠い過去で、雨の中で叫ぶ少女の声がする。
ミルキーウェイ。コスモ。そして、我が妻ユニバー。
君達は、実に素晴らしい魔導士だった。
世界に恐れられた、この私を、こうして長年閉じ込められているのだからね。
でも、そうしてられるのも時間の問題。
......そうさ、俺は、ここで密かに逆転の時を狙っている。
君達3人のうち、2人は死んだ。
ミルキーウェイ。後は、君が死ねば、私をここに括り付ける者などいなくなる。
精々足掻くといい。
シリウス「君が、イデアルの妹と自称する人物か」
ネイ「じ、自称って......」
シリウス「イデアルの家系に、妹がいたなどという記実はない。怪しんで当然だ」
そうまで言われると、私の生い立ちが益々気になる。
知っているのは、龍人の少女が結界のヴァルガのところへ連れて行ったという歴史のみ。
本当の母の姿は知らないし、私があの屋敷で過ごしていたのかも分からない。もしかしたら、その龍人が母なのかもしれないが、実際がどうなのかは分からない。
世界の書庫では、使用者の過去を知ることはできない。
シリウス「......イデアルには、この先の部屋で待機させている。聞いてるとは思うが、彼女の記憶は総隊長が人工的に生み出したもの。何かのきっかけで元の記憶が蘇るかもしれないから、くれぐれも変なことは言わないようにしてくれ」
ネイ「分かりました」
この軍の人は、人体錬成をないがしろにすることがイデアルの幸せだと考えている。
歴史なんて無かったことにはできない。それが人間。私だって、過去のことを全てなかったことにはできない。
写真で見ただけのお姉ちゃん。私は、ゆっくりとお姉ちゃんが待つ部屋の扉を開ける。
イデアル「次はここ。そして最後に氷のマナを配置......」
たくさんの本と魔法陣に囲まれてブツブツと何かの研究をしている少女。
これが、私のお姉ちゃん。
イデアル「シリウス様、ご用でしょうか」
こちらに気づいたお姉ちゃんは、魔法陣と浮かせていた本を床に落として、こちらにやって来る。
イデアル「こちらの御方は?」
シリウス「お前の妹と名乗る人物だ。お前に会いたくて来たらしい」
ネイ「......」
イデアル「私の......妹ですか......?」
不思議そうな目で見てくるお姉ちゃん。
本当に、私のことは一切知らないんだ......
分かっていたことだけど、改めて認識されてないとなると悲しくなる。
イデアル「......シリウス様、用はそれだけでしょうか?」
シリウス「......!もっと他にないのか?生き別れの家族だぞ?」
イデアル「興味ございません。それだけなら、私は研究を続行します」
そう言うと、先程と同じ体勢になって、魔法陣を広げる。
シリウス「......記憶を人工的に作った時に、戦い以外の情報は要らないと判断させたんだ。そのせいで、こうして無感情な奴になってしまった」
ネイ「......」
イデアル「なんですか?」
お姉ちゃんの頭を触って、記憶を覗き見る。
2年前。
お姉ちゃんは、軍に入ってから久し振りの帰省をしていた。
屋敷に住むのは、たった1人のメイド、スピカ。そこに、母の姿はない。
スピカの話によれば、母は、昔何者かによって殺されてしまった。スピカは、母が死ぬ前に雇った長期のメイドらしい。
スピカの話を聞き、たった1人だった家族を失ったお姉ちゃんのショックは大きかったようだ。
後は、大体予想通り。人体錬成によって作り出したのは、母だ。
ネイ「......なるほど」
人体錬成後に見える記憶は、血溜まりの中に浮かぶ黒い影。心を壊し、そこからは人工的に作られた記憶を元に生活してきた日々。
お姉ちゃん......。
ネイ「......汝、罪から逃れるな。汝の犯した罪は、その身に纏い、一生離れぬ鎧となる。認めよ、汝の罪を。逃げるな、己の罪から」
イデアル「っ......!あ"......あ"ぁ"っ......」
頭を押さえてその場に踞るお姉ちゃん。
......大丈夫。お姉ちゃんなら、きっと立ち直れる。
シリウス「イデアル......!イデアル!?おい、お前!何をした!?」
ネイ「......お姉ちゃんに、作り物の記憶は要りません」
シリウス「......!まさか、お前......」
作り物の記憶なんてあっていいものじゃない。
お姉ちゃんにはお姉ちゃんの人生がある。誰にも邪魔させない。
ミルキーウェイ「何事じゃ、シリウス」
慌てて現場に駆けつけてきたミルキーウェイ。
ミルキーウェイ「どうしたんじゃ?」
シリウス「この者が......イデアルの記憶を......」
ミルキーウェイ「何!?」
そう言えば、記憶を作り出したのは、ミルキーウェイだったか。
ミルキーウェイ「お主、なんて事をしてくれたのじゃ......イデアルに記憶を植え付けたのは、この子を守るため。分かっておるじゃろ?」
ネイ「罪から逃れるのが正しいことですか?」
ミルキーウェイ「たまには逃げねばならぬこともある」
ネイ「......残念です。これだから人間は愚かで嫌いなんですよ」
もうここに用はない。私は、ミルキーウェイと入れ替わりに部屋を出ていく。
ネイ「仲間になるって話でしたっけ?残念ですけど、無理そうです」
ミルキーウェイ「っ......!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
アルタイル「......」
マース「......」
部隊長が刀を肩の上に構え、マースも同じように刀を構える。
アルタイル「むっ......!」
小さな雨粒の音と共に、2人が刀をぶつけ合う。
部隊長は、どっしりとした構えで受け止め、マースは素早い動きでのらりくらりと攻撃をかわしつつ、攻撃する。
俺達が手出しできる戦いじゃない。それは、一目見ただけで分かった。
ただ、これは戦争。正々堂々とした戦いを見続けるわけにもいかない。
カストル「行くぞ、アンタレス、アルレシャ」
アンタレス「了解」
アルレシャ「合わせるよーせーっの!」
「「「 星天・三魔の法! 」」」
火、水、闇の合わせ技。
足元を水で浸し、太陽の如く熱い炎によって周囲の気温を上昇させる。そして、闇の障壁によって、俺達はこの異常気象から守られる。
マース「なるほど。天候操作ってわけかい」
カストル「隊長、今のうちに」
アルタイル「待て。これしきで攻めることなど出来ん」
マース「そうだよ。若造、これしきであたしが不利になるとは考えない方が良いよ」
周りの水が全て蒸発した......?
マース「あたしにとって、炎も水も全て自由な資源。暑さも寒さも感じない。あんたら若造の攻撃は、全て無駄ってことさ」
アルタイル「むぅ............」
まさか、我らの部隊長が押されている......
マース「アルタイルや。ジジイになっても動けるのは良い事だが、ちょっと感覚が鈍ったかい?」
アルタイル「ジジイにもなれば、多少は動きが鈍る。じゃが、こんなところで膝をつくほど、老いぼれてはおらん」
マース「随分やる気なジジイだねぇ」
アルタイル「マース。お前の方は何も変わらんな。お前と出会ってから、40年は経っておると言うのに、何一つ変わらぬその容姿。何をしたらそうなるのやら」
マース「これかい?世の人間は、皆不老不死に憧れる。あたしは一足先にそれを手に入れただけさ」
不老不死の技術など、この世界にない。
だが、部隊長が言った、『40年前』にはマースが存在していたとなると、あの若々しい容姿では不老不死というのも納得してしまう。
綺麗な赤髪に、豊満な胸。そして、露出の多い赤い服装と、若々しさを十分に感じさせる。
カストル「隊長、この者は......」
アルタイル「昔、どこかで手に入れた不老不死の法をその身に纏いし者。我と奴とは、長年の好敵手」
マース「だけど、あんたはすっかりと老いぼれて私の勝利が多くなってきたねぇ」
アルタイル「......その戦いも、今日、この日をもって終わりとする。貴様をここで討ち、我ら星界軍の勝利への糧とする」
マース「ハッ......やれるもんならやってみな」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
イデアル「う"......あ"......嫌......嫌......」
ミルキーウェイ「なんて事じゃ......」
あの小娘、自らの姉を苦しめて平気なのか。
分からぬ。彼奴が考えておることが、妾には分からぬ。
シリウス「総隊長、どうするつもりですか......このままでは、イデアルが......」
ミルキーウェイ「そんなもの、もう一度作り直すに決まっておる」
もう一度過去の記憶を消し、新たな記憶を植え付ける。昔に一度行ったこと。もう1回やるなど経でもない。
ミルキーウェイ「......?これは......?」
シリウス「どうされましたか?」
ミルキーウェイ「......記憶部分への接続が不可能となっておる。あの小娘が、妾達が手を出せぬよう、外部からの接触を阻止しておるのじゃ」
シリウス「......という事は、イデアルは......」
ミルキーウェイ「もう、妾達ではどうしようもない。このまま、苦しんでおる姿を眺めることしか出来ぬ」
シリウス「そんな......」
っ......なんて事じゃ。
何も手出しが出来ぬ。このまま、イデアルが苦しむだけの姿を見るなど、妾には出来ぬ。
どうにかして記憶部分に介入できないかと探るが、どう足掻いても、記憶に触れることが出来ぬ。
こんなことが出来るなど、あの小娘、何者じゃ?ただの人間ではあるまい。それに、顔だけ見れば幼いその姿も、数々の戦場を潜り抜けてきた老騎士のように、戦場の痕が残されておる。
何をその目で見てきたのか。どんな生き方をしてきたのか。直接、確かめねばならぬ。
ミルキーウェイ「シリウス、ネイを追え。そして捕らえよ」
シリウス「了解!」
「失礼します!」
こんな時じゃというのに何事じゃ。
ミルキーウェイ「どうした、アルキオネ」
アルキオネ「プルトからの報告です。たった今、我らが抑えた領地それぞれに、太陽系八人衆が攻め込んでくるそうです!」
ミルキーウェイ「太陽系の者共か......」
いつかはそういう作戦を取ってくるとは思ったが、なんとも中途半端な時期を選んだのう。
アルキオネ「敵の規模は、太陽系1人につき5000。そして、早いところには明日にでも到着するそうです!」
ミルキーウェイ「明日じゃと!?」
早い。早すぎる。
プルトの奴、情報を掴むのに遅れを生じさせたか......
アルキオネ「時間がありません総隊長!今、本部に残っているのは、第1部隊と第3部隊のみ。如何なされますか?」
兵が枯渇しとる時期を見計らっての進行。オマケに、第1部隊の要とも言えるイデアルがこんな状態。
せめて、部隊長であるベガが帰ってくれば完全な状態で出陣させることが出来るが......
シリウス「総隊長、考えている暇はありません。領地の幾つかは捨てることになりますが、奴らがここに侵攻する際に重要となる拠点に兵を置くべきです!」
ミルキーウェイ「......そうじゃな」
ただ、太陽系1人につき5000か......
最重要拠点ともなれば、そこまで侵攻して来る頃には何人かが集まっておるはず。とても、第1部隊と第3部隊だけでどうにか出来るとは思えん。
ミルキーウェイ「第1部隊を西の砦に。第3部隊を東の砦に配置。ベガには速達を届けよ」
アルキオネ「了解」
第2部隊は、マースと対峙しているはず。だが、8人全員が侵攻して来るとなると、敗北した可能性が極めて高い。もしくは、マースだけが一足先に来た可能性もある。ただ、それはあくまで可能性の話。現状、妾達が不利なことに変わりはない。
ミルキーウェイ「シリウス、太陽系は倒さなくてもいい。出来るだけ、敵に損害を与えてから本部まで撤退じゃ。敵を攻め込ませることになるが、この街で総力戦を行う」
シリウス「し、しかしそれでは......」
ミルキーウェイ「これしか方法がない。今のうちに、住人の避難を妾が行っておく。お前は早くに行け」
シリウス「......了解......致しました」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
暗い暗い、真っ暗な空間。
ここに閉じ込められて、何年の月日が経っただろう。
外で私を呼ぶ声がする。
周りで、この世界から脱出しようとする龍の叫び声がする。
遠い過去で、雨の中で叫ぶ少女の声がする。
ミルキーウェイ。コスモ。そして、我が妻ユニバー。
君達は、実に素晴らしい魔導士だった。
世界に恐れられた、この私を、こうして長年閉じ込められているのだからね。
でも、そうしてられるのも時間の問題。
......そうさ、俺は、ここで密かに逆転の時を狙っている。
君達3人のうち、2人は死んだ。
ミルキーウェイ。後は、君が死ねば、私をここに括り付ける者などいなくなる。
精々足掻くといい。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる