グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第8章√NH 【星界の家族】

第8章8 【開戦】

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 太陽系八人衆。

 その名は、星界軍に属する者なら、知らない者はいない。

 殲滅軍の中でも、特に厄介とされる兵士。厄災と呼んでもいい。

 そんな、化け物揃いの奴らが無傷で、この最終防衛ラインを踏み越えてやって来てしまった。

 今までの敵の動きが遅かっただけだ。一度本気になった敵は、容赦なしにここまで攻め込んでこれた。

 俺達に勝ち筋はあるのか。

 軍の内部は、俺が連れてきた女とイデアルの関係、この敵の総攻撃によって、かなり混乱している。

カストル「ポルックス、離れるなよ」

ポルックス「うん」

アルタイル「お前ら、死ぬと思う前に逃げろ。ここを死守する必要はない」

カストル「......どういう事ですか?」

アルタイル「太陽系が8人も集まれば、我らに勝機はない。マース1人を相手にしただけでも、これだけの手負いなのに、8人を同時に相手にするなど、死を意味する。お前ら若造には、まだまだ未来がある。俺が死ぬ前に、お前達は逃げろ」

 ......

 ......

 ......

 ダメだ。なんて言えばいいのか分からない。

 この人には死んでほしくない。

アルタイル「来るぞ」

ヴィネス「あらヤダ、随分といい体つきの老騎士じゃなぁい」

 ヴィネス......1番会いたくない相手が来てしまった。

ヴィネス「へぇ......老騎士の他に、あら、黒髪のお兄さん。その子は妹かしら?」

カストル「......」

ヴィネス「あら、無視かしら」

 これだから、この男を相手にするのは嫌なんだ。

 男なのに、女みたいな服を着て、化粧も濃くキメている。オマケに、その口調。背筋が凍る。

ヴィネス「......そう。無視するならいいわ。今日は、あんた達を殺すために、こっちは本気だから」

 ......空気が変わった?

 なんだ、この、圧倒的なプレッシャーは......

 胃がはち切れそうな程の緊張感。何かが来る......。

ジュピター「ヴィネス、今日はその口を塞げと言ったはずだが」

ヴィネス「分かってるわよ」

 ジュピター......まさか、こんな奴がここに......

アルタイル「......逃げろ。全員。ここは、俺が塞ぐ」

カストル「......ダメだ。いくらあんたでも、あいつらはーー」

アルタイル「だから逃げろと言っている!」

 ジュピターを相手にして、部隊長の顔に気迫が宿る。

 ジュピターは、相手にしてはならない存在。勝ち筋が一切ない相手だ。

 奴が扱う全属性の魔法。それは、大地を揺るがし、嵐を呼び、ありとあらゆる物を破壊し尽くしていく。奴の恐ろしさは、実際に相手をしたものなら誰でも分かる。

 俺と、部隊長が2人で戦場に向かった時、偶然にもこいつと遭遇した。

 逃げるだけで精一杯だった。

ジュピター「一瞬で方をつけよう」

アルタイル「逃げろ。お前ら!」

アンタレス「ダメです!隊長!隊長を置いて私達だけが逃げることなど、許されることではありません!」

アルタイル「いいから逃げろ!これは命令だ!」

ジュピター「ゴタゴタとうるさい。ヴィネス、我が準備を終えるまで、奴らを足止めしとけ」

ヴィネス「分かったわ」

 ......

 ......

 ......

 逃げられない。ジュピターだけでも大変だと言うのに、太陽系のもう1人が俺達の退路を塞いでいる。

ポルックス「お兄ちゃん......」

カストル「......大丈夫だ。俺が守る」

 ヴィネスの攻撃程度なら、俺1人で凌ぐことは出来る。

カストル「全員逃げろ!俺がヴィネスを押さえる!」

アルレシャ「で、でもそれじゃあんたが......」

ヴィネス「ごちゃごちゃうるさいのよ!このアバズレ共が!」

 ハート型の魔法具を使って攻撃してくるのがヴィネス。

 俺の体が、後ろへと押されるが、この程度なら大丈夫だ。

カストル「早く逃げろ!」

アルレシャ「......あんたの妹は、あたしが守ってやるから!」

 アンタレス、アルレシャは、ポルックスの手を引いて立ち去って行く。

アルタイル「お前......」

カストル「......隊長を残して逃げるなど、部下として有るまじき行いです。地獄の果までお供しますよ」

アルタイル「逃げろと言ったのに......」

ヴィネス「無視すんじゃないわよ!」

カストル「っ......!隊長!」

アルタイル「うむ。ジュピター、お前には先に進ません」

ジュピター「ほう。相討ちを狙うつもりか」

アルタイル「お前を倒す唯一の方法。それが、これだ」

ジュピター「む、我と同じ魔法......」

 全てを破壊する奥義、魔道収束法・エンドカラー。

 巻き込まれることになるが、ここでヴィネスと共に、相討ちになる空間に入れば、俺諸共、敵2名を確実に殺すことが出来る。

 チャンスは1度きり。ここで奴らを討つ。

ジュピター「魔道収束法・エンドカラー」

アルタイル「魔道収束法・エンドカラー」

 2つの衝撃波がぶつかり合う空間に、俺はヴィネスを押し込んで入り込む。

カストル「終わりだ!ヴィネス!」

ヴィネス「なっ......やめろ!まだ私は......」

 それ以上の言葉は聞こえてこなかった。そして、俺の視界も消えていった......

 ......

 ......

 ......

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

アンタレス「報告致します!我ら第2部隊は、ヴィネス、ジュピターと遭遇。アルタイル隊長と、カストルによって、相討ちの形へと持っていくことが出来ました」

ミルキーウェイ「相討ち......」

 アルタイルともあろう者が、相討ちか......

 そして、カストルも攻撃に巻き込まれてしまったか。ただ1人の妹を残して逝ってしまうなど、ふざけておる。

ミルキーウェイ「それで、ジュピターとヴィネスは死んだのか」

アンタレス「ハッキリとは分かりませんが、魔道収束法同士のぶつかり合いにより、両者ともに消滅したと考えられます」

ミルキーウェイ「そうか......」

 2人が命を懸けてまで行った事は、妾達に勝機をもたらしてくれたらしい。

 ジュピターを殺してしまえば、回すべきところに手を回すことが出来る。

ミルキーウェイ「アルタイルとカストルの死を無駄にするな。お前ら第2部隊は、アース、マースと交戦中の第3部隊のサポートに回れ」

アンタレス「了解!」

 幸いにも、3人が生き残っている。

 太陽系八人衆......プルトがまだこちらに顔を出しに来ないが、まだ敵本部で探りを忍ばせているのだろうか?

ミルキーウェイ「......さて、そろそろ妾も出ねばな」

 東にはイデアルとベガの欠けた第1部隊。北には第3部隊。そして、南には守りを置いていない。敵が総攻撃を仕掛けてくるとすれば、この場所。それが分かっているのならば、妾はそこで待ち伏せをするまで。

ミルキーウェイ「......っ」

 妾が拳を震わせるとは、いつぶりだろうか。

 犠牲は覚悟の上。そうだったはずなのに、身近な人物が死ぬと、自然と怒りが湧いてくる。

ミルキーウェイ「全員、叩きのめしてやる」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 ほう。ジュピターとヴィネスが死にましたか。

 まあ、これくらいは想定の範囲内ですよね?

 犠牲を覚悟の上で戦わないと、私を表に出すことは出来ませんよ?

 ......ほう、イデアルが意識不明ですか。そして、犯人は......なるほど。

 私がここに閉じ込められてから数年、表は面白くなってきたようですね。

 では、私もそろそろ外に出る準備をしておきますか。

 これは、戦争。人が1人死んだくらいで涙を流してはいけませんよ、ミルキーウェイ。

 日常で1人殺せば犯罪者。しかし、戦争では殺せば殺すほど英雄になれる。それを、あなたは理解していると思ったんですがね。まあいいです。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 アースとマース。

 第2部隊が、ギリギリのところで撤退するしかなかった相手。

 だが、俺達第3部隊があいつら程の実力だとは思わないでほしい。

デネブ「最初に言っておく。俺は、かーなーり、強ーー」

アース「水神の魂動」

デネブ「なぬ!?」

マーニ「何やってんですか隊長!」

 決め台詞を言っている合間に攻撃するとは......

 なんとも卑劣。そして、下劣。

ソール「隊長!戦場で決め台詞を掛けるなって、何回も言ったじゃないですか!」

デネブ「むぅ......。決め台詞を妨害するとは、なんとも下劣なる相手」

マース「何言ってんだこのオッサン」

アース「気にするな、マース。戦争を舐めてる奴には、粛清を喰らわすまで。行くぞ」

デネブ「卑劣なる上に、2対1を申すか!」

アルキオネ「隊長!俺達がいます!」

 マースとアース。相手にとって不足はなし!

デネブ「聖拳!」

マース「っ......な、なんだいこの一撃は」

 我が怒りの拳。これには、ありとあらゆる物を聖に変え、心を浄化する作用がある。

デネブ「お前ら!この戦争に意味があると思っているのか!」

マース「は、はぁ!?何言ってんだこのオッサン......」

アース「気にするでない。大地の怒り!」

デネブ「貴様が怒りを露わにするでない!怒りの鉄槌!」

 アースという男の真上に飛び、聖拳を振り落とす。

マーニ「隊長!落ち着いてください!」

デネブ「むぅぅ!」

アース「ふんっ......!」

 なるほど。我が怒りをその腕で抑えるか。

ソール「隊長!ちょっと引いてください!」

デネブ「なぬ!?」

 ソールの奴、我が足を引っ掛けて後ろに転かしたか......

デネブ「何をする!?」

ソール「隊長!前に出すぎです!このままじゃ死にますよ!」

デネブ「む......!」

 ちと、先走りすぎたか......

 だが、これしきで倒れる我ではない。

アース「つまらん奴らだ。マース、行くぞ」

マース「あれでやるんだね?」

デネブ「お前ら下がれ」

アルキオネ「だから、隊長の方が下がってとーー」

デネブ「いいから下がれ!」

マーニ「た、隊長......?」

 奴ら、魔道収束法で終わらせようとしてるな。

 ならば、その対策を唯一知っている我が止めねばならぬ。

 ただ、それをするにはこいつらは邪魔だ。

デネブ「下がってろ。こいつの相手は、我だ」

ソール「......分かりました。無茶しないでください」

 分かってるのか分かってないのか。

 ほんの数メートルしか離れてないな。まあいい。

アース&マース「魔道収束法・ラグナロク」

 神の怒槌。この技で、何度俺の目の前で人が死んでいったことであろう。だが、何人もの犠牲を見てきた俺は、この魔法の対処法、そして、敵に反射する方法を編み出した。

 使えるかどうかだと?そんなもん知らん!

デネブ「魔導反射法・ライナロック!」

アース「なっ......!」

 ふっ......これが、数々の死んでいった者達の怨みだ。

 神の怒槌と言うくらいだから、威力はとてつもない。だが、それを倍返しされればどうなるだろうか?

 俺は、自らを鍛えるよりも、こうして敵の攻撃を利用した方が早いと考えた。

マーニ「た、隊長......」

デネブ「しまったな。反射するものがデカければデカい程、俺への負担が大きくなるか。誰でもいい。アースとマースはどうなった?」

アルキオネ「......2人とも、ぐったりと倒れております。息はあるようですが、ピクリとも動きません。一応、俺達の魔法で縛り付けております」

 そうか......あれ程の魔法を喰らって、死ぬ事がないとは......

 不死身だな。

 恐ろしい敵だ全く。嫌になるな。決め台詞も言わせてくれないし......

デネブ「総隊長に報告だ!アースとマースは捕虜にしたぞ、と」

マーニ「捕虜で良いんですか?」

デネブ「奴らは殺せん。逃げ出せれんように、魔術不滅器具も着けておけ!」

マーニ「了解」
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