グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第8章√VS 【闇の魂】

第8章23 【ライトフィリア】

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 ......

 ......

 ......

フウロ「負けた、といった顔をしてるな。全員......」

ヴァル「当たり前だろ。向こうに被害は......多分ねぇ。俺達はマスターをやられた」

ヴェルド「ライオスがいりゃ、余裕で勝てたかもしれねえな。あいつ、不正しまくりのダークソウルを1人で倒した奴だったからな」

 ライオスか......確かに、あいつがいてくれれば勝てたかもしれんな。

 ......だけど、それでいいのかと思う。私達は、仲間のために奴らに矛を向けた。だが、それでいいのだろうか?

 仲間のためと言えば、聞こえはいいが、所詮はむしゃくしゃした気持ちをぶつける先にしていただけなのかもしれない。

 ただ、先に矛を向けてきたのがダークソウルであることは事実。ただの遊びなのか、それとも何か目的があるのか......分からんな。

ヴァハト「っゲホッ......ゲホッ......」

フウロ「マスター!」

ヴァハト「っ......そう心配するでない。ちょっと傷が痛むだけじゃ。問題は無い」

フウロ「......」

ヴェルド「どうするつもりだ?あいつら、次は向こうから攻めてくるぞ?」

グリード「第5ステージだったかァ。今回は俺達から行ったからまだ良かったが、向こうから仕掛けられたら、多分だが勝ち目がねェ」

ヴァル「ああ?別に、向こうから来ようが戦い方は変わらねぇだろ」

グリード「あそこにいただけがダークソウルの全部とは限らねぇだろォ?それに、最近は闇ギルド間で魔法兵器なるもんが流行ってるらしいしなァ。あのギルドなら、持っててもおかしくねぇぞォ?」

フウロ「グリードの言う通りだな。せめて、ライオス、ネイあたりがいてくれればこんな心配をしなくても良いとは思うが......」

ヴェルド「無い物ねだりって言ったところか」

 その状況が分かるだけで、ギルド全体が暗くなるな。敵さんはDrawとか言ってたが、完全に私達の負けだ。

 さて、例え不利な状況に立たされていたとしても、諦めるわけにはいかない。なんとかして、打開策を見つけなければな。

ヴァハト「......1つ、お前らは絶対に取らんじゃろうが、この争いを終わらせる方法がある」

フウロ「私達が絶対に取らない方法ですか」

ヴァハト「......セリカ・ライトフィリア。お主に関係のある話じゃ」

 セリカが......?

セリカ「......もしかして」

ヴァハト「ヴァーリア・ライトフィリアという名に覚えはあるな?」

セリカ「......はい」

 ヴァーリア......それと、ライトフィリア......どこかで聞いたことのある名前。どこでだったか......

ヴァハト「......儂はお主の事情を何も知らん。話せることだけでいい。恐らく、お主と父親との間の問題が、この争いの原因になっておる」

セリカ「分かり......ました......」

 ここ最近、やけに元気がないなとは思っていたが、この時のセリカはそれ以上に顔に光が灯っていないし、妙に震えている。例えるなら、蛇に睨まれた蛙かのように静かに震えている。

 セリカの父親と、ダークソウル。一体どんな関係があるというのか。

セリカ「......私は」

 ぽつりぽつりと、セリカが自分の過去を語り出した。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 私の家名は『ライトフィリア』。ライトグループと呼ばれる貴族集団のトップに君臨する家。平たく言うと、この国1番の貴族って事。

 そんな家に生まれたもんだから、お金に関する自由はあっても、その他のことに関する自由は一切なかった。

 例えば、友達付き合いを作ろうにも、お父さんが許した相手のみ。平民相手と友達になることなど許されなかった。

 教育は一流の機関に通っていた。ヒカリんから聞いたことがあったけど、学校っていうのは同い年の友達がたくさん集まるところだって。嫌なこともあるけど、それが世の中だって斬り捨ててしまえば苦労はしないって。そんな事、知る由もなかった。

 みんなとどこか違う。そう気付くことは、昔の私には出来なかった。

 私の周りには、大人がたくさんいても同年代の友達と呼べる人なんて1人もいなかった。

 そんな生活に、嫌気が差してくるのが思春期というもの。もう、あんな親に縛られただけの家にはいたくなかった。どうせ、あのまま家にいたところで、適当な相手と結婚させられて『ライトフィリア』の名前を受け継がせるだけ。

 親が敷いたレールの上を、何の邪魔もなく進んでいくだけ。そんなの、私は嫌だ。だから、私は誰に言うこともなく家を出た。確か、14歳くらいの時だったと思う。

 そこからは、魔法とか錬金術とか、そういう能力持ちの人が集まるギルドに属して生活していた。

 ただ、そんな生活も長くは続かない。最初に訪れたギルド、カラットレインでの生活は、たったの1ヶ月で終わりを迎えた。

 ......お父さんが、どこから情報を得たのか、そのギルドに向けて大軍を送ってきた。血が流れるのは当たり前。死体だって出た。

 ここまでするお父さんが、鬼を通り越して得体の知れない化け物に思えた。すぐにギルドから離れた。でも、14歳の私に、たったの1ヶ月で貯めたお金で生活できるわけがない。すぐに別のギルドを探して入った。

 ......次は、私自身の名前を変えて入った。目立たないように、極力表立って仕事をすることもなかった。もう一度、あんな光景を見ることにはなりたくなかった。そう願ったのに、あの人はすぐに私を見つけ出した。

 みんなに迷惑をかける前に、私はギルドから逃げ出した。そうした生活を、4年間続けた末にこのギルドに辿り着いた。

 王都からかなり離れていたせいもあってか、こうして1年もここで生活することが出来た。

 そうして、1年も過ごしていたからか、私は完全に油断しきっていた。もうバレることはない。そう思っていたからか、同じライトグループの貴族であるベルメルと出会った時には、ちょっとだけ心臓がバクバクと音を立てた。でも、ベルメルは私がどこかのギルドに入ってるっていうのを知っていただけで、お父さんが横から流したものではないと分かった。

 ただ、ベルメルはベルメルで苦労していたようで、私はベルメルの仇討ちとばかりに大会に出た。多分、それがいけなかったんだと思う。

 顔はバレなかったんだろうけど、この大会に私が出ていたことはお父さんの耳に届いたらしい。

 龍との戦いで壊滅した街で、私はお父さんと偶然にも再開してしまった。最初は、話し方も見た目も忘れかけていたからか全然分からなかったけど、探し人が私だという話と、5年前に家を出たっていう話で、私はハッキリと思い出した。

 お父さんの方は、私の成長した顔と、5年のブランクからかその場では思い出せなかったんだろうけど、多分、今になってあの時の顔が私だって気づいたんだと思う。だから、こうして別のギルドを使って私を連れ戻そうとしてるんだと思う。

 ただひたすらにお父さんが怖い。

 今までだったら、私が出て行けば解決してたんだけど、私はここから離れたくない。1年も過ごしちゃったから、愛着ってのが湧いたんだと思う。

 私は、このギルドが好き。ヴァル、ヴェルド。フウロにエフィ。ミラさんにレラ。それと、ネイりんとヒカリん。他にも、今まで以上に多くの関係を持った。みんななら、こういう状況でどんな選択をするの?

 私には分からない。私はここを離れたくない。でも、離れないとみんなに迷惑をかけてしまう。みんなを守るべきか、それとも犠牲を生んででもワガママを通すか。どれが正解なのかは私には分からない。でも、私はここが好き。その気持ちに、偽りはない。

 ......私は......ずっとここにいたい......。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「......」

ヴェルド「......」

フウロ「......」

ミラ「......」

 セリカの話には、精神的に感じる重さがあった。

 いつもいつも、女の子らしく明るく振る舞っていたせいもあって、そんな過去があったなんて想像することが出来ない。

 だってそうだろ?初めてここに来た時から、俺達の前でそんな素振りは一切見せなかった。十二級の精霊が扱えるだけで、他は普通の女の子だと思っていた。いや、思わされていた?

 ......正直、頭が混乱している。これは、ネイ以上に難しい問題だと俺は思う。あいつの場合は、1人が嫌だということが分かったから対処のしようがあった。でも、今回の場合はどうだ?

 今までが今までだけに、セリカの口から出た言葉を全て信じることが出来ない。でも、セリカは嘘を言っていない。それだけは確かだ。

ヴァハト「なるほどな。事情はよく分かった」

セリカ「すみません」

ヴァハト「なぁに、謝ることはない。何があろうと、セリカ・ライトフィリアは、我がグランメモリーズの一員じゃ。無理に追い出すことはせん」

セリカ「......」

ヴァハト「そもそも、このギルドのガキ共には親子関係で問題を抱える奴が多い。今更、1人貴族のお嬢様が増えたところで何も思わんわい」

セリカ「......ここにいて、良いのですか?」

ヴァハト「むしろ、ここにいろ。ここにいる限り、儂らグランメモリーズが全力で守ってやるわい」

セリカ「......ありがとう......ございます」

 泣いてる......

 セリカが、大粒の涙を流して泣いている。

 ......

 ......

 ......

ヴァル「みんなでセリカを守ろう!ダークソウルの野郎共から、鬼みてぇに怖いセリカの親父から、俺たちの大切なな仲間を守るんだ!」

 奴らは強い。だが、俺達だって強い。1人の人間を守ることくらい、散々やってきたじゃねえか。むしろ、1人どころか街のみんなを守るためにもわけわかんねえ集団と戦ったじゃねえか。

 俺達なら出来る。今までに比べたら、遥かに楽な仕事だ。

フウロ「ふっ......今、セリカから聞いた話は全て忘れておこう。私は、1人の人間としてセリカを守る。貴族とか平民とか、そんなもん知ったこっちゃない!」

 フウロが鋭い剣を頭上に掲げてそう言う。

ヴェルド「だな。正直、貴族だどうとか俺には分かんねぇ。だが、仲間を守る戦いってんなら、分かりやすくていい。今の話は全て聞かなかったことにするぜ」

シアラ「ヴェルド様がそう言うのなら、シアラも大賛成です!セリカさんは大切な仲間!戦う理由はそれだけで十分です!」

ミラ「私も、可愛い後輩のためなら力を出し切らないとね。それに、セリカが戦いに関係あったとしても、このギルドをめちゃくちゃにされたんだから、その落とし前はキッチリ付けるわよ!」

レラ「私も私も!セリカは大切な友達だから!友達が困ってたら、迷いなく助けるのが友達である礼儀!ちょっと戦いにおいては弱いけど、セリカの傍で支えるくらいなら簡単にできるよ!」

 ......みんなが、『セリカのために』と、拳を突き上げてそれぞれの誓を口にする。

 セリカがこのギルドを好きになってくれる理由が形になっている。俺だって、こんな仲間達が好きだからな。好きだから、守りたくなる。いや、そんな細々とした理由なんて要らねぇ。

 『仲間のために』

 それが、それだけが、俺達が動く絶対の理由だ。

セリカ「みん......な......」

ミラ「泣くにはまだ早いわよ?ちゃんと、ダークソウルとセリカのお父さんと折り合いをつけてからじゃないと、また同じことが起きるからね?」

セリカ「......はい!」

ヴァル「おっしゃぁ!俺達の力を見せつけてやるぜー!」

「「「 おー! 」」」

ヴァハト「声が小さーい!もっとでけぇ声で誓わんかー!ゲホッゲホッ」

「「「 オーーーーー! 」」」

 かかって来いよダークソウル。今の俺達は、『団結むてき』の力を持った最強のギルドだぜ。
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