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第8章√VS 【闇の魂】
第8章31 【新しく始まる物語】
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......
......
......
口の奥が乾いてる。
極度の緊張に見舞われ、少し、頭がクラクラしている。それでも、なんとか足を動かし、この屋敷を後にする。
「お嬢様、どうか、くれぐれもお気をつけて、お嬢様の旅をお続けくださいませ」
「うん。ありがとうね、ヴルーアさん」
最後に、ヴルーアさんの見送りで、私達は完全にこの場から立ち去った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「本当にあんな別れ方で良かったのか?」
セリカ「うん。あの人には、何を言っても通じなさそうだから」
それに、あのままだと本気で婚約させられかねないからね。早めに切り上げて正解だったと思ってる。でも、出来ることならお父さんには、自分から間違いに気づいてほしかった。
最後の最後までなんにも気づかなかったけど、多分、お父さんが最後に見せた、あの悲しげな表情は、少しだけ理解してくれたんじゃないかと思う。ただ、私が都合良くそう思ってるだけかもしれないけど。
ヴァル「そういや、セリカが唐突に俺と結婚してるって言っても、誰も動揺しなかったな?」
ヴェルド「ちょっとは驚いたけどな。まあ、すぐに騙すための嘘だって気づける状況だったし」
シアラ「私はよく分かりませんでしたね」
フウロ「セリカとヴァルがそんな関係になるとは思ってないからな。それに、もしそんな事になってしまえば、ネイへの裏切りになるだろう」
ヒカリ「ないない。あんたが結婚とか有り得ないから」
みんな好き勝手言うわね......
......私だって、その気になれば......その......
セリカ「......」
チラッとヴァルの方を見るけど、ヴァルはなんにも知らなそうな顔でみんなと会話を楽しんでいる。
それと、ネイりんは、いつもの状態に戻って、ヴァルにベッタリとくっついてシアラと似た感じで進行の妨げをしている。
今回の戦いで、私の命を守ってくれたのはヴァル。それに、今までも、何度もヴァルに助けてもらったことがあった。
好きになっちゃいけない。ヴァルにはネイがいて、ネイにはヴァルしかいない。そんなところに、ただの『仲間』ってだけの関係の私が入るわけにはいかない。
ヴァルが好きなんだけど、好きになっちゃいけないって気持ちが、ジレンマとなって私の心を苦しめてくる。
ヴァル「どうした?セリカ。ぼーっと突っ立ってさ」
セリカ「......ううん。何でもない」
違うかな。私は、この、素晴らしき仲間達と一緒にいられれば、それでいい。それが、私の『物語』だから。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「家族か......そんな、変な戦いもあったんだな」
変な戦いか。これでも、真面目な思いで戦っとったんじゃがな。まあ、記憶のないお主にはそう見えるか。
まだまだ先が長そうじゃな、お主の記憶探しには。じゃが、これさえやってのけてしまえば、後は考えなしに動いてもどうにかなる問題じゃ。
「あぁ?なんだこりゃ?まだ続きがあるのか......ってか、最近の話から振り返ってるせいで、全っ然話が理解できねぇんだが......」
そりゃそうじゃろうな。未来の話から過去に戻ったところで、大事な伏線を分かってないのじゃから理解できるわけがない。ちゃんと、伏線を先に読んでから回収するのが大事なのじゃがな。じゃが、お主の記憶は、過去に遡れば遡るほど曖昧になっておる。直近の出来事から思い出していく方が効率がいいのじゃよ。
......みんなの事を忘れてしまったお主に、この話は理解出来ぬかもしれぬ。でも、逆転するためにはお主が皆の事を思い出すしかない。
お主にかかる重圧は、その身をも崩しかねないものじゃ。でも安心せい。妾が、その重みを一緒に支えてやるから。
......だって、妾達は......『■■』じゃからな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
「うん、これで良し」
鏡に映る自分の姿を見て、私は支度を整える。
きっと、みんなは驚くだろう。今の私の姿を見たら。
どんな反応をしてくれるのか。それを楽しみにして、私はそろそろ改修工事の入るらしいアパートから出る。
「行ってきまーす!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「皆の者ー!よく聞けー!大会優勝の賞金が来たぞー!!!ゲホッゲホッ」
「「「 おっしゃァァァァァ! 」」」
「その額!なんと2000万ゼル!頭おかしいんじゃねぇの!?と思った奴は叫べー!そして、酒を持ってこーい!今日は昼間から飲むぞー!」
「「「 おぉぉぉぉぉぉぉ! 」」」
......
......
......
グリード「しゃァ!もっと持ってこいやァ!」
シアラ「ヴェぇルドぉ様ぁ......」
ヴェルド「お前、もう酔ってんのかよ!早すぎだろ!?」
うるさいわね。全く、私が裏切り者だって分かった直後のあんたらは何なのよ......もう、本当に悩み事はないって感じね。全く......
アルテミス「ラクはまだ15歳だから、お酒はダメだよぉ?」
口から酒の匂いを出しながら言われてもね......あんただって15でしょうが。説得力に欠けるわ。
アルテミス「ラぁクぅ......」
ヒカリ「ちょっとくっつかないでよ、酒臭い」
アルテミス「いいじゃん、仲直りしたんだしぃ......」
......はぁ。どうしてこうなっちゃうかなぁ。2000万ゼルをすぐに酒に回すとか、頭が悪いでしょ。普通、この壊れたギルドの修復費に当てたり、みんなへのボーナスにしたりとで、色々と有効な使い道があると思うのだけれど。まあ、頭の悪いこのギルドに、そんな考えを持つ奴なんていないか。
ヴァル「どうした、ヒカリ?なんか、つまんなさそうな顔してるな」
ヒカリ「あんたは、あんたでまた大変そうな顔してるわね」
ヴァル「ああ。どこのどいつか知らねぇが、こいつに酒を飲ませた奴がいるらしくてな。今、犯人探してる」
ネイ「ヴァぁルぅ......うへ、うへへへへへ」
ヒカリ「何でこんなのが記憶をなくした私から生まれるのかしらね。疑問でしかないわ」
ヴァル「そういや、そうだな。お前も、酒飲みになったらこうなんのか?」
ヒカリ「......多分、なるんじゃない?」
ヴァル「なんで疑問形なんだよ」
ヒカリ「......」
あれは、思い出したくもない忌々しき記憶。
まだ兄ちゃんが生きていた頃。解放軍の作戦で、珍しく、いや何十回と繰り返してきた作戦で、私が初めてのミスをやらかした。
その日の夜は、酷く落ち込んで、間違えて兄ちゃんのグラスに入ってた酒(銘柄など知らん)をガブ飲みしちゃったなぁ。その後は、この子みたいに暴走して、酒瓶ごと飲み干す羽目に(これは全て兄ちゃんから後日聞いた話)。
非常に恥ずかしい思い出である。でも、あれはまだ兄ちゃん達が生きてて、私がこの世界に踏み込むより前の出来事。今に比べれば遥かに酷い生活だったはず。なのに、とても愛おしく思えてくるのは何でだろうか。
せめて、兄ちゃんが生き残っててくれれば......私が、ネイという存在がありながら復活しなければ......
ヴァル「何考えてんのか知らねぇけど、あんまり思い詰めすぎるのも良くねぇぞ。こいつみたいに、いつか暴走しちまうからな。同じ存在だし、普通に有り得ると俺は思ってるぞ」
ヒカリ「......うん。大丈夫だと思うから」
ヴァル「そうか。じゃあ、俺は引き続き犯人探ししてるわ。もし、それっぽい奴(特にグリードあたり)が自爆したらよろしく頼む」
ヒカリ「うん」
ヴァルが、ネイを引きづったままにこの場から立ち去った。私の予想だけど、多分ネイはグリードあたりの手によってやられてると思う。
グリード「おらァ次持ってこいやァ」
ほら。如何にも、ネイに酒を浴びせてそうな振る舞いだ。間違いないね。
さてと、まだ1時間も経ってないけど、そろそろうるさいし、こいつらをどうにかしますか。どれだけ辛いことがあっても、酒の魔力に頼っちゃいけないのよ。特に、そこの仕事帰りか仕事行きの電車の中でこのうっすい小説を読んでる人。
「すみませーん」
とか、そんなことを考えていたら、茶髪ロングの綺麗な女性が入ってきた。
......ん?今のここが、よく活動してるって分かったわね?地上のギルドハウスは木片が散らかってて、この地下室への入口なんてよーく見なければ分からないのに。
ミラ「いらっしゃい。って言っても、今はこんな状態だけれど、ご依頼かしら?」
「......やっぱり、気づけないよね」
「「 ? 」」
気づけない......?
「......私、セリカ。十二級精霊魔導師の」
......
......
......
「「「 ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!? 」」」
この時、全員の酔いが一斉に覚めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「は!え?ゑゑゑ!?」
ヴェルド「な、何なんだよ、その髪色......ヒカリの時も大概驚いたが、え?お前、本当にセリカ!?」
期待通り、みんないい反応をしてる。思い切って変えて正解だったかな?
それにしても、ヒカリんがピンク色に染めて現れた時は、みんなそんなに驚いてなかったのに、私が茶髪に染めたら、こんな面白いくらいに反応を示してくれるんだね。
ミラ「えーっと、悩み事があるなら聞くけど......」
セリカ「何でそうなるのよ......」
ヴァル「いや、だって何かあったと考えるのが普通だろ。マジで何かあった?」
セリカ「別に、そんな難しいことはないよ。ただ、あの金髪は元々染めてたものなの。で、この茶髪は地毛。お父さんに強制されて、お父さんと同じ金髪にされてただけなんだけど、もう縁を切ったし、元の色に戻しても問題ないよね?」
ヒカリ「そんなのここにいるみんなに言ったって、セリカの自由でしょ。それにしても、なんで地味な茶髪なのかしらね~」
まあ、ヒカリんの明るいピンク色と比べれば、確かに私の髪色は地味だと思う。でも、これにはちゃんとした理由がある。
セリカ「この茶髪、お母さんの遺伝だから。折角ならとかいう理由で、勝手な色に染めたくないの。だって、お母さんと似てる部分が、これくらいしかないから」
ヒカリ「ふーん?」
お母さんは、料理が上手だし、お淑やかだし、綺麗で美人だったしで、私とは真反対な人だった。とても優しくて、そんなお母さんが大好きだった。でも、ある日流行病にかかって、あっという間に死んでしまった。
私がお母さんみたいな人になろうと思うわけじゃないけど、私がお母さんの娘なんだって証拠を少しでも残したい。女子力上げていくのが1番の近道なんだろけど、生憎料理もお裁縫も苦手だしで、全くお母さんに近づける気はしない。
......でも、優しさって部分なら、私は誰にも負けないつもりでいる。見た目とか、生まれ持った才能とかは変えられなくても、そういう心の部分ならどうにでもできるでしょ?魔法と同じなんだから、簡単だよ。
ヴァル「まあ、似合ってるんじゃねえか?いきなり茶髪ロングには驚いたけども、俺達の周りで髪色だけイメチェンした奴がたくさんいるし、今更どうとか言わねぇよ。なあ?多重人格コンビ」
ネイ「へ?」
ヒカリ「バカにしてる?してるなら撃つよ」
ヴァル「殺伐とし過ぎだろ......」
ヒカリ「言っとくけど、その気になりゃ0.008秒だから」
ヴァル「両さんと張り合うな。てか、このネタ分かるやつお父さんお母さん世代より前だぞ?」
ヒカリ「はい?」
......やっぱり、私はこのギルドが好きだな。ダークソウルがお父さんと繋がりを持っていたと知った時には、酷く怯えたけど、それでも自分の意思を貫いて良かった。
ヒカリ「何、こっち見てニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い」
セリカ「き、気持ち悪いって何よ!」
ヒカリ「別に、思ったことを言っただけよ」
セリカ「言葉遣いには気をつけた方がいいよ?女の子なんだから」
ヒカリ「そう言うなら、あんたは女の子らしい事を少しはできるようにしなさいよ。前から言いたかったけど、セリカのお洒落はお洒落と言えないし、化粧は時々ミスってるし、料理は下手くそだしでうんたらかんたら」
酷い!そこまで本音で言わなくたっていいじゃない!
ヴァル「まあまあ、セリカだって女の子らしく色々と頑張ってるんだからいいじゃねぇか。少なくとも、この契約龍以上には女の子らしいと思うぞ」
ネイ「ヴァぁルぅ......すやー......すやー......」
なんだろう。同情されてる気がしてなんとも言えない気持ちになってきた......
ミラ「じゃあ、改めて、セリカの歓迎会でもやりましょうか?心機一転、これからギルドのために尽くすって事で」
グリード「なんだァ?酒の追加かァ?」
ヴァル「お前は良い感じの雰囲気ぶち壊しに来るから引っ込んでろ」
......
......
......ギルドは、いつもと変わらず、和気あいあいとしている。
なんだ。こんな事なら、最初っから悩む必要なんてなかったじゃない。
私の居場所はここにある。最初から、いや、ずーっと、そう結論づいていたのだから。
ヴァル「セリカ、早くこっち来いよ!今日はたらふく暴れてやれ!」
セリカ「......うん!」
......
......
口の奥が乾いてる。
極度の緊張に見舞われ、少し、頭がクラクラしている。それでも、なんとか足を動かし、この屋敷を後にする。
「お嬢様、どうか、くれぐれもお気をつけて、お嬢様の旅をお続けくださいませ」
「うん。ありがとうね、ヴルーアさん」
最後に、ヴルーアさんの見送りで、私達は完全にこの場から立ち去った。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「本当にあんな別れ方で良かったのか?」
セリカ「うん。あの人には、何を言っても通じなさそうだから」
それに、あのままだと本気で婚約させられかねないからね。早めに切り上げて正解だったと思ってる。でも、出来ることならお父さんには、自分から間違いに気づいてほしかった。
最後の最後までなんにも気づかなかったけど、多分、お父さんが最後に見せた、あの悲しげな表情は、少しだけ理解してくれたんじゃないかと思う。ただ、私が都合良くそう思ってるだけかもしれないけど。
ヴァル「そういや、セリカが唐突に俺と結婚してるって言っても、誰も動揺しなかったな?」
ヴェルド「ちょっとは驚いたけどな。まあ、すぐに騙すための嘘だって気づける状況だったし」
シアラ「私はよく分かりませんでしたね」
フウロ「セリカとヴァルがそんな関係になるとは思ってないからな。それに、もしそんな事になってしまえば、ネイへの裏切りになるだろう」
ヒカリ「ないない。あんたが結婚とか有り得ないから」
みんな好き勝手言うわね......
......私だって、その気になれば......その......
セリカ「......」
チラッとヴァルの方を見るけど、ヴァルはなんにも知らなそうな顔でみんなと会話を楽しんでいる。
それと、ネイりんは、いつもの状態に戻って、ヴァルにベッタリとくっついてシアラと似た感じで進行の妨げをしている。
今回の戦いで、私の命を守ってくれたのはヴァル。それに、今までも、何度もヴァルに助けてもらったことがあった。
好きになっちゃいけない。ヴァルにはネイがいて、ネイにはヴァルしかいない。そんなところに、ただの『仲間』ってだけの関係の私が入るわけにはいかない。
ヴァルが好きなんだけど、好きになっちゃいけないって気持ちが、ジレンマとなって私の心を苦しめてくる。
ヴァル「どうした?セリカ。ぼーっと突っ立ってさ」
セリカ「......ううん。何でもない」
違うかな。私は、この、素晴らしき仲間達と一緒にいられれば、それでいい。それが、私の『物語』だから。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「家族か......そんな、変な戦いもあったんだな」
変な戦いか。これでも、真面目な思いで戦っとったんじゃがな。まあ、記憶のないお主にはそう見えるか。
まだまだ先が長そうじゃな、お主の記憶探しには。じゃが、これさえやってのけてしまえば、後は考えなしに動いてもどうにかなる問題じゃ。
「あぁ?なんだこりゃ?まだ続きがあるのか......ってか、最近の話から振り返ってるせいで、全っ然話が理解できねぇんだが......」
そりゃそうじゃろうな。未来の話から過去に戻ったところで、大事な伏線を分かってないのじゃから理解できるわけがない。ちゃんと、伏線を先に読んでから回収するのが大事なのじゃがな。じゃが、お主の記憶は、過去に遡れば遡るほど曖昧になっておる。直近の出来事から思い出していく方が効率がいいのじゃよ。
......みんなの事を忘れてしまったお主に、この話は理解出来ぬかもしれぬ。でも、逆転するためにはお主が皆の事を思い出すしかない。
お主にかかる重圧は、その身をも崩しかねないものじゃ。でも安心せい。妾が、その重みを一緒に支えてやるから。
......だって、妾達は......『■■』じゃからな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
「うん、これで良し」
鏡に映る自分の姿を見て、私は支度を整える。
きっと、みんなは驚くだろう。今の私の姿を見たら。
どんな反応をしてくれるのか。それを楽しみにして、私はそろそろ改修工事の入るらしいアパートから出る。
「行ってきまーす!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「皆の者ー!よく聞けー!大会優勝の賞金が来たぞー!!!ゲホッゲホッ」
「「「 おっしゃァァァァァ! 」」」
「その額!なんと2000万ゼル!頭おかしいんじゃねぇの!?と思った奴は叫べー!そして、酒を持ってこーい!今日は昼間から飲むぞー!」
「「「 おぉぉぉぉぉぉぉ! 」」」
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グリード「しゃァ!もっと持ってこいやァ!」
シアラ「ヴェぇルドぉ様ぁ......」
ヴェルド「お前、もう酔ってんのかよ!早すぎだろ!?」
うるさいわね。全く、私が裏切り者だって分かった直後のあんたらは何なのよ......もう、本当に悩み事はないって感じね。全く......
アルテミス「ラクはまだ15歳だから、お酒はダメだよぉ?」
口から酒の匂いを出しながら言われてもね......あんただって15でしょうが。説得力に欠けるわ。
アルテミス「ラぁクぅ......」
ヒカリ「ちょっとくっつかないでよ、酒臭い」
アルテミス「いいじゃん、仲直りしたんだしぃ......」
......はぁ。どうしてこうなっちゃうかなぁ。2000万ゼルをすぐに酒に回すとか、頭が悪いでしょ。普通、この壊れたギルドの修復費に当てたり、みんなへのボーナスにしたりとで、色々と有効な使い道があると思うのだけれど。まあ、頭の悪いこのギルドに、そんな考えを持つ奴なんていないか。
ヴァル「どうした、ヒカリ?なんか、つまんなさそうな顔してるな」
ヒカリ「あんたは、あんたでまた大変そうな顔してるわね」
ヴァル「ああ。どこのどいつか知らねぇが、こいつに酒を飲ませた奴がいるらしくてな。今、犯人探してる」
ネイ「ヴァぁルぅ......うへ、うへへへへへ」
ヒカリ「何でこんなのが記憶をなくした私から生まれるのかしらね。疑問でしかないわ」
ヴァル「そういや、そうだな。お前も、酒飲みになったらこうなんのか?」
ヒカリ「......多分、なるんじゃない?」
ヴァル「なんで疑問形なんだよ」
ヒカリ「......」
あれは、思い出したくもない忌々しき記憶。
まだ兄ちゃんが生きていた頃。解放軍の作戦で、珍しく、いや何十回と繰り返してきた作戦で、私が初めてのミスをやらかした。
その日の夜は、酷く落ち込んで、間違えて兄ちゃんのグラスに入ってた酒(銘柄など知らん)をガブ飲みしちゃったなぁ。その後は、この子みたいに暴走して、酒瓶ごと飲み干す羽目に(これは全て兄ちゃんから後日聞いた話)。
非常に恥ずかしい思い出である。でも、あれはまだ兄ちゃん達が生きてて、私がこの世界に踏み込むより前の出来事。今に比べれば遥かに酷い生活だったはず。なのに、とても愛おしく思えてくるのは何でだろうか。
せめて、兄ちゃんが生き残っててくれれば......私が、ネイという存在がありながら復活しなければ......
ヴァル「何考えてんのか知らねぇけど、あんまり思い詰めすぎるのも良くねぇぞ。こいつみたいに、いつか暴走しちまうからな。同じ存在だし、普通に有り得ると俺は思ってるぞ」
ヒカリ「......うん。大丈夫だと思うから」
ヴァル「そうか。じゃあ、俺は引き続き犯人探ししてるわ。もし、それっぽい奴(特にグリードあたり)が自爆したらよろしく頼む」
ヒカリ「うん」
ヴァルが、ネイを引きづったままにこの場から立ち去った。私の予想だけど、多分ネイはグリードあたりの手によってやられてると思う。
グリード「おらァ次持ってこいやァ」
ほら。如何にも、ネイに酒を浴びせてそうな振る舞いだ。間違いないね。
さてと、まだ1時間も経ってないけど、そろそろうるさいし、こいつらをどうにかしますか。どれだけ辛いことがあっても、酒の魔力に頼っちゃいけないのよ。特に、そこの仕事帰りか仕事行きの電車の中でこのうっすい小説を読んでる人。
「すみませーん」
とか、そんなことを考えていたら、茶髪ロングの綺麗な女性が入ってきた。
......ん?今のここが、よく活動してるって分かったわね?地上のギルドハウスは木片が散らかってて、この地下室への入口なんてよーく見なければ分からないのに。
ミラ「いらっしゃい。って言っても、今はこんな状態だけれど、ご依頼かしら?」
「......やっぱり、気づけないよね」
「「 ? 」」
気づけない......?
「......私、セリカ。十二級精霊魔導師の」
......
......
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「「「 ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!? 」」」
この時、全員の酔いが一斉に覚めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「は!え?ゑゑゑ!?」
ヴェルド「な、何なんだよ、その髪色......ヒカリの時も大概驚いたが、え?お前、本当にセリカ!?」
期待通り、みんないい反応をしてる。思い切って変えて正解だったかな?
それにしても、ヒカリんがピンク色に染めて現れた時は、みんなそんなに驚いてなかったのに、私が茶髪に染めたら、こんな面白いくらいに反応を示してくれるんだね。
ミラ「えーっと、悩み事があるなら聞くけど......」
セリカ「何でそうなるのよ......」
ヴァル「いや、だって何かあったと考えるのが普通だろ。マジで何かあった?」
セリカ「別に、そんな難しいことはないよ。ただ、あの金髪は元々染めてたものなの。で、この茶髪は地毛。お父さんに強制されて、お父さんと同じ金髪にされてただけなんだけど、もう縁を切ったし、元の色に戻しても問題ないよね?」
ヒカリ「そんなのここにいるみんなに言ったって、セリカの自由でしょ。それにしても、なんで地味な茶髪なのかしらね~」
まあ、ヒカリんの明るいピンク色と比べれば、確かに私の髪色は地味だと思う。でも、これにはちゃんとした理由がある。
セリカ「この茶髪、お母さんの遺伝だから。折角ならとかいう理由で、勝手な色に染めたくないの。だって、お母さんと似てる部分が、これくらいしかないから」
ヒカリ「ふーん?」
お母さんは、料理が上手だし、お淑やかだし、綺麗で美人だったしで、私とは真反対な人だった。とても優しくて、そんなお母さんが大好きだった。でも、ある日流行病にかかって、あっという間に死んでしまった。
私がお母さんみたいな人になろうと思うわけじゃないけど、私がお母さんの娘なんだって証拠を少しでも残したい。女子力上げていくのが1番の近道なんだろけど、生憎料理もお裁縫も苦手だしで、全くお母さんに近づける気はしない。
......でも、優しさって部分なら、私は誰にも負けないつもりでいる。見た目とか、生まれ持った才能とかは変えられなくても、そういう心の部分ならどうにでもできるでしょ?魔法と同じなんだから、簡単だよ。
ヴァル「まあ、似合ってるんじゃねえか?いきなり茶髪ロングには驚いたけども、俺達の周りで髪色だけイメチェンした奴がたくさんいるし、今更どうとか言わねぇよ。なあ?多重人格コンビ」
ネイ「へ?」
ヒカリ「バカにしてる?してるなら撃つよ」
ヴァル「殺伐とし過ぎだろ......」
ヒカリ「言っとくけど、その気になりゃ0.008秒だから」
ヴァル「両さんと張り合うな。てか、このネタ分かるやつお父さんお母さん世代より前だぞ?」
ヒカリ「はい?」
......やっぱり、私はこのギルドが好きだな。ダークソウルがお父さんと繋がりを持っていたと知った時には、酷く怯えたけど、それでも自分の意思を貫いて良かった。
ヒカリ「何、こっち見てニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い」
セリカ「き、気持ち悪いって何よ!」
ヒカリ「別に、思ったことを言っただけよ」
セリカ「言葉遣いには気をつけた方がいいよ?女の子なんだから」
ヒカリ「そう言うなら、あんたは女の子らしい事を少しはできるようにしなさいよ。前から言いたかったけど、セリカのお洒落はお洒落と言えないし、化粧は時々ミスってるし、料理は下手くそだしでうんたらかんたら」
酷い!そこまで本音で言わなくたっていいじゃない!
ヴァル「まあまあ、セリカだって女の子らしく色々と頑張ってるんだからいいじゃねぇか。少なくとも、この契約龍以上には女の子らしいと思うぞ」
ネイ「ヴァぁルぅ......すやー......すやー......」
なんだろう。同情されてる気がしてなんとも言えない気持ちになってきた......
ミラ「じゃあ、改めて、セリカの歓迎会でもやりましょうか?心機一転、これからギルドのために尽くすって事で」
グリード「なんだァ?酒の追加かァ?」
ヴァル「お前は良い感じの雰囲気ぶち壊しに来るから引っ込んでろ」
......
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......ギルドは、いつもと変わらず、和気あいあいとしている。
なんだ。こんな事なら、最初っから悩む必要なんてなかったじゃない。
私の居場所はここにある。最初から、いや、ずーっと、そう結論づいていたのだから。
ヴァル「セリカ、早くこっち来いよ!今日はたらふく暴れてやれ!」
セリカ「......うん!」
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そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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