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第10章-Ⅰ 【Campo proelii ex mortuis】
第10章6 【somnium orbis】
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なんだかんだで騒がしかった1日が終わった。
ネイの存在が突然消えたこと。遊魔病という、変な病が流行っていること。裏には例の組織が構えていること。そして、もしかしたら第3勢力も構えているかもしれないということ。
考えることが多すぎて頭がパンクしそうだ。ただでさえ無い頭をどう使えと?冗談も大概にしろ。俺は、自分のことを普通の魔導士だと思ってるんだ。
ヴァル「この部屋だけは変わってねぇな」
俺の部屋にはベッドが2台ある。まあ、元からこういう部屋で、最初に住み始めた時はベッドを繋げて「これなら変な寝相で寝ても転げ落ちない!」とか言って遊んでたな。今はとっくに引き離してるが。
あーあ、敵さんも上手いこと考えるもんだ。今のネイに勝てないのなら、過去を弄って今ほどの力を手にしてない状態にすればいい。口で言うのは簡単だが、実際にそれを行うのは難しかったろうな。だからこそ、奴らが恐ろしい奴らだと思えるんだが。
ネイ「......」
いつも以上に冷気がネイの体を覆い尽くしている。魔法が使えなくとも、体に染み込んだこの行為だけは出来るようだ。そこに関して、誰も気にすることはなかったが、俺はこの力には何かしらのからくりがあると思っている。
一応、ヒカリが今みたいになる前から使ってた体温調節機能だしな。今のネイが使えるってことは、やっぱりヒカリが来るっていう歴史があったのは確実なようだ。この世界では死んでるらしいが......
ヴァル「大丈夫だ。俺が守ってやる。約束したじゃねぇか」
ネイ「......っ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」
突然、目いっぱいに涙を浮かべてネイは俺の胸に顔を埋める。
ヴァル「我慢してたんだな......」
ネイ「だって......だって......私、怖くて......悔しくてっ......寂しくて......頑張って、積み上げてきたのにっ......それが......、一瞬で......っ」
そうだよな。龍人ってだけの理由で散々嫌われて、それでもみんなの為に、と行動して、それでやっとみんなとの絆を結んだのに、それが勝手に消されてしまう。そんなの、誰だって怖くなるし、自暴自棄にだってなってしまう。
家に帰るまで、よく耐えてきたものだ。これも、お前が我慢しすぎるって悪い癖だけどな。でも、やっぱりいっでたっても耐えられるものではない。だからこそ、家に着いて、ほっと一息出来るようになってから爆発しちまったんだろう。
ネイ「もし......もし、ヴァルが......っ」
ヴァル「大丈夫。何があっても忘れねぇ。忘れたら、頭の蓋開けて無理矢理記憶をほじくり返してみせる。絶対に忘れねぇから安心しろ」
ネイ「っ......っ......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「......」
随分と落ち着いたな。これも、お前の我慢強さってやつかな。我慢してもいい事なんて何もねぇのに、こいつは......
まあいいか。こうして、こいつが子供みたいにスヤスヤと寝てるうちはまだ平和だ。
俺がなんとかしなきゃいけない。やれるもんならすぐにやってるが、生憎俺には力が無い。全く、どうせこんな事になるなら、神様あたりが俺にとんでもねぇ力を授けてくれたっていいのにな。だってそうだろ?今までの俺は、基本的にこいつ頼りで戦ってたが、いざこいつが戦えなくなると、マジで何も残らない。だって、何があろうとも普通の人間なんだからな。
エクストリームの野郎ももうちょっと優遇してくれよ......。俺、お前から娘貰ったようなもんなんだから、父親として、男に娘を預せられるような力を与えろよ。都合がいいのは分かってるけど。
ネイ「すぅー......すぅー......」
ヴァル「......」
マジで力授けてくれねぇかなぁ。そしたら、例え相手が時間改編者だろうが、フルボッコにしてすぐに元に戻させてやるのに......
変な妄想話を考えつつ、段々と俺の意識は闇に落ちていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ヴァル......ヴァル......」
あぁ?誰だ?
「起きなさい......ヴァル......」
誰だっつってんだよ。
「起きなさい......ヴァル......」
ヴァル「あぁ!もう、誰だっつってんだよ!って、なんじゃここはー!?」
なんか、周りにピンク色の霧が立っていて、何もない空間に俺はいる。ただ、ご丁寧にも俺が寝ていたベッドはそのまま添えられている。
ヴァル「なんだ......ここは......」
確か、俺はいつも通りに家に帰って寝ていたはずだ。珍しいことに、ネイを自ら隣に添えて。でも、今いる空間はなんだ?隣にいたはずのネイはいなくて、俺だけが霧の濃い場所に寝転がっている。
「ヴァル......こっちよ......」
誰なんだよ......この声は......どこか聞き覚えのある、でも、俺は知らないはずの声。やたら母性を感じる優しそうな声だが、なんで俺はこの声に聞き覚えを感じるんだ......
分からない。でも、ここでじっとしているわけにはいかないと思う。とりあえずは、怪しいと思いながらも声の聞こえた方へと歩を進める。
「ヴァル......そこを左に曲がって......」
もう、なんなんだよ、この脳内再生型のナビゲーターは。一々人の脳内に語りきてんじゃねーよ!頭おかしくなるだろうが!
ヴァル「クソっ、何も見えてこねぇじゃねぇか!」
淡い期待かもしれないが、この脳内ナビゲーターに従えば出口あたりに行けるんじゃないかと思っていたが、そう甘くはない。走っても走っても、見えるのはピンク色の霧だけだ。なんか、こういう雰囲気って風○みたいなイメージあるな。
「ヴァル......こっちよ......」
だから、誰なんだよてめぇは!まず、顔見せて名前と職業を語りやがれ!
「私の名前はヴァルキリー。職業は......夢の世界の案内人、と言ったところかしらね」
本当に答えるのかよ......!予想の180度上を行かないでくれ......
ただ、名前は分かったな。ヴァルキリーか......やっぱどっかで聞いたことのある名前だ。つか、俺の名前が一部入ってるしな。何かしらの関係ありと見ていいか?それと、職業は夢の世界の案内人か......。じゃあ、ここは夢の世界で確定ってことか。なんだそれ。
夢の世界なら、頬を捻ってさっさと目を覚まそう。そうすりゃ出られるだろ。
ヴァル「痛てて......」
あれ?痛みを感じるんだが、どういう事だ?
「この世界は夢の世界。だけど、限りなく現実に近いもの。痛みは感じますし、目が覚めれば元の世界に戻れるわけではありません」
んじゃ、どうしろってんだよ。俺は、この世界から出たいのだが......?
「私の案内を聞いて。あなたには、やってもらいたいことがある......」
やってもらいたいこと......?
「ええ。もうそろそろ、見えてくるかと思いますよ」
見えてくる......?何が......って思うと、すぐにそれだと思うものが見えてきた。
「夢の国、シウル。ここには、たくさんの夢人が集まります」
夢の......国?
「人々は、安息を得る時に夢を見ます。ここは、その人間達の夢が集まる国。本来ならば、安息を得る者だけが訪れるはずの場所。しかし、今のこの世界には、とある異変が起きております」
ヴァル「もしかして、遊魔病......」
ただの勘だが、夢の世界なんて言われちゃ、異変はそれくらいしか思い浮かばないだろう。多分、誰が来てもその答えを出すと思う。
「この世界に訪れた者を夢の世界で癒すのが私達の仕事。しかし、ある日を境にこの世界に訪れた者が拐われる事件が起き始めました。拐われた者が現実でどうなっているのかは知り得ません。ですが、拐われた者達が死の国、ゲノウエアに連れて行かれていることは分かっております」
ヴァル「死の国......」
また、物騒な響きの名前だな。それはともかく、遊魔病の正体もなんとなく分かった。要するに、夢見に来た奴らが、死の国に拐われてそのまま目覚めることが出来なくなったって言う面白おかしな話だろ?全く、異世界で問題事を起こさないでくれ。
ヴァル「じゃあ、なんだ?俺にはその死の国をどうにかしろって言うのか?」
「ええ。ですが、無理ならば無理で構いません。まだ、私が正常でいるうち......にっ......」
ヴァル「お、おい、どうした!?」
「......ダメ......です。ヴァル、お願いします。この国を......この、世界を......」
ヴァル「お、おい!言い切らずに去っていくんじゃねぇよ!」
......声は聞こえない。背後にちょっとだけ感じていた背後霊らしきものも......
案内人とか言ってたヴァルキリーは消えた。多分、死の国が関与している。
ヴァル「こんな世界で......何をしろと......?」
一応、街らしきものは見えている。でも、あそこにいるのは、現実で今は寝ている奴らだ。顔見知りでもいれば何か出来るかもしれないが、夢の世界の奴らに頼っても何かなるとは思ってない。だって、所詮は夢で、意志を持っているとは思えないからな。
だけど、観察することなら意味はある。死の国に拐われるってんなら、その様子を観察出来るかもしれないからだ。で、その尻尾捕まえて俺も死の国に行き、そのまま親玉をフルボッコ。これで遊魔病が解決されて、俺が考えることも1つ減るだろう。よし、このチャートで行こう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイ「ん............」
昨日はらしくもない姿を見せてしまった。相手がヴァルだったからこそ、あんなに泣きついてしまったけど、これがセリカとかギルドのみんなだったら、絶対に首吊って死んでる。今の体だったら、あの再生力も無いし簡単に死ねる。
今の時間は......朝、いや、昼の12時。随分と寝過ぎてしまった。いつもなら、ヴァルが叩き起してくれてたのに、気を使ってくれたのかな?
そう思い、私はベッドから抜けるが、そこには有り得ないものがあった。
ネイ「ヴァル......?」
なんと、私が起きる時間になってもヴァルが寝続けていた。
有り得ない。朝の九時とかなら寝坊ってのもあるけど、今は12時。ヴァルならとっくに起きている時間。でも、ヴァルは寝続けている。
ネイ「......嫌......嫌」
考えがまとまるまでに、そう時間はかからない。
この世界では、寝続けたまま死んでしまう病、遊魔病が流行している。揺らしても、顔に手を触れてみても起きないことから、ヴァルもそれに......
......
......
......
ネイ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
昼になってもギルドにやって来ないヴァル達を心配して、私達ーーセリカ、フウロ、ヴェルドーー3人はヴァルが住むアパートへとやって来た。で、扉の前に立つと同時に、中から聞こえてきた悲鳴。何かある!と思い、鍵のかかった扉を3人で蹴破る(主にフウロとヴェルドが)。
フウロ「どうした!?ヴァル!」
ヴァルの部屋は、無惨にも荒らされた状態になっていた。でも、これは空き巣を狙った人がやったものではないことにすぐに気づいた。
八つ当たり......それをやったかのような荒れ具合。昔、私もよくやっていたから分かる。物に当り散らしたんだな、と思えるくらい、ありとあらゆるものが破壊されていた。
「嫌......嫌......いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
部屋で1人泣いていて、悲鳴の正体だったのはネイだった。
フウロ「ネイ!これは、どういう事だ!?」
ヴェルド「酷ぇ荒らされ具合だ。まあ、見た感じ、荒らしたのは空き巣じゃなさそうだけどな」
フウロ「じゃあ、なんだと言うのだ!?この部屋の惨状は......」
セリカ「多分、八つ当たりだと思う」
フウロ「八つ当たり?」
セリカ「うん。ねぇ、ネイ。何があったの......?」
肩にそっと手を触れて、ネイの顔色を伺う。
酷い顔。掻きむしり跡があって、綺麗だった肌も随分と荒れている。オマケに、泣き腫らした顔は、傷跡と相まって、とてもじゃないけど見てられない程無惨なものへと変貌を遂げている。
服も引き千切られ、本当にありとあらゆるものに当たったんだなってのが分かる。で、ネイが泣き続けて、見続けている視点の先には、ぐっすりと寝ているヴァルの姿があった。
これだけで、何があったのかを私は察した。ネイが酷く泣き続ける理由も、なんでヴァルが寝ているのかも......
......
......
......
ネイの存在が突然消えたこと。遊魔病という、変な病が流行っていること。裏には例の組織が構えていること。そして、もしかしたら第3勢力も構えているかもしれないということ。
考えることが多すぎて頭がパンクしそうだ。ただでさえ無い頭をどう使えと?冗談も大概にしろ。俺は、自分のことを普通の魔導士だと思ってるんだ。
ヴァル「この部屋だけは変わってねぇな」
俺の部屋にはベッドが2台ある。まあ、元からこういう部屋で、最初に住み始めた時はベッドを繋げて「これなら変な寝相で寝ても転げ落ちない!」とか言って遊んでたな。今はとっくに引き離してるが。
あーあ、敵さんも上手いこと考えるもんだ。今のネイに勝てないのなら、過去を弄って今ほどの力を手にしてない状態にすればいい。口で言うのは簡単だが、実際にそれを行うのは難しかったろうな。だからこそ、奴らが恐ろしい奴らだと思えるんだが。
ネイ「......」
いつも以上に冷気がネイの体を覆い尽くしている。魔法が使えなくとも、体に染み込んだこの行為だけは出来るようだ。そこに関して、誰も気にすることはなかったが、俺はこの力には何かしらのからくりがあると思っている。
一応、ヒカリが今みたいになる前から使ってた体温調節機能だしな。今のネイが使えるってことは、やっぱりヒカリが来るっていう歴史があったのは確実なようだ。この世界では死んでるらしいが......
ヴァル「大丈夫だ。俺が守ってやる。約束したじゃねぇか」
ネイ「......っ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」
突然、目いっぱいに涙を浮かべてネイは俺の胸に顔を埋める。
ヴァル「我慢してたんだな......」
ネイ「だって......だって......私、怖くて......悔しくてっ......寂しくて......頑張って、積み上げてきたのにっ......それが......、一瞬で......っ」
そうだよな。龍人ってだけの理由で散々嫌われて、それでもみんなの為に、と行動して、それでやっとみんなとの絆を結んだのに、それが勝手に消されてしまう。そんなの、誰だって怖くなるし、自暴自棄にだってなってしまう。
家に帰るまで、よく耐えてきたものだ。これも、お前が我慢しすぎるって悪い癖だけどな。でも、やっぱりいっでたっても耐えられるものではない。だからこそ、家に着いて、ほっと一息出来るようになってから爆発しちまったんだろう。
ネイ「もし......もし、ヴァルが......っ」
ヴァル「大丈夫。何があっても忘れねぇ。忘れたら、頭の蓋開けて無理矢理記憶をほじくり返してみせる。絶対に忘れねぇから安心しろ」
ネイ「っ......っ......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「......」
随分と落ち着いたな。これも、お前の我慢強さってやつかな。我慢してもいい事なんて何もねぇのに、こいつは......
まあいいか。こうして、こいつが子供みたいにスヤスヤと寝てるうちはまだ平和だ。
俺がなんとかしなきゃいけない。やれるもんならすぐにやってるが、生憎俺には力が無い。全く、どうせこんな事になるなら、神様あたりが俺にとんでもねぇ力を授けてくれたっていいのにな。だってそうだろ?今までの俺は、基本的にこいつ頼りで戦ってたが、いざこいつが戦えなくなると、マジで何も残らない。だって、何があろうとも普通の人間なんだからな。
エクストリームの野郎ももうちょっと優遇してくれよ......。俺、お前から娘貰ったようなもんなんだから、父親として、男に娘を預せられるような力を与えろよ。都合がいいのは分かってるけど。
ネイ「すぅー......すぅー......」
ヴァル「......」
マジで力授けてくれねぇかなぁ。そしたら、例え相手が時間改編者だろうが、フルボッコにしてすぐに元に戻させてやるのに......
変な妄想話を考えつつ、段々と俺の意識は闇に落ちていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ヴァル......ヴァル......」
あぁ?誰だ?
「起きなさい......ヴァル......」
誰だっつってんだよ。
「起きなさい......ヴァル......」
ヴァル「あぁ!もう、誰だっつってんだよ!って、なんじゃここはー!?」
なんか、周りにピンク色の霧が立っていて、何もない空間に俺はいる。ただ、ご丁寧にも俺が寝ていたベッドはそのまま添えられている。
ヴァル「なんだ......ここは......」
確か、俺はいつも通りに家に帰って寝ていたはずだ。珍しいことに、ネイを自ら隣に添えて。でも、今いる空間はなんだ?隣にいたはずのネイはいなくて、俺だけが霧の濃い場所に寝転がっている。
「ヴァル......こっちよ......」
誰なんだよ......この声は......どこか聞き覚えのある、でも、俺は知らないはずの声。やたら母性を感じる優しそうな声だが、なんで俺はこの声に聞き覚えを感じるんだ......
分からない。でも、ここでじっとしているわけにはいかないと思う。とりあえずは、怪しいと思いながらも声の聞こえた方へと歩を進める。
「ヴァル......そこを左に曲がって......」
もう、なんなんだよ、この脳内再生型のナビゲーターは。一々人の脳内に語りきてんじゃねーよ!頭おかしくなるだろうが!
ヴァル「クソっ、何も見えてこねぇじゃねぇか!」
淡い期待かもしれないが、この脳内ナビゲーターに従えば出口あたりに行けるんじゃないかと思っていたが、そう甘くはない。走っても走っても、見えるのはピンク色の霧だけだ。なんか、こういう雰囲気って風○みたいなイメージあるな。
「ヴァル......こっちよ......」
だから、誰なんだよてめぇは!まず、顔見せて名前と職業を語りやがれ!
「私の名前はヴァルキリー。職業は......夢の世界の案内人、と言ったところかしらね」
本当に答えるのかよ......!予想の180度上を行かないでくれ......
ただ、名前は分かったな。ヴァルキリーか......やっぱどっかで聞いたことのある名前だ。つか、俺の名前が一部入ってるしな。何かしらの関係ありと見ていいか?それと、職業は夢の世界の案内人か......。じゃあ、ここは夢の世界で確定ってことか。なんだそれ。
夢の世界なら、頬を捻ってさっさと目を覚まそう。そうすりゃ出られるだろ。
ヴァル「痛てて......」
あれ?痛みを感じるんだが、どういう事だ?
「この世界は夢の世界。だけど、限りなく現実に近いもの。痛みは感じますし、目が覚めれば元の世界に戻れるわけではありません」
んじゃ、どうしろってんだよ。俺は、この世界から出たいのだが......?
「私の案内を聞いて。あなたには、やってもらいたいことがある......」
やってもらいたいこと......?
「ええ。もうそろそろ、見えてくるかと思いますよ」
見えてくる......?何が......って思うと、すぐにそれだと思うものが見えてきた。
「夢の国、シウル。ここには、たくさんの夢人が集まります」
夢の......国?
「人々は、安息を得る時に夢を見ます。ここは、その人間達の夢が集まる国。本来ならば、安息を得る者だけが訪れるはずの場所。しかし、今のこの世界には、とある異変が起きております」
ヴァル「もしかして、遊魔病......」
ただの勘だが、夢の世界なんて言われちゃ、異変はそれくらいしか思い浮かばないだろう。多分、誰が来てもその答えを出すと思う。
「この世界に訪れた者を夢の世界で癒すのが私達の仕事。しかし、ある日を境にこの世界に訪れた者が拐われる事件が起き始めました。拐われた者が現実でどうなっているのかは知り得ません。ですが、拐われた者達が死の国、ゲノウエアに連れて行かれていることは分かっております」
ヴァル「死の国......」
また、物騒な響きの名前だな。それはともかく、遊魔病の正体もなんとなく分かった。要するに、夢見に来た奴らが、死の国に拐われてそのまま目覚めることが出来なくなったって言う面白おかしな話だろ?全く、異世界で問題事を起こさないでくれ。
ヴァル「じゃあ、なんだ?俺にはその死の国をどうにかしろって言うのか?」
「ええ。ですが、無理ならば無理で構いません。まだ、私が正常でいるうち......にっ......」
ヴァル「お、おい、どうした!?」
「......ダメ......です。ヴァル、お願いします。この国を......この、世界を......」
ヴァル「お、おい!言い切らずに去っていくんじゃねぇよ!」
......声は聞こえない。背後にちょっとだけ感じていた背後霊らしきものも......
案内人とか言ってたヴァルキリーは消えた。多分、死の国が関与している。
ヴァル「こんな世界で......何をしろと......?」
一応、街らしきものは見えている。でも、あそこにいるのは、現実で今は寝ている奴らだ。顔見知りでもいれば何か出来るかもしれないが、夢の世界の奴らに頼っても何かなるとは思ってない。だって、所詮は夢で、意志を持っているとは思えないからな。
だけど、観察することなら意味はある。死の国に拐われるってんなら、その様子を観察出来るかもしれないからだ。で、その尻尾捕まえて俺も死の国に行き、そのまま親玉をフルボッコ。これで遊魔病が解決されて、俺が考えることも1つ減るだろう。よし、このチャートで行こう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
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昨日はらしくもない姿を見せてしまった。相手がヴァルだったからこそ、あんなに泣きついてしまったけど、これがセリカとかギルドのみんなだったら、絶対に首吊って死んでる。今の体だったら、あの再生力も無いし簡単に死ねる。
今の時間は......朝、いや、昼の12時。随分と寝過ぎてしまった。いつもなら、ヴァルが叩き起してくれてたのに、気を使ってくれたのかな?
そう思い、私はベッドから抜けるが、そこには有り得ないものがあった。
ネイ「ヴァル......?」
なんと、私が起きる時間になってもヴァルが寝続けていた。
有り得ない。朝の九時とかなら寝坊ってのもあるけど、今は12時。ヴァルならとっくに起きている時間。でも、ヴァルは寝続けている。
ネイ「......嫌......嫌」
考えがまとまるまでに、そう時間はかからない。
この世界では、寝続けたまま死んでしまう病、遊魔病が流行している。揺らしても、顔に手を触れてみても起きないことから、ヴァルもそれに......
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ネイ「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
昼になってもギルドにやって来ないヴァル達を心配して、私達ーーセリカ、フウロ、ヴェルドーー3人はヴァルが住むアパートへとやって来た。で、扉の前に立つと同時に、中から聞こえてきた悲鳴。何かある!と思い、鍵のかかった扉を3人で蹴破る(主にフウロとヴェルドが)。
フウロ「どうした!?ヴァル!」
ヴァルの部屋は、無惨にも荒らされた状態になっていた。でも、これは空き巣を狙った人がやったものではないことにすぐに気づいた。
八つ当たり......それをやったかのような荒れ具合。昔、私もよくやっていたから分かる。物に当り散らしたんだな、と思えるくらい、ありとあらゆるものが破壊されていた。
「嫌......嫌......いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
部屋で1人泣いていて、悲鳴の正体だったのはネイだった。
フウロ「ネイ!これは、どういう事だ!?」
ヴェルド「酷ぇ荒らされ具合だ。まあ、見た感じ、荒らしたのは空き巣じゃなさそうだけどな」
フウロ「じゃあ、なんだと言うのだ!?この部屋の惨状は......」
セリカ「多分、八つ当たりだと思う」
フウロ「八つ当たり?」
セリカ「うん。ねぇ、ネイ。何があったの......?」
肩にそっと手を触れて、ネイの顔色を伺う。
酷い顔。掻きむしり跡があって、綺麗だった肌も随分と荒れている。オマケに、泣き腫らした顔は、傷跡と相まって、とてもじゃないけど見てられない程無惨なものへと変貌を遂げている。
服も引き千切られ、本当にありとあらゆるものに当たったんだなってのが分かる。で、ネイが泣き続けて、見続けている視点の先には、ぐっすりと寝ているヴァルの姿があった。
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