グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第10章-Ⅰ 【Campo proelii ex mortuis】

第10章5 【possibilitate】

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ネイ「システム・オープンコール。指定オブジェクトID:350G144指定コーディネート:253.24.65。管理者IDLaziness。セキュリティロック解除!」

 一見、何の変哲もないただの白い壁だが、この地下は前の改装工事で改修されていない場所だ。いや、この時間軸ではその改修工事も無かったことにされてるのか......。記憶は正常なんだけど、色々と違いすぎて逆にこんがらがっている。だけど、この場所だけは歴史の改編の影響を受けていないようだ。

ヴァル「何だこの空間?」

フウロ「こんな場所があるとは......いや、ギルドの設計図に、こんな場所は記されていなかったはずだが......」

ネイ「記されてなくて当たり前ですよ。ここは、このギルドからしか入ることが出来ない"異世界"なんですから」

「「「 異世界? 」」」

ネイ「昔、こっそりとこのギルドを建てた時に仕込んでたんですけど、流石に800年前から改編が行われてなくて良かったです」

ヴァル「はぇ......で、なんなんだ?この書庫らしき場所は?」

ネイ「書庫です」

ヴァル「いや、そういう事聞いてんじゃねぇよ」

ネイ「世界の書庫ワールドアーカイブの縮小版です。何かあった時のためにって、厳選した知識をここに蓄えてたんですけど、結局今日になるまでの800年間は使ったことがなかったんですけどね。まさか、こんな形で開くことになるとは思いませんでしたけど」

ヴァル「なるほど。保険はちゃんと掛けといたってわけか」

ネイ「ええ」

ヴェルド「おーい、ここまでの流れは分かったが、なんでおとぎ話から連装付けでここを思い出したんだよ」

セリカ「あ、それ私も気になる」

 えぇ......そこ気にするところ......?

ネイ「ここに蓄えてるのが、殆どおとぎ話の書物ですからね」

ヴァル「おいちょっと待て。いざと言う時のための書庫じゃねぇのかよ」

ネイ「えぇ......?その為の書庫ですけど、どうかしましたか?」

ヴァル「どうもこうもあるか。なんで肝心な時に肝心な知識が集まってねぇんだよ!おとぎ話とか、ただの暇潰しだろ!」

ネイ「バカにしないでください!確かに、たかがおとぎ話って思うかもしれませんが、これをこうすると......コンバージョン・コール。オブジェクトIDArthur。ジェネレイト・コンバージョンサブステンス・グランメモリ。ディスチャージ」

 適当に拾い上げた一冊の本を、どこかからパクって来たのかと思う設定のグランメモリへと変換する。これだけでも十分使えるのだが、グランメモリを扱うにはヒカリちゃんが作り上げる武具が必要になる。私にはそんな物を作ることは出来ない。まあ、既製品があるのなら、それを呼び出すことが出来るんだけど。

ネイ「コンバージョン・コール。GranID:ArthurMemori。コンバージョンサブステンス・サブステンスIDExcalibur」

 メモリは、内部に保存してある最高の神器へと姿を変え、立派な剣が私の手に収まる。

「「「 おぉ...... 」」」

ネイ「ね?ちゃんと役に立ちそうな場所でしょ?」

ヴァル「あぁ、そうだが......」

 まだ何かご不満をお申しですか......

ヴァル「これ、今の状況を解決すんのに役立つのか?」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヴァル「だーから、一々泣くなって。俺が悪かったからさー」

 つい数時間前に同じことやってた気がするが、マジでこれは気の所為じゃねぇな。しかも、場所が例の広場の階段って、マジで同じ状況にすんなって話だ。

ネイ「もう、せめてヴァルには味方になってもらいたかったですぅー」

ヴァル「俺は最初から味方だよ」

ネイ「なら、なんで『役立つのか?』なんて、気づかなきゃ幸せだったこと言うんですか!」

ヴァル「仕方ねぇだろ。つい思っちまったんだからさー」

 クソっ、こいつ改めてめんどくせぇな。本当、見た目だけだな。まあ、こんな事を口に出して言おうものなら、すぐさま女子軍からリンチされて殺されるだろうがな。ハハッ。

ネイ「別に、エクスカリバーを作ったっていいじゃないですか。伝説の神器ですよ?剣士なら、みんなが憧れて手に持つ武器ですよ!?」

 まあ、フウロは目を輝かせてあの武器を握っていたがな。あまりにもな鬼迫で、そのままネイが剣を譲っちまう程だったが......。それにしたって、肝心な時に役に立たない知識ほど無駄なものはないだろう。せめて、時魔法あたりの知識は備えておけよ。つか、期待した俺も俺でバカだったな。まさか、全部が全部おとぎ話だとは思わねぇだろ。

ネイ「はぁ......」

 ため息を吐きたいのは俺の方なんだが......

ヴァル「結局のところ、何が原因でこんな事になったんだろうな......」

ネイ「それが分かれば苦労しませんよ」

ヴァル「だよな......」

 予測を立てていたネイでも、流石に原因までは分かっていない。まあ、1つ言えることとすれば、あの組織が絡んでるってくらいのことか?確証はどこにもねぇけど。

 こんな寒空の下にいたって、特に何かが起こるわけではない。このままギルドに戻ったら、数時間前とは逆で、普通の日常に戻ってるとかそういう事ってねぇかな?まあ、ねぇだろうけど......起きねぇかな?

 なぁんて淡い期待を抱いても、世の中が上手く回らねえことくらい、嫌ってほど知ってる。なんなら、このままもっと悪くなる可能性だってあるな。

セリカ「ヴァルー!ネイー!」

ヴァル「んあ?」

 珍しく、セリカが全力ダッシュでこちらに向かってきているのが見えた。

ヴァル「どうした?セリカ」

セリカ「はぁ......はぁ......ヴァル......、大変!」

ヴァル「あぁ......一旦落ち着け。息整えろ」

 若干何言ってんのか分からないので、何かを急ぐセリカの腕を抑えて、落ち着くように背中をさする。これ、傍から見ると、ただの性犯罪だよな、とか思うこともある。

ヴァル「で、なんか用か?」

セリカ「う、うん。遊魔病がこの街で出たって......」

 なんだ。ただの感染症患者が出ただけか。
※こんな人がいるから、感染症が広がっていくのです。皆さん、対岸の火事場状態は避けましょうね。

ヴァル「たかが、感染症1人だろ?そこまで騒ぐことじゃねぇだろ」

セリカ「そ、そうかもしれないけど、でも、流行病とはちょっと違うんだよ?かかったら最後、絶対に死んじゃう病気。だからーー」

ヴァル「ギルドで大人しくしてろって話か......」

セリカ「うん」

 めんどくせぇな。誰だよ、そんな変な病を流行らせた奴は。つか、これも改編の影響だろ?なら、どっから変えればこんな病気が出きちまうのか......。ん?待てよ......もし、この病気が改編じゃなく、誰かが作り出した病気だとしたら?いや、有り得ねぇな。呪術師でも、持って10人程度で終わるのが限界だ。

 下手な頭で考えても、ネイ程立派な理論は立てられねぇな。この考えはなし。さっさとギルドに戻るか。

「なるほど......歴史の改編影響を受けない者がいましたか」

ヴァル「......っ!」

 不意に聞こえた男の声。しかも、どこかで聞いたことのある声だ。

「アポカリプス戦以来、と言ったところでしょうか?」

ヴァル「......っ、てめぇ......」

 まさか、向こうから近づいてくるとはな。謎の組織の頭、ヒカリ・ラグナロク......。

ヴァル「セリカ、ネイ。下がってろ......」

ネイ「ヴァル、足が震えてますよ?」

 それを言わないでくれ......どうしても、こいつと対峙すればこうなってしまうんだよ......武者震いってよりも、単にビビってるだけだ。情けねぇ。

ヒカリ「ネイさん。この状況は楽しんでくれているでしょうか?」

ネイ「......やはり、あなたが......」

ヒカリ「ええ。時間を変えたのは私です。ですが、時間改編でちょっとした手違いが起きてしまいましてね......」

 手違い......?

ヒカリ「遊魔病と呼ばれる病。あれ、私が作り出したものじゃないんですよ。まあ、時間改編で生まれたものですし、実質私が作ったと言っても過言では無いですけどね」

ヴァル「......は?」

 ただ単にそれを教えに来ただけか......それとも、この世界に生まれた異物である俺達を殺すつもりか......どちらにしろ、こいつをぶん殴ることに変わりはねぇ。あの時の恨み、たっぷり返させてもらうぜ。

ヴァル「地獄龍のーー」

ヒカリ「暴力はダメですよ」

ヴァル「なっ......!」

 急に体が動かなくなった。

ヒカリ「すぐに戻るとは思いますが、しばらくはマナの枯渇で動けませんよ」

ヴァル「な......にを......」

セリカ「ヴァル!」

 クソ......セリカに支えてもらわなきゃ、まともに立ち上がることすら出来ねぇ......やっぱり、こいつは想像以上のバケモンだ。

ネイ「......あなた、時間を変えて、何をしようとしてるんですか」

ヒカリ「......ネイさん。この時間改編によって、あなたはどれだけ弱くなったのでしょうか」

ネイ「......っ!」

ヒカリ「別に、今すぐにあなたを殺そうとはしませんよ。ですが、神の権限をほぼ失ったに等しいあなたを殺すなど簡単なこと。そのうち、その命を頂きに参りますね」

 それだけを言い残し、恐怖心を無駄に煽る男は立ち去っていった。

セリカ「ヴァル......もしかして、あの人が......」

ヴァル「あぁ。これで、犯人が確定したってわけだ」

 それと、目的の方もハッキリしたな。

 ネイを殺す。その為だけに、こんな世界に変えたってわけか。なんとも、やる事が大胆な奴らだぜ、全く......。

ヴァル「......ネイ、大丈夫か?」

ネイ「......私は大丈夫です。それよりも、ヴァルの方が......」

ヴァル「もう体は動く。若干疲れが出るけどな」

 マナを枯渇させたとか言ってたしな、完全な回復はもっと先だろう。

ネイ「......」

 誰だって、自分の命が狙われているとなれば怖くなる。特に、今回は相手が相手だ。

 俺が、こいつを守る。それだけが、今の俺にできる事だ。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

フウロ「なるほど。で、なぜお前は元凶を殺らなかったんだ」

ヴァル「いや、だから説明通りに俺じゃ何も出来ない相手だって言っただろ」

フウロ「やる気がなかったって話だろ......はぁ」

ヴァル「じゃあ、お前がやってみろよって話だよ」

 そうだな。俺の実力が足りんかっただけだな。

 マジでお前があの状況に立ってみろよ。絶対に腰が震えて動けねぇだろ。

フウロ「......しかし、遊魔病が今回の件とは別件か......」

ヴェルド「三つ巴の戦いっぽいな。この街でも出たって言うし、このギルドで出ないといいんだがな......」

 なんなんだ?冬になるとこのギルドは暗くなる定義でもあんのか?

 ......そういや、心做しかギルドの人数が少ない気がするな。冬になると仕事が減っていくのが常だから、もっといてもおかしくないんだけどな。

ヴァル「そういや、1つ気になったんだけどさ、うちのギルドって、こんなに少なかったっけ?」

「「「 ...... 」」」

ヴァル「あれ?なんか聞いちゃいけないことだった?」

 え?何何何?急に黙られて、こっち向かれると怖いんだけど......

フウロ「......今、ここにいない面子の殆どは、どこかの街で遊魔病にかかっている。今のところ、全員まだ生きてはいるらしいが、まだ報せが入っていないだけで、既に死んでる可能性もある」

ヴァル「......」

フウロ「私達がこの病を恐れているのは、そういうのも背景にあるからだ。この街で出た以上、あまり外を出歩かない方がいい」

 ......

 ......

 ......
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