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第10章-Ⅰ 【Campo proelii ex mortuis】
第10章9 【tumultus】
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ヴァル「ぜェ、ぜェ、ハァハァ......」
クソっ。誰だよ罠も敵もいないって言った奴は......思いっきり、敵と罠だらけじゃねぇかよ......。しかも、息切れ起こしたヒカリを背負って走ったせいで、余計に疲れが溜まっている。見た目以上に持ち物のせいで重く感じたからな。これなら、ネイを背負ってる方が2回りくらい軽い。
まあ、とりあえずは最上階に行くところっぽい階段まで辿り着けたからよしとするか......。
ヒカリ「多分、この先にこの世界の主がいるわね......覚悟は出来てる?負けたら、多分死よ」
ヴァル「だから、今更引き下がれねぇって言ってんだろ」
エレノア「そうそう。ここで勝って、とりあえずは現実に戻るのか第1の目標だったでしょ?なら、さっさとこの世界の主を倒しましょうよ」
ヒカリ「......そうね。ちゃちゃっと主を倒して、現実の方の問題を解決しましょ」
ヴァル「じゃあ、気合い入れていくぞー!」
「「「 おー! 」」」
全員で拳を空に突き上げて、気合いを注入する。
さあ、さっさとその面拝ませろよ。死者の主。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
で、最上階までの階段では何も起きず、あっさりと主の待つ大きな扉の先へと俺達はやって来た。
大きな一室の奥には、黒色のドレスに身を包んだ、どこか、寂しさを感じる女性が座っていた。
ヴァル「......おい、お前がこの世界の主か」
「......」
ヴァル「なんで、夢の世界に来た奴らを拐っては殺すんだ?」
「......」
ヴァル「......黙りか」
ヒカリ「話をしようったって無駄よ。相手はこの世界の主。下手したら、ネイと同等、あるいはそれ以上の権限を持っているかもしれないわ」
ヴァル「それって、つまり......」
ヒカリ「一応、この世界はネイ......いや、エクストリームの管理下にはない世界なの。それなら、別の創界神がいてもおかしくない。で、その神様が......」
ヴァル「あいつってわけか......」
確かに、筋道はハッキリとしてるな。あいつが神様......もしかしなくても、俺達って恐ろしい奴を相手にしようとしてるんじゃねえのか?
まあ、なんでもいいや。どうせ大したことはないだろう。ハイハイフラグ乙。
ヴァル「地獄龍の咆哮!」
「......」
この世界で1発目の全力で放つ咆哮。だが、奴には一切合切効いてはいない。
ヒカリ「攻撃の手を緩めないで!ワールドメモリーズ!起動!」
エレノア「セヤァッ!」
ヴァル「極龍王の咆哮!」
この世界では、こんな威力の魔法を放っても体に、特にこれといったデメリットは発生しない。現実の体ではないからってのが理由なようだが、これは俺達にとって大きなアドバンテージになっている。
今まで、威力に対するデメリットがデカいからと使わなかった極龍王の力を好きなだけ使える。ただ、悲しいことに、この世界の主には一切効いていないようだ。流石は神様って言ったところか。
ヒカリ「リソース・コール・オブジェクトIDLoverOrbis。エレキ、フレイム、トルネード、クリスタル!行っけぇー!」
ヒカリが放つ、一撃必殺級の技は、ヒラリとかわされてしまう。
ヒカリ「やっぱりね......」
ヴァル「なんか気づいたか?」
ヒカリ「多分だけど、ヴァル達の攻撃は一切効かない。でも、私が放つ機械魔法ならダメージを与えることは出来る」
薄々感じていたが、やっぱりか......
ヒカリ「現実の力と夢の力。そら、夢に対抗するには現実的な物じゃないとダメよね。だから、私の機械魔法は効く。でも、一撃の火力が高いのが、これしかないのよねぇ」
ヴァル「使い勝手が悪そうだな」
ヒカリ「そうなのよ。二丁拳銃でやってもいいんだけど、メモリ込みだと中途半端な火力で中途半端な速度になっちゃうのよねぇ」
ヴァル「かと言って、俺達が奴が避ける隙を与えさせまいとしても......」
ヒカリ「あんたらの攻撃は一切合切が通じないからね......全く、どうしたらいいのやら」
......そういや、こいつが深海世界で作ったあの機械武器はどうしたんだろ?
ヴァル「なぁ、あの機械武器って残ってないのか?」
ヒカリ「......そういえば......リソースコール・オブジェクトIDflameGage。ほら、これを使いなさい」
若干重みを感じるあの時の篭手を受け取り、俺は手に装備する。
重いってのがちょっとあれだが、これで攻撃が通じるようになれば万々歳だ。
ヴァル「オラァっ!」
足に炎を灯し、全速力で奴の元まで迫り、そのまま速度を力に変えて攻撃する。攻撃は命中、奴を玉座から引き下ろすことに成功した。
ヒカリ「ナイスよ、ヴァル!喰らぇー!」
吹っ飛ばした先に、ヒカリが放った一撃必殺級の弾丸が飛んでいく。これなら......
ヒカリ「......」
エフィ「効いて......ない......?」
っ......奴はヒカリの一撃技を喰らっても、まるで何事もなかったかのようにして玉座に座り直す。
ここまで俺達が一方的に攻撃して、奴はただの1度も反撃してこない。何かあるのか?
「......そなたら、これで我の実力は分かったか?」
ヴァル「っ......」
満を持して、奴は俺達に話しかけてきた。
「......我は死の国、ゲノウエアの主。名を、ヴァルキリーと呼ぶ」
ヴァルキリー......?その名前は......確か......
「貴様らは、この夢の世界、そして死の世界を見て回ったことだろう。夢の世界には、幸せな夢を持つ者がおり、死の世界には、最後の悪夢によって、呻き、苦しむ声がする」
ヴァル「......」
「死者には現世での未練が多かれ少なかれ、必ず存在する。我は、死者の無念を叶えし者。夢の力は十分に集まった。後は、現世を我が者にするのみ」
ヒカリ「......っ!ヴァル!逃げるわよ!」
急に血相を変えたヒカリが、俺の腕を引っ張って外へと連れ出そうとする。
ヴァル「お、おい!どうしたんだよ!」
ヒカリ「まずいわ。あいつ、現世を侵略するつもりよ!」
ヴァル「は、はぁ!?ど、どうやってそんなことーー」
ヒカリ「知らないわよ!でも、先に言ったように相手は創界神。別の世界に移動するくらい、簡単なことよ!」
ヴァル「......エフィとエレノアが来てないぞ」
後ろを振り返って奴の姿を確かめようとしたが、ふとエフィとエレノアがついてきてないことに気づいた。
ヒカリ「2人は元々遊魔病になってこの世界に留まり続けていたのよ......知らず知らずのうちに力を吸い取られていたっておかしくはないわ。クソっ、もっと早くに気づいていれば......」
ヴァル「......」
もしかして、俺がこの世界で魔法が使えていたのは、来たばかりでまだ力を取られていなかったからなのか......だとしたら、エフィ達が魔法を使えなかったことには納得だ。だが、だとしたら、なぜ2人は居なくなってるんだ。さっきまで、俺達と一緒に、大部屋で奴と対峙していたはずなのに......
ヒカリ「ヴァル。実は、1つだけあなたを現世に戻す方法があるの」
階段を降りきった先でヒカリがそう言ってきた。
ヒカリ「本当は、あいつを倒しても方法がなかった時のために残しておいた手法なんだけど......」
ヴァル「何をするんだ?」
ヒカリ「......私の全マナを注いで、あなたを現世に戻すゲートを作る。これで、あなたは確実に帰ることができるわ」
ヴァル「......お前は、どうなるんだ?」
ヒカリ「......この方法では、現世に戻るまでに相当なタイムラグが発生する。ほんの数秒だけど、それまでにこのゲートが壊されたら、あなたは一生異空間を彷徨い続けることになる。だから、あなたが向こうに到着するまで私が守り続ける」
ヴァル「それって、つまり......お前はこっちに残り続けるって事じゃねぇか。しかも、全マナを使ってやるって......それは......」
ヒカリ「死ぬかもしれないわね」
......なんで......なんで、そんな澄ました顔でそんな事が言えんだよ......
「現世に生きる生者よ。我が目的のための糧となれ」
ヒカリ「......ゲートオープン!ヴァルを、現世に!」
俺の後ろ側に丸い扉が開き、それが大きな吸引力を持って俺の体を引きずり込もうとした。
ヴァル「ま、待てよ......ヒカリ!」
ヒカリ「......ヴァル。みんなの事、頼んだわよ」
抵抗虚しく、俺の手が扉の枠から外れて、そのままゆっくりと奥へ奥へ連れて行かれる。
視界に映るヒカリの姿が段々と小さくなり、最後に、あいつの胸あたりが撃ち抜かれたところまでが見えた。
ヴァル「ヒカリーーーーー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「ヒカリーーーーー!」
俺は、ベッドから起き上がるようにして、湧き上がる焦燥感と共に目が覚めた。
ヴァル「......ここは」
気がつけば、いつもの自室。だが、ちょっと違うところがあるとすれば、部屋が酷く荒らされていて、なぜか、ヴェルド、セリカ、フウロ、グリード、シアラ、ミラの6人と、俺のベッドの脇で何故か泣いているネイがいた。
ネイ「......!ヴァル!ヴァルぅ!」
俺の意識がハッキリするよりも先に、ネイが泣き崩れた顔と共に俺に向かって飛び込んできた。
ネイ「ヴァルっ......ヴァル......」
ヴァル「......」
何があったのかは知らないが、とりあえずネイの頭を撫でてやる。
ヴァル「......何が......あったんだ」
フウロ「......この大馬鹿者!」
ヴァル「ひぃっ!」
溜息吐かれた直後にとんでもない怒号。思わず情けねぇ声を出してしまった。
フウロ「お前という奴は......心配したんだぞ......」
ヴァル「え、えぇ!?」
なぜかフウロも目いっぱいの涙を浮かべて、ネイと同じように抱きついてきた。ちょっと待って。これどういう状況!?
ヴェルド「ったく。心配かけさせやがって......」
ヴァル「えとー......どうなってんだ?」
ヴェルド「遊魔病。そう言った方が早ぇだろ」
ヴァル「あ、なるほど。そういう事か」
つまり、俺も遊魔病にかかっていたと......まあ、そうだよな。俺は夢の世界にいた。で、長時間居たっぽいから、寝続ける俺を見て、遊魔病になったと思われたわけだ。つか、事実遊魔病にかかってたようなもんだしな。自意識はあったけど。
セリカ「......はぁ」
ヴァル「おい、なんで溜息吐くんだよ」
セリカ「......もう、心配させないでよ。ヴァルのせいで、ヴァルのっ......せいで......」
ヴァル「分かった分かった。頼むから、これ以上の面子が泣かないでくれ!」
止めなければ、こいつまでもが泣き出して俺に飛びついてくるであろう。そうなりゃ、流石の俺でも窒息で死にかねない......つか、フウロが重すぎんだよ......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミラ「なるほどねぇ。つまり、夢の世界でヒカリの力を借りて脱出してきたと......」
ヴァル「大まかにまとめりゃ、そんな感じだ」
セリカ「でも、話からして、ヒカリんは......」
ヴァル「......多分、死んだ。それ以外に言葉はねぇと思う」
あの時、あいつが向けていた悲しげな瞳。瞼にこびり付いて離れねぇ......
ヴァル「とりあえず、あっちの世界の主が、まもなくこっちの世界に侵攻を始めるとか言ってたんだ。その様子だと、まだ何も起きてなさそうだが、その状態が続くのも時間の問題だ」
グリード「つっても、そいつらがどこから攻めてくるかは分からねぇだろォ?」
ヴァル「いや、分かる」
セリカ「どこ?」
ヴァル「なんとなくだが、あちらこちらから出現すると思う。そして、主であるヴァルキリーは、多分、俺のところにやって来る」
フウロ「確証は無いが、私もそんな気がするな」
あちらこちらから現れるのに関しては、マジでただの勘だが、ヴァルキリーが俺のところにやって来るって思えるのにはちゃんとした理由がある。
あいつは、唯一現世に逃げた俺を追ってくるはずだ。なんせ、向こうの世界であいつと会話をして、唯一逃げて来られた奴だからな。逃がした獲物はちゃんと捕まえ直すのが虎だ。絶対に奴は来る。
セリカ「でも、そんなすぐにやって来るわけじゃないでしょ?」
グリード「いいや。そうでもなさそうだぜェ。窓の外見ろやァ」
窓を開けて、みんなで外を見ると、もう黒い影が人々を襲い出しているのがすぐに目に映った。
クソっ。誰だよ罠も敵もいないって言った奴は......思いっきり、敵と罠だらけじゃねぇかよ......。しかも、息切れ起こしたヒカリを背負って走ったせいで、余計に疲れが溜まっている。見た目以上に持ち物のせいで重く感じたからな。これなら、ネイを背負ってる方が2回りくらい軽い。
まあ、とりあえずは最上階に行くところっぽい階段まで辿り着けたからよしとするか......。
ヒカリ「多分、この先にこの世界の主がいるわね......覚悟は出来てる?負けたら、多分死よ」
ヴァル「だから、今更引き下がれねぇって言ってんだろ」
エレノア「そうそう。ここで勝って、とりあえずは現実に戻るのか第1の目標だったでしょ?なら、さっさとこの世界の主を倒しましょうよ」
ヒカリ「......そうね。ちゃちゃっと主を倒して、現実の方の問題を解決しましょ」
ヴァル「じゃあ、気合い入れていくぞー!」
「「「 おー! 」」」
全員で拳を空に突き上げて、気合いを注入する。
さあ、さっさとその面拝ませろよ。死者の主。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
で、最上階までの階段では何も起きず、あっさりと主の待つ大きな扉の先へと俺達はやって来た。
大きな一室の奥には、黒色のドレスに身を包んだ、どこか、寂しさを感じる女性が座っていた。
ヴァル「......おい、お前がこの世界の主か」
「......」
ヴァル「なんで、夢の世界に来た奴らを拐っては殺すんだ?」
「......」
ヴァル「......黙りか」
ヒカリ「話をしようったって無駄よ。相手はこの世界の主。下手したら、ネイと同等、あるいはそれ以上の権限を持っているかもしれないわ」
ヴァル「それって、つまり......」
ヒカリ「一応、この世界はネイ......いや、エクストリームの管理下にはない世界なの。それなら、別の創界神がいてもおかしくない。で、その神様が......」
ヴァル「あいつってわけか......」
確かに、筋道はハッキリとしてるな。あいつが神様......もしかしなくても、俺達って恐ろしい奴を相手にしようとしてるんじゃねえのか?
まあ、なんでもいいや。どうせ大したことはないだろう。ハイハイフラグ乙。
ヴァル「地獄龍の咆哮!」
「......」
この世界で1発目の全力で放つ咆哮。だが、奴には一切合切効いてはいない。
ヒカリ「攻撃の手を緩めないで!ワールドメモリーズ!起動!」
エレノア「セヤァッ!」
ヴァル「極龍王の咆哮!」
この世界では、こんな威力の魔法を放っても体に、特にこれといったデメリットは発生しない。現実の体ではないからってのが理由なようだが、これは俺達にとって大きなアドバンテージになっている。
今まで、威力に対するデメリットがデカいからと使わなかった極龍王の力を好きなだけ使える。ただ、悲しいことに、この世界の主には一切効いていないようだ。流石は神様って言ったところか。
ヒカリ「リソース・コール・オブジェクトIDLoverOrbis。エレキ、フレイム、トルネード、クリスタル!行っけぇー!」
ヒカリが放つ、一撃必殺級の技は、ヒラリとかわされてしまう。
ヒカリ「やっぱりね......」
ヴァル「なんか気づいたか?」
ヒカリ「多分だけど、ヴァル達の攻撃は一切効かない。でも、私が放つ機械魔法ならダメージを与えることは出来る」
薄々感じていたが、やっぱりか......
ヒカリ「現実の力と夢の力。そら、夢に対抗するには現実的な物じゃないとダメよね。だから、私の機械魔法は効く。でも、一撃の火力が高いのが、これしかないのよねぇ」
ヴァル「使い勝手が悪そうだな」
ヒカリ「そうなのよ。二丁拳銃でやってもいいんだけど、メモリ込みだと中途半端な火力で中途半端な速度になっちゃうのよねぇ」
ヴァル「かと言って、俺達が奴が避ける隙を与えさせまいとしても......」
ヒカリ「あんたらの攻撃は一切合切が通じないからね......全く、どうしたらいいのやら」
......そういや、こいつが深海世界で作ったあの機械武器はどうしたんだろ?
ヴァル「なぁ、あの機械武器って残ってないのか?」
ヒカリ「......そういえば......リソースコール・オブジェクトIDflameGage。ほら、これを使いなさい」
若干重みを感じるあの時の篭手を受け取り、俺は手に装備する。
重いってのがちょっとあれだが、これで攻撃が通じるようになれば万々歳だ。
ヴァル「オラァっ!」
足に炎を灯し、全速力で奴の元まで迫り、そのまま速度を力に変えて攻撃する。攻撃は命中、奴を玉座から引き下ろすことに成功した。
ヒカリ「ナイスよ、ヴァル!喰らぇー!」
吹っ飛ばした先に、ヒカリが放った一撃必殺級の弾丸が飛んでいく。これなら......
ヒカリ「......」
エフィ「効いて......ない......?」
っ......奴はヒカリの一撃技を喰らっても、まるで何事もなかったかのようにして玉座に座り直す。
ここまで俺達が一方的に攻撃して、奴はただの1度も反撃してこない。何かあるのか?
「......そなたら、これで我の実力は分かったか?」
ヴァル「っ......」
満を持して、奴は俺達に話しかけてきた。
「......我は死の国、ゲノウエアの主。名を、ヴァルキリーと呼ぶ」
ヴァルキリー......?その名前は......確か......
「貴様らは、この夢の世界、そして死の世界を見て回ったことだろう。夢の世界には、幸せな夢を持つ者がおり、死の世界には、最後の悪夢によって、呻き、苦しむ声がする」
ヴァル「......」
「死者には現世での未練が多かれ少なかれ、必ず存在する。我は、死者の無念を叶えし者。夢の力は十分に集まった。後は、現世を我が者にするのみ」
ヒカリ「......っ!ヴァル!逃げるわよ!」
急に血相を変えたヒカリが、俺の腕を引っ張って外へと連れ出そうとする。
ヴァル「お、おい!どうしたんだよ!」
ヒカリ「まずいわ。あいつ、現世を侵略するつもりよ!」
ヴァル「は、はぁ!?ど、どうやってそんなことーー」
ヒカリ「知らないわよ!でも、先に言ったように相手は創界神。別の世界に移動するくらい、簡単なことよ!」
ヴァル「......エフィとエレノアが来てないぞ」
後ろを振り返って奴の姿を確かめようとしたが、ふとエフィとエレノアがついてきてないことに気づいた。
ヒカリ「2人は元々遊魔病になってこの世界に留まり続けていたのよ......知らず知らずのうちに力を吸い取られていたっておかしくはないわ。クソっ、もっと早くに気づいていれば......」
ヴァル「......」
もしかして、俺がこの世界で魔法が使えていたのは、来たばかりでまだ力を取られていなかったからなのか......だとしたら、エフィ達が魔法を使えなかったことには納得だ。だが、だとしたら、なぜ2人は居なくなってるんだ。さっきまで、俺達と一緒に、大部屋で奴と対峙していたはずなのに......
ヒカリ「ヴァル。実は、1つだけあなたを現世に戻す方法があるの」
階段を降りきった先でヒカリがそう言ってきた。
ヒカリ「本当は、あいつを倒しても方法がなかった時のために残しておいた手法なんだけど......」
ヴァル「何をするんだ?」
ヒカリ「......私の全マナを注いで、あなたを現世に戻すゲートを作る。これで、あなたは確実に帰ることができるわ」
ヴァル「......お前は、どうなるんだ?」
ヒカリ「......この方法では、現世に戻るまでに相当なタイムラグが発生する。ほんの数秒だけど、それまでにこのゲートが壊されたら、あなたは一生異空間を彷徨い続けることになる。だから、あなたが向こうに到着するまで私が守り続ける」
ヴァル「それって、つまり......お前はこっちに残り続けるって事じゃねぇか。しかも、全マナを使ってやるって......それは......」
ヒカリ「死ぬかもしれないわね」
......なんで......なんで、そんな澄ました顔でそんな事が言えんだよ......
「現世に生きる生者よ。我が目的のための糧となれ」
ヒカリ「......ゲートオープン!ヴァルを、現世に!」
俺の後ろ側に丸い扉が開き、それが大きな吸引力を持って俺の体を引きずり込もうとした。
ヴァル「ま、待てよ......ヒカリ!」
ヒカリ「......ヴァル。みんなの事、頼んだわよ」
抵抗虚しく、俺の手が扉の枠から外れて、そのままゆっくりと奥へ奥へ連れて行かれる。
視界に映るヒカリの姿が段々と小さくなり、最後に、あいつの胸あたりが撃ち抜かれたところまでが見えた。
ヴァル「ヒカリーーーーー!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「ヒカリーーーーー!」
俺は、ベッドから起き上がるようにして、湧き上がる焦燥感と共に目が覚めた。
ヴァル「......ここは」
気がつけば、いつもの自室。だが、ちょっと違うところがあるとすれば、部屋が酷く荒らされていて、なぜか、ヴェルド、セリカ、フウロ、グリード、シアラ、ミラの6人と、俺のベッドの脇で何故か泣いているネイがいた。
ネイ「......!ヴァル!ヴァルぅ!」
俺の意識がハッキリするよりも先に、ネイが泣き崩れた顔と共に俺に向かって飛び込んできた。
ネイ「ヴァルっ......ヴァル......」
ヴァル「......」
何があったのかは知らないが、とりあえずネイの頭を撫でてやる。
ヴァル「......何が......あったんだ」
フウロ「......この大馬鹿者!」
ヴァル「ひぃっ!」
溜息吐かれた直後にとんでもない怒号。思わず情けねぇ声を出してしまった。
フウロ「お前という奴は......心配したんだぞ......」
ヴァル「え、えぇ!?」
なぜかフウロも目いっぱいの涙を浮かべて、ネイと同じように抱きついてきた。ちょっと待って。これどういう状況!?
ヴェルド「ったく。心配かけさせやがって......」
ヴァル「えとー......どうなってんだ?」
ヴェルド「遊魔病。そう言った方が早ぇだろ」
ヴァル「あ、なるほど。そういう事か」
つまり、俺も遊魔病にかかっていたと......まあ、そうだよな。俺は夢の世界にいた。で、長時間居たっぽいから、寝続ける俺を見て、遊魔病になったと思われたわけだ。つか、事実遊魔病にかかってたようなもんだしな。自意識はあったけど。
セリカ「......はぁ」
ヴァル「おい、なんで溜息吐くんだよ」
セリカ「......もう、心配させないでよ。ヴァルのせいで、ヴァルのっ......せいで......」
ヴァル「分かった分かった。頼むから、これ以上の面子が泣かないでくれ!」
止めなければ、こいつまでもが泣き出して俺に飛びついてくるであろう。そうなりゃ、流石の俺でも窒息で死にかねない......つか、フウロが重すぎんだよ......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミラ「なるほどねぇ。つまり、夢の世界でヒカリの力を借りて脱出してきたと......」
ヴァル「大まかにまとめりゃ、そんな感じだ」
セリカ「でも、話からして、ヒカリんは......」
ヴァル「......多分、死んだ。それ以外に言葉はねぇと思う」
あの時、あいつが向けていた悲しげな瞳。瞼にこびり付いて離れねぇ......
ヴァル「とりあえず、あっちの世界の主が、まもなくこっちの世界に侵攻を始めるとか言ってたんだ。その様子だと、まだ何も起きてなさそうだが、その状態が続くのも時間の問題だ」
グリード「つっても、そいつらがどこから攻めてくるかは分からねぇだろォ?」
ヴァル「いや、分かる」
セリカ「どこ?」
ヴァル「なんとなくだが、あちらこちらから出現すると思う。そして、主であるヴァルキリーは、多分、俺のところにやって来る」
フウロ「確証は無いが、私もそんな気がするな」
あちらこちらから現れるのに関しては、マジでただの勘だが、ヴァルキリーが俺のところにやって来るって思えるのにはちゃんとした理由がある。
あいつは、唯一現世に逃げた俺を追ってくるはずだ。なんせ、向こうの世界であいつと会話をして、唯一逃げて来られた奴だからな。逃がした獲物はちゃんと捕まえ直すのが虎だ。絶対に奴は来る。
セリカ「でも、そんなすぐにやって来るわけじゃないでしょ?」
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