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第10章-Ⅱ 【記憶の旅人】
第10章28 【流れゆく記憶】
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ヴァル「オラァっ!」
シンゲン「フンっ!」
炎を灯した拳と、雷の力を帯びた刀がぶつかり合う。
流石は白陽の現君主。結構な衝撃がかかっているはずだが、1歩たりとして後ろに下がらねぇ。
シンゲン「腕を上げたな!炎の魔導士!」
ヴァル「まだあんたには遠く及ばねぇよ!」
拳と刀をかち合わせて、俺は空をバク転しながら後ろへと下がった。
シンゲン「今日はここまでとしておこうか」
ヴァル「なんだ?俺はまだまだやれるぞ?」
シンゲン「だろうな。俺もまだまだやれる。だが、ここに来た本来の目的を忘れてもらっては困る。一風呂浴びて汗を流しておかないとな」
ヴァル「ああ、そういう事か」
少し説明が送れたが、ここは白陽の王城。創真の建築様式とほとんど一緒だが、こっちはガチの和風建築。黒月の建築技術なんてどこにも感じない城だ。で、何でここに俺がいるのかと言うと、少し長くなる。
10ヶ月前。俺は覚悟を決めてギルドを出た。全てはネイを取り戻すため、そしてネイを守るために。
10ヶ月間、ひたすらにネイを治す方法を求めて、デルシア達の力を借りながら色んな知識を集めた。だが、結果としてはネイを治すことに繋がらず、ズルズルと期限間近にまで引きずってしまい、いよいよ1ヶ月後に大事が起きるとなると、対策を練らないわけにもいかない。というわけで、まずは白陽のシンゲン達に協力を要請しようとここまで来たわけだ。あ、ちなみに、10ヶ月間の間に白陽、黒月双方へと度々赴いているので、その度にシンゲンとアルフレアの2人と戦っている。勝ったことはない。
つーわけで、これからが今日の本番。シンゲンの言う通りに一風呂浴びて、汗を流した俺は会議室となっている100畳くらいはありそうな大広間へと向かった。
大広間に並べられた大きな机と、それを取り囲むように配置された座布団の1つに腰を下ろす。適当に選んだわけではなく、ネイが座っている隣を選んでだ。
10ヶ月経っても、なんの進展もない。どうにかして奴らに抗うことは出来ないのか。いや、抗えなくとも、ネイの意識を取り戻せさせすれば良かった。だが、現状をしっかりと見てみろ。何も成し遂げられていない。
何のためにギルドを出て、何のために10ヶ月もの間創真にいたんだ。......いや、そんなことを悔やんだところで何にもならない。
シンゲン「さて、全員揃ったことだから、早速協議を始めようか」
シンゲンの一声がかかって、俺はだらしなく座っていた姿勢を正し、シンゲンの方へと顔を向ける。
シンゲン「まあ、わざわざ話し合うようなことではないが、ヴァル殿の言う、謎の組織とやらへの対抗策だが、これに関しては事前に案を練ることなど出来んかった。なんせ、情報が無さすぎるからな」
ヴァル「悪ぃ。諸々の事情を全て話せたら良かったんだが......」
シンゲン「仕方あるまい。そちらにはそちらの事情があり、尚且つ口で伝えようとすれば難しすぎる内容なのだろう?」
ヴァル「ああ」
シンゲン「こちらとしては、確信性のない情報はあまり鵜呑みにしたくなかったのだが、ヴァル殿が前回提示してきた『死の国』による我らの世界の侵攻。及び、それが解決後に直接戦いに関わった者を除いて、この世界の全ての人がこの事実を忘れてしまったということ。そして、今回提示された時間の改編。話がぶっ飛びすぎてはいるが、元々俺達もぶっ飛んだ話に巻き込まれた身だ。今更何が起きようが動揺はせん。というわけでお前を信用するに至ったというわけだ」
ヴァル「無理矢理呑み込んだ感が半端ないな......」
シンゲン「アルフレアも同様の考えで理解は示している。今回こそ、向こうの都合でここに集まれなかったものの、あいつもお前の協力者だ。戦力に関しては安心しろ」
ヴァル「安心できるほどの戦力がなきゃ、創真で過ごすことなんて決めてねぇよ」
シンゲン「だな。だが、いくら戦力が多かろうが、やはり、敵の戦力が分からない以上、安心も絶望も出来ん。長くなっても構わん。今までの奴らの行動を話して貰えると助かる」
......だよな。いつまでも話さないわけにはいかない。別に、話そうと思えばいつだって話してたんだが、ただでさえぶっ飛んだ話に、余計にぶっ飛んだ話を追加したくはなかった。
まあ、10ヶ月もかけてゆっくりと理解してくれたっぽいし、全部話しても大丈夫......だろうな。
ヴァル「長くなるから、とりあえず箇条書きで話す。まず、俺達とあいつらとの最初の関わりだ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シンゲン「......なるほどな」
ぶっ飛んだ話にぶっ飛んだ話を追加されると思っていたが、予想以上にぶっ飛んだ話だったな。飛びすぎて太陽にまで届きそうだ。
理解......しようにも、すぐには出来んな。とりあえず、カイリに全部メモさせておいたし、後でゆっくりと噛み砕いていけばいいか。
......俺達は、大概とんでもない事に巻き込まれたことがあったが、こいつはそれ以上にとんでもない事に巻き込まれていたんだな。常人には理解できないことの数々......一見バカそうに見えるヴァルだが、俺が思ってる以上に賢いな。いや、賢すぎるな。
デルシアなんか見てみろ。あまりの壮大さに、何かあったのか?と言った具合でキョトンとしている。隣のミューエが1つずつ噛み砕いた説明を耳打ちしてても、こいつはまるで理解出来てないな。
ヴァル「やっぱ、全部話すのはまだ早かったか?」
シンゲン「いや。要は複雑すぎる上に、敵が強大であることを理解していれば良いのだろう?」
ヴァル「まあ、そんなところだが......」
俺目線から見ても、今回の敵はあまりに強大過ぎるな。リエンドなんぞ比にもならない。むしろ、あんなのに苦戦していた俺達が勝てる相手なのか?こいつが話したのは、敵全体の内の3割程度だ。そして、その内の2割9分がヒカリとかいう敵の親玉。
......これは、もしかしたら全世界VS謎の組織みたいな構図になるかもしれんな。そんな事が可能なのかとも思ったが、歴史上、聖王戦争とかグラン大戦とか、全世界を巻き込んだ大きな戦争はあった。もしかしたら、敵はそれの再演でもやろうとしてるのかもな。何ともはた迷惑な集団だ......
シンゲン「......今日中に対策を練ることは難しいな。俺の方でアルフレアには話を通しておく。もしかしたら、聖王戦争、グラン大戦の再演になるかもしれん。出来る限り他の王族に協力を取り付けてもらえるよう、なんとか交渉してみせる」
ヴァル「それなら、俺はクロムにでも話をしておく」
シンゲン「クロム?なぜ、イーリアスの聖王と面識があるような口振りをする?」
ヴァル「いや、話せばこれまた長くなるんだが、その組織とのゴタゴタが始まる前に、ちょっとした出来事で友達みたいなもんになってな。多分、白陽とか黒月の王族が出向くよりも俺が一言伝えればすぐに理解を示してくれると思う。さっきまでの話、一応クロムも末端に関わってるからさ」
シンゲン「なるほど、それはありがたいな。となると、残るはグランアークとセツノ連邦、ザガル王国にラグナロク王国くらいか、大きな国は」
ヴァル「グランアークとラグナロクに関しては、俺とネイの名前を出して話を進めればスムーズになると思う」
シンゲン「......」
ひょっとしなくても、この炎の魔導士、とんでもない奴なんじゃないのか?ただの一般人のくせに、やたら色んなところと繋がりを持っているな。是非ともうちの外交官として雇いたいくらいだ。まあ、そんなことを持ちかけたところで、こいつは即座に断るだろうがな。
シンゲン「よし、今日は一先ず解散だな。後のことはこちらで進めておく。お前達はお前達で出来ることを。以上だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
王族相手って言っても、案外すんなりと話は通るもんなんだな、と俺は感じていた。
だって普通に考えてみろ。いくら信用に足る相手だとしても、今回の話はかなりぶっ飛んでいやがる。こんな話を信じる奴は基本いない。だが、あの王は簡単に信じた。
まあ、俺としてはややこしい部分を全部省くことが出来たから、それはそれで楽でいいと思ってるけどな。
ヴァル「次はイーリアスか......」
クロムには、まだ何も話してないからな。説明だけでかなりの時間を取りそうだ。
......奴らとの戦いの準備を進めていても、ネイが戻ってくるわけじゃない。本当なら、こんなことに時間を取らず、ネイの意識を呼び覚ます方法を探してなきゃならないのに、なんだかんだで10ヶ月経っている。悔やむことならいくらでもあるが、こればっかりは悔やんでも仕方ないと思う。
約束したはずなのにな。俺がお前を守ってやるって......
ヴァル「......ネイ、ちょっと、白陽の街でも見て回るか」
創真に帰るまでにはまだ若干の暇がある。俺は、デルシア達に一言伝え、ネイが座る車椅子を押して城外に出た。
白陽の王都の街並みは、前に訪れた朱雀の街よりも和を感じる造りになっている。あれは、観光地としての役割を果たすのだから、若干の高層建築物とかがあったのだろう。だが、ここ、白陽の王都は、背の高い建物なんて1つもない。全部が平屋であり、商売の賑わう場所になっている。
グランアークの王都や、イーリアスの王都とは全然違う。建物の形も、人々の顔立ちも、生活様式も、一体何があればここまで"違う"って感じられる国になるんだろうな。
......10ヶ月。長いようであっという間に過ぎ去ってしまった時間。その間、俺は何をしていた?長い時間を、俺は何に使っていた?ただ、ネイの隣にいただけか?
ネイの隣にいる。その事に、何も間違ったことはない。だが、それだけをやる事が正解だったのか?違う。俺は、こいつの意識を取り戻させなきゃならねぇんだ。そのために、ギルドの仲間達と離れて創真にまで旅立ったんだ。なのに、現状はどうなんだ?何も成し遂げられていない。何回も確認してやるが、俺は何も成し遂げられていないんだ。
やっぱ、俺1人でなんて無理だったのかな。
ネイ「......あー......」
突然、ネイが目に見えた丘の方を指さして声を上げた。
......そういや、10ヶ月の間に少しは進展があったな。たまに、ネイが何かを指さして声を上げることがある。それは、本能的に何かを感じて俺に訴えかけようとしているのだと思っている。
ちゃんとした意識があるわけじゃないが、ネイのこうした行動は、まだ人として生きているんだと俺を安心させてくれる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイが指さした丘の上に俺は立った。
秋も終わりを告げ、冬の寒さが舞い込んできているであろうこの時期なのに、やけに頬に当たる風が気持ちよく感じられる。それは、ネイも同じらしく、気持ち良さそうな顔をして寝ている。
小さな丘ではあるが、この場所に立てば、白陽の城あたりから城下一帯までがよく見渡せる。ああ、なるほどと思った。
ここ、あの時の丘と似てるな。
絶対に忘れねぇ、大事な大事な記憶。あの時、俺はここで覚悟を新たにし、大切な人を守るために戦うことを決めた。その意思は、今だって熱く燃え盛っている。
ネイは、きっと俺の姿を見て、あの時の気持ちを思い出させようとしてくれたのだろう。本能的にな。
ヴァル「......必ず、必ずお前を取り戻す。だから、ちゃんと見守っててくれ。お前が愛し、お前のためだけに戦う男の姿を......」
ネイの左手を握り、俺は固くそう誓った。
シンゲン「フンっ!」
炎を灯した拳と、雷の力を帯びた刀がぶつかり合う。
流石は白陽の現君主。結構な衝撃がかかっているはずだが、1歩たりとして後ろに下がらねぇ。
シンゲン「腕を上げたな!炎の魔導士!」
ヴァル「まだあんたには遠く及ばねぇよ!」
拳と刀をかち合わせて、俺は空をバク転しながら後ろへと下がった。
シンゲン「今日はここまでとしておこうか」
ヴァル「なんだ?俺はまだまだやれるぞ?」
シンゲン「だろうな。俺もまだまだやれる。だが、ここに来た本来の目的を忘れてもらっては困る。一風呂浴びて汗を流しておかないとな」
ヴァル「ああ、そういう事か」
少し説明が送れたが、ここは白陽の王城。創真の建築様式とほとんど一緒だが、こっちはガチの和風建築。黒月の建築技術なんてどこにも感じない城だ。で、何でここに俺がいるのかと言うと、少し長くなる。
10ヶ月前。俺は覚悟を決めてギルドを出た。全てはネイを取り戻すため、そしてネイを守るために。
10ヶ月間、ひたすらにネイを治す方法を求めて、デルシア達の力を借りながら色んな知識を集めた。だが、結果としてはネイを治すことに繋がらず、ズルズルと期限間近にまで引きずってしまい、いよいよ1ヶ月後に大事が起きるとなると、対策を練らないわけにもいかない。というわけで、まずは白陽のシンゲン達に協力を要請しようとここまで来たわけだ。あ、ちなみに、10ヶ月間の間に白陽、黒月双方へと度々赴いているので、その度にシンゲンとアルフレアの2人と戦っている。勝ったことはない。
つーわけで、これからが今日の本番。シンゲンの言う通りに一風呂浴びて、汗を流した俺は会議室となっている100畳くらいはありそうな大広間へと向かった。
大広間に並べられた大きな机と、それを取り囲むように配置された座布団の1つに腰を下ろす。適当に選んだわけではなく、ネイが座っている隣を選んでだ。
10ヶ月経っても、なんの進展もない。どうにかして奴らに抗うことは出来ないのか。いや、抗えなくとも、ネイの意識を取り戻せさせすれば良かった。だが、現状をしっかりと見てみろ。何も成し遂げられていない。
何のためにギルドを出て、何のために10ヶ月もの間創真にいたんだ。......いや、そんなことを悔やんだところで何にもならない。
シンゲン「さて、全員揃ったことだから、早速協議を始めようか」
シンゲンの一声がかかって、俺はだらしなく座っていた姿勢を正し、シンゲンの方へと顔を向ける。
シンゲン「まあ、わざわざ話し合うようなことではないが、ヴァル殿の言う、謎の組織とやらへの対抗策だが、これに関しては事前に案を練ることなど出来んかった。なんせ、情報が無さすぎるからな」
ヴァル「悪ぃ。諸々の事情を全て話せたら良かったんだが......」
シンゲン「仕方あるまい。そちらにはそちらの事情があり、尚且つ口で伝えようとすれば難しすぎる内容なのだろう?」
ヴァル「ああ」
シンゲン「こちらとしては、確信性のない情報はあまり鵜呑みにしたくなかったのだが、ヴァル殿が前回提示してきた『死の国』による我らの世界の侵攻。及び、それが解決後に直接戦いに関わった者を除いて、この世界の全ての人がこの事実を忘れてしまったということ。そして、今回提示された時間の改編。話がぶっ飛びすぎてはいるが、元々俺達もぶっ飛んだ話に巻き込まれた身だ。今更何が起きようが動揺はせん。というわけでお前を信用するに至ったというわけだ」
ヴァル「無理矢理呑み込んだ感が半端ないな......」
シンゲン「アルフレアも同様の考えで理解は示している。今回こそ、向こうの都合でここに集まれなかったものの、あいつもお前の協力者だ。戦力に関しては安心しろ」
ヴァル「安心できるほどの戦力がなきゃ、創真で過ごすことなんて決めてねぇよ」
シンゲン「だな。だが、いくら戦力が多かろうが、やはり、敵の戦力が分からない以上、安心も絶望も出来ん。長くなっても構わん。今までの奴らの行動を話して貰えると助かる」
......だよな。いつまでも話さないわけにはいかない。別に、話そうと思えばいつだって話してたんだが、ただでさえぶっ飛んだ話に、余計にぶっ飛んだ話を追加したくはなかった。
まあ、10ヶ月もかけてゆっくりと理解してくれたっぽいし、全部話しても大丈夫......だろうな。
ヴァル「長くなるから、とりあえず箇条書きで話す。まず、俺達とあいつらとの最初の関わりだ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シンゲン「......なるほどな」
ぶっ飛んだ話にぶっ飛んだ話を追加されると思っていたが、予想以上にぶっ飛んだ話だったな。飛びすぎて太陽にまで届きそうだ。
理解......しようにも、すぐには出来んな。とりあえず、カイリに全部メモさせておいたし、後でゆっくりと噛み砕いていけばいいか。
......俺達は、大概とんでもない事に巻き込まれたことがあったが、こいつはそれ以上にとんでもない事に巻き込まれていたんだな。常人には理解できないことの数々......一見バカそうに見えるヴァルだが、俺が思ってる以上に賢いな。いや、賢すぎるな。
デルシアなんか見てみろ。あまりの壮大さに、何かあったのか?と言った具合でキョトンとしている。隣のミューエが1つずつ噛み砕いた説明を耳打ちしてても、こいつはまるで理解出来てないな。
ヴァル「やっぱ、全部話すのはまだ早かったか?」
シンゲン「いや。要は複雑すぎる上に、敵が強大であることを理解していれば良いのだろう?」
ヴァル「まあ、そんなところだが......」
俺目線から見ても、今回の敵はあまりに強大過ぎるな。リエンドなんぞ比にもならない。むしろ、あんなのに苦戦していた俺達が勝てる相手なのか?こいつが話したのは、敵全体の内の3割程度だ。そして、その内の2割9分がヒカリとかいう敵の親玉。
......これは、もしかしたら全世界VS謎の組織みたいな構図になるかもしれんな。そんな事が可能なのかとも思ったが、歴史上、聖王戦争とかグラン大戦とか、全世界を巻き込んだ大きな戦争はあった。もしかしたら、敵はそれの再演でもやろうとしてるのかもな。何ともはた迷惑な集団だ......
シンゲン「......今日中に対策を練ることは難しいな。俺の方でアルフレアには話を通しておく。もしかしたら、聖王戦争、グラン大戦の再演になるかもしれん。出来る限り他の王族に協力を取り付けてもらえるよう、なんとか交渉してみせる」
ヴァル「それなら、俺はクロムにでも話をしておく」
シンゲン「クロム?なぜ、イーリアスの聖王と面識があるような口振りをする?」
ヴァル「いや、話せばこれまた長くなるんだが、その組織とのゴタゴタが始まる前に、ちょっとした出来事で友達みたいなもんになってな。多分、白陽とか黒月の王族が出向くよりも俺が一言伝えればすぐに理解を示してくれると思う。さっきまでの話、一応クロムも末端に関わってるからさ」
シンゲン「なるほど、それはありがたいな。となると、残るはグランアークとセツノ連邦、ザガル王国にラグナロク王国くらいか、大きな国は」
ヴァル「グランアークとラグナロクに関しては、俺とネイの名前を出して話を進めればスムーズになると思う」
シンゲン「......」
ひょっとしなくても、この炎の魔導士、とんでもない奴なんじゃないのか?ただの一般人のくせに、やたら色んなところと繋がりを持っているな。是非ともうちの外交官として雇いたいくらいだ。まあ、そんなことを持ちかけたところで、こいつは即座に断るだろうがな。
シンゲン「よし、今日は一先ず解散だな。後のことはこちらで進めておく。お前達はお前達で出来ることを。以上だ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
王族相手って言っても、案外すんなりと話は通るもんなんだな、と俺は感じていた。
だって普通に考えてみろ。いくら信用に足る相手だとしても、今回の話はかなりぶっ飛んでいやがる。こんな話を信じる奴は基本いない。だが、あの王は簡単に信じた。
まあ、俺としてはややこしい部分を全部省くことが出来たから、それはそれで楽でいいと思ってるけどな。
ヴァル「次はイーリアスか......」
クロムには、まだ何も話してないからな。説明だけでかなりの時間を取りそうだ。
......奴らとの戦いの準備を進めていても、ネイが戻ってくるわけじゃない。本当なら、こんなことに時間を取らず、ネイの意識を呼び覚ます方法を探してなきゃならないのに、なんだかんだで10ヶ月経っている。悔やむことならいくらでもあるが、こればっかりは悔やんでも仕方ないと思う。
約束したはずなのにな。俺がお前を守ってやるって......
ヴァル「......ネイ、ちょっと、白陽の街でも見て回るか」
創真に帰るまでにはまだ若干の暇がある。俺は、デルシア達に一言伝え、ネイが座る車椅子を押して城外に出た。
白陽の王都の街並みは、前に訪れた朱雀の街よりも和を感じる造りになっている。あれは、観光地としての役割を果たすのだから、若干の高層建築物とかがあったのだろう。だが、ここ、白陽の王都は、背の高い建物なんて1つもない。全部が平屋であり、商売の賑わう場所になっている。
グランアークの王都や、イーリアスの王都とは全然違う。建物の形も、人々の顔立ちも、生活様式も、一体何があればここまで"違う"って感じられる国になるんだろうな。
......10ヶ月。長いようであっという間に過ぎ去ってしまった時間。その間、俺は何をしていた?長い時間を、俺は何に使っていた?ただ、ネイの隣にいただけか?
ネイの隣にいる。その事に、何も間違ったことはない。だが、それだけをやる事が正解だったのか?違う。俺は、こいつの意識を取り戻させなきゃならねぇんだ。そのために、ギルドの仲間達と離れて創真にまで旅立ったんだ。なのに、現状はどうなんだ?何も成し遂げられていない。何回も確認してやるが、俺は何も成し遂げられていないんだ。
やっぱ、俺1人でなんて無理だったのかな。
ネイ「......あー......」
突然、ネイが目に見えた丘の方を指さして声を上げた。
......そういや、10ヶ月の間に少しは進展があったな。たまに、ネイが何かを指さして声を上げることがある。それは、本能的に何かを感じて俺に訴えかけようとしているのだと思っている。
ちゃんとした意識があるわけじゃないが、ネイのこうした行動は、まだ人として生きているんだと俺を安心させてくれる。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ネイが指さした丘の上に俺は立った。
秋も終わりを告げ、冬の寒さが舞い込んできているであろうこの時期なのに、やけに頬に当たる風が気持ちよく感じられる。それは、ネイも同じらしく、気持ち良さそうな顔をして寝ている。
小さな丘ではあるが、この場所に立てば、白陽の城あたりから城下一帯までがよく見渡せる。ああ、なるほどと思った。
ここ、あの時の丘と似てるな。
絶対に忘れねぇ、大事な大事な記憶。あの時、俺はここで覚悟を新たにし、大切な人を守るために戦うことを決めた。その意思は、今だって熱く燃え盛っている。
ネイは、きっと俺の姿を見て、あの時の気持ちを思い出させようとしてくれたのだろう。本能的にな。
ヴァル「......必ず、必ずお前を取り戻す。だから、ちゃんと見守っててくれ。お前が愛し、お前のためだけに戦う男の姿を......」
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