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第10章-Ⅱ 【記憶の旅人】
第10章32 【戦慄の記憶】
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アルフレア「セヤァッ!」
縦に一振、横に一振、間に火属性の魔法を5発放つ。
男は、暗殺隊にも勝るかのような身のこなしで全てを避けている。速さにこだわる俺が、こうも弄ばれてしまうとは......これが、炎の龍殺しが言っていた敵だと言うのか。次元が違う。だが、勝てない相手ではない。
見たところ、体の肉付きは大したことがないし、俺の攻撃を避ける最中も、極力少ない動きだけで避けている。そして、動いた後には僅かな息遣い。体力は少ないと見た。
ならば、相手に反撃の機会を許さず、ひたすらに攻撃を続けていれば勝機はある。俺1人では無理かもしれないが、幸いなことに、ここにはデルシアがいる。動きこそとろいなんてもんではないが、それでもいないよりかはマシだ。
ヒカリ「ふむ。持久戦に持ち込む算段ですか」
アルフレア「体力が少なそうに見えたんでな。俺達とお前、どちらが先に跪くかの戦いだ!」
奴に急接近し、俺は魔弾と共に奴の腹部を狙う。剣先の攻撃はかわされるが、魔法は奴の腹を貫いた。
一瞬だけ鮮血が飛び出るが、次の瞬間には傷口が塞がっていた。なんとなく、そうなのではないかと思っていたが、いざ、その様を見てしまうと僅かなため息が口からこぼれる。
ヒカリ「その程度の攻撃では、私に傷をつけることが出来ても、すぐに再生してしまいますよ?」
驚異的な再生能力。聞いていた以上の強敵だ。こんな奴を相手に、俺達は勝てるのか?
......勝てる見込みなんてどこにもない。だが、それでも戦わねばなるまい。守るべき者のために、俺自身のために、俺は剣を奮う。己の心と共に。
ヒカリ「黒月の王は、随分と態度のでかい人ですね。負けしか見えない戦いに、一体何を賭けているというのですか?」
アルフレア「戦場に立つ者が賭けていくものなど、1つに決まっているだろう。自分の命だ!お前にはあってないような物らしいが、俺達は自分の命を賭けてここに来ている!」
ヒカリ「なるほど。己の命ですか......確かに、それを失えば何も残りませんからね。では、あなたにとって、本当に自分の命が賭けられる物なのかどうか、ここで確かめてみるとしますか」
一瞬、奴の姿が消えた。数秒後、奴はデルシアの背後に立っていた。
刀が勢いよく振り落とされる。あの速さでは、流石の俺にも守りきることが出来ない。それでも......
アルフレア「デルシ......アっ!」
デルシアを突き飛ばし、刀の刃を諸に俺の体へと刻ませる。
デルシア「......っ!兄さん!」
ヒカリ「ほう。自分の命が最優先ではなかったのですか?」
奴が、感情の籠っていない瞳で俺を見下ろしている。デルシアは、奴に近づけば自分も死ぬと判断したのか、剣を構えて睨みを利かせている。
右の脇下あたりからざっくりとやられてしまったが、剣で動きをズラした甲斐もあってか、心臓を斬られてしまうようなことは起きていない。だが、それでもこうまでざっくりとやられてしまうと、痛みが凄まじく襲ってくる。
ヒカリ「人間とは面白いものです。言っていることとやっている事で一貫性が取れていない。だからこそ、心を読んであげる必要があるのです」
アルフレア「っ......ゲホッ!お前には分からぬようだな......。如何に己が大事と言えど、それ以上に大事なものがあるということがっ......」
血反吐と共に、吐き捨てるようにして奴に言葉を浴びせる。だが、奴は涼しい顔をして俺とデルシアに冷ややかな笑みを送っている。
冷酷な父上ですら、ここまで他人を嘲笑うかのような顔をしたことはなかった。だからこそ、俺は己の目的の為なら何だってやれる父に憧れを抱いた。だが、この男はどうだ?この男には、目的がないように見える。もし、目的があるのだとすれば、それは、苦しむ人々を見て嘲笑うためだろう。
アルフレア「ハッ......!」
血が止まらない。このままでは失血死か......。戦場で己の命を散らすには、これ以上にない死に方だが、まだ死にたくない。死んでたまるか......俺には、守らねばならぬ、『家族』がいる。今、あちらこちらで兵を進ませ、己すらも戦場に飛び込ませて戦っている家族が、黒の兄に庇われ、自分は何をすればいいのかが分からないでいる妹が......。
必死に奴を睨み続けたこの目も、段々と力尽きたかのように、ゆっくりと視界を暗くさせてゆく。ここまでか......諦めるには随分と早すぎる気がするが、体の方が言うことを聞いてくれないのではどうしようもない。
ヒカリ「力尽きたようですね......なら、次はあなたの番です。創真の女王であり、リエンドの娘、デルシアさん」
最後に、その言葉を聞いてから俺の意識は闇へと墜ちていった......。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴェルド「何がどうなってやがんだ!奴らはヴァルの野郎共を狙ってるんじゃなかったのかよ!」
シアラ「分かりません。ですが、敵は私達の読みを超えて動いていたようです。ヴェルド様」
最悪な状況になった。
俺とシアラ2人での仕事帰り。まさかまさか、急にザガルの兵隊共が攻めてきやがった。
2度も言うが、今は最悪な状況だ。俺とシアラ2人だけの状態で敵に見つかり、周囲を圧倒的な数で囲われている。こんな状態になった事に気づいた時にはもう遅かった。何もかもが遅すぎた。
奴ら、どこから現れたのかは知らねぇが、ものの数分でこの街を占拠していやがる。今抵抗してるのは、俺達だけか、もしくはギルドの皆。あるいは、街の人々全体が抵抗しているかだろう。とにかく、こんな場所からじゃ、街がどうなってんのか分かんねぇ。だから、この包囲網を何とかして突破する必要があるのだが......。
ヴェルド「倒しても倒してもキリがねぇ......どうなってやがんだ!こいつら......!」
シアラ「ヴェルド様!周囲は私が担当します!ヴェルド様は一点狙いで突破口を作り出してください!」
ヴェルド「おうよ!アイスランス!ぶっ飛べぇ!」
流石のシアラも、今がとんでもなくマズイ状況だってのは分かってるらしいな。昔みたいに無口になってるわけではないが、言葉の一つ一つに重みを感じる。
久しくうぜェシアラしか見てなかったから忘れかけてたが、シアラって元はこんな奴だったな、と古い記憶を掘り起こすと共に、ずっとそのままであってくれと願う。
敵を吹き飛ばして一本道を作りはするが、そこはすぐに別の敵で埋め尽くされる。周りから来る敵は、全てシアラが薙ぎ払ってくれてるが、それもいつまで続くか......クソっ。ザガルと組織に繋がりがある可能性は、ヴァルから久し振りにやって来た手紙によって知ってはいたが、攻めてくるとしたらイーリアスか創真かのどちらかだろうと書いた奴はどこのどいつだよ!その面拝んだ後にありったけの暴力で攻めてやる!
ヴェルド「アイススピアレイン!」
シアラ「ウォーターホール!」
ヴェルド「フレイムアックス!アイスソード!」
マズイな......いや、ずっとマズイ状況ではあるのだが、このままではジリ貧コースだ。想像したくねぇけど、このまま力尽きたら俺らどうなるんだろうな?
......集団リンチで死亡か。なんか、死に方としては嫌な死に方だな。
ヴェルド「......!アイスランス!フレイムランス!」
たまたま見ていた方角の敵陣に、一瞬だけ隙間が出来たのを俺は見逃さなかった。
俺はその方角に向けて広範囲の魔法を放つ。すると、今までとは違ってすぐに元に戻らない。多分、そっちの方角は敵の数が少ないのだろう。
ヴェルド「シアラ!行くぞ!」
シアラ「えっ!は、はい!」
俺はシアラの腕をガッチリと掴み、地面に氷を張りつつ出来上がった隙間をくぐり抜けていく。このまま真っ直ぐ行けばギルドがある。仲間達が抵抗しているのであれば、俺達も戦力としてそこに加わる。もし、もう全てが終わったあとならば、屋根伝いで街の外に出る。地理上では俺達の方が有利だ。逃げるくらいのことは簡単だろう。
ものの数分で出来上がっちまったこの地獄。あの組織が何なのかを俺はよく知らない。知りたいとも思わない。だけど、この街をこんなにしてくれたからには借りを返さなきゃならねぇ。
全員まとめて氷漬けだ......!
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
メイ「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」
クロム「そんな叫ばんでも聞こえている」
メイが勢いよく扉を開けて入ってくるが、俺は冷静に対応する。
クロム「......まさか、ザガルが先に白陽を攻め落とすとはな」
メイ「うん......お兄ちゃんは、どうするの?」
......どうするか。
正直、こうなる事は予想出来なかったからな。地理上での事を考えると、裏をついたとしてもグランアークかラグナロクかのどちらかだろうとしか考えてなかった。
考えが甘かった。そう言わざるを得ない。
考えが甘かったのはもう過ぎたことだし仕方ないとして、問題は俺達がどう動くかだ。白陽とは何の国交もない。あるとしても創真とだけ。あの辺のことを考えれば、黒月と創真が反撃に出てもおかしくはないと思うが、俺達が出る理由はどこにも存在しない。
だが、理由がないからと言って助けに行かないというわけにもいかない。元々、ザガルとのいざこざは俺達の方が強かった。便乗する形にはなるが、俺達も戦いに加わるべきだと思う。
クロム「......」
メイ「悩んでる時間は少ない方がいいよ」
クロム「分かっている......だが、俺としては助けに向かいたい。だが、そうなればこの国をしばらくの間無防備な状態にしてしまうことになる。もし、ザガルがそこまで読んでいて、その隙を付いてくるとなれば......」
メイ「白陽みたいに一瞬で墜とされる......」
クロム「......」
俺だけの判断で動くわけにはならない。助けに向かうのであれば、自警団をごと持っていく。だが、そうなれば完全無防備。エンマ相手にあんな様になるような国なのだから、自衛手段を失えばとんでもない事になるだろう。
......このまま、黙って静観するくらいしかないのか......?
「おいおい、国のトップがバッサリ判断下せねぇでどうすんだよォ」
クロム「......?お前は......」
「よう、久し振りだな。聖王様」
ラスト......
クロム「今日はどうしたんだ?前連絡無しでやって来て......」
ラスト「そうだな、話は早ぇ方がいいか。おい、クロム。自警団全部出動させろ」
クロム「は......?」
ラスト「だーかーらー、自警団全部出動させろって言ってんだ!」
クロム「お、おい。そんな事をしたら......」
ラスト「分かってるよォ!この国が無防備になることくらい。しかしなァ、そこは任せとけ」
クロム「任せろとは......?」
いくらラストだとしても、この国を任せるわけにはいかないのだが......
ラスト「俺じゃぁ、心もとねぇって顔してるな。まあ、そらそうだわな。元々は敵対していた他国の人間に、自分の国を任せて遠い国に行くなんてとんでもねぇ事だ」
クロム「だな。それが分かっているのなら、俺達が出払っている間、誰がこの国を守るんだ?余程の人間じゃない限り、俺は信用せんぞ?」
ラスト「それは、こいつだァ」
誰が来るんだと思って、ラストが開けた扉の方を見ていた。
コツコツと靴音が鳴り響いて、現れた人物は......
「お久......です......クロ......王とし......っていけて......ですね」
クロム「......!?姉さん!?」
縦に一振、横に一振、間に火属性の魔法を5発放つ。
男は、暗殺隊にも勝るかのような身のこなしで全てを避けている。速さにこだわる俺が、こうも弄ばれてしまうとは......これが、炎の龍殺しが言っていた敵だと言うのか。次元が違う。だが、勝てない相手ではない。
見たところ、体の肉付きは大したことがないし、俺の攻撃を避ける最中も、極力少ない動きだけで避けている。そして、動いた後には僅かな息遣い。体力は少ないと見た。
ならば、相手に反撃の機会を許さず、ひたすらに攻撃を続けていれば勝機はある。俺1人では無理かもしれないが、幸いなことに、ここにはデルシアがいる。動きこそとろいなんてもんではないが、それでもいないよりかはマシだ。
ヒカリ「ふむ。持久戦に持ち込む算段ですか」
アルフレア「体力が少なそうに見えたんでな。俺達とお前、どちらが先に跪くかの戦いだ!」
奴に急接近し、俺は魔弾と共に奴の腹部を狙う。剣先の攻撃はかわされるが、魔法は奴の腹を貫いた。
一瞬だけ鮮血が飛び出るが、次の瞬間には傷口が塞がっていた。なんとなく、そうなのではないかと思っていたが、いざ、その様を見てしまうと僅かなため息が口からこぼれる。
ヒカリ「その程度の攻撃では、私に傷をつけることが出来ても、すぐに再生してしまいますよ?」
驚異的な再生能力。聞いていた以上の強敵だ。こんな奴を相手に、俺達は勝てるのか?
......勝てる見込みなんてどこにもない。だが、それでも戦わねばなるまい。守るべき者のために、俺自身のために、俺は剣を奮う。己の心と共に。
ヒカリ「黒月の王は、随分と態度のでかい人ですね。負けしか見えない戦いに、一体何を賭けているというのですか?」
アルフレア「戦場に立つ者が賭けていくものなど、1つに決まっているだろう。自分の命だ!お前にはあってないような物らしいが、俺達は自分の命を賭けてここに来ている!」
ヒカリ「なるほど。己の命ですか......確かに、それを失えば何も残りませんからね。では、あなたにとって、本当に自分の命が賭けられる物なのかどうか、ここで確かめてみるとしますか」
一瞬、奴の姿が消えた。数秒後、奴はデルシアの背後に立っていた。
刀が勢いよく振り落とされる。あの速さでは、流石の俺にも守りきることが出来ない。それでも......
アルフレア「デルシ......アっ!」
デルシアを突き飛ばし、刀の刃を諸に俺の体へと刻ませる。
デルシア「......っ!兄さん!」
ヒカリ「ほう。自分の命が最優先ではなかったのですか?」
奴が、感情の籠っていない瞳で俺を見下ろしている。デルシアは、奴に近づけば自分も死ぬと判断したのか、剣を構えて睨みを利かせている。
右の脇下あたりからざっくりとやられてしまったが、剣で動きをズラした甲斐もあってか、心臓を斬られてしまうようなことは起きていない。だが、それでもこうまでざっくりとやられてしまうと、痛みが凄まじく襲ってくる。
ヒカリ「人間とは面白いものです。言っていることとやっている事で一貫性が取れていない。だからこそ、心を読んであげる必要があるのです」
アルフレア「っ......ゲホッ!お前には分からぬようだな......。如何に己が大事と言えど、それ以上に大事なものがあるということがっ......」
血反吐と共に、吐き捨てるようにして奴に言葉を浴びせる。だが、奴は涼しい顔をして俺とデルシアに冷ややかな笑みを送っている。
冷酷な父上ですら、ここまで他人を嘲笑うかのような顔をしたことはなかった。だからこそ、俺は己の目的の為なら何だってやれる父に憧れを抱いた。だが、この男はどうだ?この男には、目的がないように見える。もし、目的があるのだとすれば、それは、苦しむ人々を見て嘲笑うためだろう。
アルフレア「ハッ......!」
血が止まらない。このままでは失血死か......。戦場で己の命を散らすには、これ以上にない死に方だが、まだ死にたくない。死んでたまるか......俺には、守らねばならぬ、『家族』がいる。今、あちらこちらで兵を進ませ、己すらも戦場に飛び込ませて戦っている家族が、黒の兄に庇われ、自分は何をすればいいのかが分からないでいる妹が......。
必死に奴を睨み続けたこの目も、段々と力尽きたかのように、ゆっくりと視界を暗くさせてゆく。ここまでか......諦めるには随分と早すぎる気がするが、体の方が言うことを聞いてくれないのではどうしようもない。
ヒカリ「力尽きたようですね......なら、次はあなたの番です。創真の女王であり、リエンドの娘、デルシアさん」
最後に、その言葉を聞いてから俺の意識は闇へと墜ちていった......。
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ヴェルド「何がどうなってやがんだ!奴らはヴァルの野郎共を狙ってるんじゃなかったのかよ!」
シアラ「分かりません。ですが、敵は私達の読みを超えて動いていたようです。ヴェルド様」
最悪な状況になった。
俺とシアラ2人での仕事帰り。まさかまさか、急にザガルの兵隊共が攻めてきやがった。
2度も言うが、今は最悪な状況だ。俺とシアラ2人だけの状態で敵に見つかり、周囲を圧倒的な数で囲われている。こんな状態になった事に気づいた時にはもう遅かった。何もかもが遅すぎた。
奴ら、どこから現れたのかは知らねぇが、ものの数分でこの街を占拠していやがる。今抵抗してるのは、俺達だけか、もしくはギルドの皆。あるいは、街の人々全体が抵抗しているかだろう。とにかく、こんな場所からじゃ、街がどうなってんのか分かんねぇ。だから、この包囲網を何とかして突破する必要があるのだが......。
ヴェルド「倒しても倒してもキリがねぇ......どうなってやがんだ!こいつら......!」
シアラ「ヴェルド様!周囲は私が担当します!ヴェルド様は一点狙いで突破口を作り出してください!」
ヴェルド「おうよ!アイスランス!ぶっ飛べぇ!」
流石のシアラも、今がとんでもなくマズイ状況だってのは分かってるらしいな。昔みたいに無口になってるわけではないが、言葉の一つ一つに重みを感じる。
久しくうぜェシアラしか見てなかったから忘れかけてたが、シアラって元はこんな奴だったな、と古い記憶を掘り起こすと共に、ずっとそのままであってくれと願う。
敵を吹き飛ばして一本道を作りはするが、そこはすぐに別の敵で埋め尽くされる。周りから来る敵は、全てシアラが薙ぎ払ってくれてるが、それもいつまで続くか......クソっ。ザガルと組織に繋がりがある可能性は、ヴァルから久し振りにやって来た手紙によって知ってはいたが、攻めてくるとしたらイーリアスか創真かのどちらかだろうと書いた奴はどこのどいつだよ!その面拝んだ後にありったけの暴力で攻めてやる!
ヴェルド「アイススピアレイン!」
シアラ「ウォーターホール!」
ヴェルド「フレイムアックス!アイスソード!」
マズイな......いや、ずっとマズイ状況ではあるのだが、このままではジリ貧コースだ。想像したくねぇけど、このまま力尽きたら俺らどうなるんだろうな?
......集団リンチで死亡か。なんか、死に方としては嫌な死に方だな。
ヴェルド「......!アイスランス!フレイムランス!」
たまたま見ていた方角の敵陣に、一瞬だけ隙間が出来たのを俺は見逃さなかった。
俺はその方角に向けて広範囲の魔法を放つ。すると、今までとは違ってすぐに元に戻らない。多分、そっちの方角は敵の数が少ないのだろう。
ヴェルド「シアラ!行くぞ!」
シアラ「えっ!は、はい!」
俺はシアラの腕をガッチリと掴み、地面に氷を張りつつ出来上がった隙間をくぐり抜けていく。このまま真っ直ぐ行けばギルドがある。仲間達が抵抗しているのであれば、俺達も戦力としてそこに加わる。もし、もう全てが終わったあとならば、屋根伝いで街の外に出る。地理上では俺達の方が有利だ。逃げるくらいのことは簡単だろう。
ものの数分で出来上がっちまったこの地獄。あの組織が何なのかを俺はよく知らない。知りたいとも思わない。だけど、この街をこんなにしてくれたからには借りを返さなきゃならねぇ。
全員まとめて氷漬けだ......!
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
メイ「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!」
クロム「そんな叫ばんでも聞こえている」
メイが勢いよく扉を開けて入ってくるが、俺は冷静に対応する。
クロム「......まさか、ザガルが先に白陽を攻め落とすとはな」
メイ「うん......お兄ちゃんは、どうするの?」
......どうするか。
正直、こうなる事は予想出来なかったからな。地理上での事を考えると、裏をついたとしてもグランアークかラグナロクかのどちらかだろうとしか考えてなかった。
考えが甘かった。そう言わざるを得ない。
考えが甘かったのはもう過ぎたことだし仕方ないとして、問題は俺達がどう動くかだ。白陽とは何の国交もない。あるとしても創真とだけ。あの辺のことを考えれば、黒月と創真が反撃に出てもおかしくはないと思うが、俺達が出る理由はどこにも存在しない。
だが、理由がないからと言って助けに行かないというわけにもいかない。元々、ザガルとのいざこざは俺達の方が強かった。便乗する形にはなるが、俺達も戦いに加わるべきだと思う。
クロム「......」
メイ「悩んでる時間は少ない方がいいよ」
クロム「分かっている......だが、俺としては助けに向かいたい。だが、そうなればこの国をしばらくの間無防備な状態にしてしまうことになる。もし、ザガルがそこまで読んでいて、その隙を付いてくるとなれば......」
メイ「白陽みたいに一瞬で墜とされる......」
クロム「......」
俺だけの判断で動くわけにはならない。助けに向かうのであれば、自警団をごと持っていく。だが、そうなれば完全無防備。エンマ相手にあんな様になるような国なのだから、自衛手段を失えばとんでもない事になるだろう。
......このまま、黙って静観するくらいしかないのか......?
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クロム「......?お前は......」
「よう、久し振りだな。聖王様」
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クロム「今日はどうしたんだ?前連絡無しでやって来て......」
ラスト「そうだな、話は早ぇ方がいいか。おい、クロム。自警団全部出動させろ」
クロム「は......?」
ラスト「だーかーらー、自警団全部出動させろって言ってんだ!」
クロム「お、おい。そんな事をしたら......」
ラスト「分かってるよォ!この国が無防備になることくらい。しかしなァ、そこは任せとけ」
クロム「任せろとは......?」
いくらラストだとしても、この国を任せるわけにはいかないのだが......
ラスト「俺じゃぁ、心もとねぇって顔してるな。まあ、そらそうだわな。元々は敵対していた他国の人間に、自分の国を任せて遠い国に行くなんてとんでもねぇ事だ」
クロム「だな。それが分かっているのなら、俺達が出払っている間、誰がこの国を守るんだ?余程の人間じゃない限り、俺は信用せんぞ?」
ラスト「それは、こいつだァ」
誰が来るんだと思って、ラストが開けた扉の方を見ていた。
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