グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第10章-Ⅱ 【記憶の旅人】

第10章47 【秘密の記憶】

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セリカ「うーん......うーん......うーん......?」

 さっきから唸り声を上げてると思うんだけど、決して深刻な悩みがあるわけではない。いや、ある意味では深刻な悩みかもしれないが、世界を揺るがすほどの大きなものじゃない。

 私が悩んでいること。それは、3日後に迫ったネイりん達の誕生日だ。

 何の気なしにイデアルに聞いたネイりんの誕生日。去年はあんな状態だったし、ヴァルがネイを連れて創真に行ってたから出来ず、一昨年はそもそも誕生日を本人含めて知らなかった。でも、今年は完全なる平和で、余裕もある。だから、ここいらでパーッとお祝いしたいところなんだけど......

セリカ「そもそも誕生日パーティなんて、お父さん達がやってた貴族らしい厳粛なものしか知らないからなぁ......」

 ここでやって来る違う意味での育ちの悪さ。一応、貴族らしい作法とかは覚えてるし、お祝い事の行事だってどうすればいいのかは知っている。でも、私達がやろうとしてるのは、もっと軽いもの。ワイワイとしていて楽しいものじゃないとダメなのだ。

 とりあえず、ギルドでやるのは確定として、どういう会にするのが良いのか。ギルドで、ネイりんの誕生日を思い出した時から、家に帰って、お風呂に入ってる時とかご飯を食べてる時とか、ずっと悩み続けている。私、こう見えてサプライズ事を1人で考えるの好きなので。で、ここまで悩んで進展があったのかと聞かれれば、先に挙げたように、何も無い。

セリカ「うーん......1人で悩むには無理があるのかなぁ?でも、誰かに聞こうとしたら、あの地獄耳のところに届いちゃうかもしれないし......」

 せめて、ネイりんの行動予定表でも手に入れば、少しくらい動きやすくなるんだけどなぁ。......行動予定?

セリカ「そっか!分からないなら、こっちから作ってしまえば良いんだ!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

セリカ(と、いうわけでヴァルにはネイりん連れて、一仕事してきて欲しいの)

 翌日、私は早速ヴァルにそう伝えた。

ヴァル(計画はいいと思うし、やろうと思うが、あいつ連れて行ったら秒で終わるぞ?1日も持たねぇよ)

セリカ(そう言うと思って、じゃーん)

ヴァル(......なるほど。行きと帰りで時間を使わせようって魂胆か。でも、あいつなら転移使って行こうとするかもしれんがその辺はどう考えてるんだ?)

セリカ(そこは上手いことやってよ)

ヴァル(詰め甘すぎだろ......まあ、なるべく頑張ってみる)

セリカ(ありがと)

 早速ヴァルは、私が提示した依頼書を持って、机の上に自分の胸を枕にして寝てるネイりんのところにまで行った。もちろん、起こし方は背中なぞり。凄い高い音が響いたけど、これも計画のため。許せ、ネイ......。

 ちなみに、早寝遅起きなネイりんであることを知っている私は、いつもより早くにギルドに来て、来ている限りの人全員に計画を伝えた。みんな快く承諾してくれ、やる気を見せてくれている。特にやる気が凄いのは、なぜかギルドマスターであるヴァハトだった。

ヴァル「んじゃ、行ってくるわー」

ネイ「いってきまーす......」

 ヴァルが、発狂して起きたにも関わらず、未だに眠そうにしているネイりんを連れて仕事に出た。この様子なら、行きだけは確実に馬車を使ってくれそう。

 そして、2人の背中を見届けた私は、すぐさまミラさんのところに駆け寄る。

ミラ「協力者には、もう動いてもらってるわよ」

セリカ「ありがとう、ミラさん」

ミラ「あの子のためでしょう?ならば協力は惜しまないわよ。でも、この計画にはただ1つの欠点があるわ」

セリカ「欠点?」

 ネイりんの動きさえ自由に出来れば、あとはもう何もないと思うんだけど、何か不都合でもあったかな?

ミラ「ヒカリちゃんとユミちゃんよ」

セリカ「あ......」

 しまった。ネイりんのことばっかり気にかけてて、同日誕生日の2人のことを忘れていた。

ミラ「ヒカリちゃんの方は、アルテミスから聞いた限りだとあと1日もすれば帰ってこられるらしいわ。なんだか、無人島に1週間監禁されてるらしいの」

セリカ「えぇ......それどんな状況?」

ミラ「あの子のお師匠さんがやって来てね、あの子を拐っていったらしいの。で、それに着いて行ったアルテミスがね、そんな状況になってるって笑いながら言ってきたわ。まあ、これに関しては、私達が今日中に準備を終わらせてしまえば問題ないと思うわ。で、1番の問題がユミちゃん」

セリカ「あー......」

 ヒカリんの所在は分かったけど、ユミに関してはゲリラでやって来るから、もしかしたら計画がバレてしまう可能性がある。ユミの場所も分かれば、そこら辺も上手く立ち回れるんだけど、どうしよう。

ミラ「万が一のこともあるわ。なるべく、外で計画を進めましょう。ただ、私は皆が思いがけずに口を滑らせないよう、監視するから、セリカ1人でここに向かってちょうだい」

 毎度の如くお世話になっている地図を差し出し、隣街のベルギアを指している。

ミラ「ここにある天文台に集合するよう伝えておいたから、多分、みんなもう集まってるわよ」

セリカ「じゃあ、急がないと......」

 待たせるわけには行かないので、机の上に置いていた鞄を手に取り、私はギルドの戸に手をかける。

セリカ「あ、ケーキ作りよろしくねー!」

ミラ「ええ、任せてちょうだい」

 お互いにグッドサインを送りあって、私は隣街目指して駆け出した。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ネイ「おぇぇぇぇ......」

ヴァル「大丈夫かよお前......」

ネイ「らいようふらなひれふ。なんへ馬車ふかおうとおもったんでふか」

 あー、何言ってるかサッパリ分かんねぇ。馬車使えば1日潰せるって言われたけど、それがネイにとっての地獄になるってことをなんで分からなかったかなぁ。って、俺も、俺が乗り物大丈夫になったからって、なぜか勝手にネイも大丈夫だろうって思ってたんだよな。

ネイ「おえ゛ーーー」

 ......4ヶ月も経つというのに、一向に血反吐を吐くのが止まらねぇな。と思いつつ、そっとネイの口元を拭う。そうやって血を拭ってやれるなら、荷車を汚すなって運ちゃんに怒られそうな話だ。ごめん。マジでごめん......。

ヴァル「......もう桜の咲く季節か」

ネイ「はなひゃっへずふとくいきるんですはら、あたひまへへふよ」

 ネイが何言ってんのかは分からんが、とりあえず桜が綺麗だってことは分かった。穏やかな風の流れに乗って、桜の花弁が1枚、ネイの髪飾りの上に落ちてきた。

 俺の目から見える桜の木は、全部で10本だけで、馬車の速さのせいであっという間に視界から消えてしまったが、その一瞬の間だけだというのに、この荷車の中には結構な数の花弁が散っている。まさかとは思うが、こいつが引き寄せたんじゃないだろうな?と思い、ネイの顔色を伺うが、相変わらず気持ち悪そうな顔をしているだけだった。

ヴァル「......今度、花見にでも行くか」

ネイ「..................おぇ」

 たっぷり溜められた後にそれかよ......もう何も言わね。セリカ達、上手いこと進めてくれてるといいな。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 隣町の天文台まで猛ダッシュで向かい、目的地に着いた時には、ネイりんたいにゼェゼェハァハァとしていた私は、なんとかみんなと合流することが出来た。

 今回の作戦の主要メンバーであり、私より絶対に有能だと思える人物達。それは、レラ、エレノア、シアラ、エフィの4人だ。フウロも加えようかと思ったけど、なんだか嫌な予感がしたのでやめておいた。決してイジメとかそういうのではない。ただ、なんとなく風がやめとけって言ってるような気がしただけなのだ。

レラ「まさか、セリカからこんな大規模な計画を伝えられるとは思わなかったけど、なんだかんだで楽しみよね。ネイちゃんとヒカリちゃんとユミちゃんの誕生日」

エフィ「そうですね。私、誕生日会っていうのはよく分からないんですけど、とりあえず盛り上げればいいってことは分かったので、頑張ってみます!」

エレノア「ただ、まさかまさかの3人同時なんですよね。そこがちょっと切り詰めるのが難しいところになりそうです」

シアラ「どんな事があっても、シアラはヴェル、ネイさん達のために頑張ります!」

エレノア「今、誰と間違えた?」

 とまあ、そんな会話が聞こえてきたのを確認しつつ、私は「ごめんごめん、遅れた」と若干女子会になりつつある作戦会議に加わった。

セリカ「じゃあ、1番最後に来たのが私になっちゃったけど、改めて今回の計画について話したいと思います!」

シアラ「よっ!グランアーク1!」

エレノア「そういうの要りませんから」

 シアラの変なアレは無視して、私はメモ用紙にまとめた計画を改めて口にする。

セリカ「今回の計画は、明後日に迫ったネイりん達の誕生日を盛大に祝うべく、ギルドが一丸となって頑張ろうというものです。中でも、私達花の女子はーー」

レラ「花の女子だってw」

エレノア「静かに聞きましょうよ」

セリカ「今回の作戦において、1番大事な部分である、全体の進行及び外交を頑張ります!」

レラ「はいはーい、質問いい?」

セリカ「どうぞ、レラ」

レラ「進行の方は分かるんだけどさー、外交って何?」

セリカ「よくぞ聞いてくれました!外交とは、まあ、いい感じの言葉が思い浮かばなかったからそう言い例えただけで、ただの外回りです。主にやることとしては、ネイりん達に関わった人で、呼べそうな人をパーティに呼ぶってことくらいです!」

レラ「ほう。......ん?あの子達と関わった人達って......」

エレノア「大体、王族かそれに近い偉い人達じゃないですか?」

セリカ「..................」

 あれ?そんなに呼ぶのが難しそうな人達だけだったっけ?

 ちょっと待てよ、と思い、メモ用紙にまとめた招待したい人達のリストを確認する。

 ・クロムとその自警団。
 ・白陽の王族とその従者達。
 ・黒月の王族とその従者達。
 ・創真の王族とその従者達。
 ・グランアークの王族とその従者達。

 なんてことだ......。私自身、まさかこんなラインナップになっているとは思いもしなかった。いや、クロム達はなんだかんだで呼べるから一般人みたいな括りとしよう。でも、その他はどうだ?

 シンゲン......は私達とはあまり繋がりがない。アルフレアも同じく。デルシアあたりは呼べば来そうな気がするけど、この街とほぼ真反対に位置するあの人達に、どうやって残り2日で伝えに行くのかという問題もある。グランアークのゼイラ王女には、速達でも送れば即日でこっちに来そうな気がするけど、あの堅苦しい従者がそれを許さないだろう。

 あれ?まさか、クロムとその自警団だけ?いやいやいや、そんなはずが......

セリカ「......冷静に見ると、全部呼べなさそうな人達になってる......」

エレノア「なんでその肝心な部分に目が回ってないんですか......」

シアラ「思いつきで行動してたからじゃないですか?」

エフィ「確かに、今朝、唐突に伝えられた内容でしたからね。やるなら、もっと余裕を持って計画を進めるべきだと思います」

レラ「まあ、ある意味セリカらしいっちゃらしいけどね」

 みんな、口々に好き勝手言ってるが、反論の余地がどこにもない。ええ、仰る通りです。って、もう後戻り出来ないことはどうでもいいんだよ。問題は、果たしてこの面子で大丈夫なのか、というところ。

 うーん......せめて、家族くらいはどうにかして呼びたいけど、あれはあれで私達とは本当の意味で違う世界に住んでるからなぁ。連絡のしょうがない。せめて、アルテミスがちょっと早くに帰ってくれれば、今からでも急いで伝えに行ってもらうのに。

レラ「ちょっと、計画の立て直しが必要みたいね。セリカ」

セリカ「......はい」

 やっぱり、私1人じゃ難しい。
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