319 / 434
最終章 【創界の物語】
最終章16 【時と巫女】
しおりを挟む
「時間移動なんぞ、本来はせん方がええのじゃがな」
時渡りの扉を潜りながら、私は独り言のようにそう呟く。
過去の姿であるヴァルと、まだ何も知らないヒカリ。2人を連れて、現代から数えて4年ほど前の時間へ飛ぶ。
「ーーよし、着いたぞ」
私は後ろの2人に声をかけ、1人先に書庫を抜け出す。
耳を殴り付けてくるかのように聞こえる咆哮。これは、龍になったデルシアのものだ。本来関わるのはよしといた方がいいのだが、歴史書にすら妾達が関わることが確定事項として刻まれている今、無理にそんなことを考える必要はないじゃろう。
スサノオ「アマテラス。お前も終わりだ」
アマテラス「......」
「いいや。終わるのはお主らの方じゃな」
幽霊となっても尚、現世への執着心を持つスサノオの前に、私は躍り出るようにしてアマテラスの前に出た。
スサノオ「……誰だ、お前」
スサノオは右の眉をピクリと動かしただけで、私の登場にはこれといった驚きを見せず、剣の切っ先をこちらに向けた状態でじっと睨んでくる。
(ヴァル、ヒカリ。妾は彼奴らの相手をする。お主らはそこにおる白と黒の部隊を助けろ)
私は念話でヴァル達にそう伝え、小さな円形の扉からBurstOrbisを取り出す。
ヴァル「火傷が酷ぇな。ヒカリー、確かお前、治癒術使えたよな?」
ヒカリ「ええ。使えるわよ」
2人は治療をしようと、アイリス達に積極的に関わろうとしている。ーーまあ、その事自体を止めはせんが、関わりすぎないように釘を刺しておかねばならぬな。
「あまり、過去の人間に関わるなよ。妾達が用のあるのはこいつらだけじゃからな」
ヴァル「分かってるよ」
本当に分かってるのかどうか怪しいところではあるが、まあヒカリちゃんがおるわけじゃし、大丈夫じゃろう。
スサノオ「……お前ら、何者だ?」
頃合を見計らって、スサノオが静かな声で、改めてそう尋ねてくる。
「妾の名はネイ。先の未来においての創界神じゃ」
スサノオ「そんなはずがない。この先に未来は続かない」
「そうじゃったかのう?まあええわ。妾が用のあるのはお主でもない。狙いはデルシアじゃ」
私は、龍となり未だに苦しそうに咆哮を上げるデルシアに目を合わせる。ーー悲しい目だ。自由が効かず、深い海の中を溺れている。
安心しろ。今、妾がお主を解放してやるーー
スサノオ「......話すつもりはない、ということか」
スサノオが勢いよく刀を打ち付けてくる。私はそれを大剣の腹で防ぎ、しばらくした後に打ち返す。
金属と金属が打ち合う音が響き渡り、スサノオの体が勢い良くデルシアの後ろへと突き飛ばされる。
「そもそも、話す事などあるか?」
時間を1000分の1倍にまで下げ、私はスローになったこの世界を元の速さで動く。
ただ歩いて斬っているだけの行為だが、この時間に巻き込まれていないものからすれば、ひたすらに高速で動いてスサノオをボコしているだけの図に見えるだろう。
時間は止めるよりも、ゆっくりにした方が私の体にかける負担が少なくて済む。1000年の間、ただただ無為に歴史の修正だけをしてきたわけではない。大きな戦いに備えて早め早めの準備をすることは大切な事だ。
「さて、チェックメイトじゃな」
全ての時間を正常に戻し、私はスサノオの首を撥ねる。
スサノオ「ま……さ……か……」
すると、死人は死人らしく、天に旅立つかのようにして消えていった。こんなのを相手に苦戦しておるとは、白と黒の部隊も大した事ないな。
ーーさて、ここからが本番じゃ。デルシアを倒し、終焉の刃を回収する。その為に私達はこの時代に来た。
「さて、ここからが本命じゃな」
ヴァル「来といてあれだが、こんな龍相手にどうにか出来んのか?」
ヴァルが隣に立ち、そう問いかけてくるが、私は至って冷静な声でこう言う。
「考えてみろ。妾じゃぞ?」
ヴァル「......ごめん」
「それに、ヒカリちゃん製の素晴らしい武器もあるからな」
大剣の腹部分を撫でるようにして、手の平に金属の感触を味合わせる。ヒカリちゃんがちゃんとメンテナンスをしてくれておるお陰で、今日も調子全開じゃ。
ヒカリ「不思議なものねぇ......。先の未来で私がロストテクノロジーバリバリの道具を作るだなんて......」
ヒカリちゃんは不思議そうにこの武器を眺める。ロストテクノロジー云々言うておるが、そもそも現代にグランメモリを完成させた時点で相当なもんじゃと思うがな。
「グァァァ!」
「はいはい。心配せんでもすぐに楽にしてやる」
大剣を2本の双剣に姿を変え、それぞれにシャインとダークのメモリを差し込み両手に構える。
「やっぱ、双剣の方が手に馴染むな。おりゃぁ!」
ヴァル「その可愛らしい掛け声もどうにかならないもんかねぇ。気が抜けんだよなぁ」
ヒカリ「掛け声なんてどうでもいいでしょ。本人が力を出せたらそれでいいんだから」
叫ぶデルシアに対し、妾は容赦なくその肉体を斬り刻んでゆく。時間の加速と減速を惜しみなく使い、ただ一方的に攻撃をし続ける。
予め疲弊しておいてくれれば、ここまで痛めつけなくとも良いのじゃが、生憎デルシアの性質が災いしておる。私程までとは行かないが、かなりの再生力を有しており、体が小柄なお陰で傷の治りが早い。そして、暴走しておるからか、精神的な疲弊が体に影響してこない。
再生が間に合わない速度で斬り刻み続け、殺さない程度に痛めつける。そうした後、お母さんが教えてくれた魔法で龍化を解く。
「よいか。原始化した者を元の人間にする方法はただ一つ。ぶっ飛ばしてしまえばいいのじゃ。殺さない程度にな」
デルシアの額を殴り飛ばすように斬りつけ、そのまま羽を使って回転するように斬ろうとする。しかしーー
「グァァァ!」
龍になったデルシアは、私のほんの一瞬だけの隙を見逃さなかった。
爪で左腕を弾かれ、その衝撃で片方の剣が奥の壁にまで突き刺さる。折角追い詰めたというのに、ここで剣を回収しに行けばまたやり直しになる。
「1本取れただけで、楽になると思うなよ」
右手に握った剣を更に分離させ、ルーンブレイドとステラドライブを新たに持ち直す。
「よいしょっと」
デルシアを一旦突き飛ばし、その衝撃を利用して私も後ろの方へと飛ぶ。そして、素早く突き飛ばされた剣を回収してデルシアの元へ戻る。
剣を投げ飛ばすようにしてデルシアを斬り続け、3本の剣を同時に操る。
「デルシア、お主の苦しみは妾にも分かる。かつて、妾もその姿を体験したからな。じゃから、妾は全力でお主を救ってみせる」
「グァァ、アァ、アァァァァ!」
「バーストライズ・テラドライブ」
合体された剣を最大の8本にまで分離させ、デルシアの周囲を舞うようにして立てる。これが私の全力、必ずあなたを助けてみせる……!
「剣は、心を映す。フレイム、ウォーター、トルネード、シャイン、ダーク、ブリザード、エレキ、クリスタル。8属性の刃を喰らえ」
8属性の刃を順番に手に持ち、斬りつけた時に出来た残像が最後の一撃を加える。
「流石はヒカリちゃんの剣じゃな。8属性を同時に操るとか、そんな芸当妾でも出来んわ」
ヒカリ「あんたの場合、古代魔法とか使うんでしょ。そっちの方が流石よ」
デルシアの体が、元の人間に戻っていく。最後の一撃に、お母さんから教えてもらった魔法を仕掛けておいたからだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ベルディア「デルシア!しっかりしなさいよ!」
流石はシスコンのベルディア。意識不明のデルシアに真っ先に飛びついた。だけど、これではちょっと邪魔だ。
「ベルディア、ちょっとそこを退け」
ベルディア「え、ええ......ってあなた!?」
無駄に驚かれたが、私は気にせずデルシアの容態を確かめる。
「......やはり、慣れてもないのに原始化を使うとこうなるな。早めに治療せんと後遺症が残る。この場合、口周りが動かせれんようになるな」
やはり、戦闘中にかけるだけでは全てが治るわけないか。
ベルディア「だったら今すぐ治療しないと!」
「お主ら素人がどうにか出来るもんではない。妾に任せておけ」
もう一度、あの魔法をデルシアにかける。龍化の痕が残る口周りを特に念入りに。
「うむ。これで大丈夫じゃな。後は......ネイか......」
嫌々言い続ける方のネイ。これは、魔法でどうにか出来るものではないだろう。
「やはり、過去の妾はここでトラウマを抱えておったか......」
ベルディア「......過去?」
「いや、なんでもない。これは、記憶を消せばいいじゃろう。なるべく問題がない範囲でな」
ヴァル「それでいいのかよネイ」
「妾はこうなっておった記憶を持ってない。じゃが、ミイの存在は認知しておった。消す範囲は......目の前に広がる血溜まりと死体の山の部分で良いか。後は、埋める記憶は殺しはダメという気持ちでいいか」
ヴァル「自分の人格まで決めれるとか、つくづく俺はお前が恐ろしいよ」
アルフレア「......お前達は、なんなんだ?未来から来たとか言っていたが、俺達にはお前達を理解することが出来ん」
黙って見ていればいいものを。質問の絶えん奴らじゃの。
「......ここをこうすればいいか......。よし。で、妾達が何者かって話じゃったな」
ヴァル「あんまり話しすぎんなよ」
ヒカリ「あんたが言う?それ」
私はネイの体を壁に立てかけるように座らせてから、アルフレア達の方を向く。
「妾達は、未来を作るべく戦う存在。訳あってこの時代に干渉して来たのじゃ」
アルフレア「......聞かない方が......いいんだな」
流石は一国の王子。理解が早くて助かる。
「ああ。それに、お主ら全員話す気力はそんなに残っとらんじゃろ。じゃから、聞くだけで分かるように説明してやろう」
この場にいる全員、デルシアの攻撃によって憔悴しきっている。しばしの休憩時間を取らせるという名目で話をしてやろう。
デルシア「うっ......」
ベルディア「デルシア......!?」
早いお目覚めだ。しかも、ちょっとタイミングが悪い。
デルシア「私......すみません......」
記憶は消していない。自らがさっきまで行ってきたことをすぐに思い出し、デルシアは頭を下げる。
ベルディア「謝らなくていいのよ。全部、あのリエンドとかいう奴が悪いんだから」
デルシア「......ベルディア姉さん......」
「時間がないから、お主らの話はお主らで終わらせてくれ」
ベルディア「分かったわ」
「妾達の未来は、ある組織によって歴史がねじ曲げられておる。その組織について話すことは出来んが、妾達は彼奴らをぶっ飛ばすための神器を追ってこの時代までやってきた。それが、デルシアが持つ終焉の刃じゃ」
デルシア「......これ......ですか」
デルシアが持っている2本目の剣。閻王の刃と同じく、ギザギザとした刃が特徴的な剣で、まだ使われたことはない。
「簡単に言う。それを妾達に寄越せ」
デルシア「......でも、これがないとリエンドは倒せない......いや、あなた達は誰なんですか」
意識がはっきりしてきたようだ。だが、それについて話す時間は無い。話が最初の部分に戻ってしまう。
ベルディア「この人達は未来から来たって言う私達の味方。あなたを龍の姿から救ってくれた人達。話がややこしくなるから今はそれで呑み込んで」
「は、はい......」
ベルディアが話を完結にまとめデルシアに話す。しっかりと姉をしておるな。血は繋がっとらんが。
「で、その剣をこちらに渡してほしいのじゃが」
デルシア「そしたら、リエンドを倒すことが出来なくなります!」
じゃろうな。元々、その終焉の刃はリエンドを倒すという名目で現れたのじゃから。
「......そうじゃ。それならこの剣をお主にくれてやる」
代わりの武器とはなるが、創成の女神権限専用の剣を取り出す。真っ直ぐに輝く銀色の剣であり、本来はヒカリちゃんが使うべきもの。だが、ヒカリちゃんが銃火器を専用に戦うもんじゃから出番が無くなりそうなものである。
神を殺すことは出来ぬが、龍程度なら殺せるじゃろう。
「創世の剣。終焉の刃に匹敵する強武器じゃ」
デルシア「......」
デルシアだけではなく、全員が胡散臭いといった顔でその剣を見ている。
確かに、見た目は古代遺跡にでも飾ってありそうな神器の見た目をしているが、そんなものがポンと出てくるわけないからな。じゃが、ここは妾の言葉技で騙していこう。
「この剣は己の未来を創る。お主が何を選ぶかは、お主次第じゃ」
ーーと言っても、パチモンの剣ではないし、嘘はどこにも無い。
デルシア「......分かりました。あなたを信じます」
流石デルシア。昔から騙されやすそうな子であったことに感謝する。
デルシア「私が創る未来......」
「それじゃぁの。妾達の目的はこれだけじゃからな」
デルシア「......リエンドの討伐にも協力してくれないんですか?」
ーー確かに、ただ貰いたいもの貰って帰るってのも私の良心が痛む。じゃが、そこは我慢我慢。
「......確かに、彼奴程度なら妾が余裕で倒せるが、それをやったら歴史が変わる。あれを倒すのは、お主ら白と黒の精鋭じゃ」
それに、どうせ歴史書にはデルシア達がこの戦いを突破するという事象が書き込まれているのだから問題はない。
「最後に1つ。ネイをよろしく頼んだぞ」
そう言い、私はヴァル、ヒカリと共に書庫へと帰った。
時渡りの扉を潜りながら、私は独り言のようにそう呟く。
過去の姿であるヴァルと、まだ何も知らないヒカリ。2人を連れて、現代から数えて4年ほど前の時間へ飛ぶ。
「ーーよし、着いたぞ」
私は後ろの2人に声をかけ、1人先に書庫を抜け出す。
耳を殴り付けてくるかのように聞こえる咆哮。これは、龍になったデルシアのものだ。本来関わるのはよしといた方がいいのだが、歴史書にすら妾達が関わることが確定事項として刻まれている今、無理にそんなことを考える必要はないじゃろう。
スサノオ「アマテラス。お前も終わりだ」
アマテラス「......」
「いいや。終わるのはお主らの方じゃな」
幽霊となっても尚、現世への執着心を持つスサノオの前に、私は躍り出るようにしてアマテラスの前に出た。
スサノオ「……誰だ、お前」
スサノオは右の眉をピクリと動かしただけで、私の登場にはこれといった驚きを見せず、剣の切っ先をこちらに向けた状態でじっと睨んでくる。
(ヴァル、ヒカリ。妾は彼奴らの相手をする。お主らはそこにおる白と黒の部隊を助けろ)
私は念話でヴァル達にそう伝え、小さな円形の扉からBurstOrbisを取り出す。
ヴァル「火傷が酷ぇな。ヒカリー、確かお前、治癒術使えたよな?」
ヒカリ「ええ。使えるわよ」
2人は治療をしようと、アイリス達に積極的に関わろうとしている。ーーまあ、その事自体を止めはせんが、関わりすぎないように釘を刺しておかねばならぬな。
「あまり、過去の人間に関わるなよ。妾達が用のあるのはこいつらだけじゃからな」
ヴァル「分かってるよ」
本当に分かってるのかどうか怪しいところではあるが、まあヒカリちゃんがおるわけじゃし、大丈夫じゃろう。
スサノオ「……お前ら、何者だ?」
頃合を見計らって、スサノオが静かな声で、改めてそう尋ねてくる。
「妾の名はネイ。先の未来においての創界神じゃ」
スサノオ「そんなはずがない。この先に未来は続かない」
「そうじゃったかのう?まあええわ。妾が用のあるのはお主でもない。狙いはデルシアじゃ」
私は、龍となり未だに苦しそうに咆哮を上げるデルシアに目を合わせる。ーー悲しい目だ。自由が効かず、深い海の中を溺れている。
安心しろ。今、妾がお主を解放してやるーー
スサノオ「......話すつもりはない、ということか」
スサノオが勢いよく刀を打ち付けてくる。私はそれを大剣の腹で防ぎ、しばらくした後に打ち返す。
金属と金属が打ち合う音が響き渡り、スサノオの体が勢い良くデルシアの後ろへと突き飛ばされる。
「そもそも、話す事などあるか?」
時間を1000分の1倍にまで下げ、私はスローになったこの世界を元の速さで動く。
ただ歩いて斬っているだけの行為だが、この時間に巻き込まれていないものからすれば、ひたすらに高速で動いてスサノオをボコしているだけの図に見えるだろう。
時間は止めるよりも、ゆっくりにした方が私の体にかける負担が少なくて済む。1000年の間、ただただ無為に歴史の修正だけをしてきたわけではない。大きな戦いに備えて早め早めの準備をすることは大切な事だ。
「さて、チェックメイトじゃな」
全ての時間を正常に戻し、私はスサノオの首を撥ねる。
スサノオ「ま……さ……か……」
すると、死人は死人らしく、天に旅立つかのようにして消えていった。こんなのを相手に苦戦しておるとは、白と黒の部隊も大した事ないな。
ーーさて、ここからが本番じゃ。デルシアを倒し、終焉の刃を回収する。その為に私達はこの時代に来た。
「さて、ここからが本命じゃな」
ヴァル「来といてあれだが、こんな龍相手にどうにか出来んのか?」
ヴァルが隣に立ち、そう問いかけてくるが、私は至って冷静な声でこう言う。
「考えてみろ。妾じゃぞ?」
ヴァル「......ごめん」
「それに、ヒカリちゃん製の素晴らしい武器もあるからな」
大剣の腹部分を撫でるようにして、手の平に金属の感触を味合わせる。ヒカリちゃんがちゃんとメンテナンスをしてくれておるお陰で、今日も調子全開じゃ。
ヒカリ「不思議なものねぇ......。先の未来で私がロストテクノロジーバリバリの道具を作るだなんて......」
ヒカリちゃんは不思議そうにこの武器を眺める。ロストテクノロジー云々言うておるが、そもそも現代にグランメモリを完成させた時点で相当なもんじゃと思うがな。
「グァァァ!」
「はいはい。心配せんでもすぐに楽にしてやる」
大剣を2本の双剣に姿を変え、それぞれにシャインとダークのメモリを差し込み両手に構える。
「やっぱ、双剣の方が手に馴染むな。おりゃぁ!」
ヴァル「その可愛らしい掛け声もどうにかならないもんかねぇ。気が抜けんだよなぁ」
ヒカリ「掛け声なんてどうでもいいでしょ。本人が力を出せたらそれでいいんだから」
叫ぶデルシアに対し、妾は容赦なくその肉体を斬り刻んでゆく。時間の加速と減速を惜しみなく使い、ただ一方的に攻撃をし続ける。
予め疲弊しておいてくれれば、ここまで痛めつけなくとも良いのじゃが、生憎デルシアの性質が災いしておる。私程までとは行かないが、かなりの再生力を有しており、体が小柄なお陰で傷の治りが早い。そして、暴走しておるからか、精神的な疲弊が体に影響してこない。
再生が間に合わない速度で斬り刻み続け、殺さない程度に痛めつける。そうした後、お母さんが教えてくれた魔法で龍化を解く。
「よいか。原始化した者を元の人間にする方法はただ一つ。ぶっ飛ばしてしまえばいいのじゃ。殺さない程度にな」
デルシアの額を殴り飛ばすように斬りつけ、そのまま羽を使って回転するように斬ろうとする。しかしーー
「グァァァ!」
龍になったデルシアは、私のほんの一瞬だけの隙を見逃さなかった。
爪で左腕を弾かれ、その衝撃で片方の剣が奥の壁にまで突き刺さる。折角追い詰めたというのに、ここで剣を回収しに行けばまたやり直しになる。
「1本取れただけで、楽になると思うなよ」
右手に握った剣を更に分離させ、ルーンブレイドとステラドライブを新たに持ち直す。
「よいしょっと」
デルシアを一旦突き飛ばし、その衝撃を利用して私も後ろの方へと飛ぶ。そして、素早く突き飛ばされた剣を回収してデルシアの元へ戻る。
剣を投げ飛ばすようにしてデルシアを斬り続け、3本の剣を同時に操る。
「デルシア、お主の苦しみは妾にも分かる。かつて、妾もその姿を体験したからな。じゃから、妾は全力でお主を救ってみせる」
「グァァ、アァ、アァァァァ!」
「バーストライズ・テラドライブ」
合体された剣を最大の8本にまで分離させ、デルシアの周囲を舞うようにして立てる。これが私の全力、必ずあなたを助けてみせる……!
「剣は、心を映す。フレイム、ウォーター、トルネード、シャイン、ダーク、ブリザード、エレキ、クリスタル。8属性の刃を喰らえ」
8属性の刃を順番に手に持ち、斬りつけた時に出来た残像が最後の一撃を加える。
「流石はヒカリちゃんの剣じゃな。8属性を同時に操るとか、そんな芸当妾でも出来んわ」
ヒカリ「あんたの場合、古代魔法とか使うんでしょ。そっちの方が流石よ」
デルシアの体が、元の人間に戻っていく。最後の一撃に、お母さんから教えてもらった魔法を仕掛けておいたからだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ベルディア「デルシア!しっかりしなさいよ!」
流石はシスコンのベルディア。意識不明のデルシアに真っ先に飛びついた。だけど、これではちょっと邪魔だ。
「ベルディア、ちょっとそこを退け」
ベルディア「え、ええ......ってあなた!?」
無駄に驚かれたが、私は気にせずデルシアの容態を確かめる。
「......やはり、慣れてもないのに原始化を使うとこうなるな。早めに治療せんと後遺症が残る。この場合、口周りが動かせれんようになるな」
やはり、戦闘中にかけるだけでは全てが治るわけないか。
ベルディア「だったら今すぐ治療しないと!」
「お主ら素人がどうにか出来るもんではない。妾に任せておけ」
もう一度、あの魔法をデルシアにかける。龍化の痕が残る口周りを特に念入りに。
「うむ。これで大丈夫じゃな。後は......ネイか......」
嫌々言い続ける方のネイ。これは、魔法でどうにか出来るものではないだろう。
「やはり、過去の妾はここでトラウマを抱えておったか......」
ベルディア「......過去?」
「いや、なんでもない。これは、記憶を消せばいいじゃろう。なるべく問題がない範囲でな」
ヴァル「それでいいのかよネイ」
「妾はこうなっておった記憶を持ってない。じゃが、ミイの存在は認知しておった。消す範囲は......目の前に広がる血溜まりと死体の山の部分で良いか。後は、埋める記憶は殺しはダメという気持ちでいいか」
ヴァル「自分の人格まで決めれるとか、つくづく俺はお前が恐ろしいよ」
アルフレア「......お前達は、なんなんだ?未来から来たとか言っていたが、俺達にはお前達を理解することが出来ん」
黙って見ていればいいものを。質問の絶えん奴らじゃの。
「......ここをこうすればいいか......。よし。で、妾達が何者かって話じゃったな」
ヴァル「あんまり話しすぎんなよ」
ヒカリ「あんたが言う?それ」
私はネイの体を壁に立てかけるように座らせてから、アルフレア達の方を向く。
「妾達は、未来を作るべく戦う存在。訳あってこの時代に干渉して来たのじゃ」
アルフレア「......聞かない方が......いいんだな」
流石は一国の王子。理解が早くて助かる。
「ああ。それに、お主ら全員話す気力はそんなに残っとらんじゃろ。じゃから、聞くだけで分かるように説明してやろう」
この場にいる全員、デルシアの攻撃によって憔悴しきっている。しばしの休憩時間を取らせるという名目で話をしてやろう。
デルシア「うっ......」
ベルディア「デルシア......!?」
早いお目覚めだ。しかも、ちょっとタイミングが悪い。
デルシア「私......すみません......」
記憶は消していない。自らがさっきまで行ってきたことをすぐに思い出し、デルシアは頭を下げる。
ベルディア「謝らなくていいのよ。全部、あのリエンドとかいう奴が悪いんだから」
デルシア「......ベルディア姉さん......」
「時間がないから、お主らの話はお主らで終わらせてくれ」
ベルディア「分かったわ」
「妾達の未来は、ある組織によって歴史がねじ曲げられておる。その組織について話すことは出来んが、妾達は彼奴らをぶっ飛ばすための神器を追ってこの時代までやってきた。それが、デルシアが持つ終焉の刃じゃ」
デルシア「......これ......ですか」
デルシアが持っている2本目の剣。閻王の刃と同じく、ギザギザとした刃が特徴的な剣で、まだ使われたことはない。
「簡単に言う。それを妾達に寄越せ」
デルシア「......でも、これがないとリエンドは倒せない......いや、あなた達は誰なんですか」
意識がはっきりしてきたようだ。だが、それについて話す時間は無い。話が最初の部分に戻ってしまう。
ベルディア「この人達は未来から来たって言う私達の味方。あなたを龍の姿から救ってくれた人達。話がややこしくなるから今はそれで呑み込んで」
「は、はい......」
ベルディアが話を完結にまとめデルシアに話す。しっかりと姉をしておるな。血は繋がっとらんが。
「で、その剣をこちらに渡してほしいのじゃが」
デルシア「そしたら、リエンドを倒すことが出来なくなります!」
じゃろうな。元々、その終焉の刃はリエンドを倒すという名目で現れたのじゃから。
「......そうじゃ。それならこの剣をお主にくれてやる」
代わりの武器とはなるが、創成の女神権限専用の剣を取り出す。真っ直ぐに輝く銀色の剣であり、本来はヒカリちゃんが使うべきもの。だが、ヒカリちゃんが銃火器を専用に戦うもんじゃから出番が無くなりそうなものである。
神を殺すことは出来ぬが、龍程度なら殺せるじゃろう。
「創世の剣。終焉の刃に匹敵する強武器じゃ」
デルシア「......」
デルシアだけではなく、全員が胡散臭いといった顔でその剣を見ている。
確かに、見た目は古代遺跡にでも飾ってありそうな神器の見た目をしているが、そんなものがポンと出てくるわけないからな。じゃが、ここは妾の言葉技で騙していこう。
「この剣は己の未来を創る。お主が何を選ぶかは、お主次第じゃ」
ーーと言っても、パチモンの剣ではないし、嘘はどこにも無い。
デルシア「......分かりました。あなたを信じます」
流石デルシア。昔から騙されやすそうな子であったことに感謝する。
デルシア「私が創る未来......」
「それじゃぁの。妾達の目的はこれだけじゃからな」
デルシア「......リエンドの討伐にも協力してくれないんですか?」
ーー確かに、ただ貰いたいもの貰って帰るってのも私の良心が痛む。じゃが、そこは我慢我慢。
「......確かに、彼奴程度なら妾が余裕で倒せるが、それをやったら歴史が変わる。あれを倒すのは、お主ら白と黒の精鋭じゃ」
それに、どうせ歴史書にはデルシア達がこの戦いを突破するという事象が書き込まれているのだから問題はない。
「最後に1つ。ネイをよろしく頼んだぞ」
そう言い、私はヴァル、ヒカリと共に書庫へと帰った。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる