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最終章 【創界の物語】
最終章20 【夢の創界神】
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心が写し出したこの世界は、母さんのマナで溢れていた。ゼウスの方には一目もくれてやらず、俺の体にだけ集まってくる。そして、俺は心に描いた魔法を自由に使いまくれる。
ゼウス「よもや、貴様のような小僧が世界を描き出すとはな……」
「この世界じゃ俺に分がある。悪ぃが、さっさと死んでもらうぞ」
狂軍をゼウスの周囲に隙間なく配陣する。この世界を炎で燃え上がらせ、俺にとって戦いやすい環境を作り出す。拳には炎、足には氷で戦う準備はバッチリだ。
「行くぞゼウス。この世界で、テメェがどれだけやれるか見てやるよ」
狂軍を一斉に出陣させ、紛れるようにして俺も拳を突きだす。氷の床を滑り、ヴェルドみたいに軽やかな動きで攻め立てる。
ゼウスの反撃によって狂軍が消されていく中、空中に氷の塊を生成し、片足で反動をつけてから飛び込む。光の槍が俺の攻撃に合わせて投げつけられるが、その攻撃は頬をギリギリかすめない程度に留まる。
「オラァ!」
ゼウス「っ……!」
左の頬を思いっきりぶっ飛ばした。ゼウスの体が無惨にも転がって行き、炎の中に包まれる。だが、奴の体には傷が1つたりとして付かない。
「流石神様って言ったところか……」
ネイには化け物じみた再生力があったし、母さんにはそもそも攻撃することが叶わなかった。そして、目の前にいるゼウスには傷が1つたりとして付かない。
ーーきっと、俺にも何かあるはずだ。それさえ見つければこいつ相手にもっと有利でいられる。
ゼウス「小僧。気付いているとは思うが、こんな世界を作ったところで我に傷1つとして与えることは叶わん」
「ああそうみてぇだな!」
立ち上がり、再び近づいてきたゼウスの右頬に拳をぶつける。派手に吹っ飛ばされはするものの、やはり傷は1つたりとして付かない。
厄介な相手だな。本当にこういう敵しかいねぇのかよ。
「極龍王の咆哮!」
この世界において、俺の炎の勢いは上限を知らない。イメージすればする程に火力が上がり、辺りの炎さえも燃やし尽くしてしまいそうな程の火力がゼウスを燃やし尽くす。
燃やしても燃やしても、傷が1つも付かない相手。俺の体はあの槍1本で即死させられるってのに、これじゃぁやる気が失せる。
ゼウス「いい加減、諦める気になったか?小僧」
「だぁれか諦めるかってんだ!この世界じゃ俺の魔法は際限無し、そして使用回数にも制限は無い!」
再び狂軍をゼウスの周囲に配陣させる。更に足元の氷さえも炎に変え、全力の火力をゼウスにぶつける。拳と足にも体が朽ちてしまいそうなほどに炎を炊きあがらせ、地に足を着かせる暇を与えずひたすらに殴り続ける。
終わりのない、終わりが見えないこの戦い。神と神になりたての人間との戦いで、どちらが有利かなど最初から分かっていたはずだ。だが、俺はそれを認めたくなくて必死に抗った。抗ったが、まだもう1本が届かなかった。
「っ……!」
疲れを感じることはない。ーー肉体的にはな。精神的にはかなり疲弊している。書庫での出来事から一時も休まる暇がなかったんだ。しょうがない……そんな言葉で済ましてくれる奴は、ネイくらいしかいねぇだろうな。
「ーーいつまでも、あいつに甘えることなんて出来ねぇよな」
一旦ゼウスから距離を取り、俺は心を落ち着かせるように胸を撫で下ろす。すると、周りの炎が消え、薄紫の霧が立ち上る世界に戻る。
ゼウス「落ち着きを取り戻したか……小僧」
「ああ、ちーっとばかし落ち着いた。ーーそして、よく見えるようになったぜ!」
ゼウス「ぶっ……!!?」
ゼウスの顔を殴らず、俺はゼウスの右手の甲に攻撃した。すると、ゼウスは10歩くらいの距離をとるように後ろへと飛び退いた。
ゼウス「ーー小僧。たまたまか?」
「狙ってやったって言ったらどうする?」
ゼウス「……どうやら、舐めすぎていたらしいな」
ゼウスは右手を押さえ、声を震わせて威嚇してくる。
俺には見えた。ゼウスの右手の甲には、謎の紋章が刻まれていた。ネイにも似たようなものがあったのを俺は何となくで覚えていた。そこに、きっと何かがあるんじゃねぇかと今の僅かな時間で考え、行動に移した。それが幸を制し、ゼウスにダメージを入れることに成功した。
弱点は右手の甲。1発で仕留められなかった以上、奴は俺の攻撃を必死で防いでくるだろうが、この世界にいる以上、奴と俺は同等でいられるはず。
「……」
睨みを効かせ、ゼウスとの距離をゆっくり詰めていく。神様相手にここまでやれた自分。炎の勢いは収まらず、そればかりか激しく音を立てて勢いを強めていく。俺の心は冷静になっているというのに、体の方はやけに素直だ。
ゼウスの唇が震えていたように、俺の拳もまた、震えを増している。恐怖で足がすくんでいるとかいうやつではない。むしろ、その逆だ。かつてない高揚感に身を焦がされている。
ある意味、世界の命運を賭けた戦いだというのに、俺はこれほどまでに強い奴とやり合えることに喜びを感じている。感じちゃいけねぇはずなのに、体が震えている。出来ることなら、もっと戦っていたい。俺の全力で神様を超えてやりたい。
ーーだが、正々堂々とやり合って勝てる見込みがないのは確か。これは大会とかでの戦いではなく、文字通り命を懸けた戦いなんだ。お遊び気分じゃいられない。
握り拳を少しだけ緩め、僅かに深呼吸を繰り返す。そして、次の瞬間ーー
「極龍王の強襲!!」
地を蹴りあげ、ゼウスとの間合いを一気に詰める。龍の牙でも象るような形をした炎を拳に纏い、ゼウスの右手の甲に向けて炎を放つ。ゼウスはすかさず飛び退くが、俺はそれを逃がさず、第2、第3の攻撃を連続して叩き込む。
奴を倒すためには弱点と思われる右手の甲を集中的に狙う他ない。
ゼウス「ーー小僧。貴様、我に何をした」
「何もって言いてぇところだが、ここは俺の世界だ。テメェに好き勝手させねぇのは、テメェがやってたことと一緒だぜ?」
ゼウス「……」
ゼウスは黙りながらも、必死で俺の攻撃を防ぐ。時折光の槍でも繰り出そうとしてるのか、手を複雑に動かすが何も起きない。起きなくて当たり前だ。なぜなら、ゼウスが反撃をする前に、俺が魔法を打ち消しているのだからな。
夢の世界において、この世界の主である俺には様々な権限が与えられている。そのうちの1つとして、相手の行動を制限するというものがある。ゼウスが俺に対してやっていたように、身動き1つ取れない状態にするってのは、流石に相手が相手だから出来ねえが、奴に攻撃をさせないということなら簡単に出来る。
「それに、ゼウスはこの世界の原理を何も知っちゃいねぇからな」
この世界は想像力が全て。心の中でイメージしなけりゃ、どんなに強い魔法を使おうが絞りカスにすらならねぇ。
きっと、ゼウスは長い間を生きた経験から、魔法なんぞ指パッチン1つで撃てると思い込んでいる。その無意識で放つ魔法というのは、実践ではかなり強いだろうが、この世界では最大の弱点となる。無意識じゃ、魔法自体発動できねぇぞってな。
「畳み掛けるなら今しかねぇ!」
ゼウスの腹に強い蹴りを1発入れ、サマーソルトの要領で2歩程距離をとる。
「神話奥義!天照らす神話の炎!」
世界全てを焼き尽くしそうな程に神々しく輝く太陽。勝利を信じた時にだけ微笑む女神。
俺の中にある最大火力の炎。火傷の1つや2つ、負ってみろってんだ!
「敗北の業火の中で燃え尽きろ!」
ゼウスの数百倍はあるであろう大きさの太陽をぶつける。夢の世界の力により、威力は間違いなく世界最強のものと思われる炎。これで耐えられたら俺神様早々に辞退してやるわ。
ゼウス「……よもや、これ程までとは……な」
「ちっ……」
ピンピンとまではいかねぇが、本当に軽い火傷程度で済んでいやがる……
ゼウス「小僧。貴様を舐めてかかったことに詫びを入れよう」
「あぁ?」
耐えられはしたものの、ゼウスの息の悪さからもうボロボロに近い状態であることが伺える。それでも、見た目に差程の変化がないのは、やはり、神と言うべき存在だからなのだろう。だが、もう奴は限界が近いはずだ。
ーーこのまま、夢の世界を維持し続ければ……
ゼウス「小僧。貴様は精神世界というものがどういうものであるか知っているか?」
「知らねーよ!何となくで作ったわけだし」
後で、ネイにこの事話したら仰天して血反吐吐きそうだな、と俺は思う。知らんけど。
ゼウス「……所詮は神になりたての小僧、というわけか。小僧、貴様にはこの世界がどういったものなのか、完全に理解しているわけではないようだな」
「何が言いたい」
ゼウス「ーー精神世界。即ちそれは心を写した世界であり、心そのもの。その世界が壊された時、人も神も、等しく死ぬ」
「……ぁ」
ゼウスから僅かな殺気を感じ取った……
ゼウス「ーー安心しろ、小僧。我に世界を破壊する術はない。精々貴様のように、物理的に世界を破壊することのみだ。そして、この世界において、我には一切としての力がない」
安心させるようにそう言ってくるが、俺にはさっきの発言が頭から離れず、一刻も早くこの世界を閉じたいと思った。だけど、閉じ方が分からないし、そもそも閉じてしまえば再びゼウスの世界が拡がるに決まってる。それだけはダメだ。勝ち目が無くなる。
とどめを刺すしかない。後どれだけ殴ればいいのか分からないが、有利であるうちに決着をつける!
「極龍王の強撃!」
渾身の一撃をゼウスの右手甲に向けて放つ。ゼウスは避けず、攻撃をもろに喰らう。しかしーー
ゼウス「舐めすぎなのはお互い様だ。精神世界:大樹そびえる全能の世界」
弾かれるようにして、俺は再び現れた大樹に突き飛ばされた。
「クソっ、またこの世界か!」
秒で頭を整理し、俺はすぐさまこの世界から脱出しなければと悟る。ーーしかし、悲しいことに俺は世界を破壊できないし、脱出する術も知らない。こんな事なら、ネイに聞いておけば良かった。ーーこんな状態を想定出来てもないのに聞けるかどうかは知らんけどな。
ゼウス「小僧。この勝負、我の勝ちだ」
「クソっ……!」
また体が動かなくなってしまった。
あともう少しってところでこれかよ……クソっ。どうする?もう一度世界を作り出すか?ーーいや、ゼウスが今更になって反撃に出たように、世界を作り出すためには何かしらの条件と、連続して作り出せないみたいなデメリットも多分あるはず。
どうする……どうする……
ゼウス「小僧。我に本気を出させたこと、褒めてやろう。死ね」
あのデカいマナの塊が、今度は複数の塊に別れて高速で迫ってくる。まだ目視できる程度の速さだが、これがもっと分裂を起こせば散弾銃のような速さになるのだろう。
体のあちこちに穴を空けられ、そこから大量の血が吹き出す。そうなる未来が見える。
「神様相手に……ここまでやれただけ奇跡だったのかもな……」
諦めにも似たような声が不意に出てしまう。
諦めねぇのが俺の取り柄だったはずなのに、なぜか無意識に諦めようとしていやがる。バカか俺は。ーーバカだ、俺は。
「ーーここまで来たんなら、最後にはマジの奇跡を願う方がいいな」
神様が神様に神頼み。情けねぇ絵面だが、それこそが俺が今までやってきたことだったな。ーー頼むぜ、ネイ。タイミング良く帰ってこいよ。
ゼウス「……?……まずいことになった……!」
飛んできたマナの塊が消え、ゼウスが慌てたように世界を閉じた。真っ赤に燃え上がる街が眼前に広がり、隣には壁に座り込むヒカリがいた。
ゼウス「ーー来たか。破壊者……」
ゼウスが唇を震わせている。俺に対して抱いた恐怖心とはまた違う恐怖を感じているようだ。
「流石は全能の神。僕の存在をすぐさま感知するとは流石だ。そのまま、世界を形成していれば楽に殺してあげれたものを」
待ち望んでいた声が空に響き渡る。神々しく、白陽の着物で身を固めた少女が天から舞い降りる。
「僕達の世界に喧嘩を売った罪。果たして、何で償ってくれるのかな?」
ーーネイ。タイミング良すぎだ。
ゼウス「よもや、貴様のような小僧が世界を描き出すとはな……」
「この世界じゃ俺に分がある。悪ぃが、さっさと死んでもらうぞ」
狂軍をゼウスの周囲に隙間なく配陣する。この世界を炎で燃え上がらせ、俺にとって戦いやすい環境を作り出す。拳には炎、足には氷で戦う準備はバッチリだ。
「行くぞゼウス。この世界で、テメェがどれだけやれるか見てやるよ」
狂軍を一斉に出陣させ、紛れるようにして俺も拳を突きだす。氷の床を滑り、ヴェルドみたいに軽やかな動きで攻め立てる。
ゼウスの反撃によって狂軍が消されていく中、空中に氷の塊を生成し、片足で反動をつけてから飛び込む。光の槍が俺の攻撃に合わせて投げつけられるが、その攻撃は頬をギリギリかすめない程度に留まる。
「オラァ!」
ゼウス「っ……!」
左の頬を思いっきりぶっ飛ばした。ゼウスの体が無惨にも転がって行き、炎の中に包まれる。だが、奴の体には傷が1つたりとして付かない。
「流石神様って言ったところか……」
ネイには化け物じみた再生力があったし、母さんにはそもそも攻撃することが叶わなかった。そして、目の前にいるゼウスには傷が1つたりとして付かない。
ーーきっと、俺にも何かあるはずだ。それさえ見つければこいつ相手にもっと有利でいられる。
ゼウス「小僧。気付いているとは思うが、こんな世界を作ったところで我に傷1つとして与えることは叶わん」
「ああそうみてぇだな!」
立ち上がり、再び近づいてきたゼウスの右頬に拳をぶつける。派手に吹っ飛ばされはするものの、やはり傷は1つたりとして付かない。
厄介な相手だな。本当にこういう敵しかいねぇのかよ。
「極龍王の咆哮!」
この世界において、俺の炎の勢いは上限を知らない。イメージすればする程に火力が上がり、辺りの炎さえも燃やし尽くしてしまいそうな程の火力がゼウスを燃やし尽くす。
燃やしても燃やしても、傷が1つも付かない相手。俺の体はあの槍1本で即死させられるってのに、これじゃぁやる気が失せる。
ゼウス「いい加減、諦める気になったか?小僧」
「だぁれか諦めるかってんだ!この世界じゃ俺の魔法は際限無し、そして使用回数にも制限は無い!」
再び狂軍をゼウスの周囲に配陣させる。更に足元の氷さえも炎に変え、全力の火力をゼウスにぶつける。拳と足にも体が朽ちてしまいそうなほどに炎を炊きあがらせ、地に足を着かせる暇を与えずひたすらに殴り続ける。
終わりのない、終わりが見えないこの戦い。神と神になりたての人間との戦いで、どちらが有利かなど最初から分かっていたはずだ。だが、俺はそれを認めたくなくて必死に抗った。抗ったが、まだもう1本が届かなかった。
「っ……!」
疲れを感じることはない。ーー肉体的にはな。精神的にはかなり疲弊している。書庫での出来事から一時も休まる暇がなかったんだ。しょうがない……そんな言葉で済ましてくれる奴は、ネイくらいしかいねぇだろうな。
「ーーいつまでも、あいつに甘えることなんて出来ねぇよな」
一旦ゼウスから距離を取り、俺は心を落ち着かせるように胸を撫で下ろす。すると、周りの炎が消え、薄紫の霧が立ち上る世界に戻る。
ゼウス「落ち着きを取り戻したか……小僧」
「ああ、ちーっとばかし落ち着いた。ーーそして、よく見えるようになったぜ!」
ゼウス「ぶっ……!!?」
ゼウスの顔を殴らず、俺はゼウスの右手の甲に攻撃した。すると、ゼウスは10歩くらいの距離をとるように後ろへと飛び退いた。
ゼウス「ーー小僧。たまたまか?」
「狙ってやったって言ったらどうする?」
ゼウス「……どうやら、舐めすぎていたらしいな」
ゼウスは右手を押さえ、声を震わせて威嚇してくる。
俺には見えた。ゼウスの右手の甲には、謎の紋章が刻まれていた。ネイにも似たようなものがあったのを俺は何となくで覚えていた。そこに、きっと何かがあるんじゃねぇかと今の僅かな時間で考え、行動に移した。それが幸を制し、ゼウスにダメージを入れることに成功した。
弱点は右手の甲。1発で仕留められなかった以上、奴は俺の攻撃を必死で防いでくるだろうが、この世界にいる以上、奴と俺は同等でいられるはず。
「……」
睨みを効かせ、ゼウスとの距離をゆっくり詰めていく。神様相手にここまでやれた自分。炎の勢いは収まらず、そればかりか激しく音を立てて勢いを強めていく。俺の心は冷静になっているというのに、体の方はやけに素直だ。
ゼウスの唇が震えていたように、俺の拳もまた、震えを増している。恐怖で足がすくんでいるとかいうやつではない。むしろ、その逆だ。かつてない高揚感に身を焦がされている。
ある意味、世界の命運を賭けた戦いだというのに、俺はこれほどまでに強い奴とやり合えることに喜びを感じている。感じちゃいけねぇはずなのに、体が震えている。出来ることなら、もっと戦っていたい。俺の全力で神様を超えてやりたい。
ーーだが、正々堂々とやり合って勝てる見込みがないのは確か。これは大会とかでの戦いではなく、文字通り命を懸けた戦いなんだ。お遊び気分じゃいられない。
握り拳を少しだけ緩め、僅かに深呼吸を繰り返す。そして、次の瞬間ーー
「極龍王の強襲!!」
地を蹴りあげ、ゼウスとの間合いを一気に詰める。龍の牙でも象るような形をした炎を拳に纏い、ゼウスの右手の甲に向けて炎を放つ。ゼウスはすかさず飛び退くが、俺はそれを逃がさず、第2、第3の攻撃を連続して叩き込む。
奴を倒すためには弱点と思われる右手の甲を集中的に狙う他ない。
ゼウス「ーー小僧。貴様、我に何をした」
「何もって言いてぇところだが、ここは俺の世界だ。テメェに好き勝手させねぇのは、テメェがやってたことと一緒だぜ?」
ゼウス「……」
ゼウスは黙りながらも、必死で俺の攻撃を防ぐ。時折光の槍でも繰り出そうとしてるのか、手を複雑に動かすが何も起きない。起きなくて当たり前だ。なぜなら、ゼウスが反撃をする前に、俺が魔法を打ち消しているのだからな。
夢の世界において、この世界の主である俺には様々な権限が与えられている。そのうちの1つとして、相手の行動を制限するというものがある。ゼウスが俺に対してやっていたように、身動き1つ取れない状態にするってのは、流石に相手が相手だから出来ねえが、奴に攻撃をさせないということなら簡単に出来る。
「それに、ゼウスはこの世界の原理を何も知っちゃいねぇからな」
この世界は想像力が全て。心の中でイメージしなけりゃ、どんなに強い魔法を使おうが絞りカスにすらならねぇ。
きっと、ゼウスは長い間を生きた経験から、魔法なんぞ指パッチン1つで撃てると思い込んでいる。その無意識で放つ魔法というのは、実践ではかなり強いだろうが、この世界では最大の弱点となる。無意識じゃ、魔法自体発動できねぇぞってな。
「畳み掛けるなら今しかねぇ!」
ゼウスの腹に強い蹴りを1発入れ、サマーソルトの要領で2歩程距離をとる。
「神話奥義!天照らす神話の炎!」
世界全てを焼き尽くしそうな程に神々しく輝く太陽。勝利を信じた時にだけ微笑む女神。
俺の中にある最大火力の炎。火傷の1つや2つ、負ってみろってんだ!
「敗北の業火の中で燃え尽きろ!」
ゼウスの数百倍はあるであろう大きさの太陽をぶつける。夢の世界の力により、威力は間違いなく世界最強のものと思われる炎。これで耐えられたら俺神様早々に辞退してやるわ。
ゼウス「……よもや、これ程までとは……な」
「ちっ……」
ピンピンとまではいかねぇが、本当に軽い火傷程度で済んでいやがる……
ゼウス「小僧。貴様を舐めてかかったことに詫びを入れよう」
「あぁ?」
耐えられはしたものの、ゼウスの息の悪さからもうボロボロに近い状態であることが伺える。それでも、見た目に差程の変化がないのは、やはり、神と言うべき存在だからなのだろう。だが、もう奴は限界が近いはずだ。
ーーこのまま、夢の世界を維持し続ければ……
ゼウス「小僧。貴様は精神世界というものがどういうものであるか知っているか?」
「知らねーよ!何となくで作ったわけだし」
後で、ネイにこの事話したら仰天して血反吐吐きそうだな、と俺は思う。知らんけど。
ゼウス「……所詮は神になりたての小僧、というわけか。小僧、貴様にはこの世界がどういったものなのか、完全に理解しているわけではないようだな」
「何が言いたい」
ゼウス「ーー精神世界。即ちそれは心を写した世界であり、心そのもの。その世界が壊された時、人も神も、等しく死ぬ」
「……ぁ」
ゼウスから僅かな殺気を感じ取った……
ゼウス「ーー安心しろ、小僧。我に世界を破壊する術はない。精々貴様のように、物理的に世界を破壊することのみだ。そして、この世界において、我には一切としての力がない」
安心させるようにそう言ってくるが、俺にはさっきの発言が頭から離れず、一刻も早くこの世界を閉じたいと思った。だけど、閉じ方が分からないし、そもそも閉じてしまえば再びゼウスの世界が拡がるに決まってる。それだけはダメだ。勝ち目が無くなる。
とどめを刺すしかない。後どれだけ殴ればいいのか分からないが、有利であるうちに決着をつける!
「極龍王の強撃!」
渾身の一撃をゼウスの右手甲に向けて放つ。ゼウスは避けず、攻撃をもろに喰らう。しかしーー
ゼウス「舐めすぎなのはお互い様だ。精神世界:大樹そびえる全能の世界」
弾かれるようにして、俺は再び現れた大樹に突き飛ばされた。
「クソっ、またこの世界か!」
秒で頭を整理し、俺はすぐさまこの世界から脱出しなければと悟る。ーーしかし、悲しいことに俺は世界を破壊できないし、脱出する術も知らない。こんな事なら、ネイに聞いておけば良かった。ーーこんな状態を想定出来てもないのに聞けるかどうかは知らんけどな。
ゼウス「小僧。この勝負、我の勝ちだ」
「クソっ……!」
また体が動かなくなってしまった。
あともう少しってところでこれかよ……クソっ。どうする?もう一度世界を作り出すか?ーーいや、ゼウスが今更になって反撃に出たように、世界を作り出すためには何かしらの条件と、連続して作り出せないみたいなデメリットも多分あるはず。
どうする……どうする……
ゼウス「小僧。我に本気を出させたこと、褒めてやろう。死ね」
あのデカいマナの塊が、今度は複数の塊に別れて高速で迫ってくる。まだ目視できる程度の速さだが、これがもっと分裂を起こせば散弾銃のような速さになるのだろう。
体のあちこちに穴を空けられ、そこから大量の血が吹き出す。そうなる未来が見える。
「神様相手に……ここまでやれただけ奇跡だったのかもな……」
諦めにも似たような声が不意に出てしまう。
諦めねぇのが俺の取り柄だったはずなのに、なぜか無意識に諦めようとしていやがる。バカか俺は。ーーバカだ、俺は。
「ーーここまで来たんなら、最後にはマジの奇跡を願う方がいいな」
神様が神様に神頼み。情けねぇ絵面だが、それこそが俺が今までやってきたことだったな。ーー頼むぜ、ネイ。タイミング良く帰ってこいよ。
ゼウス「……?……まずいことになった……!」
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ゼウス「ーー来たか。破壊者……」
ゼウスが唇を震わせている。俺に対して抱いた恐怖心とはまた違う恐怖を感じているようだ。
「流石は全能の神。僕の存在をすぐさま感知するとは流石だ。そのまま、世界を形成していれば楽に殺してあげれたものを」
待ち望んでいた声が空に響き渡る。神々しく、白陽の着物で身を固めた少女が天から舞い降りる。
「僕達の世界に喧嘩を売った罪。果たして、何で償ってくれるのかな?」
ーーネイ。タイミング良すぎだ。
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