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最終章 【創界の物語】
最終章19 【精神世界】
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「っ……!」
強烈な頭痛と共に、俺はバチバチと炎が燃え盛る街で目を覚ました。胸に若干の重みを感じ、顔を上げると、そこにはヒカリがいた。
あの書庫でのヒカリとの思い出が脳裏に蘇る。でも、ネイの話じゃあの場所での記憶はこっちのヒカリにないはずだ。だから、俺はそっとヒカリの顔を上げる。するとーー
「……そういや、ヒカリが俺を送り届けたとか言ってたな。ーーごめん、ヒカリ」
ヒカリが口から僅か量の血を垂れ流し、胸に赤い染みが拡がっていた。考えるまでもない。これはヒカリの血だ。血がべっとりと、俺の胸に貼り付いている。
空からは変わらず光の槍が降り注ぎ、あちこちで爆発を起こしている。やり過ぎだな、槍だけになんてくだらねぇ事を思いつつも、俺はヒカリの体を背負い、安全な場所を求めて走り出す。現状、1番安全だと思うのはセリカが眠っているところだ。わざわざヒカリがあんな場所で俺達を眠らせるくらいだからな。きっと何かある。
槍が隣をかすめ、吹き飛ばされるほどの大爆発を喰らいつつも、俺は必死に足を走らせた。炎にどれだけの耐性を持つ俺でも、流石に空気が薄くなりすぎているので走り辛い。それでも、神の怒槌を避け続け、俺は必死に走り続ける。あれには手を出すなと注意されたが、注意されてなくともあんなのには手ぇ出したくねぇよ。なんだあの規格外の化け物は。
「っ!もっと頑張ってくれ!俺の体ァ!」
つまづきそうになり、転びそうになっても足を踏ん張らせ、ひたすらに走る。走ることしか今は出来ない。走って走って、安全と呼べる場所もないこの世界で生き残る。生への執着。本当は、俺が神の端くれだと言うのだから、あの化け物と戦ってぶん殴ってやりたい。でも、そうするだけの力がないことにもどかしさを感じる。だがーー
「っ!?」
前方に3本の槍が降ってきた。慌てて後ろの方へと跳ぶが、今度は後ろの方に槍が降ってくる。
「明らかに狙ってやがるな……」
大人しく適当に降らせておけばいいものを、なんでわざわざ俺なんかを狙うかね。
「テメェがその気だってんなら……」
一旦ヒカリを壁にもたれさせ、俺は拳と足に炎を灯らせる。周りで何もかもが燃えまくっている今、炎のマナは使っても使っても増え続けるだけの量がある。
何が手出しするな、だ。俺に喧嘩を売るってんなら、買わない手はない。後でネイに殺される勢いで怒られるだろうが、それでも俺は戦いたい。いや、戦わなきゃならねぇ。この調子じゃ、ネイが来る前に世界が滅んじまうかもしれねぇからな。
「極龍王の咆哮!」
降ってきた光の槍に1発当て、その槍を燃やし尽くす。
「よし、槍程度なら大丈夫だな」
自慢の脚力で空を飛び、あの槍を降らせてくる奴のところに向けて炎を吹き出しながら接近を図る。
気付けば大気圏を超え、辺りが真っ暗な空間まで来てしまっている。こんな場所にまで来ても、奴は姿を見せない。一体どこから攻撃を仕掛けてきているんだか。
ーーと思った次の瞬間、背後から光の槍が腹をかすめた。
「後ろか!」
背後に向けて炎の狂軍を飛ばす。狂軍が槍とぶつかり合い、振り向いた先で大爆発を起こす。空気が薄く、走っていた時とはまた違う生きのし辛さ。それでも、普通に息が出来ているのは俺が人間じゃなくなってるからなんだろうな。
「くっ……!」
普段なら空中での戦いなど、簡単に勝てるってのに、妙に動きが取り辛い。オマケに、肌で感じるこの寒さ。あまり、この空間に長居するべきではないということか。
ならーー
「先にテメェを地上に叩き落とす!」
体を勢いよく回転させ、拳にまとわりつかせた炎を背後にいる奴にぶつける。思った以上に近くにいてビビったが、それより先に奴を殴る方が早かった。
当たった勢いを利用し、俺はそのまま炎の勢いを強め、地上に向けて落下する。光に包まれた神は必死に抗おうとするが、俺の勢いの方が強く、奴は何も出来ないでいる。そして、そのまま首がもげそうな勢いのまま地上にまで辿り着き、地面と激突する直前に俺は突き放すようにして奴から離れた。
「っ……神って言う割にはそこまででもねぇな」
槍の雨は止んだ。
「ーーなるほど。彼奴め、こんな隠し玉を持っておったか」
燃え盛る豪の中から1人の老人が現れた。濃い髭を生やし、銀の髪を炎の風に靡かせている。あれだけ燃え上がってる場所から無傷で現れたことを考えると、間違いなく俺がぶっ飛ばした奴だ。
「ーー極龍王の咆哮!」
奴の正体なんぞに興味はない。俺は最大火力の咆哮を持ってして奴を焼き尽くそうとした。しかし、奴に当たる直前に炎が拡散され、奴には一点足りとも当たらなかった。
「小僧。貴様はヨミの眷属か」
奴は反撃をせず、威圧感のある声で俺に問いかけてきた。
「眷属ってより、旦那だな」
「ほう。あの小娘がか。そのせいでこんな事態が発生してしまったのかもしれんな」
「ーーテメェ、聞くまでもねぇと思うが何もんだ」
俺も負けじと声に威圧感込めて奴に問いかける。
「我が名を問うと申すか」
「当たりめぇだ。神様だがなんだか知らんが、俺にとっちゃ敵は皆一緒だからな」
「そうか。ヨミに似た者ということか」
そのまま、奴は顎髭に手を当て考え事をしだした。かなり余裕そうだな。所詮、人間相手に血眼にしてまで戦う必要はないってことだろう。舐められたもんだ。
「小僧。どうせ数秒後には忘れているだろうがよく覚えておけ。我が名はゼウス。全能の創界神だ」
そう言った直後、辺りが光に包まれ、緑豊かなファンシーな世界へと変わっていった。真正面に俺が50人くらい立っても届かなさそうな大きな大樹がそびえ立ち、その大樹の前にゼウスが仁王立ちしていた。
ゼウス「精神世界:大樹そびえる全能の世界」
優しい風が頬を撫でる。さっきまでの炎に包まれた街と違い、心に穏やかな風を吹き込んでくれる。転移術を使われた感じはしなかった。だが、俺は別の世界にいる。
一体、何が起きたというのだ。
ゼウス「小僧。死ぬ前に貴様の疑問を晴らしてやろう」
ゼウスが大樹から大きなマナを受け取っている。普通の世界じゃ有り得ない量だ。それこそ、世界全てからでもないと掻き集められない量を、あの大樹だけから集めている。
ゼウス「ここは我が精神世界。貴様のような小僧相手に使うのは、少々気が気でないが、ヨミの主人であるというのであれば、我も敬意を示さなければならん」
「精神世界……?」
ゼウス「1から説明してやってもよいが、生憎すぐに死ぬことになる輩を相手に、わざわざ教えてやる道理も無いものでな。では、何も出来ない己を悔いながら死ぬがよい」
ゼウスの手からマナが解き放たれた。ゆっくりした速度でこちらに向かっており、辺りの大地を抉り取りながらこちらに近づいてくる。逃げようにもこの世界で俺は身動き1つとることが出来ず、このまま敵の攻撃を喰らうしか選択肢はなかった。
考えられる時間は僅かしかない。ネイが助けに来てくれるなんて安易な期待は持てないし、かといって何も出来ない俺に防ぐ方法など存在しない。
ここは完全に奴の領域であり、初めにここに連れてこられた俺はその時点で詰みだった。クソっ、やってくれるじゃねぇか。だがーー
「諦めるにはまだ早ぇと思わねぇか!」
ゼウス「諦めろ、小僧。この世界において、貴様は何も出来ん無力者だ」
「無力って言うなら、そんなおっせぇ弾幕飛ばして詰みだなんて言うんじゃねぇよ!バカ!」
ーーやるしかねぇ。やり方なんて知らんが、俺も精神世界とやらを開くしかない。
ネイのように、言葉1つで作れるんだったら楽なんだが、生憎俺には自分の精神世界がどんなものなのかを理解していない。しかし、俺は夢と死の国の創界神。あの世界を創造することなら、なぜか出来る気がする。
ーーそう感じた瞬間、頭に1つの文が浮かび上がってきた。
「ーー少年は夢を見ていた。小さく、暖かい優しい夢を。夢は人々に安寧の時をもたらし、その心を穏やかに染めあげる。夢の主は言った。夢から覚めれば皆が現に迷わされる。ならば、ずっと、永遠にこの世界に居続けることこそが幸せなのだろうと。誰も彼もが夢を見続けることが出来るのならば、その世界こそが真理なのだと。少年は言った。ずっと見続けられる夢など存在しない。皆、いつかは夢から覚め、現実と戦わなくてはならない。夢はほんの一瞬の安らぎ。それ以上の存在など求めはしない。夢と現は互いに尊重し合う存在。どちらかを蔑ろにすることなどできない。それが、少年の答えであった」
頭に浮かんだ恐ろしい程に長い詠唱文。弾も俺に当たる寸前にまで迫って来ている。けれども、全てを言い切り、発動の準備は完了だ。
「ゼウス!テメェが俺の世界に来やがれ!安らぎを求む夢の世界!」
俺の心が拡がって行く。
母さんと過ごした夢の世界が目の前に拡がって行く。
さっきまでの世界とは違う優しさを感じる。あれが自然の優しさだと言うのであれば、これは母の温もりというやつだ。
『ヴァルクレア、頑張りなさいよ』
ーーああ。頑張る。頑張ってやる。
母さんと俺の心の世界。何者にも汚されず、何者にも支配することは叶わない!
「ーーようこそ神様!俺の世界へ!」
ゼウス「……」
俺は膨大なマナの塊を弾き飛ばし、派手に炎を吹き上げてやった。
ーーここからが、人類の反撃だってな。
強烈な頭痛と共に、俺はバチバチと炎が燃え盛る街で目を覚ました。胸に若干の重みを感じ、顔を上げると、そこにはヒカリがいた。
あの書庫でのヒカリとの思い出が脳裏に蘇る。でも、ネイの話じゃあの場所での記憶はこっちのヒカリにないはずだ。だから、俺はそっとヒカリの顔を上げる。するとーー
「……そういや、ヒカリが俺を送り届けたとか言ってたな。ーーごめん、ヒカリ」
ヒカリが口から僅か量の血を垂れ流し、胸に赤い染みが拡がっていた。考えるまでもない。これはヒカリの血だ。血がべっとりと、俺の胸に貼り付いている。
空からは変わらず光の槍が降り注ぎ、あちこちで爆発を起こしている。やり過ぎだな、槍だけになんてくだらねぇ事を思いつつも、俺はヒカリの体を背負い、安全な場所を求めて走り出す。現状、1番安全だと思うのはセリカが眠っているところだ。わざわざヒカリがあんな場所で俺達を眠らせるくらいだからな。きっと何かある。
槍が隣をかすめ、吹き飛ばされるほどの大爆発を喰らいつつも、俺は必死に足を走らせた。炎にどれだけの耐性を持つ俺でも、流石に空気が薄くなりすぎているので走り辛い。それでも、神の怒槌を避け続け、俺は必死に走り続ける。あれには手を出すなと注意されたが、注意されてなくともあんなのには手ぇ出したくねぇよ。なんだあの規格外の化け物は。
「っ!もっと頑張ってくれ!俺の体ァ!」
つまづきそうになり、転びそうになっても足を踏ん張らせ、ひたすらに走る。走ることしか今は出来ない。走って走って、安全と呼べる場所もないこの世界で生き残る。生への執着。本当は、俺が神の端くれだと言うのだから、あの化け物と戦ってぶん殴ってやりたい。でも、そうするだけの力がないことにもどかしさを感じる。だがーー
「っ!?」
前方に3本の槍が降ってきた。慌てて後ろの方へと跳ぶが、今度は後ろの方に槍が降ってくる。
「明らかに狙ってやがるな……」
大人しく適当に降らせておけばいいものを、なんでわざわざ俺なんかを狙うかね。
「テメェがその気だってんなら……」
一旦ヒカリを壁にもたれさせ、俺は拳と足に炎を灯らせる。周りで何もかもが燃えまくっている今、炎のマナは使っても使っても増え続けるだけの量がある。
何が手出しするな、だ。俺に喧嘩を売るってんなら、買わない手はない。後でネイに殺される勢いで怒られるだろうが、それでも俺は戦いたい。いや、戦わなきゃならねぇ。この調子じゃ、ネイが来る前に世界が滅んじまうかもしれねぇからな。
「極龍王の咆哮!」
降ってきた光の槍に1発当て、その槍を燃やし尽くす。
「よし、槍程度なら大丈夫だな」
自慢の脚力で空を飛び、あの槍を降らせてくる奴のところに向けて炎を吹き出しながら接近を図る。
気付けば大気圏を超え、辺りが真っ暗な空間まで来てしまっている。こんな場所にまで来ても、奴は姿を見せない。一体どこから攻撃を仕掛けてきているんだか。
ーーと思った次の瞬間、背後から光の槍が腹をかすめた。
「後ろか!」
背後に向けて炎の狂軍を飛ばす。狂軍が槍とぶつかり合い、振り向いた先で大爆発を起こす。空気が薄く、走っていた時とはまた違う生きのし辛さ。それでも、普通に息が出来ているのは俺が人間じゃなくなってるからなんだろうな。
「くっ……!」
普段なら空中での戦いなど、簡単に勝てるってのに、妙に動きが取り辛い。オマケに、肌で感じるこの寒さ。あまり、この空間に長居するべきではないということか。
ならーー
「先にテメェを地上に叩き落とす!」
体を勢いよく回転させ、拳にまとわりつかせた炎を背後にいる奴にぶつける。思った以上に近くにいてビビったが、それより先に奴を殴る方が早かった。
当たった勢いを利用し、俺はそのまま炎の勢いを強め、地上に向けて落下する。光に包まれた神は必死に抗おうとするが、俺の勢いの方が強く、奴は何も出来ないでいる。そして、そのまま首がもげそうな勢いのまま地上にまで辿り着き、地面と激突する直前に俺は突き放すようにして奴から離れた。
「っ……神って言う割にはそこまででもねぇな」
槍の雨は止んだ。
「ーーなるほど。彼奴め、こんな隠し玉を持っておったか」
燃え盛る豪の中から1人の老人が現れた。濃い髭を生やし、銀の髪を炎の風に靡かせている。あれだけ燃え上がってる場所から無傷で現れたことを考えると、間違いなく俺がぶっ飛ばした奴だ。
「ーー極龍王の咆哮!」
奴の正体なんぞに興味はない。俺は最大火力の咆哮を持ってして奴を焼き尽くそうとした。しかし、奴に当たる直前に炎が拡散され、奴には一点足りとも当たらなかった。
「小僧。貴様はヨミの眷属か」
奴は反撃をせず、威圧感のある声で俺に問いかけてきた。
「眷属ってより、旦那だな」
「ほう。あの小娘がか。そのせいでこんな事態が発生してしまったのかもしれんな」
「ーーテメェ、聞くまでもねぇと思うが何もんだ」
俺も負けじと声に威圧感込めて奴に問いかける。
「我が名を問うと申すか」
「当たりめぇだ。神様だがなんだか知らんが、俺にとっちゃ敵は皆一緒だからな」
「そうか。ヨミに似た者ということか」
そのまま、奴は顎髭に手を当て考え事をしだした。かなり余裕そうだな。所詮、人間相手に血眼にしてまで戦う必要はないってことだろう。舐められたもんだ。
「小僧。どうせ数秒後には忘れているだろうがよく覚えておけ。我が名はゼウス。全能の創界神だ」
そう言った直後、辺りが光に包まれ、緑豊かなファンシーな世界へと変わっていった。真正面に俺が50人くらい立っても届かなさそうな大きな大樹がそびえ立ち、その大樹の前にゼウスが仁王立ちしていた。
ゼウス「精神世界:大樹そびえる全能の世界」
優しい風が頬を撫でる。さっきまでの炎に包まれた街と違い、心に穏やかな風を吹き込んでくれる。転移術を使われた感じはしなかった。だが、俺は別の世界にいる。
一体、何が起きたというのだ。
ゼウス「小僧。死ぬ前に貴様の疑問を晴らしてやろう」
ゼウスが大樹から大きなマナを受け取っている。普通の世界じゃ有り得ない量だ。それこそ、世界全てからでもないと掻き集められない量を、あの大樹だけから集めている。
ゼウス「ここは我が精神世界。貴様のような小僧相手に使うのは、少々気が気でないが、ヨミの主人であるというのであれば、我も敬意を示さなければならん」
「精神世界……?」
ゼウス「1から説明してやってもよいが、生憎すぐに死ぬことになる輩を相手に、わざわざ教えてやる道理も無いものでな。では、何も出来ない己を悔いながら死ぬがよい」
ゼウスの手からマナが解き放たれた。ゆっくりした速度でこちらに向かっており、辺りの大地を抉り取りながらこちらに近づいてくる。逃げようにもこの世界で俺は身動き1つとることが出来ず、このまま敵の攻撃を喰らうしか選択肢はなかった。
考えられる時間は僅かしかない。ネイが助けに来てくれるなんて安易な期待は持てないし、かといって何も出来ない俺に防ぐ方法など存在しない。
ここは完全に奴の領域であり、初めにここに連れてこられた俺はその時点で詰みだった。クソっ、やってくれるじゃねぇか。だがーー
「諦めるにはまだ早ぇと思わねぇか!」
ゼウス「諦めろ、小僧。この世界において、貴様は何も出来ん無力者だ」
「無力って言うなら、そんなおっせぇ弾幕飛ばして詰みだなんて言うんじゃねぇよ!バカ!」
ーーやるしかねぇ。やり方なんて知らんが、俺も精神世界とやらを開くしかない。
ネイのように、言葉1つで作れるんだったら楽なんだが、生憎俺には自分の精神世界がどんなものなのかを理解していない。しかし、俺は夢と死の国の創界神。あの世界を創造することなら、なぜか出来る気がする。
ーーそう感じた瞬間、頭に1つの文が浮かび上がってきた。
「ーー少年は夢を見ていた。小さく、暖かい優しい夢を。夢は人々に安寧の時をもたらし、その心を穏やかに染めあげる。夢の主は言った。夢から覚めれば皆が現に迷わされる。ならば、ずっと、永遠にこの世界に居続けることこそが幸せなのだろうと。誰も彼もが夢を見続けることが出来るのならば、その世界こそが真理なのだと。少年は言った。ずっと見続けられる夢など存在しない。皆、いつかは夢から覚め、現実と戦わなくてはならない。夢はほんの一瞬の安らぎ。それ以上の存在など求めはしない。夢と現は互いに尊重し合う存在。どちらかを蔑ろにすることなどできない。それが、少年の答えであった」
頭に浮かんだ恐ろしい程に長い詠唱文。弾も俺に当たる寸前にまで迫って来ている。けれども、全てを言い切り、発動の準備は完了だ。
「ゼウス!テメェが俺の世界に来やがれ!安らぎを求む夢の世界!」
俺の心が拡がって行く。
母さんと過ごした夢の世界が目の前に拡がって行く。
さっきまでの世界とは違う優しさを感じる。あれが自然の優しさだと言うのであれば、これは母の温もりというやつだ。
『ヴァルクレア、頑張りなさいよ』
ーーああ。頑張る。頑張ってやる。
母さんと俺の心の世界。何者にも汚されず、何者にも支配することは叶わない!
「ーーようこそ神様!俺の世界へ!」
ゼウス「……」
俺は膨大なマナの塊を弾き飛ばし、派手に炎を吹き上げてやった。
ーーここからが、人類の反撃だってな。
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