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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】
第0章7 【影に包まれた国】
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3日後。
盗賊の国と繋がっていると言われる月影王国。実力が全てであり、力無きものは生き残れない国。盗賊の国と繋がっていると言うのですから、てっきり自然王国の近くにある国だろうと思っていましたが、それは全然違うようで、地図上では大海1つ挟んだ向こう側、要はシージュアルが位置する大陸と自然王国ラルレアの位置する大陸の間に挟まる大陸です(ちょっと分かりにくいですかね?)。
まあ、そんな場所に位置するもんですから、少し迂回していかないといけません。なので、シージュアルからラルレアまでの移動が1日もかからずに済んだのに対し、ラルレアから月影までの移動は3日半ほどかかってしまいました。しかも、その間に動力源部分が不良を起こしてしまい、途中の街で1日を無駄にしてしまう始末。まあ、降りた街で少しだけ観光できたから良いんですけど、ちょっと目的から遠ざかってるような気がします。
さて、そんなこんなで無事に月影の港に船を着けることが出来たのですが......
ラウス「当てがない!?」
船から降りる直前、ラウスが大きな声でそう叫びます。
ラウス「おま、当てがあるから月影に行こうと言ったんだろ!?」
シャウト「いや。ただ、ここならば少しくらいの情報はあるかと思ってな」
ラウス「独断かよ......ってことは、当然の事ながら......」
シャウト「マスターからの紹介状も無しだ」
ラウス「どうすんだよ......」
何やらトラブル発生?
ラウスとシャウトが揉めているところに近づき、話を聞くだけ聞いておきます。
ラウス「お前、昔からそうだよな。普通、何かあるかもしれないってだけの理由でこんなところに来ねぇよ!後先考えろ!」
シャウト「すまん......」
あんなに冷静沈着に見えたシャウトが申し訳なさそうにしてる......!もしや、シャウトは意外に計画性無し?
ラウス「あ、ゼラ、聞いてたのか......」
「はい。一応、一通りは......」
ラウス「はぁ......」
ため息を吐きたくなる気持ちも分かりますが、せめて船くらいは降りましょうよ。出口でつっかえられていると邪魔なんですけど......
ラウス「なあモルガン。期待しねぇで聞くけどーー」
モルガン「俺にこの国での繋がりなどないぞ。なんせ、仕事で来たことなど1度もないからな」
凄まじいまでの即答......。このトレジャーハンターたち大丈夫なんですかね?
モルガン「とりあえず船を降りろ。宿を探せ。話はそれからにしよう」
ラウス「......はぁ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして夜。
ラウス「いいかお前ら。俺達は基本的に自由に宝探しをしている。しかし!流石に目的も持たずに動くことは自由とは違う。シャウトの提案でこの国に来たが、このままでは目的も持たずに路頭に迷うことになる。そこでだ!誰か、当てはないか!?」
モルガン「無いな」
シャウト「無い」
「ないですね」
ラウス「畜生!」
分かりきってた事じゃないですか......
月の光が照らす月影の夜。港町にある小さな宿で、私たちは作戦会議ーーほとんど形はありませんけどーーをしていました。
三人寄れば文殊の知恵とは言いますが、4人も揃っておいて誰1人として考えが無いとなると、文殊の知恵も何もないです。どうするんですかね?このトレジャーハンターたち。
「......そういえば、この国に宝石店とか無いんですか?」
私は何の気なしにそう言ってみました。しかし、それが思った以上に彼らには効果覿面だったようで......
「「「 それだ! 」」」
3人が口を揃えて大きな声で叫びます。
「うるさいよ!アンタら!さっさと寝な!」
言わんこっちゃない。下の階から宿主さんが怒鳴りつけてきました。
ラウス「と、とりあえず、明日宝石店か俺らの同業者探そうぜ」
モルガン「異議なし」
シャウト「異論はない。そうしよう」
声を潜めてそういう彼らは、なんか、いかにもこれから強盗でも働こうかと計画している悪人さんに見えてしまいました。事実、トレジャーハンターだからあながち間違ってもないと思うんですけど......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
「朝日......無いですね」
昨日もそうでしたが、この国はどことなく暗い感じがします。それは、きっと窓から見える淀んだ空だけが原因ではないのでしょうね。
......
ラウス「うっし!じゃあ早速探し始めるか!宝石店探し!」
シャウト「月影は広い国だ。二手に分かれて探そう」
モルガン「となると、俺とシャウト。ラウスとゼラでいいか?」
ラウス「分け方なんてどうでもいいだろ。俺らはこっちの街道から探していくから、お前ら逆方面な」
シャウト「了解」
と、いうわけで、私とラウスは2人で人影の少ない街道を歩んでいきます。
歩き始める前ですけど、不思議ですね~。こんなにも広い道なのであれば、シージュアルみたいに出店とかがたくさんあってもいいと思うのに。
「人気の少ない道ですね~」
ラウス「実力主義の国っていうくらいだからな。そら、わざわざ出店とかやってまで稼ぐ人間はいねぇだろ」
私の疑問をたまたまという形で答えてくれますけど、なんか違う気がします。
分厚い雲のせいで、普段よりも暗いイメージを持たせているであろう広い街道。天気のせい、もしくはこの国の性質のせいで人がいないというのであれば、いくら何でも人っ子1人すれ違うことがないのは少しおかしいと思います。だって、この道は港に繋がる唯一と呼べる道です。港にはいくつか私たち以外の船がありましたし、こんな天気でも漁に出る人はいるでしょう。
たまたま......たまたまというだけで片付けてはいけないと思います。ただの勘ですけど。
「そういや、この先ってどこに続いていくんですかね?」
ラウス「さあな。とりあえず、人と出会すまで適当に歩き続けるぞ」
「......」
適当に歩く......
歩いても歩いても変わり映えのしない暗い景色。そこを歩くのはごくごく普通の青年男性と小さな女の子2人。傍から見ればかなり怪しい組み合わせですけど、こんな人通りのない場所では誰も怪しむ人はいません。しかし、逆に私たち、いえ、私が怪しんでしまうような人ならいました。
「なるほど。この時代には......」
丁度私たちが進む方角から男の人がブツブツと何かを言いながら現れました。そして、特に何もなくすれ違いました......
ただすれ違っただけの男。それだけならなんの問題もありませんし、ブツブツ言っていたことにわざわざ耳を傾けることもありません。ですが、こんな人通りのない道ですれ違った男に私は妙な不安感を覚えました。なぜかは分かりません。でも、なぜかそう感じたのです。
ラウス「おーい、何ボケーッとしてんだ。置いてくぞー」
「あ、待ってくださーい」
気になりますけど、ラウスは何も気にしてない様子ですし、何も知らない私が一々気にしてるような話ではありませんね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ラウス「......」
「......」
ラウス「まさか、スラムに着くとはな......」
「考えもしませんでしたね......」
私たちが歩き続けた先は、どこからどう見てもそうとしか見えないスラムでした。先程までの暗い道と違って、ここは普通に人が見えます。まあ、みんなが私たちのことを警戒してるって注釈付きですけど。
ラウス「確かに、実力主義の国ならはみ出しものくらいいるよなぁ......。帰るか」
ラウスがそう言うのも分かります。流石に、こんなところで情報収集なんて出来ないでしょう。彼らは今日を生き抜くので精一杯。なのに、見るからに裕福ーー彼らと比較してーーそうな私たちに対して好意的に接してくれるはずがありません。
......しかし、今歩いてきた道をすぐに戻るのですか......。なんだか勿体ない気がしますね。
「ラウス、少しだけ見ていきませんか?」
ラウス「あぁ?お前、それどうぞ襲ってくださいってあいつらに言うようなもんだぞ」
「いざとなったらラウスが護ってくれるから大丈夫です!」
ラウス「あ、ちょ、待て!」
ラウスに引き戻される前に私は走って街の中に入ります。
ふむ、足元がゴツゴツしてますね。整備されてないからなのでしょう。
ラウス「だー、もう、10分だけだぞ。んで、俺、完璧に護りきれねぇからな!」
「分かってま~す」
ラウスからの許可も得られましたし、私は早速第1村人から話を聞こうと......
「あの、すみまーー」
「余所者は来るんじゃないよ!」
話を聞こうと......
「おーい!そこの少年たちー」
「「 ...... 」」
話を聞こうと......
「あのー、ちょっとお話がーー」
《シャッ》
話を聞こうと......しても、老人には怒鳴られ、子供たちにはそそくさと逃げられ、家の中にいる主婦の人には麦わら作りの窓を即座に閉められてしまう始末。
「どうしてなんでしょう......」
私は、随分と寂れてしまっている公園のベンチに座り、頬杖をつきます。
ラウス「どうしてか。お前、やっぱ島育ちなんだな......いや、これ島関係ねぇか」
「......?どういう事ですか」
ラウスが隣に腰かけてきて、私にはよく分からないことを言ってきます。
ラウス「......なんて言ったらいいかな。あー、言葉選ばずに言うわ。嫌になったら黙れって言え」
「?分かりました......」
ラウス「お前、人の心を知らねぇだろ」
「心?」
ラウス「ああそうだ。心だ。お前は、島で1人寂しく暮らしていた割には色んなことを知っている」
「まあ、本がありましたから」
ラウス「だろうと思ったぜ。お前、本で得た知識を"知っている"気分になっている。いいか。お前が読んだ本にはたくさんのことが書かれていただろうよ。でも、世の中には言葉では表せれねぇことがいっぱいあるし、逆に言葉で表せられるけど表しちゃダメなもんもある」
「......?」
イマイチ何を言っているのかが私にはよく分かりません。
ラウス「あー、例え話の方がわかりやすいか。......お前は、俺らがあの島に現れたことで、念願だった外の世界に出るっていう夢が叶ったわけだ」
「......はい」
ラウス「お前はただ待ちぼうけしてるだけで夢が叶っちまった。だから、大した苦労とかそんなもんを感じたことはねぇだろ。んでも、俺ら、いや、ここに住む奴らだ。あいつらは、あいつらなりに夢や希望ってのを持ってる。でも、それはどんだけ努力しても叶わねぇ」
「......結局、何が言いたいのでしょう?」
ラウス「......俺だって何が言いてぇのかよく分からねぇよ。でも、多分俺が言いたいのは、人が頑張ってるところに水差すなって事かな」
「よく分かりません」
ラウスが真面目な面持ちになるから何かと思って真面目に聞いてみましたが、オチが不明確なだけの謎の話です。
ラウス「んー......そうだなぁ。じゃあ、この街の奴らが何でお前に冷たかったのかだけ言っとくよ」
「最初からそれ言ってれば良かったのでは?」
ラウス「まあ、そうなんだが、先にこれ言ってもお前は理解しねぇだろうなぁって思ってさ」
ラウスのさっきまでの話も理解できませんでしたけど......
ラウス「......いいかゼラ。この街の奴らは必死だ。毎日を必死に生きてる。仲間内の結束力は強いだろうが、俺らみたいな普通の生活を送れてる奴らに対して嫉妬している。なんで自分はこんな不幸な目に遭ってるんだ、なんであいつらは何不自由なく生きれてんだ、なんでこの国は変わらねぇんだってなぐらいにな。だから、あいつらはこっちの事情なんぞお構いなしに俺らを憎んでくる。そんな奴らに対して、お前は同情心も抱かず、ただの興味心に近いような心で接した。そら、相手にしてくれねぇだろ」
「......何となく、分かった気がします」
ラウス「本当か?お前」
「要は、自分は自分。他人は他人っていうことがここに住む人達なのですね」
ラウス「......まあ、今はそれでいいか」
「よし!」
私は頬杖を解き、勢いよく立ち上がります。曇り空なせいで今がまだ昼なのかどうかは分かりませんが、探索続行です!
「そうとなれば、再びこの街の人たちに聞き込み調査開始です!」
ラウス「お前話聞いてねぇだろ!?」
「いえ、聞いてました!だから、私はこの街をこんな状態にした元締めを探してぶっ飛ばしてやります!」
ラウス「やる事が物騒だし、なんで急にそんな考えになるんだよ!」
「これです!」
私は1枚のくしゃくしゃになった紙をラウスに見せつけます。
ラウス「何だこれ?」
「さっき、風に乗って私の膝元にまでやって来ました」
正直に言うと、ラウスの話なんてほとんど右から左へ状態だったんですよね(一応内容の理解には努めましたが)。
ラウス「えーっと、『汚い街に住む汚物共の諸君に告ぐ!これは最終警告だ。諸君からが滞納する税が期限までに払えないのであれば、今すぐその土地から離れたまえ。不可能と言うのであれば、我々は容赦なくこの土地の改造工事に着手する!』......なんだこりゃ?」
「多分、貼り紙か何かが風に飛ばされてきたんだと思います」
ラウス「いや、そういうこと聞いてんじゃねぇよ。こんなもん見せつけてきて、お前は何しようってんだ?まさか、この貼り紙書いた奴見つけてぶっ飛ばすっていうのか?」
「いえ、そうではありませんよ。ただ、この街を見る感じ、税が払えないっていうのには何かワケがありそうな気がするので、それを元手に彼らと交渉してみるまでですよ」
ラウス「......まあいいや。今日1日くらいはお前に付き合ってやるよ。丁度いい社会勉強をさせてやる」
「期待してませんから~」
盗賊の国と繋がっていると言われる月影王国。実力が全てであり、力無きものは生き残れない国。盗賊の国と繋がっていると言うのですから、てっきり自然王国の近くにある国だろうと思っていましたが、それは全然違うようで、地図上では大海1つ挟んだ向こう側、要はシージュアルが位置する大陸と自然王国ラルレアの位置する大陸の間に挟まる大陸です(ちょっと分かりにくいですかね?)。
まあ、そんな場所に位置するもんですから、少し迂回していかないといけません。なので、シージュアルからラルレアまでの移動が1日もかからずに済んだのに対し、ラルレアから月影までの移動は3日半ほどかかってしまいました。しかも、その間に動力源部分が不良を起こしてしまい、途中の街で1日を無駄にしてしまう始末。まあ、降りた街で少しだけ観光できたから良いんですけど、ちょっと目的から遠ざかってるような気がします。
さて、そんなこんなで無事に月影の港に船を着けることが出来たのですが......
ラウス「当てがない!?」
船から降りる直前、ラウスが大きな声でそう叫びます。
ラウス「おま、当てがあるから月影に行こうと言ったんだろ!?」
シャウト「いや。ただ、ここならば少しくらいの情報はあるかと思ってな」
ラウス「独断かよ......ってことは、当然の事ながら......」
シャウト「マスターからの紹介状も無しだ」
ラウス「どうすんだよ......」
何やらトラブル発生?
ラウスとシャウトが揉めているところに近づき、話を聞くだけ聞いておきます。
ラウス「お前、昔からそうだよな。普通、何かあるかもしれないってだけの理由でこんなところに来ねぇよ!後先考えろ!」
シャウト「すまん......」
あんなに冷静沈着に見えたシャウトが申し訳なさそうにしてる......!もしや、シャウトは意外に計画性無し?
ラウス「あ、ゼラ、聞いてたのか......」
「はい。一応、一通りは......」
ラウス「はぁ......」
ため息を吐きたくなる気持ちも分かりますが、せめて船くらいは降りましょうよ。出口でつっかえられていると邪魔なんですけど......
ラウス「なあモルガン。期待しねぇで聞くけどーー」
モルガン「俺にこの国での繋がりなどないぞ。なんせ、仕事で来たことなど1度もないからな」
凄まじいまでの即答......。このトレジャーハンターたち大丈夫なんですかね?
モルガン「とりあえず船を降りろ。宿を探せ。話はそれからにしよう」
ラウス「......はぁ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして夜。
ラウス「いいかお前ら。俺達は基本的に自由に宝探しをしている。しかし!流石に目的も持たずに動くことは自由とは違う。シャウトの提案でこの国に来たが、このままでは目的も持たずに路頭に迷うことになる。そこでだ!誰か、当てはないか!?」
モルガン「無いな」
シャウト「無い」
「ないですね」
ラウス「畜生!」
分かりきってた事じゃないですか......
月の光が照らす月影の夜。港町にある小さな宿で、私たちは作戦会議ーーほとんど形はありませんけどーーをしていました。
三人寄れば文殊の知恵とは言いますが、4人も揃っておいて誰1人として考えが無いとなると、文殊の知恵も何もないです。どうするんですかね?このトレジャーハンターたち。
「......そういえば、この国に宝石店とか無いんですか?」
私は何の気なしにそう言ってみました。しかし、それが思った以上に彼らには効果覿面だったようで......
「「「 それだ! 」」」
3人が口を揃えて大きな声で叫びます。
「うるさいよ!アンタら!さっさと寝な!」
言わんこっちゃない。下の階から宿主さんが怒鳴りつけてきました。
ラウス「と、とりあえず、明日宝石店か俺らの同業者探そうぜ」
モルガン「異議なし」
シャウト「異論はない。そうしよう」
声を潜めてそういう彼らは、なんか、いかにもこれから強盗でも働こうかと計画している悪人さんに見えてしまいました。事実、トレジャーハンターだからあながち間違ってもないと思うんですけど......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
「朝日......無いですね」
昨日もそうでしたが、この国はどことなく暗い感じがします。それは、きっと窓から見える淀んだ空だけが原因ではないのでしょうね。
......
ラウス「うっし!じゃあ早速探し始めるか!宝石店探し!」
シャウト「月影は広い国だ。二手に分かれて探そう」
モルガン「となると、俺とシャウト。ラウスとゼラでいいか?」
ラウス「分け方なんてどうでもいいだろ。俺らはこっちの街道から探していくから、お前ら逆方面な」
シャウト「了解」
と、いうわけで、私とラウスは2人で人影の少ない街道を歩んでいきます。
歩き始める前ですけど、不思議ですね~。こんなにも広い道なのであれば、シージュアルみたいに出店とかがたくさんあってもいいと思うのに。
「人気の少ない道ですね~」
ラウス「実力主義の国っていうくらいだからな。そら、わざわざ出店とかやってまで稼ぐ人間はいねぇだろ」
私の疑問をたまたまという形で答えてくれますけど、なんか違う気がします。
分厚い雲のせいで、普段よりも暗いイメージを持たせているであろう広い街道。天気のせい、もしくはこの国の性質のせいで人がいないというのであれば、いくら何でも人っ子1人すれ違うことがないのは少しおかしいと思います。だって、この道は港に繋がる唯一と呼べる道です。港にはいくつか私たち以外の船がありましたし、こんな天気でも漁に出る人はいるでしょう。
たまたま......たまたまというだけで片付けてはいけないと思います。ただの勘ですけど。
「そういや、この先ってどこに続いていくんですかね?」
ラウス「さあな。とりあえず、人と出会すまで適当に歩き続けるぞ」
「......」
適当に歩く......
歩いても歩いても変わり映えのしない暗い景色。そこを歩くのはごくごく普通の青年男性と小さな女の子2人。傍から見ればかなり怪しい組み合わせですけど、こんな人通りのない場所では誰も怪しむ人はいません。しかし、逆に私たち、いえ、私が怪しんでしまうような人ならいました。
「なるほど。この時代には......」
丁度私たちが進む方角から男の人がブツブツと何かを言いながら現れました。そして、特に何もなくすれ違いました......
ただすれ違っただけの男。それだけならなんの問題もありませんし、ブツブツ言っていたことにわざわざ耳を傾けることもありません。ですが、こんな人通りのない道ですれ違った男に私は妙な不安感を覚えました。なぜかは分かりません。でも、なぜかそう感じたのです。
ラウス「おーい、何ボケーッとしてんだ。置いてくぞー」
「あ、待ってくださーい」
気になりますけど、ラウスは何も気にしてない様子ですし、何も知らない私が一々気にしてるような話ではありませんね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ラウス「......」
「......」
ラウス「まさか、スラムに着くとはな......」
「考えもしませんでしたね......」
私たちが歩き続けた先は、どこからどう見てもそうとしか見えないスラムでした。先程までの暗い道と違って、ここは普通に人が見えます。まあ、みんなが私たちのことを警戒してるって注釈付きですけど。
ラウス「確かに、実力主義の国ならはみ出しものくらいいるよなぁ......。帰るか」
ラウスがそう言うのも分かります。流石に、こんなところで情報収集なんて出来ないでしょう。彼らは今日を生き抜くので精一杯。なのに、見るからに裕福ーー彼らと比較してーーそうな私たちに対して好意的に接してくれるはずがありません。
......しかし、今歩いてきた道をすぐに戻るのですか......。なんだか勿体ない気がしますね。
「ラウス、少しだけ見ていきませんか?」
ラウス「あぁ?お前、それどうぞ襲ってくださいってあいつらに言うようなもんだぞ」
「いざとなったらラウスが護ってくれるから大丈夫です!」
ラウス「あ、ちょ、待て!」
ラウスに引き戻される前に私は走って街の中に入ります。
ふむ、足元がゴツゴツしてますね。整備されてないからなのでしょう。
ラウス「だー、もう、10分だけだぞ。んで、俺、完璧に護りきれねぇからな!」
「分かってま~す」
ラウスからの許可も得られましたし、私は早速第1村人から話を聞こうと......
「あの、すみまーー」
「余所者は来るんじゃないよ!」
話を聞こうと......
「おーい!そこの少年たちー」
「「 ...... 」」
話を聞こうと......
「あのー、ちょっとお話がーー」
《シャッ》
話を聞こうと......しても、老人には怒鳴られ、子供たちにはそそくさと逃げられ、家の中にいる主婦の人には麦わら作りの窓を即座に閉められてしまう始末。
「どうしてなんでしょう......」
私は、随分と寂れてしまっている公園のベンチに座り、頬杖をつきます。
ラウス「どうしてか。お前、やっぱ島育ちなんだな......いや、これ島関係ねぇか」
「......?どういう事ですか」
ラウスが隣に腰かけてきて、私にはよく分からないことを言ってきます。
ラウス「......なんて言ったらいいかな。あー、言葉選ばずに言うわ。嫌になったら黙れって言え」
「?分かりました......」
ラウス「お前、人の心を知らねぇだろ」
「心?」
ラウス「ああそうだ。心だ。お前は、島で1人寂しく暮らしていた割には色んなことを知っている」
「まあ、本がありましたから」
ラウス「だろうと思ったぜ。お前、本で得た知識を"知っている"気分になっている。いいか。お前が読んだ本にはたくさんのことが書かれていただろうよ。でも、世の中には言葉では表せれねぇことがいっぱいあるし、逆に言葉で表せられるけど表しちゃダメなもんもある」
「......?」
イマイチ何を言っているのかが私にはよく分かりません。
ラウス「あー、例え話の方がわかりやすいか。......お前は、俺らがあの島に現れたことで、念願だった外の世界に出るっていう夢が叶ったわけだ」
「......はい」
ラウス「お前はただ待ちぼうけしてるだけで夢が叶っちまった。だから、大した苦労とかそんなもんを感じたことはねぇだろ。んでも、俺ら、いや、ここに住む奴らだ。あいつらは、あいつらなりに夢や希望ってのを持ってる。でも、それはどんだけ努力しても叶わねぇ」
「......結局、何が言いたいのでしょう?」
ラウス「......俺だって何が言いてぇのかよく分からねぇよ。でも、多分俺が言いたいのは、人が頑張ってるところに水差すなって事かな」
「よく分かりません」
ラウスが真面目な面持ちになるから何かと思って真面目に聞いてみましたが、オチが不明確なだけの謎の話です。
ラウス「んー......そうだなぁ。じゃあ、この街の奴らが何でお前に冷たかったのかだけ言っとくよ」
「最初からそれ言ってれば良かったのでは?」
ラウス「まあ、そうなんだが、先にこれ言ってもお前は理解しねぇだろうなぁって思ってさ」
ラウスのさっきまでの話も理解できませんでしたけど......
ラウス「......いいかゼラ。この街の奴らは必死だ。毎日を必死に生きてる。仲間内の結束力は強いだろうが、俺らみたいな普通の生活を送れてる奴らに対して嫉妬している。なんで自分はこんな不幸な目に遭ってるんだ、なんであいつらは何不自由なく生きれてんだ、なんでこの国は変わらねぇんだってなぐらいにな。だから、あいつらはこっちの事情なんぞお構いなしに俺らを憎んでくる。そんな奴らに対して、お前は同情心も抱かず、ただの興味心に近いような心で接した。そら、相手にしてくれねぇだろ」
「......何となく、分かった気がします」
ラウス「本当か?お前」
「要は、自分は自分。他人は他人っていうことがここに住む人達なのですね」
ラウス「......まあ、今はそれでいいか」
「よし!」
私は頬杖を解き、勢いよく立ち上がります。曇り空なせいで今がまだ昼なのかどうかは分かりませんが、探索続行です!
「そうとなれば、再びこの街の人たちに聞き込み調査開始です!」
ラウス「お前話聞いてねぇだろ!?」
「いえ、聞いてました!だから、私はこの街をこんな状態にした元締めを探してぶっ飛ばしてやります!」
ラウス「やる事が物騒だし、なんで急にそんな考えになるんだよ!」
「これです!」
私は1枚のくしゃくしゃになった紙をラウスに見せつけます。
ラウス「何だこれ?」
「さっき、風に乗って私の膝元にまでやって来ました」
正直に言うと、ラウスの話なんてほとんど右から左へ状態だったんですよね(一応内容の理解には努めましたが)。
ラウス「えーっと、『汚い街に住む汚物共の諸君に告ぐ!これは最終警告だ。諸君からが滞納する税が期限までに払えないのであれば、今すぐその土地から離れたまえ。不可能と言うのであれば、我々は容赦なくこの土地の改造工事に着手する!』......なんだこりゃ?」
「多分、貼り紙か何かが風に飛ばされてきたんだと思います」
ラウス「いや、そういうこと聞いてんじゃねぇよ。こんなもん見せつけてきて、お前は何しようってんだ?まさか、この貼り紙書いた奴見つけてぶっ飛ばすっていうのか?」
「いえ、そうではありませんよ。ただ、この街を見る感じ、税が払えないっていうのには何かワケがありそうな気がするので、それを元手に彼らと交渉してみるまでですよ」
ラウス「......まあいいや。今日1日くらいはお前に付き合ってやるよ。丁度いい社会勉強をさせてやる」
「期待してませんから~」
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彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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