グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】

第0章6 【森の少年】

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 自然溢れる豊かな国......とはよく言いますね。こんなの、ただ緑で埋めつくしただけの国ではないですか。

 自然の国に足を踏み入れて数十分。私もこの国の王様に会うのかと思いきやそこは違ったようで、シャウトが「子供の来るところではない」と言い、私にボディガードという名の一般兵を付けて3人は堂々と城の正門をくぐって行ってしまいました。子供じゃないのに......

 やる事もなく、ただただ無為に街を見て回れば、最初に抱いていた雄大なイメージを打ち砕かれてしまう現実。どの草木を見ても人工的に無理矢理生やしたようなものばかり。こんなのでは、植物の方が可哀想です。それと、私の後ろにピッタリとついてくるボディガードが物凄く邪魔です。

 ちょっと狭い路地に入ろうとすれば止められますし、ここから先入ってはならないとか言ってあまり好き勝手に動かさせてもらえませんし、私の期待は大きく外れていくばかりです。

 ......ちょっと撒いてみましょうか。

「わぁ!蝶々さ~ん!」

 私はわざとらしい演技をして、狭い路地へと足を踏み入れます。

「あ、待て!そちらには行ってはならぬ!」

 と、後ろからボディガードさんの声が響きますが、私は無視して路地の先へ先へと進み、曲がり角や上に登れそうな場所を駆使してなんとかボディガードさんを撒こうとします。ですが、ボディガードさんには地の利があるらしく、中々引き剥がすことが出来ません。

 でも、それでも私だって負けるわけにはいかないのです。

 地上を歩いても引き剥がすことは無理そうなので、私は屋根伝いに木の上へと登り、枝を転々と移動しながら深い森へと走って行きます。流石に木の上までは無理だったのでしょう。やっと引き剥がすことが出来ました。

「や~っと引き剥がせれました......しつこ過ぎですよ、ロリコンですか、あのボディガードさん」

 しばらくは地上に降りてもすぐに見つかってしまうと思うので、私は木の上を移動しながら内陸の方へと移動をします。こんな事して後から怒られてしまうでしょうけど、そこは「あなた達が私をほっとくからです」とでも言えば黙ってくれるでしょう。

 さて、折角撒くことが出来たのですから、この時間を有意義に使わなければなりません。とは言え、内陸の方に進みすぎると元の場所に戻って来られなくなる可能性がありますし、かといって今のままの場所だと大した面白みもありませんし、どうしましょう?

「とりあえず、まずは休憩です」

 なぜか木の上に存在しているウッドハウス(?)の近くに座り込み、先程の鬼ごっこで消費した体力を回復させます。

「わぁ~綺麗~」

 丁度真正面に枝の空いた空間が広がっており、そこからこの街全体を見渡すことができます。左側には丸太で作られた面白おかしなお城が見え、右側には、これまた丸太で作られた面白おかしな一般のお家が広がります。そして、更に右側の方へと視点を向けると、私たちが乗ってきた船が見え、そこから穏やかな波の海が見えてきます。

 もし、今が夕方時だったらどれほど良かったでしょう。ただの想像でしかありませんが、この景色には絶対に夕焼けが似合います。絶対です。

「はぁ~......」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

《ドシンッ!》

 ......?何でしょう?

 今、何かとても重たいものが落ちる音がした気が......

「よっと、なんですかね?」

 私は木の上から飛び降りて、音が聞こえたと思われる方を見ます。

「あれ~?この辺に落ちたと思うんですけどね~きゃっ!」

 なんか、船の中でも同じようなことをした気がしますが、何かに足をつまづいて転んでしまいました。自然に生えた雑草が鼻をくすぐります。

「ペッペッ......もう、何だって言うんですか。私、そんなにボケっと......」

 あ、見つけた。私の足元に左腕を押さえて寝転んでいる少年が。

 黒髪短髪、ラ○ュタのパ○ーが着ていそうな服に、若干やつれた顔立ち。んー、知らなくて当然なんですけど、誰ですかね?

「あの~大丈夫ですか?」

 少年の肩を揺すって意識を確かめる。しかめっ面をしてるから意識は絶対にありますね。で、左腕ですか......

 これ、多分私のせいですよね。私が木の上で休んでいたら、たまたまそこにこの少年がやってきて、で、普段誰も来ないであろう場所に人がいるから驚いて足を踏み外してしまったと。

 筋書きとしてはこうでしょうか?多分、合ってますよね?

「と、とりあえず治癒魔法?いや、でも私魔法だけは覚えることは出来ても使えませんし、近くに"頼りになりそうな"大人の人はいませんし......」

 本当にどうしましょう?

「み、ミリオくん!?」

 と、私が狼狽えてる時でした。背後から女の子の声がしました。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「もう、ちょっと打撲してるだけじゃない。それくらいでヘタレな態度見せないの!」

「ご、ごめん......」

「あ、ゼラさんだっけ?この子の事は気にしなくていいから。昔からこんなのだし」

「そ、そうですか......」

 私と同じくらいの歳なはずなのに、随分としっかりしている子ですね。これが田舎育ちと都会育ちの違いなのでしょうか?(絶対違う)

 あ、そうそう。この女の子の名前は『リア』。そして、私が驚かせてしまった男の子の方は『ミリオ』。よく小説とかに出てきそうな名前ですね、とだけ私は思っておきます。

リア「もう、本当ビックリするじゃない。てっきり、奴らにバレたのかと思ったわ」

ミリオ「ごめん......」

リア「まあ、なんも知らない観光客で良かったけど、次からはヘマ踏まないようにしてよ」

ミリオ「うん......」

 なんか情けない男の子ですね。自分と同年代の女の子に説教されて悲しくならないんですかね。私の知ったところではないですけど。

リア「ゼラさん」

「な、何でしょう......」

 突然リアがミリオに向けていた厳しめな眼差しそのままにこちらを振り向いてきます。

リア「ここにこんな家があった事は内緒にしててね」

「誰にでしょうか」

リア「誰にもよ。いーい?私達はこう見えて24歳と21歳なの」

「えーーー!?」

 そ、それは無理があるんじゃないですか?リアの喋り方はどう聞いても10歳くらいの女の子が背伸びしてお姉さん面してるだけですし、ミリオに至っては完全に子供ですし、私の方が余っ程大人ですよ!?なのに、この2人が20歳超え?

 ......ありえない。そんな奇病聞いた事ありませんよ。

リア「私達はこの国のせいで歳だけは重ねても、見た目はずーっと子供のままになってる。本当、迷惑な話よね。国の奴らは幼少病とか言って大人共を黙らせてるけど、そんな病気見たこともなければ聞いたこともない。他の国に行ったってそうよ」

「そ、そうですか......」

 正直、何言ってるのか全然分かりません。適当に相槌はしておきますけど。

リア「私達はこんな体にしてくれた国に一矢報いるためにこうやってコソコソと準備をしてるの。だから、絶対にこの事は話さないでよね!」

「......それなら、最初から私に話さなければ良かったのでは?私、別に聞かせろなんて言ってませんし......」

リア「......とにかく黙ってて!」

「は、はい......」

 あまりに鋭い眼光で睨まれたのなら、もう黙るしかないでしょう。にしても、幼少病ですか......根も葉もない噂に騙されてるだけのように見えますけどね。

リア「......ミリオ。この場所に奴らが来るわ。見つかる前に早めの移動よ」

ミリオ「う、うん......」

 多分、仲間はもっといるんでしょうね。国の計画とか言ってるくらいですし、同じような症状を持つ人たちはたくさんいると考えるのが妥当でしょう。後でそれとなくラウスたちに聞いてみましょうか。適当にはぐらかされるか知らないと言われるかのどちらかでしょうけど。

リア「じゃあね、ゼラさん。観光客だったとしても気をつけた方がいいよ。国の奴ら、10代の少年少女には構わず幼少病にさせる薬打ち込んでくるから」

「分かりました」

 まあ、私はこんな噂信じませんけどね。中身は20代って言われても、中身からまんま子供に見えますし、ただの集団ヒステリーじゃないかと思って"一応"警戒しておきます。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 数時間後。

 私は来た道を戻り、船の近くであたふたとしている兵士とラウスたちの間にしれっと紛れ込みました。丁度兵士の人がラウスたちに説明してる最中だったらしく、タイミング良く紛れ込めた私はそのままお咎めというもの無しで事なきを得ました。これでいいんですかね?まあ、いいんでしょうけど。

「え?もう出発ですか!?」

ラウス「ああ。なんせ、あの国王に聞いてもこの国には何もねぇって言うからな。グランストーンに関する情報もねぇし、見て回るようなところもない。攻め込まれたら1発で終わるような小さな国だからな」

「そうですか」

 まあ、見て回るところがないというのは、私も今日一日で十分感じましたけど、まさか1日も待たずに出航するとは......ラウスたちにも考えがあるんでしょうけど、ちょっと早すぎませんかね?

 あの少年たちが気になりますが、それもこれも私には関係のない話というわけなんですね。私は、あくまでグランストーンを見つけるまでの間、彼らと共に世界を回るだけ。あまり自由なことは許されない。それが、外の世界に出た代償......

 なんて、暗いことを考えてても仕方ありませんね。ちゃっちゃとグランストーンを見つけてしまえば私も自由な身になれるはずです。毎日を楽しく生きましょう!

「で、次はどの国に行くんですか?」

ラウス「ぶっちゃけ、あの盗賊共の国が1番怪しいと思うんだがな......」

モルガン「俺達では到底手を出すことは厳しいぞ」

 モルガンが話に割って入ってきました。

モルガン「落ち着いてる時ならまだしも、今はドンパチやってる時期だ。近づくのは避けたいな」

ラウス「だよな。でも、落ち着く時期を見計らうなんてことは出来ねぇし」

シャウト「行くとすれば、あの国と繋がってるが比較的平穏な月影つきかげ王国だろうな」

 これまた私たちの間にシャウトが入ってきてそう言います。

「月影王国?」

シャウト「他国に戦争を吹っ掛けることはあっても、国内で争いが起こることはない冷徹な国だ。力無きものは生き残れない。そんな国だからこそ、皆が繋がりあっている」

「なるほど。でも、そんな国で情報なんて得られるのでしょうか?」

シャウト「分からん。だが、何もしないでいるよりはマシだ」

ラウス「なるほどなぁ。んじゃ、次の目的地はそこでいいか」

モルガン「そうだな。次は月影に向かうとしよう」

シャウト「分かった。船の準備をしてくる」

 そうして、次の目的地を決めた私たちは船の準備に取り掛かります。と言っても、私にやることはありませんし、ただただ不自然なまでに緑で埋め尽くされた国を目に焼き付けておきます。

 なんの思い出もない国ですが、唯一交流をした彼らのことが気になるため、いつか自由になったらまたこの国に来ようと思います。

「あ......」

 と、適当に見渡している時でした。一際高い木の上からあの少年たちがこちらに向けて手を振っているのが見えてきました。リアは元気よくこちらを向いて手を振っていますが、ミリオは若干足を竦ませて小さく手を振っています。

 小さな姿ですが、私の目にはとても大きく写り、それだけでこの国に来て良かったなと思います。

「またいつか、この国で会いましょう」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 さて、自然王国での物語はどうだったでしょうか?

 リア、ミリオ、自然王ナトレ。この3人がどう結びついていて、幼少病とは何なのか。それは、この時の私が簡単に考えられるようなものではありませんでした。

 いずれ、この国では大きな争いが起こります。私が考えていたような、ただの集団ヒステリーでは済まされない話だったのです。でも、私がそんなことを知るはずもなく、再びこの国を訪れる事になるのは、内乱もいよいよ佳境になる頃。まあ、今話しても仕方のない話ですよね。では、次に訪れる国のお話を少しだけしましょうか。

 月影王国。そこは、強き者だけが生き残れる実力主義の国。他国に戦争を吹っ掛け、地道に領土を増やしつつある国です。そんな、実力主義の国には、当然の事ながら弱き者もいます。彼らには実力主義の国で生きる術などありません。誰も助けてくれない、誰にも勝てない。そんな国でひっそりと暮らしているだけ。

 ......いえ。私の知ったことではありませんね。

 私の冒険譚第3章。月影王国編。開幕です!
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