291 / 434
第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】
第0章9 【活気溢れる街】
しおりを挟む
「頼もー!」
サクッと金を数分後に元の瓦礫に戻る錬金術を発動させ、そのままの足でボロい酒場にまで戻ってきました。
リゲル「よう、上手くいったか」
「うーん、取引次第ですかね」
リゲル「取引?」
「ええ、取引です。まずはコチラを」
私はカーマネからもらった契約書をリゲルに見せます。
リゲル「こいつは......」
「この土地一帯の所有権です。今は私になってますよ」
リゲル「......何がお望みだ?嬢ちゃん」
「いえ。私がここの土地を持ったところで、今は後ろの彼と宝石探しをして旅をしている最中。まともな管理なんてできないんですよ。そ・こ・で、この土地、買い取りませんか?」
リゲル「高ぇのか?」
「高いですよ~。なんせ、金500kgで買ったものですから」
私がその一言を放った瞬間、一気に静かになっていた酒場がざわめき出しました。
リゲル「......いくらだ。言っとくが、うちにそんな大金はねぇぞ」
「そうですね~。......うーん、じゃあ、このお店で一番贅沢なご飯一飯分で!」
リゲル「......……はっ!こりゃ、随分と高ぇな!」
一瞬唖然としたような顔になったリゲルが、すぐさま涙を流した笑みへと表情を変え、私が差し出した契約書にペンで何かを書き加えました。
「......そうですね。今日から、この土地はあなたの物です!」
リゲルが書き足した内容は、『この土地を更に酒場の店主リゲルに飯一飯分との取引で譲渡する』という旨のものです。私は、すぐさまその下に先程の名前を書き加えようとしました。でも、ここは本名を使っても良いと思い、自分の名前を書きました。もちろん、上に書いてある名前は読み取れないほどに滲み潰して。
リゲル「取引成立だな!」
「ですね!」
驚くほどにあっさりと解決してしまったこの街の問題。こんな事で解決できるのに、なぜ彼らはそれかま出来なかったのか。そんな事、私が知るようなことではありませんが、少なくとも彼らがとても喜んでいるということだけは分かりました。
リゲル「よっしゃぁ!テメェら今日はたらふく食いやがれ!そして飲みやがれぇ!」
「「「 おっしゃァァァァ! 」」」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから数時間。私たちは今が昼か夜かなんて忘れて、ただひたすらに暴れ回りました。といっても、度々酔っ払った人同士が小さな喧嘩をする程度で、それ以外は楽しそうに喧嘩をしていました。
人生初のお酒に手を出そうとしたんですが、そこは、1人この場に馴染んでいないラウスが止めてきました。むぅ、大人しくラウスも呑まれてればいいのに。
「ど、どういう事ですか!これは!」
と、楽しく騒いでいるところに、つい数時間前に聞いた男の声が響き渡りました。
「あ、どうも」
カーマネ「どうもじゃありませんよ!なんですかこれ!あなた様から貰った金が、見ての通りただの瓦礫に戻ったんですよ!?なんなんですかこれ!」
予想通りの反応ですね。
「知りませんよ~。私は、"無償"でこの土地を譲ってもらいましたから」
カーマネ「何を言いますか!それは錬成による金の生成が違法だからと約束したからではありませんか!と、とにかく!あの取引は無効です!契約書を返してください!」
「と、申されておりますが、どうします?」
リゲル「人様から物取り上げるたァ、そりゃぁ、権利侵害ってやつなんじゃねぇか?なぁおめぇら!」
デカいビールジョッキ片手にリゲルが店中に向かって叫びます。
「おうおう!その通りだ!」
「俺らからこれ以上取るな!」
「船乗り舐めんなよゴルァ!」
リゲルの叫びに賛同する声は多く、皆が酔いで頬を赤らめたまま上着だけを脱ぎます。
うわぁ。流石(?)船乗り。筋肉ーー特に腕ーー凄いです。
カーマネ「ひっ、お、お前ら何なんだ!」
リゲル「よう兄ちゃん!」
ドシン!と、リゲルがカウンターの奥から大ジャンプでカーマネの前まで飛び降ります。衝撃で足元の板が若干崩れ落ちました。
リゲル「生憎だが、さっきそこの嬢ちゃんにこの土地高く売ってもらってな。欲しけりゃ俺ら船乗り倒してから買い取るんだな」
カーマネ「ひっ、ひぃ……」
金の力はあっても、常日頃からダラダラしているカーマネでは、筋肉ムキムキな船乗りたちには敵いそうにありません。ちょっと可哀想ですかね?
リゲル「兄ちゃん。何も暴力的に行こうだなんて俺らは思ってねぇんだよ。たーだ、兄ちゃんの態度次第では。ニヒッ」
腰を抜かして倒れたカーマネに詰め寄り、リゲルは親指を後ろに向けて立てます。すると、他の筋肉質な船乗りたちが、自らの筋肉を自慢するように様々なポーズを取ります。
カーマネ「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
なんとも情けないものです。筋肉質の男たちを相手にして、腰を抜かしたまま逃げ去ってしまうなんて。
リゲル「よっしゃァァァァァァァ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
リゲル「嬢ちゃん、今日はありがとな!お礼……つっても、何もねぇが、俺らにできることなら何でもやってやるよ。そこの兄ちゃんもな」
「ああ」
俺はただ単に黙って見ていたに過ぎないが、この酒場の奴らは俺がゼラの連れってだけで妙に親しくしてくる。
……それにしてもすげぇな。たったの1日でこの街の有様をすっかりと変えちまったんだから。いや、ゼラは変えるきっかけを与えただけか。
「……なぁ、リゲルだったか?」
リゲル「ああ、リゲルは俺だが」
「1つ、聞きたいことがあるんだがいいか?」
リゲル「おう、いいぜ。1つと言わず、なんでも聞きやがれ!まあ、答えられるかは補償しねぇけどな!」
まあ、こいつらが知ってるわけねぇだろうけど、一応この時間が無駄じゃなかったって、シャウト達に胸張って言えるような情報だけは持ち帰りたいな。
「……なあ、最近この辺で、宝石泥棒が来たみたいな話を聞かなかったか?」
リゲル「ああ?んなもん、こんな街だからなぁ。いくらでも聞くぜ」
「じゃあ、キラキラ光るデカい石を持った奴が現れるとかしなかったか?」
我ながら、なんとも曖昧な聞き方だと思ったが、グランストーンがどんな代物なのか分からない以上、こう聞くしかない。後でゼラにちゃんとどんなものなのか聞いとかないとな。つっても、あいつ自身記憶が曖昧みたいだし、特に意味はなさそうだが。
リゲル「あー、キラキラ光るデカい石か……」
「そうそう。これくらいの大きさのやつ」
両手を使って、少し大きめの輪を描いてジェスチャーする。こんなんで伝わってくれればいいんだがな。
リゲル「……あー!それくらいなら、つい最近見たぞ!」
「マジで!?」
リゲル「ああ。兄ちゃんの探しもんかどうかは知らんが、つい最近、黒ローブ着た男がこの街に来てな。夜になったが泊まる場所かないって言うから、貸してやったんだよ。結構な金くれたしな。んで、その時男に自慢されたんだよ。でっけぇ宝石が手に入ったって」
「見たのか!?それ!」
リゲル「ああ見たぞ。すげぇキラキラしてて、めっちゃ光るでかい石だったな。なんていうか、こう、石からすげぇ力みたいなもん感じたんだ!」
……これは、もしかしなくても本物かもしれないな。
「なあ、その男どこに行くとか言ってたか?」
リゲル「確か……あーそうだ。これからステイネスのアジトに帰るとかうんたらかんたら独り言呟いてた気がするぞ」
やっぱあそこかよ……
アジトか……いつ向かってもいそうな気はするが、できるならなるべく早くに行きたいな。つっても、今は内乱中。かなり危険だ。でも……どうしたらいいんだろうな?
「……ありがとな、情報くれて」
リゲル「礼を言いてぇのはこっちだよ!兄ちゃんと嬢ちゃんのお陰で、こちとらこれから幸せライフだからな!」
チラとゼラの方を見る。
結局、止めたかいも虚しく、男たちに酒を浴びせられ、すっかりと出来上がっちまった。まあ、あいつは酒に強いのか、何とか理性は保ってるようだけどな。
もう少しだけ、楽しませてやるか。これは、結果的に情報を手に入れられるようになったお礼だぞ、と。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして、いつの間にやら晴れていた空もすっかりと日を落とし、さすがに帰るかとなって、結局酔いつぶれてしまったゼラをおんぶして人通りの少ない夜道を帰る。
「あー、シャウト達もう戻ってっかなー?まあ、それなりの情報は手に入れたわけだし、怒られるようなことはねぇだろ」
とまあ、そんな独り言を呟きつつ、数十分と歩き続けて、やっと宿にまで戻ってきた。そういや、リゲルがうちに泊まってけなんて言ってたが、この宿を見ると、マジであそこスラムだったんだなと思う。だって、あの家マジでボロボロだったからな。そのうち建て直さなきゃならねぇやつだ。
シャウト「遅かったな」
と、宿の前にまで行くと、そこには律儀にもシャウトとモルガンの2人が待っていた。
モルガン「こんなに時間がかかるとは、それなりにいいものが得られたのだろうな?」
「ああ。十分すぎるもんが手に入った。ほぼこいつのお陰でな」
俺は背に乗ったゼラの顔を見る。
すーすーと寝息を立てやがって。本当に子供だな。……でも、こんな子供があんなすげぇことをやっちまうんだよな。世の中恐ろしいぜ。
シャウト「詳しい話は明日聞こう」
「ああ、助かるぜ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日ーー
シャウト「なるほど。やはり、ステイネスにグランストーンを持ち去った奴がいるのか……」
「多分な。リゲルの話からすると、多分1ヶ月以内にはあのスラムを訪れているわけだし、本当に俺らとすれ違うようなタイミングであの島に訪れたんだろうな。それも、ゼラが気づかない時間に」
シャウト「だろうな。ただ、そうなると黒ローブの男とやらはどこでグランストーンの情報を得たのだろうな」
あれだけ外に出たがっていたゼラが気づかないタイミング。俺らはそこそこにデカい船を使って行ったからすぐにバレたが、小さい船で、仮に夜に行ったとしても、多分すぐに気づかれる。そんな気がする。じゃあ、いかにして黒ローブの男はゼラに気づかれないようにグランストーンを盗み出せたのかって問題になる。
「多分、奴はグランストーンの居場所を知ってたと思う」
シャウト「だろうな。あれだけ草木が生えている島だ。場所を知っていなければ、短時間で宝石奪取とはならないだろう」
「ってなると、やっぱ黒ローブの男は、ステイネスでもとびきりでけぇ勢力の……」
シャウト「『影』……だろうな」
「だな」
『影』とは、内乱ばかりのステイネスでも頭1つ飛び抜けているやべー勢力だ。ステイネスだけに囚われず、世界中のあちこちで盗みや殺人、放火といった世界共通意識の犯罪を犯している。
……そんな奴らにグランストーンを奪われたとなりゃぁな……。
「どうする?諦めるか?」
シャウト「マスターが許すわけないだろ」
「だよな。絶対に『男が同じ盗人相手に怯えてんじゃないよ!このチキン野郎が!』くらいには言ってきそうだな」
シャウト「……戦力の確保が重要だ」
戦力って言われても、今すぐに揃えられるようなもんはどこにもねぇだろ。シージュアルのババア共の力を借りたところで、元々非戦闘員がほとんどなんだ。
……いや、シャウトがなんの考えもなしに……
……
……そういや、この国にはなんの考えもなしに来ちまったんだな。一応目標達成出来たから結果的には来てよかったと思うけど。
シャウト「……今すぐに集められそうな戦力はないが、白愛王国に兵隊を貸してくれるところがある」
「マジか……」
シャウト「昨日聞けた情報だ。この国の兵士に聞いたから、信用性は高い」
「んじゃ、そこで兵隊借りれるだけ借りてステイネスに突撃ってことでいいか?」
シャウト「ああ。それで行こう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
はいはーい。どうでしたでしょうか?月影王国編。
今回、国の中心には近づかず、港町での物語となってしまいましたが、そんなところにでも大きな物語っていうのは眠っているものです。あの人たちの街、1000年経ったネイさんたちの時代ではどうなっているんでしょうね?
さて、お次のおはなしは和を尊ぶ白愛王国でのおはなしです。私たちが目指すグランストーンがステイネスにあることを知ったラウス一行。ステイネスでの巨大組織『影』と戦う戦力を整えるため、一行は白愛王国を目指すことになります。しかし、そこの兵隊さんたちはステイネスの組織と戦うことに恐れを顕にしてしまいます。果たして、戦力をひとつも揃えられない私たちはどうなっちゃうのでしょうか?それは、これから描く物語で明らかにしていきます。
サクッと金を数分後に元の瓦礫に戻る錬金術を発動させ、そのままの足でボロい酒場にまで戻ってきました。
リゲル「よう、上手くいったか」
「うーん、取引次第ですかね」
リゲル「取引?」
「ええ、取引です。まずはコチラを」
私はカーマネからもらった契約書をリゲルに見せます。
リゲル「こいつは......」
「この土地一帯の所有権です。今は私になってますよ」
リゲル「......何がお望みだ?嬢ちゃん」
「いえ。私がここの土地を持ったところで、今は後ろの彼と宝石探しをして旅をしている最中。まともな管理なんてできないんですよ。そ・こ・で、この土地、買い取りませんか?」
リゲル「高ぇのか?」
「高いですよ~。なんせ、金500kgで買ったものですから」
私がその一言を放った瞬間、一気に静かになっていた酒場がざわめき出しました。
リゲル「......いくらだ。言っとくが、うちにそんな大金はねぇぞ」
「そうですね~。......うーん、じゃあ、このお店で一番贅沢なご飯一飯分で!」
リゲル「......……はっ!こりゃ、随分と高ぇな!」
一瞬唖然としたような顔になったリゲルが、すぐさま涙を流した笑みへと表情を変え、私が差し出した契約書にペンで何かを書き加えました。
「......そうですね。今日から、この土地はあなたの物です!」
リゲルが書き足した内容は、『この土地を更に酒場の店主リゲルに飯一飯分との取引で譲渡する』という旨のものです。私は、すぐさまその下に先程の名前を書き加えようとしました。でも、ここは本名を使っても良いと思い、自分の名前を書きました。もちろん、上に書いてある名前は読み取れないほどに滲み潰して。
リゲル「取引成立だな!」
「ですね!」
驚くほどにあっさりと解決してしまったこの街の問題。こんな事で解決できるのに、なぜ彼らはそれかま出来なかったのか。そんな事、私が知るようなことではありませんが、少なくとも彼らがとても喜んでいるということだけは分かりました。
リゲル「よっしゃぁ!テメェら今日はたらふく食いやがれ!そして飲みやがれぇ!」
「「「 おっしゃァァァァ! 」」」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
それから数時間。私たちは今が昼か夜かなんて忘れて、ただひたすらに暴れ回りました。といっても、度々酔っ払った人同士が小さな喧嘩をする程度で、それ以外は楽しそうに喧嘩をしていました。
人生初のお酒に手を出そうとしたんですが、そこは、1人この場に馴染んでいないラウスが止めてきました。むぅ、大人しくラウスも呑まれてればいいのに。
「ど、どういう事ですか!これは!」
と、楽しく騒いでいるところに、つい数時間前に聞いた男の声が響き渡りました。
「あ、どうも」
カーマネ「どうもじゃありませんよ!なんですかこれ!あなた様から貰った金が、見ての通りただの瓦礫に戻ったんですよ!?なんなんですかこれ!」
予想通りの反応ですね。
「知りませんよ~。私は、"無償"でこの土地を譲ってもらいましたから」
カーマネ「何を言いますか!それは錬成による金の生成が違法だからと約束したからではありませんか!と、とにかく!あの取引は無効です!契約書を返してください!」
「と、申されておりますが、どうします?」
リゲル「人様から物取り上げるたァ、そりゃぁ、権利侵害ってやつなんじゃねぇか?なぁおめぇら!」
デカいビールジョッキ片手にリゲルが店中に向かって叫びます。
「おうおう!その通りだ!」
「俺らからこれ以上取るな!」
「船乗り舐めんなよゴルァ!」
リゲルの叫びに賛同する声は多く、皆が酔いで頬を赤らめたまま上着だけを脱ぎます。
うわぁ。流石(?)船乗り。筋肉ーー特に腕ーー凄いです。
カーマネ「ひっ、お、お前ら何なんだ!」
リゲル「よう兄ちゃん!」
ドシン!と、リゲルがカウンターの奥から大ジャンプでカーマネの前まで飛び降ります。衝撃で足元の板が若干崩れ落ちました。
リゲル「生憎だが、さっきそこの嬢ちゃんにこの土地高く売ってもらってな。欲しけりゃ俺ら船乗り倒してから買い取るんだな」
カーマネ「ひっ、ひぃ……」
金の力はあっても、常日頃からダラダラしているカーマネでは、筋肉ムキムキな船乗りたちには敵いそうにありません。ちょっと可哀想ですかね?
リゲル「兄ちゃん。何も暴力的に行こうだなんて俺らは思ってねぇんだよ。たーだ、兄ちゃんの態度次第では。ニヒッ」
腰を抜かして倒れたカーマネに詰め寄り、リゲルは親指を後ろに向けて立てます。すると、他の筋肉質な船乗りたちが、自らの筋肉を自慢するように様々なポーズを取ります。
カーマネ「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
なんとも情けないものです。筋肉質の男たちを相手にして、腰を抜かしたまま逃げ去ってしまうなんて。
リゲル「よっしゃァァァァァァァ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
リゲル「嬢ちゃん、今日はありがとな!お礼……つっても、何もねぇが、俺らにできることなら何でもやってやるよ。そこの兄ちゃんもな」
「ああ」
俺はただ単に黙って見ていたに過ぎないが、この酒場の奴らは俺がゼラの連れってだけで妙に親しくしてくる。
……それにしてもすげぇな。たったの1日でこの街の有様をすっかりと変えちまったんだから。いや、ゼラは変えるきっかけを与えただけか。
「……なぁ、リゲルだったか?」
リゲル「ああ、リゲルは俺だが」
「1つ、聞きたいことがあるんだがいいか?」
リゲル「おう、いいぜ。1つと言わず、なんでも聞きやがれ!まあ、答えられるかは補償しねぇけどな!」
まあ、こいつらが知ってるわけねぇだろうけど、一応この時間が無駄じゃなかったって、シャウト達に胸張って言えるような情報だけは持ち帰りたいな。
「……なあ、最近この辺で、宝石泥棒が来たみたいな話を聞かなかったか?」
リゲル「ああ?んなもん、こんな街だからなぁ。いくらでも聞くぜ」
「じゃあ、キラキラ光るデカい石を持った奴が現れるとかしなかったか?」
我ながら、なんとも曖昧な聞き方だと思ったが、グランストーンがどんな代物なのか分からない以上、こう聞くしかない。後でゼラにちゃんとどんなものなのか聞いとかないとな。つっても、あいつ自身記憶が曖昧みたいだし、特に意味はなさそうだが。
リゲル「あー、キラキラ光るデカい石か……」
「そうそう。これくらいの大きさのやつ」
両手を使って、少し大きめの輪を描いてジェスチャーする。こんなんで伝わってくれればいいんだがな。
リゲル「……あー!それくらいなら、つい最近見たぞ!」
「マジで!?」
リゲル「ああ。兄ちゃんの探しもんかどうかは知らんが、つい最近、黒ローブ着た男がこの街に来てな。夜になったが泊まる場所かないって言うから、貸してやったんだよ。結構な金くれたしな。んで、その時男に自慢されたんだよ。でっけぇ宝石が手に入ったって」
「見たのか!?それ!」
リゲル「ああ見たぞ。すげぇキラキラしてて、めっちゃ光るでかい石だったな。なんていうか、こう、石からすげぇ力みたいなもん感じたんだ!」
……これは、もしかしなくても本物かもしれないな。
「なあ、その男どこに行くとか言ってたか?」
リゲル「確か……あーそうだ。これからステイネスのアジトに帰るとかうんたらかんたら独り言呟いてた気がするぞ」
やっぱあそこかよ……
アジトか……いつ向かってもいそうな気はするが、できるならなるべく早くに行きたいな。つっても、今は内乱中。かなり危険だ。でも……どうしたらいいんだろうな?
「……ありがとな、情報くれて」
リゲル「礼を言いてぇのはこっちだよ!兄ちゃんと嬢ちゃんのお陰で、こちとらこれから幸せライフだからな!」
チラとゼラの方を見る。
結局、止めたかいも虚しく、男たちに酒を浴びせられ、すっかりと出来上がっちまった。まあ、あいつは酒に強いのか、何とか理性は保ってるようだけどな。
もう少しだけ、楽しませてやるか。これは、結果的に情報を手に入れられるようになったお礼だぞ、と。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして、いつの間にやら晴れていた空もすっかりと日を落とし、さすがに帰るかとなって、結局酔いつぶれてしまったゼラをおんぶして人通りの少ない夜道を帰る。
「あー、シャウト達もう戻ってっかなー?まあ、それなりの情報は手に入れたわけだし、怒られるようなことはねぇだろ」
とまあ、そんな独り言を呟きつつ、数十分と歩き続けて、やっと宿にまで戻ってきた。そういや、リゲルがうちに泊まってけなんて言ってたが、この宿を見ると、マジであそこスラムだったんだなと思う。だって、あの家マジでボロボロだったからな。そのうち建て直さなきゃならねぇやつだ。
シャウト「遅かったな」
と、宿の前にまで行くと、そこには律儀にもシャウトとモルガンの2人が待っていた。
モルガン「こんなに時間がかかるとは、それなりにいいものが得られたのだろうな?」
「ああ。十分すぎるもんが手に入った。ほぼこいつのお陰でな」
俺は背に乗ったゼラの顔を見る。
すーすーと寝息を立てやがって。本当に子供だな。……でも、こんな子供があんなすげぇことをやっちまうんだよな。世の中恐ろしいぜ。
シャウト「詳しい話は明日聞こう」
「ああ、助かるぜ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日ーー
シャウト「なるほど。やはり、ステイネスにグランストーンを持ち去った奴がいるのか……」
「多分な。リゲルの話からすると、多分1ヶ月以内にはあのスラムを訪れているわけだし、本当に俺らとすれ違うようなタイミングであの島に訪れたんだろうな。それも、ゼラが気づかない時間に」
シャウト「だろうな。ただ、そうなると黒ローブの男とやらはどこでグランストーンの情報を得たのだろうな」
あれだけ外に出たがっていたゼラが気づかないタイミング。俺らはそこそこにデカい船を使って行ったからすぐにバレたが、小さい船で、仮に夜に行ったとしても、多分すぐに気づかれる。そんな気がする。じゃあ、いかにして黒ローブの男はゼラに気づかれないようにグランストーンを盗み出せたのかって問題になる。
「多分、奴はグランストーンの居場所を知ってたと思う」
シャウト「だろうな。あれだけ草木が生えている島だ。場所を知っていなければ、短時間で宝石奪取とはならないだろう」
「ってなると、やっぱ黒ローブの男は、ステイネスでもとびきりでけぇ勢力の……」
シャウト「『影』……だろうな」
「だな」
『影』とは、内乱ばかりのステイネスでも頭1つ飛び抜けているやべー勢力だ。ステイネスだけに囚われず、世界中のあちこちで盗みや殺人、放火といった世界共通意識の犯罪を犯している。
……そんな奴らにグランストーンを奪われたとなりゃぁな……。
「どうする?諦めるか?」
シャウト「マスターが許すわけないだろ」
「だよな。絶対に『男が同じ盗人相手に怯えてんじゃないよ!このチキン野郎が!』くらいには言ってきそうだな」
シャウト「……戦力の確保が重要だ」
戦力って言われても、今すぐに揃えられるようなもんはどこにもねぇだろ。シージュアルのババア共の力を借りたところで、元々非戦闘員がほとんどなんだ。
……いや、シャウトがなんの考えもなしに……
……
……そういや、この国にはなんの考えもなしに来ちまったんだな。一応目標達成出来たから結果的には来てよかったと思うけど。
シャウト「……今すぐに集められそうな戦力はないが、白愛王国に兵隊を貸してくれるところがある」
「マジか……」
シャウト「昨日聞けた情報だ。この国の兵士に聞いたから、信用性は高い」
「んじゃ、そこで兵隊借りれるだけ借りてステイネスに突撃ってことでいいか?」
シャウト「ああ。それで行こう」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
はいはーい。どうでしたでしょうか?月影王国編。
今回、国の中心には近づかず、港町での物語となってしまいましたが、そんなところにでも大きな物語っていうのは眠っているものです。あの人たちの街、1000年経ったネイさんたちの時代ではどうなっているんでしょうね?
さて、お次のおはなしは和を尊ぶ白愛王国でのおはなしです。私たちが目指すグランストーンがステイネスにあることを知ったラウス一行。ステイネスでの巨大組織『影』と戦う戦力を整えるため、一行は白愛王国を目指すことになります。しかし、そこの兵隊さんたちはステイネスの組織と戦うことに恐れを顕にしてしまいます。果たして、戦力をひとつも揃えられない私たちはどうなっちゃうのでしょうか?それは、これから描く物語で明らかにしていきます。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる