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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】
第0章12 【巫女の得意技】
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さてさて、前回は無事に新たな仲間を船に加えたところで終わりましたが、未だに私たちの戦力が足りないことに変わりはありません。なので、一旦ラウスたちの拠点であるシージュアルに帰ろうとしたのですが、流石はこの世界の反対側。10日どころか、それ以上にかかる道のりらしいです。乗り物酔いが酷いヨミさんには酷な話ですね。
まあ、そんなヨミさんにとっては地獄と思える船旅も、4日目を過ぎたあたりで一旦終了。燃料や食料の補給と、軽い情報収集のため、私たちは龍と契約を結んだという伝説が語られる国、アグリア王国へと降り立ちました。
で、話はかなり飛ぶのですが、私たちは今、カジノと呼ばれる遊戯施設に来ています。……やっぱ、説明しないと分かりませんよね?というわけで、軽く回想ファンファンファン……
ラウス「んじゃ、俺らは食料と燃料確保してくるから、お前らガキ2人は好き勝手してていいぞ。ただし、夕方までには戻ってこいよ」
相変わらず子供扱いをしてくるラウスですが、なぜ、ヨミさんのことも子供扱いしたのでしょうか?どこからどう見ても、立派な大人だというのに……
……
……いや、私が大人だと感じているのは、内面(それも一部)だけでしたね。疑問の余地無し。
「ヨーミさん。少し、この街を歩きましょうよ。地べたに座ってたら、折角の着物が台無しですよ?」
ヨミ「おぇ……お主が気にすることではない」
「そうですかー」
気にしなくていいと言われたので、私はヨミさんを片腕に担ぎ、とりあえずどっか適当なところにでも行こうと歩き始めました。今気づいたんですけど、ヨミさんってすごい軽い人だったんですね。
で、もうこの間の部分なんて、適当にヨミさんの愚痴を聞きながら歩いていただけなので、バッサリカットしまして、繁華街と思わしきところにまでやって来た場面。
「見てくださいヨミさん!人が、人がゴミのようですよ!」
ヨミ「ああ、分かったから降ろせ。もう大丈夫じゃ」
断る理由も特にないので、雑に降ろします。
「わー、すごい街ですねー。人がいっぱいで、すごい華やかです!」
ヨミ「ギャーギャーギャーギャー騒ぐな。子供かお主」
「それ、ヨミさんにだけは言われたくないです」
ヨミ「どういう意味じゃ」
「それはーー」
私が言うより先に、ヨミさんがギロっと睨みつけてきたので、思わず口を閉じてしまいました。なんか、言ったら殺されそうな気がします。
ヨミ「で、金なんてロクに渡されてもないというのに、お主はここに来てどうするつもりだったのじゃ?」
「そりゃ、無いのなら増やすまでですよね?」
ヨミ「……?」
私は、この華やかな街でも特に華やかになっている大きな建物の前にまで足を運びました。
ヨミ「……立派なギャンブラーではないか。お主」
……と、いうわけで、私は無いものを増やすべく、人生初のギャンブルをしてみたいと思います。まあ、どうせ無くなってもいいお金ですし、増えたらラッキーくらいの気持ちで行きますよ。これが、普通のギャンブラーとは違う私の考え方です(こういう人が勝つまでやり続けるというバカになるんですよ)。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うー……」
結論から言いましょう。大 敗 北 で す !
まあ、世の中そんな甘くないですよね。でも、ここまで戦ったのなら、せめて1回くらいは勝っておきたいです。そんな考えを持つと、ギャンブルにのめり込んでしまうっていうのは分かっているんですけど……ええ、分かっていますとも。
ヨミ「お主、弱いな」
「ストレートに言わないでくださいー!大きな男の人がたくさんいて緊張しただけですぅー!」
ヨミ「そうかそうか。なら、周りに誰もいなければ勝てたと言うんじゃな」
「うっ、そ、そうに決まってます!」
ヨミ「ハッハッハっ」
今、すごいバカにされた感じで嘲笑れた気がします……。
ヨミ「お主はギャンブルというものが何であるかを、まーったくもって理解しておらんようじゃな」
「むぅ。そこまで言うのなら、ヨミさんがやってみてくださいよ!」
ヨミ「ふむ。まあいいじゃろう。傍から見とるだけってのもつまらんしのう」
そう言うと、ヨミさんは適当に1つの席に座ります。
「おう、カモが来たな」
ヨミ「どっちがカモになるかは、これから決めようではないか」
どうやら、ヨミさんは対人戦のポーカーを仕掛けるつもりらしいです。
「嬢ちゃん、金は持ってんのか?」
ヨミ「持っておるぞよ」
多分、魔法の一種なのでしょう。ヨミさんが何もないところから、ずっしりと重みを感じる袋を取り出します。
「こ、こいつは……」
その中身を見た男の人が、感心したような声を上げるので、多分、あの中身は全て金貨なのだろうと予想します。
ヨミ「チマチマやるのは怠くてつまらん。どうせなら、互いの全資産を賭けて勝負してみんか?もちろん、全資産とは言っても、ここにあるだけの金じゃが」
「ふんっ。その言葉、後悔しねぇようにな!」
男の人はなんの躊躇いもなくヨミさんの挑戦を受け取りました。そして、賭け金としてなのか、ヨミさんと同じくらいに重みを感じる袋を机の上にドンッと起きました。
(ヨミさん。勝てるんですか?)
ヨミ「まあ見ておれ」
やけに自信満々ですね。何か手があるのでしょうか?
2人は慣れた手つきで場にあるカードを引き、吟味するように互いを見つめ合います。ポーカーのルールなんてほとんど分からないんですけど、確か手札をなるべく同じ数字でそろえた方が勝ちなんですよね?あとは、なんか特殊な組み合わせがあるとかなんとか。
金!酒!女!その三大謳い文句が合言葉のクズ男!モブ!正直、名前付けようか一瞬悩んだけど、今後登場する予定のねぇ奴に名前付けるのは勿体ねぇ!と作者に言われたクズ男!対する挑戦者は、この世界についての何かを知り、時々ドジを踏むよく分からんヒロイン!ツクヨミ!果たして、勝負の行方とは!
ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわ……
って、急になんですかこのナレーション!なんで急にカ○ジ始めてるんですか!
ヨミ「変えるか、お主」
「そういうてめえはいいのかよ」
ヨミ「......」
ヨミさんは静かにカードを3枚交換しました。それを見た男の人も、2枚交換します。
ヨミ「好きなだけ交換してよいぞ」
「へんっ、これで十分だ」
互いに準備ヨシっって感じですね。
「全資産賭けたこと後悔すんなよ!フルハウス!」
男の方が出した手札は、5,5,5,3,3と、同じ数字の組み合わせが2組出来ていました。フルハウスってなんなんですかね?強いんですかね。
クズ男が出した手札は脅威のフルハウス!しかし、この世の神がこれしきのことで負けるはずがない!
ざわ……
ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわざわ……
ヨミ「......はぁ」
なぜかため息を吐いてからヨミさんが手札を公開します。中身は、A,10,J,Q,Kと、全くもって揃っていません。あ、全部スペードってところだけは同じですね。でも、これはヨミさんの負け?と私は思いましたが、それは違うらしく、男の人が顔から血の気を引いて呆然としていました。
「う、嘘だろ......」
ヨミ「約束通り、これは全部貰っていくぞ」
私が使い果たした金貨の30倍くらいはありそうな金貨袋を何もない空間へと置き、ヨミさんはさっさとこの場を後にしてしまいました。私も呆然とはしましたが、慌てて後を追いかけます。
「どうやったんですか?」
ヨミ「いいかゼラ。世の中にギャンブルというものは存在せん。ズルいかどうかが全てを分ける」
「......?」
正直、何を言っているのかが全然分かりません。けど、とりあえずヨミさんは凄いってことでいいですかね?
ヨミ「ふむ、夕暮れまでにはまだ時間があるのう。少し、軍資金を増やしておくか」
その後、ヨミさんはあらゆるところに勝負を持ち掛け、全財産を賭けに、どんどん勝負に勝って資金を増やしていきました。あんな口ぶりで話していたくらいですし、やはりこういうことに慣れてるんですかね。知りませんけど、少なくとも、下手な私よりかは”ここ”を知っているのでしょう。
若干13歳の見た目ながらも運ゲーを制覇したツクヨミ!果たして、彼女の運は、本当に運なのか!?ありとあらゆるギャンブルを知り尽くした少女の戦いが今!今!始まる!
だから、何なんですかこれ!なんでこんなにカ○ジに影響受けてるんですか!立木○彦出てきますよ!?出てきちゃいますよ!?
……
……
……
それから、何戦も連勝を重ねた後の出来事です。
ヨミ「そろそろ最後にするか」
あれだけ荒稼ぎしたにも関わらず、ヨミさんは嬉しさとか誇らしさとかいったものを一切表に出しません。楽しんでるんですかね?
で、最後といって挑む勝負は『クラップス』と呼ばれる、2個のサイコロを投げて出た目で競う賭け事です。相手は、このカジノを仕切るディーラーと呼ばれる人。仮面で顔を隠してはいますが、ただならぬオーラを感じます。
ヨミ「掛け金は全額。これ以外は認めん」
「ほう、強気ですね」
ヨミ「今日だけで30連勝じゃからな」
あぁ、そんなに戦ってたんですか。私は5戦で諦めたのに。
「あの嬢ちゃん可哀そうだな」
そうそう、いつの間にか、この勝負には結構な見学人が来ていまして、私のすぐ隣に立つ筋肉質な男の人がそう言います。
「あのディーラー相手に全額賭けるたぁ、破産するつもりかよ」
相変わらずよく分かりませんけど、ただのサイコロゲームでヨミさんが負けるんですかね。
まあ、私が悩んでたって、時間は勝手に過ぎていくため、まもなく勝負が始まります。勝つのはヨミさんか、それともディーラーか。緊張が走ります。
このカジノを制し、ギャンブルに愛され続けた男!だが、名付けは勿体ないと適当にディーラーで呼ばれてしまった哀れな男!そんな男が、本日相手にするのは30連勝を重ねてきた少女!ツクヨミ!最後の対決は2個のサイコロを振って出た出目の合計で競うクラップス!戦略など存在しない戦いで、果たしてツクヨミはどのようにして勝つというのか!はたまた、ディーラーはどのようにして守るというのか!
ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ……
ざわざわざわざわざわざわざわざわ……
いや、もう何もツッコミません……
「それではそうぞ。振ってください」
ディーラーがニヤッと笑ったのを、私は見逃しませんでした。直後、微量のマナの気配を感じ、もしやインチキでこの人は勝ち続けているのでは?と私は気づきました。しかし、今のは勝負以外に気を遣えるからこそ気づけた若干の変化。ヨミさんが読み取れているとは思えません。ヨミだけに......
ヨミ(グランフィールド・封魔)
サイコロを振る直前、ヨミさんがボソッと何かを呟いていました。ぐらん、ふぃーるど?何ですかね。
「......そ、そんな......」
勝者!絶対的な運の良さを見せた少女!いや、絶対的なインチキを見せた少女ツクヨミ!これにて、全戦全勝であった無敗伝説ディーラーに、初の敗北が下る!
私が勝負に大して集中していないうちに、どうやら賭けはヨミさんの勝ちで終わったみたいです。
サイコロの合計は7。そういえば、ディーラーがなんか説明してましたね。この数字が出たらうんたらこうたらって。
「な、何もんなんだ......この嬢ちゃん」
「ありえねえ......」
「このカジノ設立以来、一回も負けたことがねえボスが負けるなんてよ......」
「「「 そんなのありかよ...... 」」」
皆さんが口々に何かを言っていますが、相変わらずヨミさんは眉1つ動かしませんね~。これが当たり前なんでしょう。それにしても、やっぱり凄い人です。この人を仲間にしてよかったと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
ヨミ「はぁ……また船か……」
「朝から大分どんよりですね」
昨日は結構どころかかなり凄いものを見せてもらいましたが、船を嫌うこの姿を見ていると、「ああ、この人もちゃんと人間なんだな」と、少し安心します。
さてさて、ラウスたちは十分すぎるくらいに準備は整えたと昨日の夜に言っていましたし、これから約6日間の船旅の始まりです。……4日で死にかけてた人がいましたけど、大丈夫ですかね?
ラウス「おーい、ガキ2人ー。出発するから乗れー」
まあ、四の五の言っても、船に乗らなければならないという話は絶対に変わらないことです。ここは潔く、6日間を我慢してもらいましょう。
ヨミ「あー、鬱になる~……」
乗り出す前から若干の船酔いを見せるヨミさん。どんだけ弱いんですか……そういう人間アピール要らないと思いますよ?
「あ、見つけたぞゴルァ!」
ヨミさんが乗り込んで、私も後に続こうとした時でした。突然、後ろから男の人の大きな声が聞こえました。なんだろう?と思って後ろを見ると、昨日、カジノでヨミさんが相手をしていた人たちが群を作ってこちらに向かってきていました。なんだか、すごい鬼の形相をしているように見えます。
やはりバレた!いや、バレた!バレてしまったのなら仕方ない!全戦全勝のツクヨミは、とんでもないインチキ使い!しかし!ギャンブルなんてインチキをしてなんぼのもの!負ける方が悪い!
このナレーション、今日も着いてくるんですか!?
ヨミ「いかんな。まさか、こんなにも早くバレるとは……」
「バレる?」
とりあえず、私は船に乗り込み、ヨミさんがボソッと呟いたことを訊ねます。
ヨミ「いいかゼラ。世の中、真面目に生きとるやつの方が損をする。そして、ズルをするヤツらもな」
「……?」
ヨミ「船を出発させろー!今すぐにじゃ!」
船内では、きっとラウスたちが疑問符を浮かべて話し合ったのでしょうが、ヨミさんの指示から僅か30秒ほどで船は発進しました。ギリギリ、あの男の人たちが追いつくことはありませんでした。
「あのー、ヨミさんどういう事なんですか?」
ヨミ「簡単な話、妾はあのカジノで盛大にズルを働いておったのおぇ……」
ああ、もうダメみたいですね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そんなこんなで、旅のちょっとした休憩は終わりです。いやー、ヨミさん凄いですねー。ズルがどうたらこうたらと言っていましたが、要はすごい人ってことですよね?というか、カ○ジがうるさかったんですけど……
さて、次の物語は、いよいよシージュアルです。約1ヶ月と半月ぶりに帰ってくる我らがトレジャーハンターの本部。グランストーンを取り戻すため、ラウスたちは各地を奔走しますが、やはりというかなんというか、『影』に立ち向かおうと考える者は少なく、またしても苦悩を強いられてしまいます。どうなる?トレジャーハンター。どうする?ゼラ。では次回、またお会いしましょう。
まあ、そんなヨミさんにとっては地獄と思える船旅も、4日目を過ぎたあたりで一旦終了。燃料や食料の補給と、軽い情報収集のため、私たちは龍と契約を結んだという伝説が語られる国、アグリア王国へと降り立ちました。
で、話はかなり飛ぶのですが、私たちは今、カジノと呼ばれる遊戯施設に来ています。……やっぱ、説明しないと分かりませんよね?というわけで、軽く回想ファンファンファン……
ラウス「んじゃ、俺らは食料と燃料確保してくるから、お前らガキ2人は好き勝手してていいぞ。ただし、夕方までには戻ってこいよ」
相変わらず子供扱いをしてくるラウスですが、なぜ、ヨミさんのことも子供扱いしたのでしょうか?どこからどう見ても、立派な大人だというのに……
……
……いや、私が大人だと感じているのは、内面(それも一部)だけでしたね。疑問の余地無し。
「ヨーミさん。少し、この街を歩きましょうよ。地べたに座ってたら、折角の着物が台無しですよ?」
ヨミ「おぇ……お主が気にすることではない」
「そうですかー」
気にしなくていいと言われたので、私はヨミさんを片腕に担ぎ、とりあえずどっか適当なところにでも行こうと歩き始めました。今気づいたんですけど、ヨミさんってすごい軽い人だったんですね。
で、もうこの間の部分なんて、適当にヨミさんの愚痴を聞きながら歩いていただけなので、バッサリカットしまして、繁華街と思わしきところにまでやって来た場面。
「見てくださいヨミさん!人が、人がゴミのようですよ!」
ヨミ「ああ、分かったから降ろせ。もう大丈夫じゃ」
断る理由も特にないので、雑に降ろします。
「わー、すごい街ですねー。人がいっぱいで、すごい華やかです!」
ヨミ「ギャーギャーギャーギャー騒ぐな。子供かお主」
「それ、ヨミさんにだけは言われたくないです」
ヨミ「どういう意味じゃ」
「それはーー」
私が言うより先に、ヨミさんがギロっと睨みつけてきたので、思わず口を閉じてしまいました。なんか、言ったら殺されそうな気がします。
ヨミ「で、金なんてロクに渡されてもないというのに、お主はここに来てどうするつもりだったのじゃ?」
「そりゃ、無いのなら増やすまでですよね?」
ヨミ「……?」
私は、この華やかな街でも特に華やかになっている大きな建物の前にまで足を運びました。
ヨミ「……立派なギャンブラーではないか。お主」
……と、いうわけで、私は無いものを増やすべく、人生初のギャンブルをしてみたいと思います。まあ、どうせ無くなってもいいお金ですし、増えたらラッキーくらいの気持ちで行きますよ。これが、普通のギャンブラーとは違う私の考え方です(こういう人が勝つまでやり続けるというバカになるんですよ)。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うー……」
結論から言いましょう。大 敗 北 で す !
まあ、世の中そんな甘くないですよね。でも、ここまで戦ったのなら、せめて1回くらいは勝っておきたいです。そんな考えを持つと、ギャンブルにのめり込んでしまうっていうのは分かっているんですけど……ええ、分かっていますとも。
ヨミ「お主、弱いな」
「ストレートに言わないでくださいー!大きな男の人がたくさんいて緊張しただけですぅー!」
ヨミ「そうかそうか。なら、周りに誰もいなければ勝てたと言うんじゃな」
「うっ、そ、そうに決まってます!」
ヨミ「ハッハッハっ」
今、すごいバカにされた感じで嘲笑れた気がします……。
ヨミ「お主はギャンブルというものが何であるかを、まーったくもって理解しておらんようじゃな」
「むぅ。そこまで言うのなら、ヨミさんがやってみてくださいよ!」
ヨミ「ふむ。まあいいじゃろう。傍から見とるだけってのもつまらんしのう」
そう言うと、ヨミさんは適当に1つの席に座ります。
「おう、カモが来たな」
ヨミ「どっちがカモになるかは、これから決めようではないか」
どうやら、ヨミさんは対人戦のポーカーを仕掛けるつもりらしいです。
「嬢ちゃん、金は持ってんのか?」
ヨミ「持っておるぞよ」
多分、魔法の一種なのでしょう。ヨミさんが何もないところから、ずっしりと重みを感じる袋を取り出します。
「こ、こいつは……」
その中身を見た男の人が、感心したような声を上げるので、多分、あの中身は全て金貨なのだろうと予想します。
ヨミ「チマチマやるのは怠くてつまらん。どうせなら、互いの全資産を賭けて勝負してみんか?もちろん、全資産とは言っても、ここにあるだけの金じゃが」
「ふんっ。その言葉、後悔しねぇようにな!」
男の人はなんの躊躇いもなくヨミさんの挑戦を受け取りました。そして、賭け金としてなのか、ヨミさんと同じくらいに重みを感じる袋を机の上にドンッと起きました。
(ヨミさん。勝てるんですか?)
ヨミ「まあ見ておれ」
やけに自信満々ですね。何か手があるのでしょうか?
2人は慣れた手つきで場にあるカードを引き、吟味するように互いを見つめ合います。ポーカーのルールなんてほとんど分からないんですけど、確か手札をなるべく同じ数字でそろえた方が勝ちなんですよね?あとは、なんか特殊な組み合わせがあるとかなんとか。
金!酒!女!その三大謳い文句が合言葉のクズ男!モブ!正直、名前付けようか一瞬悩んだけど、今後登場する予定のねぇ奴に名前付けるのは勿体ねぇ!と作者に言われたクズ男!対する挑戦者は、この世界についての何かを知り、時々ドジを踏むよく分からんヒロイン!ツクヨミ!果たして、勝負の行方とは!
ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわ……
って、急になんですかこのナレーション!なんで急にカ○ジ始めてるんですか!
ヨミ「変えるか、お主」
「そういうてめえはいいのかよ」
ヨミ「......」
ヨミさんは静かにカードを3枚交換しました。それを見た男の人も、2枚交換します。
ヨミ「好きなだけ交換してよいぞ」
「へんっ、これで十分だ」
互いに準備ヨシっって感じですね。
「全資産賭けたこと後悔すんなよ!フルハウス!」
男の方が出した手札は、5,5,5,3,3と、同じ数字の組み合わせが2組出来ていました。フルハウスってなんなんですかね?強いんですかね。
クズ男が出した手札は脅威のフルハウス!しかし、この世の神がこれしきのことで負けるはずがない!
ざわ……
ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわざわ……
ヨミ「......はぁ」
なぜかため息を吐いてからヨミさんが手札を公開します。中身は、A,10,J,Q,Kと、全くもって揃っていません。あ、全部スペードってところだけは同じですね。でも、これはヨミさんの負け?と私は思いましたが、それは違うらしく、男の人が顔から血の気を引いて呆然としていました。
「う、嘘だろ......」
ヨミ「約束通り、これは全部貰っていくぞ」
私が使い果たした金貨の30倍くらいはありそうな金貨袋を何もない空間へと置き、ヨミさんはさっさとこの場を後にしてしまいました。私も呆然とはしましたが、慌てて後を追いかけます。
「どうやったんですか?」
ヨミ「いいかゼラ。世の中にギャンブルというものは存在せん。ズルいかどうかが全てを分ける」
「......?」
正直、何を言っているのかが全然分かりません。けど、とりあえずヨミさんは凄いってことでいいですかね?
ヨミ「ふむ、夕暮れまでにはまだ時間があるのう。少し、軍資金を増やしておくか」
その後、ヨミさんはあらゆるところに勝負を持ち掛け、全財産を賭けに、どんどん勝負に勝って資金を増やしていきました。あんな口ぶりで話していたくらいですし、やはりこういうことに慣れてるんですかね。知りませんけど、少なくとも、下手な私よりかは”ここ”を知っているのでしょう。
若干13歳の見た目ながらも運ゲーを制覇したツクヨミ!果たして、彼女の運は、本当に運なのか!?ありとあらゆるギャンブルを知り尽くした少女の戦いが今!今!始まる!
だから、何なんですかこれ!なんでこんなにカ○ジに影響受けてるんですか!立木○彦出てきますよ!?出てきちゃいますよ!?
……
……
……
それから、何戦も連勝を重ねた後の出来事です。
ヨミ「そろそろ最後にするか」
あれだけ荒稼ぎしたにも関わらず、ヨミさんは嬉しさとか誇らしさとかいったものを一切表に出しません。楽しんでるんですかね?
で、最後といって挑む勝負は『クラップス』と呼ばれる、2個のサイコロを投げて出た目で競う賭け事です。相手は、このカジノを仕切るディーラーと呼ばれる人。仮面で顔を隠してはいますが、ただならぬオーラを感じます。
ヨミ「掛け金は全額。これ以外は認めん」
「ほう、強気ですね」
ヨミ「今日だけで30連勝じゃからな」
あぁ、そんなに戦ってたんですか。私は5戦で諦めたのに。
「あの嬢ちゃん可哀そうだな」
そうそう、いつの間にか、この勝負には結構な見学人が来ていまして、私のすぐ隣に立つ筋肉質な男の人がそう言います。
「あのディーラー相手に全額賭けるたぁ、破産するつもりかよ」
相変わらずよく分かりませんけど、ただのサイコロゲームでヨミさんが負けるんですかね。
まあ、私が悩んでたって、時間は勝手に過ぎていくため、まもなく勝負が始まります。勝つのはヨミさんか、それともディーラーか。緊張が走ります。
このカジノを制し、ギャンブルに愛され続けた男!だが、名付けは勿体ないと適当にディーラーで呼ばれてしまった哀れな男!そんな男が、本日相手にするのは30連勝を重ねてきた少女!ツクヨミ!最後の対決は2個のサイコロを振って出た出目の合計で競うクラップス!戦略など存在しない戦いで、果たしてツクヨミはどのようにして勝つというのか!はたまた、ディーラーはどのようにして守るというのか!
ざわ……
ざわ……
ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ…… ざわ……
ざわ……
ざわざわざわざわざわざわざわざわ……
いや、もう何もツッコミません……
「それではそうぞ。振ってください」
ディーラーがニヤッと笑ったのを、私は見逃しませんでした。直後、微量のマナの気配を感じ、もしやインチキでこの人は勝ち続けているのでは?と私は気づきました。しかし、今のは勝負以外に気を遣えるからこそ気づけた若干の変化。ヨミさんが読み取れているとは思えません。ヨミだけに......
ヨミ(グランフィールド・封魔)
サイコロを振る直前、ヨミさんがボソッと何かを呟いていました。ぐらん、ふぃーるど?何ですかね。
「......そ、そんな......」
勝者!絶対的な運の良さを見せた少女!いや、絶対的なインチキを見せた少女ツクヨミ!これにて、全戦全勝であった無敗伝説ディーラーに、初の敗北が下る!
私が勝負に大して集中していないうちに、どうやら賭けはヨミさんの勝ちで終わったみたいです。
サイコロの合計は7。そういえば、ディーラーがなんか説明してましたね。この数字が出たらうんたらこうたらって。
「な、何もんなんだ......この嬢ちゃん」
「ありえねえ......」
「このカジノ設立以来、一回も負けたことがねえボスが負けるなんてよ......」
「「「 そんなのありかよ...... 」」」
皆さんが口々に何かを言っていますが、相変わらずヨミさんは眉1つ動かしませんね~。これが当たり前なんでしょう。それにしても、やっぱり凄い人です。この人を仲間にしてよかったと思います。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
ヨミ「はぁ……また船か……」
「朝から大分どんよりですね」
昨日は結構どころかかなり凄いものを見せてもらいましたが、船を嫌うこの姿を見ていると、「ああ、この人もちゃんと人間なんだな」と、少し安心します。
さてさて、ラウスたちは十分すぎるくらいに準備は整えたと昨日の夜に言っていましたし、これから約6日間の船旅の始まりです。……4日で死にかけてた人がいましたけど、大丈夫ですかね?
ラウス「おーい、ガキ2人ー。出発するから乗れー」
まあ、四の五の言っても、船に乗らなければならないという話は絶対に変わらないことです。ここは潔く、6日間を我慢してもらいましょう。
ヨミ「あー、鬱になる~……」
乗り出す前から若干の船酔いを見せるヨミさん。どんだけ弱いんですか……そういう人間アピール要らないと思いますよ?
「あ、見つけたぞゴルァ!」
ヨミさんが乗り込んで、私も後に続こうとした時でした。突然、後ろから男の人の大きな声が聞こえました。なんだろう?と思って後ろを見ると、昨日、カジノでヨミさんが相手をしていた人たちが群を作ってこちらに向かってきていました。なんだか、すごい鬼の形相をしているように見えます。
やはりバレた!いや、バレた!バレてしまったのなら仕方ない!全戦全勝のツクヨミは、とんでもないインチキ使い!しかし!ギャンブルなんてインチキをしてなんぼのもの!負ける方が悪い!
このナレーション、今日も着いてくるんですか!?
ヨミ「いかんな。まさか、こんなにも早くバレるとは……」
「バレる?」
とりあえず、私は船に乗り込み、ヨミさんがボソッと呟いたことを訊ねます。
ヨミ「いいかゼラ。世の中、真面目に生きとるやつの方が損をする。そして、ズルをするヤツらもな」
「……?」
ヨミ「船を出発させろー!今すぐにじゃ!」
船内では、きっとラウスたちが疑問符を浮かべて話し合ったのでしょうが、ヨミさんの指示から僅か30秒ほどで船は発進しました。ギリギリ、あの男の人たちが追いつくことはありませんでした。
「あのー、ヨミさんどういう事なんですか?」
ヨミ「簡単な話、妾はあのカジノで盛大にズルを働いておったのおぇ……」
ああ、もうダメみたいですね。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そんなこんなで、旅のちょっとした休憩は終わりです。いやー、ヨミさん凄いですねー。ズルがどうたらこうたらと言っていましたが、要はすごい人ってことですよね?というか、カ○ジがうるさかったんですけど……
さて、次の物語は、いよいよシージュアルです。約1ヶ月と半月ぶりに帰ってくる我らがトレジャーハンターの本部。グランストーンを取り戻すため、ラウスたちは各地を奔走しますが、やはりというかなんというか、『影』に立ち向かおうと考える者は少なく、またしても苦悩を強いられてしまいます。どうなる?トレジャーハンター。どうする?ゼラ。では次回、またお会いしましょう。
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驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
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クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
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加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
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王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
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その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
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断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
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断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
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処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
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すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
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