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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】
第0章11 【新たな仲間】
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「い、いきなり何を言い出すのじゃお主!仲間になれ?なんで?妾にお主らを相手にする時間などないぞ」
「そんなこと言わずに話だけでも聞いてください」
私は恥を捨てて土下座で頼み込みました。
見ず知らずの相手ではありますが、私はこの人に可能性を感じたのです。きっと、この人ならば影を相手に出来る。そんな、絶対的な自信が。
「や、やめろ!お主!こっちが恥ずかしくなるわい!だ、第一に、お主、名を名乗れ!無礼にもほどがあるぞ!」
「私、ゼラといいます。実は私たち、グランストーンというお宝目指して旅をしているのですが、その、それを持っている相手が強大過ぎて太刀打ちできないんです!」
「だからなんじゃ、妾には関係のない話じゃ」
「あなたの力を貸してほしいんです!お願いします!どうか、どうかこの通りに!」
私は嘘泣きしてでもこの人に話を聞いてもらおうと涙を溜めてみました。ついでに、土下座の姿勢から素早く相手の足にまとわりつくことも忘れずに。あ、これも本で読んだ展開の1つです。
「わ、分かったから泣くなお主!話だけでも聞いてやるから!」
作戦成功。大袈裟に慌てられたような気がしますが、そんなことは気にせず、私はこっそりとラウスたちの方にサインを向けました。しかし、彼らは気づいていないのか、ポカンとしているだけです。むぅ、折角チャンスを掴めたのですから、善は急げですよ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「と、いうわけなんです」
「......」
私は、所々をラウスたちに補ってもらいながら、この人に事の経緯を説明しました。
「......ダメ......ですか?」
「......」
さっきはあんなに叫び声を上げていたというのに、宿に戻ってからはずーっと黙ったままです。やっぱり、無理矢理はダメだったのでしょうか?いやでも、私はこの人に可能性を感じたわけですし、今を逃せば次はないと思いますしで......
「......」
ダメだ。この人はハブててるわけじゃない。なんか、こう、人と話せないタイプ(?)なのだ。多分......。
ラウス「おいゼラ。どうすんだ?この子。役に立つかもなんて言われて、とりあえず口車に乗ってやったが、ずーっと黙りじゃねえかよ」
「こんな予定じゃなかったんですけどね」
シャウト「逆に聞くが、どんな予定だったんだ」
そりゃ、もう、この人がさっき見せた神業で敵をフルボッコにする予定だったんですよ。今の状態じゃ難しそうですけど......。
せめて、一言くらい話してくれれば何とかなりそうな気がするんですけどね。
ラウス「そういや、この子の名前まだ聞いてなかったな。おい、お前。なんていうんだ?」
「......人に聞くより先に自らが名乗る。人間の常識じゃろうが」
あ、やっと喋ってくれました。
ラウス「そうだな。俺の名前はラウス。聞いての通り、トレジャーハンターだ」
モルガン「俺の名前はモルガン。そこの赤髪に同じくトレジャーハンターだ」
シャウト「シャウトだ。以下同文」
「私の名前はゼラです。今はこの人たちと旅をする旅人です」
「......」
「名乗らせるだけ名乗らせておいて、自分は何もなしですか」
「元々お主らに無理矢理拉致された身じゃ。名乗る義務もない」
ラウス「ダメみたいだな」
ですね......。可能性を感じたまでは良かったんですけど、そこから先にとんでもない障壁が立ち塞がっていました。まさか、人と会話ができないような子供だったとは......。
「お主、聞こえておるぞ」
「何がですか?」
「......いや、何でもない」
気になる言い方ですね。言いたいことがあるならハッキリ言ってしまえばいいのに。
「......はぁ。妾の名はフェノ、ツクヨミ。見ての通り、ただの女の子じゃ」
「ツクヨミ?なんだか偉そうな名前ですねー」
ツクヨミ「偉そうな名前ってなんじゃ偉そうな名前って」
「うーん?まぁ、どうでもいいです。これからはヨミさんって呼びます」
ヨミ「......はぁ。めんどくさい。で、賊共を討伐したいとかいう話じゃったな」
ラウス「......あぁ。最悪、グランストーンだけでも取り返せたらそれでいい」
あまりにも急な態度の変化で、私たちの脳は一瞬だけ鈍ってしまいました。
ヨミ「ちっ、こんなところにも彼奴の名前が......めんどくさい」
「あの......どうかしました?」
ヨミ「仕方ない。めんどうじゃが、お主らの口車に乗ってやるわい」
渋々諦めたように言われましたが、これは勧誘成功ということでいいですよね?
ヨミ「ただし、妾のあの力だけを頼りにしておるのならば、それはとんだ見当違いも甚だしい話じゃ」
「......?どういうことですか?」
ヨミ「自分で言うのもアレじゃが、妾はお主らが想像しとる何十倍も強い。じゃが、そんな妾にも弱点はある」
「どんな?」
自分は強いなんてハッキリ言うってことは、余程腕に自信があるのか、ただの痛い子なのかを考えましたが、とりあえず話を進めてもらおうと続きを促します。
ヨミ「......妾は、多分見た方が早いじゃろうが、極度の体力不足じゃ。1分戦えたら十分な方と考えておくれ」
シャウト「長期戦には向かないというわけか」
ヨミ「うむ」
モルガン「どうする?敵の規模から考えて、長期戦は必然かと思うが」
ラウス「とりあえず、一旦ババアのところに帰って、改めて作戦練ろうぜ」
シャウト「それが1番だな」
と、いうわけで、私たちはいったんここで解散し、明日に備えて早めに就寝しようということになりました。
「ヨーミさん!寝るとこないなら一緒に寝ましょう!」
どうせ、家がそこらへんにあると思うのですが、私は少しでも交流を深めようと、まだ宿の中で考え事をしていたヨミさんのところに駆け寄りました。
ヨミ「結構じゃ。妾にはちゃんと寝床がある」
ですよねー。
ヨミ「じゃあな。覚えておったら、ちゃんとこの宿の前に現れてやるから拾っておくれ」
「はいはーい」
......
......
......気のせいですかね?今、ヨミさんが何かに吸い込まれるようにして消えた気がするんですけど。
「やっぱり、私の見込みに狂いはなし?ってことですかね」
不思議な人ですね~......。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
約束通り宿の前に現れたヨミさんを連れ、早速馬車に乗り込もう!……としたのですが……
ヨミ「嫌じゃ嫌じゃ!絶対にあんなのには乗りとうないわ!」
と、なぜか駄々をこねるヨミさん。ただの馬車に見えますし、この国にいるのであれば何度も見てるはずの乗り物だと思うんですけどね~。何が嫌なんでしょう?
シャウト「乗り物が嫌いなタイプか……」
ラウス「つっても、俺らこの後船だぜ?どうすんだ?歩いてシージュアルまで帰るのか?」
ヨミ「ふ、船じゃと……!」
なんか、あんなに強そうな人に見えたのに、今ではただの子供に見えてしまいますね。乗り物が嫌いってなんですか?怖いんですか?そうなんですか?
ヨミ「ふ、ふざけるでないぞ!こうなったら乗ってやる!どこまででも連れて行くがよいぞ!」
と、なぜか半ギレの状態で言われ、まあここでグズってても仕方ないので、私たちは待たせていた馬車に乗り込み、港にまで向かいました。無事に辿り着けたら良かったんですけどね。
「……大丈夫……ですか?」
ヨミ「ああ、だいろうふだいろうふ」
そう。ヨミさんが乗り物を散々に嫌っていた理由。それは、この有様が原因だったのです。所謂、乗り物酔いっていうやつですかね?まあ、そんなこんなで、移動中常にヨミさんが気持ち悪そうにしていたのは言うまでもないことです。
ヨミ「おぇぇぇぇ……」
ラウス「ゼラ、一応再確認だが、こいつ強いんだよな?」
「……多分」
「「「 不安だ 」」」
「私もです……」
ヨミ「ふ、ふはけるへないそ、お主ら……」
ふざけてるのはどちらですか。全く……。
可能性を感じたまでは良かったですけど、本当にそこからがダメでしたね。運を使い果たしたのでしょうか?知りませんけど。
そんなこんなで、思った以上に時間をかけての移動になってしまった道のりを終え、私たちは船がある港にまで辿り着きました。4日くらい放置してたから、ラウスたちにはちょっとした不安があったらしいですが、船は荒らされた形跡もなく、ましてや何かを盗まれたーー盗めるようなものはないけどーーこともなく、すぐにでも出発できるよう準備は整っていた。
ラウス「どうする?すぐにでも出発できるが……」
「……ヨミさん?」
ヨミ「……………………」
完全に放心状態。心ここに在らずといった感じです。なんかこう、あしたの○ョーみたいに真っ白な灰になるまで燃え尽きちゃってます。
「どうします?」
ラウス「それ聞きたいの俺の方なの。どうすんだよこの有様。シージュアルまで、こっからじゃ少なくとも10日はかかるぞ。まあ、どっか途中の国で休憩がてらババアに連絡入れるけども」
「そうですね~。まあ、何だかんだでここまで吐かずに来れたわけですし、途中で休憩を挟むのなら大丈夫じゃないんですかね?」
ラウス「……まあ、お前に全て任せるけどよ」
それだけ言い残して、ラウスは船へと乗り込んで行きました。
「さて、ヨミさん。私たちも行きましょう?」
ヨミ「…………」
なんか、立ち上がる気力もなさそうですね。仕方ありません。私がヨミさんをおんぶにだっこして運びましょう。
ヨミ「お、おんぶだけでお願い……するのじゃ……」
「……?」
気のせいですかね。私、口からおんぶにだっこなんて言った覚えがないんですけど。まあ、気づかないうちに独り言してる癖もありますし、なんか聞かれちゃったのでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「…………おぇ」
気持ち悪い……。
なんでこんな事になったんじゃろうな。あまりの勢いに思わず口車に乗ってやるなんて言ってしもうたが、自分でもなんでこんなことが口から出てしまったのかが分からない。
人間に関わるとろくな事がない。そんなこと、この世界に降りてからの数百年でよく理解できておるのにのう。……まあ、暇潰しには丁度いい話なのかもしれんな。
ゼラ「ヨーミさん!大丈夫ですかー!」
「ばふっ!」
気持ち悪い状況が続く中、物凄く元気いっぱいな少女が妾目掛けて飛び込んでくる。
「や、やめろ~……きも、気持ち悪い……」
抵抗することも叶わず、そのまま妾の体は妾の意思に反して倒れてしまった。創界神の野郎……もっとマシな体を寄越せ……なんて言っても、これデフォルトじゃから変えようがないんじゃよな……
ゼラ「あれ?ヨミさん?おーい、ヨミさーん!」
妾の意識は、そこで完全に途絶えてしまった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
うーん?今回特にこれといった冒険をしませんでしたねー。まあ、兵を借りようとしたら全然借りれず、最後の最後にしれっと大事な人を仲間にしたくらいですからねー。
さて、お次に訪れる国は、古来より、龍と契約を結んだという伝説が語り継がれる国、『アグリア王国』です。
ただ休憩と船の整備のためだけに訪れた国。そこでは、波乱な展開が待っていたり待っていなかったり……。まともな戦闘能力のない私たち。一体どうなっちゃうんですかね?
「そんなこと言わずに話だけでも聞いてください」
私は恥を捨てて土下座で頼み込みました。
見ず知らずの相手ではありますが、私はこの人に可能性を感じたのです。きっと、この人ならば影を相手に出来る。そんな、絶対的な自信が。
「や、やめろ!お主!こっちが恥ずかしくなるわい!だ、第一に、お主、名を名乗れ!無礼にもほどがあるぞ!」
「私、ゼラといいます。実は私たち、グランストーンというお宝目指して旅をしているのですが、その、それを持っている相手が強大過ぎて太刀打ちできないんです!」
「だからなんじゃ、妾には関係のない話じゃ」
「あなたの力を貸してほしいんです!お願いします!どうか、どうかこの通りに!」
私は嘘泣きしてでもこの人に話を聞いてもらおうと涙を溜めてみました。ついでに、土下座の姿勢から素早く相手の足にまとわりつくことも忘れずに。あ、これも本で読んだ展開の1つです。
「わ、分かったから泣くなお主!話だけでも聞いてやるから!」
作戦成功。大袈裟に慌てられたような気がしますが、そんなことは気にせず、私はこっそりとラウスたちの方にサインを向けました。しかし、彼らは気づいていないのか、ポカンとしているだけです。むぅ、折角チャンスを掴めたのですから、善は急げですよ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「と、いうわけなんです」
「......」
私は、所々をラウスたちに補ってもらいながら、この人に事の経緯を説明しました。
「......ダメ......ですか?」
「......」
さっきはあんなに叫び声を上げていたというのに、宿に戻ってからはずーっと黙ったままです。やっぱり、無理矢理はダメだったのでしょうか?いやでも、私はこの人に可能性を感じたわけですし、今を逃せば次はないと思いますしで......
「......」
ダメだ。この人はハブててるわけじゃない。なんか、こう、人と話せないタイプ(?)なのだ。多分......。
ラウス「おいゼラ。どうすんだ?この子。役に立つかもなんて言われて、とりあえず口車に乗ってやったが、ずーっと黙りじゃねえかよ」
「こんな予定じゃなかったんですけどね」
シャウト「逆に聞くが、どんな予定だったんだ」
そりゃ、もう、この人がさっき見せた神業で敵をフルボッコにする予定だったんですよ。今の状態じゃ難しそうですけど......。
せめて、一言くらい話してくれれば何とかなりそうな気がするんですけどね。
ラウス「そういや、この子の名前まだ聞いてなかったな。おい、お前。なんていうんだ?」
「......人に聞くより先に自らが名乗る。人間の常識じゃろうが」
あ、やっと喋ってくれました。
ラウス「そうだな。俺の名前はラウス。聞いての通り、トレジャーハンターだ」
モルガン「俺の名前はモルガン。そこの赤髪に同じくトレジャーハンターだ」
シャウト「シャウトだ。以下同文」
「私の名前はゼラです。今はこの人たちと旅をする旅人です」
「......」
「名乗らせるだけ名乗らせておいて、自分は何もなしですか」
「元々お主らに無理矢理拉致された身じゃ。名乗る義務もない」
ラウス「ダメみたいだな」
ですね......。可能性を感じたまでは良かったんですけど、そこから先にとんでもない障壁が立ち塞がっていました。まさか、人と会話ができないような子供だったとは......。
「お主、聞こえておるぞ」
「何がですか?」
「......いや、何でもない」
気になる言い方ですね。言いたいことがあるならハッキリ言ってしまえばいいのに。
「......はぁ。妾の名はフェノ、ツクヨミ。見ての通り、ただの女の子じゃ」
「ツクヨミ?なんだか偉そうな名前ですねー」
ツクヨミ「偉そうな名前ってなんじゃ偉そうな名前って」
「うーん?まぁ、どうでもいいです。これからはヨミさんって呼びます」
ヨミ「......はぁ。めんどくさい。で、賊共を討伐したいとかいう話じゃったな」
ラウス「......あぁ。最悪、グランストーンだけでも取り返せたらそれでいい」
あまりにも急な態度の変化で、私たちの脳は一瞬だけ鈍ってしまいました。
ヨミ「ちっ、こんなところにも彼奴の名前が......めんどくさい」
「あの......どうかしました?」
ヨミ「仕方ない。めんどうじゃが、お主らの口車に乗ってやるわい」
渋々諦めたように言われましたが、これは勧誘成功ということでいいですよね?
ヨミ「ただし、妾のあの力だけを頼りにしておるのならば、それはとんだ見当違いも甚だしい話じゃ」
「......?どういうことですか?」
ヨミ「自分で言うのもアレじゃが、妾はお主らが想像しとる何十倍も強い。じゃが、そんな妾にも弱点はある」
「どんな?」
自分は強いなんてハッキリ言うってことは、余程腕に自信があるのか、ただの痛い子なのかを考えましたが、とりあえず話を進めてもらおうと続きを促します。
ヨミ「......妾は、多分見た方が早いじゃろうが、極度の体力不足じゃ。1分戦えたら十分な方と考えておくれ」
シャウト「長期戦には向かないというわけか」
ヨミ「うむ」
モルガン「どうする?敵の規模から考えて、長期戦は必然かと思うが」
ラウス「とりあえず、一旦ババアのところに帰って、改めて作戦練ろうぜ」
シャウト「それが1番だな」
と、いうわけで、私たちはいったんここで解散し、明日に備えて早めに就寝しようということになりました。
「ヨーミさん!寝るとこないなら一緒に寝ましょう!」
どうせ、家がそこらへんにあると思うのですが、私は少しでも交流を深めようと、まだ宿の中で考え事をしていたヨミさんのところに駆け寄りました。
ヨミ「結構じゃ。妾にはちゃんと寝床がある」
ですよねー。
ヨミ「じゃあな。覚えておったら、ちゃんとこの宿の前に現れてやるから拾っておくれ」
「はいはーい」
......
......
......気のせいですかね?今、ヨミさんが何かに吸い込まれるようにして消えた気がするんですけど。
「やっぱり、私の見込みに狂いはなし?ってことですかね」
不思議な人ですね~......。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
翌日。
約束通り宿の前に現れたヨミさんを連れ、早速馬車に乗り込もう!……としたのですが……
ヨミ「嫌じゃ嫌じゃ!絶対にあんなのには乗りとうないわ!」
と、なぜか駄々をこねるヨミさん。ただの馬車に見えますし、この国にいるのであれば何度も見てるはずの乗り物だと思うんですけどね~。何が嫌なんでしょう?
シャウト「乗り物が嫌いなタイプか……」
ラウス「つっても、俺らこの後船だぜ?どうすんだ?歩いてシージュアルまで帰るのか?」
ヨミ「ふ、船じゃと……!」
なんか、あんなに強そうな人に見えたのに、今ではただの子供に見えてしまいますね。乗り物が嫌いってなんですか?怖いんですか?そうなんですか?
ヨミ「ふ、ふざけるでないぞ!こうなったら乗ってやる!どこまででも連れて行くがよいぞ!」
と、なぜか半ギレの状態で言われ、まあここでグズってても仕方ないので、私たちは待たせていた馬車に乗り込み、港にまで向かいました。無事に辿り着けたら良かったんですけどね。
「……大丈夫……ですか?」
ヨミ「ああ、だいろうふだいろうふ」
そう。ヨミさんが乗り物を散々に嫌っていた理由。それは、この有様が原因だったのです。所謂、乗り物酔いっていうやつですかね?まあ、そんなこんなで、移動中常にヨミさんが気持ち悪そうにしていたのは言うまでもないことです。
ヨミ「おぇぇぇぇ……」
ラウス「ゼラ、一応再確認だが、こいつ強いんだよな?」
「……多分」
「「「 不安だ 」」」
「私もです……」
ヨミ「ふ、ふはけるへないそ、お主ら……」
ふざけてるのはどちらですか。全く……。
可能性を感じたまでは良かったですけど、本当にそこからがダメでしたね。運を使い果たしたのでしょうか?知りませんけど。
そんなこんなで、思った以上に時間をかけての移動になってしまった道のりを終え、私たちは船がある港にまで辿り着きました。4日くらい放置してたから、ラウスたちにはちょっとした不安があったらしいですが、船は荒らされた形跡もなく、ましてや何かを盗まれたーー盗めるようなものはないけどーーこともなく、すぐにでも出発できるよう準備は整っていた。
ラウス「どうする?すぐにでも出発できるが……」
「……ヨミさん?」
ヨミ「……………………」
完全に放心状態。心ここに在らずといった感じです。なんかこう、あしたの○ョーみたいに真っ白な灰になるまで燃え尽きちゃってます。
「どうします?」
ラウス「それ聞きたいの俺の方なの。どうすんだよこの有様。シージュアルまで、こっからじゃ少なくとも10日はかかるぞ。まあ、どっか途中の国で休憩がてらババアに連絡入れるけども」
「そうですね~。まあ、何だかんだでここまで吐かずに来れたわけですし、途中で休憩を挟むのなら大丈夫じゃないんですかね?」
ラウス「……まあ、お前に全て任せるけどよ」
それだけ言い残して、ラウスは船へと乗り込んで行きました。
「さて、ヨミさん。私たちも行きましょう?」
ヨミ「…………」
なんか、立ち上がる気力もなさそうですね。仕方ありません。私がヨミさんをおんぶにだっこして運びましょう。
ヨミ「お、おんぶだけでお願い……するのじゃ……」
「……?」
気のせいですかね。私、口からおんぶにだっこなんて言った覚えがないんですけど。まあ、気づかないうちに独り言してる癖もありますし、なんか聞かれちゃったのでしょう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「…………おぇ」
気持ち悪い……。
なんでこんな事になったんじゃろうな。あまりの勢いに思わず口車に乗ってやるなんて言ってしもうたが、自分でもなんでこんなことが口から出てしまったのかが分からない。
人間に関わるとろくな事がない。そんなこと、この世界に降りてからの数百年でよく理解できておるのにのう。……まあ、暇潰しには丁度いい話なのかもしれんな。
ゼラ「ヨーミさん!大丈夫ですかー!」
「ばふっ!」
気持ち悪い状況が続く中、物凄く元気いっぱいな少女が妾目掛けて飛び込んでくる。
「や、やめろ~……きも、気持ち悪い……」
抵抗することも叶わず、そのまま妾の体は妾の意思に反して倒れてしまった。創界神の野郎……もっとマシな体を寄越せ……なんて言っても、これデフォルトじゃから変えようがないんじゃよな……
ゼラ「あれ?ヨミさん?おーい、ヨミさーん!」
妾の意識は、そこで完全に途絶えてしまった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
うーん?今回特にこれといった冒険をしませんでしたねー。まあ、兵を借りようとしたら全然借りれず、最後の最後にしれっと大事な人を仲間にしたくらいですからねー。
さて、お次に訪れる国は、古来より、龍と契約を結んだという伝説が語り継がれる国、『アグリア王国』です。
ただ休憩と船の整備のためだけに訪れた国。そこでは、波乱な展開が待っていたり待っていなかったり……。まともな戦闘能力のない私たち。一体どうなっちゃうんですかね?
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