グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】

第0章14 【魔導士】

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 ババア……シエルマスターの死から1ヶ月が過ぎ去った。

「えっほ、えっほ、えっほ」

 俺は軽快なリズムを取りつつ、昨日の荒れた天気のせいですっかりと白く染まってしまった雪山をせっせと往復している。理由は単純明快、体を鍛えるためだ。

 ヨミに魔法を教わりだしてからの日々は、正に地獄と呼んでいいものだった。まず、今俺がやっているような体力作り。一見、なんでもないかのように見えるが、これが相当しんどかった。なんせ、普段から船の上で過ごしてるような人間である俺達は、運動に適した体にはなっていない。まあ、1ヶ月も経って、ようやく普通に走れるかくらいにはなったけどな。

 そして、次に勉強。生まれてこの方、地理を覚えるくらいしかやったことのない俺の脳は、3日も経たずに脳の領域がオーバーしてしまった。だというのに、知識はあればあるだけいいとかヨミが指導してくるせいで、まだ理解が追いついていない頭に更なる追い討ちをかけてきやがる。……その甲斐あってかは知らんが、基本の魔法と呼ばれるやつの最上位は全部使えるようになったけどな。

「にしても、流石に覚える量が多すぎるぜ……」

 まあ、魔法に対して無知だったのがいけないっていうのは自分でも分かってるんだが、あんなスパルタ指導について行けるわけねぇだろついて行くけども。

 そんなこんなで、俺を始めとしたグランストーンを追いかける仲間達全員が魔法を習得できた。その中には、とんでもない才能を開花させる奴がいたことも忘れちゃならねぇ。もちろん、そのとんでもねぇ奴ってのはゼラのことだ。元々、島で知識は得ていた奴なんだ。それくらいの才能があったっておかしくはない。じゃあ、俺達はというと……

「いっちょこの辺でやってみるか……ふぅ。ライジング・クエイク!」

 俺の体を通して、激しく地面を伝っていく雷。雷が通り抜けて行った地面がバキバキと割れ、土塊が宙を舞う。そして、それらにも雷が帯び、やがて地面を流れていった雷に合流するようにして土塊が飛んでいく。

 流石は雷の力ーーなのかは知らんがーー、演出が派手で、飛んでいく速度は目に追えない速さで、俺が望んでいた通りの魔法だ!

 ……とまあ、そんな具合に、ゼラに負けないようにと努力を重ね、俺は雷と地属性を合わせたユニーク魔法を習得した。ちなみに、技の名前は俺が付けた。技名なんて一々叫ばなくていいだろと俺はヨミに言ったが、この方がイメージしやすいじゃろ、とか訳の分からんことを言われた。どういう意味なんだろうな?まあ、魔法の大師範であるヨミが、技名は叫べって言うから叫ぶけども。

モルガン「生が入ってるなラウス」

 丁度下山しきった辺りのところで、モルガンが待ち構えるようにして立っていた。

「どうした、腕試しでもしに来たか?」

モルガン「いや、そうじゃない。シャウトがお呼びだ」

「ってことは、そろそろやるんだな」

モルガン「ああ。俺達の逆襲が始まるぞ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ヨミ「いいかお主ら。作戦は今伝えた通りじゃ。失敗すれば死。オマケに、お主らのマスターとやらに何も報いることができずに死ぬ。それが嫌ならば、せめて生き残れ。生き残って次のチャンスを作り出せ。いいな?」

「次はねぇよ。これで終わりにするんだ。……ババアの仇。ぜってぇに取ってやる」

 原型を思い出せないほどに黒焦げになった元本部で、俺だけがヨミの言葉に返事を返した。

 今、この場にいるのはババアのために一矢報いてやろうと奮闘する奴ら。だが、魔法への適性があったのは俺達4人だけ。残りは、ヨミ曰く囮部隊らしい。

 失敗しなくても死にそうな連中だが、それでもこの場から逃げ出さないのは、きっとババアの人徳だろうな。腹が立つぜ。

ゼラ「ヨミさんヨミさん。影って組織についてなんですけど、なんでそんなに詳しいんですか?」

ヨミ「気にするな」

ゼラ「気にするなって言われても……」

ヨミ「いいから気にするな」

ゼラ「……」

 そこまで「気にするな」って言われると、逆に気になっちまうよな。ゼラの観点はいい所突いてる。

ヨミ「安心しろ。妾はお主らと出会うまでどこにも属さず生きとった身じゃ。彼奴らとはなんの繋がりもありゃせん」

シャウト「怪しいな」

ヨミ「疑うのは結構。じゃが、妾はあくまでもそこのガキに無理矢理連れられてきたに過ぎん。もし、敵さんがいい条件を出してくれたら……」

「裏切るってのかてめぇ!」

 思わず大きな音を立てて立ち上がってしまった。だが、今のは聞き捨てならない。

 ババアのために奮闘しようって考えの奴らが集まっているところで、俺らへの裏切り宣言はーー

ヨミ「早まるなバカたれ。もしもの話じゃろうが。それが嫌なら、妾を雇うに相応しいもんを用意するんじゃな」

 ……まあ、そうなるよな。

 俺はひとまず席に座り直し、ヨミをこちらにキープし続けるだけの物がなかったかを考える。この本部が狙われてなければ、いくらでも金で解決出来たと思うんだが、それはほんの少し前までの話だ。今は違う。

ゼラ「うーん、なら、私とかどうです?」

「「「 は? 」」」

ヨミ「お主、前々から思っとったが、真面目な話。一旦脳を修理した方がええと思うぞ」

ゼラ「酷い言い草ですね!私だって、真面目に考えた結果この結論に至ったまでですよ!」

ヨミ「何を真面目に考えたらそうなるのか説明せい!何も分からんわ」

ゼラ「だってヨミさん。友達いないでしょう?」

「「「 は? 」」」

 本日2度目の「は?」。こいつ、前々から思ってたけど、やっぱ脳の修理が必要だろ。

ゼラ「だってヨミさん、話からしてずーっと1人で生きてきたんですよね。そのせいかは知りませんけど、私と同じように世間慣れしてないというか、変な意味でアホというか、私と2人で魔法の練習をしてると妙に楽しそーー」

ヨミ「バカたれ!それ以上言うでない!」

ゼラ「むぐっ……」

 聞かれちゃまずいことでも言われかけたのか、ヨミはゼラの口を勢いよく塞いで何も発せられないようにする。

 ……どっちもどっちだろうが。今そんな話しなくてもいいだろ、めんどくせぇ。

ヨミ「分かった。報酬に関してはお主らが勝ってから考えることにする。出発は明日。じゃあな」

 早口で切り上げ、ヨミはゼラを連れてどこかへと消えた。多分、釘を刺すか口を封じるかのどっちかだな。

シャウト「どうする?」

「どうするって言われても、こちとらいつ準備が整ってもいいようにって、戦いに出る準備なら万端だし、魔法も絶好調だし」

モルガン「これ以上議論することもないな。皆、今日は明日からに備えてしっかりと休みを取ろう」

シャウト「それが一番か」

 てことで、俺達は早々に解散した。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「むぐ、むぐぐぐぐ……」

ヨミ「まーったく、余計なことを口走りよって。お主、あれ以上言っとったら絶交じゃからな」

「ゲホッゲホッ。……それで困るのはヨミさんの方じゃないんですか?」

 あー、辛かった。いきなり口を塞がれて変な森にまで移動させられたから、押さえられていた口周りが痛いです。

ヨミ「かー!もう、お主のことなんか知らぬ!」

「もー分かりましたって。私が悪かったですよー」

 なんで同年代の人相手にご機嫌取りしなきゃならないんですかね。まあ、魔法の師範だから仕方ないところもあるんですけど……

「……ところで、ここ、どこです?」

 本当にしれーっと連れて来られた森だけど、こんな場所、シージュアルにありましたっけ?

ヨミ「ここは、お主らが目指すステイネスに程近い位置に存在する森。普通の人間が迷い込めば、1分としないうちに外に出ることになっておる」

「それ迷ってないんじゃ……」

ヨミ「……言い方が悪かったのう。進んでも進んでも、森の中心地に行くことは出来んと言った方がええか」

 突然何言い出すんですかねこの人。前置きくらい付けてくださいよ。

ヨミ「いい物を見せてやる」

 そう言って、ヨミさんは何もない空間に扉を作り、ガチャっと入って行きました。

「ついて来いってことですかね?」

 相手はヨミさんですし、まあこんなところで不意打ちをしてくることもないでしょう。私は特に何も警戒せず、そのまま扉を開けて中に入りました。

「……なんですか……ここ」

 扉の内側に入ってすぐ、私の目の前には真っ白な空間と、あの島に残ってたものだけでは比べ物にならないほどの本棚が立ち並んでいました。しかも、本棚一段一段に本がぎっしりと詰まっています。

ヨミ「ようこそ。妾の世界、世界の書庫ワールドアーカイブへ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「わぁー、何これ何これー!」

 私は子供のように目を輝かせ、ここにある本を網羅してやろうという勢いで読み漁っていました。こらそこ、今も子供だろとか言うんじゃありません。

 見たことない、読んだことのない本がたくさんたくさん!何なんですかここ!天国ですか!?

「ヨミさんヨミさん!ヨミさんって何者なんですか!」

 と、私がヨミさんの方を向いて訪ねた時……

ヨミ「すぅーすぅー」

 子供のように地べたで眠りについていました。

「えぇ……」

 なんですか。ただ誘拐しただけなんですか。本当、この人よく分からない人ですね。凄い人だってのは分かるんですけど。

「何をどうしたらいいんですか……」

 ただ勝手に連れて来られて、夢みたいな景色を見ていたうちに閉じ込められる。こんな展開、誰が予想できたことでしょうか。まあ、これだけ本があれば、ヨミさんが起きるまでの暇潰しには困らないんですけど。いや、むしろこのまま10時間くらいは寝ていてほしいくらいです。

「心配せんでも、ほっときゃ14時間くらいは寝ておるぞ」

「……?」

 今のはヨミさんの声。でも、ヨミさんはまだ眠っている状態ですし、寝言にしてはハッキリとしすぎてますから……今のは誰?

「ここじゃここ」

 声は後ろの方からしていることに気づきました。私は振り返り、そこにいる人物と目を合わせます。

「ヨミさんが……2人!?」

 後ろにいたのは、見間違えるはずのないヨミさんでした。

「え?え?ど、どどどどういう事ですか!?ど、ドッペルゲンガー!?」

ヨミ「ある意味では、そうかもしれんのう」

「ん?えぇ!?」

 流石の私でも、この状況には頭が混乱するばかりです。相手がヨミさんだからって理由で無理矢理片付けてしまいたいところですが、流石にそうもいかなさそうです。

ヨミ「……ゼラ。今から話すことは真面目な話じゃ。お主と、そこにおる妾に関係する」

「は、はい……??」

 何が何だかよく分かりませんが、私はとりあえず頷きはしました。それを見たヨミさんが、私の手に何かを握りしめさせてきます。

 少し硬い感触……それに、ちょっとトゲトゲしてる?

ヨミ「ゼラ。今から話すことを必ず忘れないで」

「……?……?」

ヨミ「お主は、そのうち大きな選択を迫られることになる。そうなった時、頼れる者は周りにはおらん。じゃが、自らの意思を残すことは出来る」

「は、はい……」

ヨミ「近い未来、お主はユナと呼ばれる魔女と出会うじゃろう。お主が道に迷って、答えを決めきれなかった時。これを持って必ずユナの所へ行け」

「ユナ……さん?」

ヨミ「うむ。必ずじゃぞ」

「はい……分かりました」

 心の中では全然理解出来てませんが、ヨミさんの表情があまりに真剣そのものだったので、覚えるだけならタダかと思い、私はヨミさんの思いを受け取りました。

ヨミ「では、過去の妾と仲良くな」

 そう言い残し、もう1人のヨミさんはどこかへと消え去ってしまいました。

「何だったのでしょう?」

 よく分かりませんが、私は渡された宝石?をじっと見つめてみます。

 ……そんな事しても、この宝石からは何も読み取れません。でも、近い未来、これが必要になってくる……。難しい話ですね。

「ヨーミさん、ヨミさん」

 眠っている彼女を揺すって起こそうとしますが、彼女は赤ん坊のようにスヤスヤと眠り続けます。仕方ないですね。起きるまで本を読み漁って待っていますか。
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