297 / 434
第0章 【グラン・ゼロ・ストーリー】
第0章15 【燃える緑の国】
しおりを挟む
海岸沿いに並び、黒い煙をもくもくと上げ続ける国、ステイネス。どうやら、今日も今日とでドンパチしていらっしゃるようです。バカなんですかね。
すぐにでもステイネスに乗り込んで、影という組織をボコボコにしてやりたいところですが、何事にも準備は大事。ヨミさんの勧めで、近くにある大自然の国、ラルレア王国で最後の準備!……を、しようと思っていたのですが……。
ラウス「なんじゃこりゃ……」
大自然の国は、前回訪れた時とは違い、緑溢れていた場所が赤赤と燃えており、まだ肉眼でそれが見えるだけの距離にいるというのに聞こえてくる悲鳴、そして、何やら黒い人影があちらこちらにいるように見えます。
接岸すらままならぬ状況。どうしましょう……?
モルガン「まさか、ステイネスでの内乱が飛び火したわけではなかろうな」
シャウト「分からん。もう少し近づいてみねばならんな」
「でも、そんなことしたら私たちも巻き込まれますよ?」
シャウト「だろうな」
いくらか策は立ててきましたが、流石にこの状況は誰もが予想外のことでした。
正直、ヨミさんの船酔いのこともありますから、適当にどこかへ接岸したいんですけどね……。本当、困っちゃってます。
ラウス「どうする。クズってる暇はねぇぞ?」
シャウト「それくらい分かっている。だが……」
ヨミ「お主らうるさいのう。さっさと接が……ぉぇ」
ダメみたいですね。早急にどうにかしないと、ヨミさんが使い物にならなくなります。
ヨミ「と、とりあえず、さっさと接岸せい。船くらい、妾の力で……まも……れ……」
……
「多分、信じられると思いますけど」
ラウス「でも、この状態だぞ?」
シャウト「だが、四の五のは言ってられない状況だ。ここは1つ、不安要素を抱えてしまってでもいいから、行動すべきだ」
ラウス「そっかー」
と、いうわけでヨミさんの言葉を信じ、私たちはラルレアの港へ接岸。前回の時のように、この国の兵士さんたちが出迎えてくれることはありませんでしたが、港は比較的平和でした。
ヨミ「うー、解放されたー!」
おや、回復が早いですね。まあ、海の上でしばらく止まっていましたし、酔いも若干収まっていたのでしょう。
ラウス「着けたはいいが、こっからどうするつもりだ?見ての通り、街は散々な有様だぞ」
ヨミ「そうじゃの。おっと、そこのお主、少し止まれ」
「ひぃっ!?」
ヨミさんは、私たちの存在に気づかないようにして走りすぎようとした少年の前に刀を突き出し、無理矢理足を止めさせました。
「あれ?」
一瞬、見間違いかと思いましたが、この少年の顔と格好は、どう見ても前回訪れた時に出会った、ミリオ少年そのものでした。
「もしや、ミリオくんではないですか?」
ヨミ「なんじゃお主。知り合いか?」
「ええ、まあ。知り合いっちゃ知り合いですけど」
この中でなら、私が1番話が出来そうですし、ヨミさんには刀を収めてもらって私はミリオ少年の前に立って話をしようと口を開きます。
「あの、何があったか話してもらえませんか?」
ミリオ「あ、え、えぇっと……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミリオ少年が話してくれた内容を大まかにまとめます。
この国は、つい先週ほどから内乱が勃発し、日を重ねるにつれて段々と深刻さを増していき、ついには海の上からでも見えるほどに赤赤と森林が燃えてしまうくらいにまで内乱が酷くなっていたとのことです。
内乱が勃発した原因は、もう予想しての通り、ミリオ含めた幼少病被害者がついに行動を起こした結果、だとのことです。
ミリオ「まさか、こんな事になるとは思ってなくて……」
でしょうね。私も、たかが子供がこんな事態を引き起こすとは思いませんでした。まあ、本人たち曰く、中身は20歳以上だとの事らしいですが(信じてませんけど)。
ラウス「こんなガキ共が、国一個燃え上がらせちまうほどの暴動か……」
シャウト「案外不思議な話ではないかもしれん。そこに、見た目はガキそのものだがとんでもない力を持った奴がいるからな」
ヨミ「それは妾のことか?」
ラウス「お前以外に誰がいんだよ……」
「まあ、とりあえずそれは置いておきましょう。で、前回お会いした時に、リアさんだったかがいた気がするんですけど、彼女は今どこに?」
ミリオ「……」
途端にミリオ少年の顔が暗くなりました。なんか、嫌な予感がしてきます。
ミリオ「……拐われた」
「もしかして……国あたりに?」
ミリオ「うん……」
あちゃー、そら、もう無理なんじゃないですかねー。多分、暴動の主犯格として適当に殺されてしまいますよ。
ラウス「どうすんだ?そんな余裕ないのは分かってるけど、見て見ぬふりってのもなぁ」
ヨミ「バカかお主ら。他所の事情に手を出しとる場合ではなかろうが」
ラウス「いや、分かってるんだけどさー」
ヨミ「ならばやるべき事は分かっておるじゃろ。……おいお主、この国のトップはどこにおる?」
ミリオ「え?え、えっと……多分、城からは出てると思うから……」
ヨミ「ハキハキ喋らんか、このクソガキが。妾らには時間が無いのじゃ」
ミリオ「あ、はい、えっと……多分、この国の奥の大森林に、神殿があるので、いるとしたらそこかと……」
ヨミ「神殿か。バカバカしい。まあよい」
ヨミさんは収めたはずの刀を再び抜き、ミリオ少年が指さした方に向けて目を合わせました。
「ヨミさんって、意外に優しい人なんですね」
ヨミ「……ここで放っといたら、お主らが戦いの時に真面目にならんじゃろうが。それじゃと、妾の策に狂いが出る。それだけじゃ」
最もらしいこと言いますけど、結局ヨミさんが優しい人であることに変わりはないんですよね。変な人であるということにも変わりませんけど。
ヨミ「大森林か……。空から行く方が早いな」
途端にヨミさんが、羽織っていた羽織を脱ぎ、こちらに投げ渡してきます。
咄嗟ではありますが、ちゃんと受け取ることが出来ました。肌触りが結構いいですね。流石は高そうな和服を着てるだけあります。
ヨミ「3分で戻る。お主らは死なんように待っておけ」
ヨミさんはそのまま上半身の服も適当にずり下ろすと、龍人にしてはかなり大きい羽を露わにして飛び去って行きました。
……てか、ヨミさんって龍人だったんですね。今更ですけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さてさて、面倒な事を受け持ってしもうたが、どうせ相手はたかだか人間。一瞬のうちに終わるじゃろう。まずは、リアという少女の位置を特定せねばな。
「ルフォー・ア・ヒューマノイドID……」
えっと、リアじゃから……
……
……
いや、リアとやらに会ったこともないのに、こんなんで検索出来るわけないか。バカか妾は。いいや、妾は天才じゃ。天才じゃからこそ、もっと賢いやり方で……
「めんどくせぇから燃やすか」
どうせ周りも燃えとるわけじゃし、多少木々を蹴散らしてから探してもええじゃろ。なんなら、後から時間を巻き戻せば全てを無かったことにして済む話じゃからな。
「フィア・テラ・オブ・テラ・マグナム・スクリーン・100・23・722・ディスチャージ」
巨大な炎の塊を森一帯に降り注ぎ、地獄の業火の如く、全てを燃え上がらせていく。
「ハッハッハっ!環境破壊は気持ちいいzoy!っとと、そんなことを言ったらあらぬところから怒られるな」
ある程度燃やし尽くしたところでコマンドの実行を終了させる。すると、さっきまでの緑は粗方消え去っており、代わりに真っ白な神殿が大きく見えた。
「本当にThe神殿って感じの見た目をしておるのう。どっかからデザイン丸パクリしたじゃろこれ」
まあどうでもいい。中にいる人間は、先程のコマンドの実行対象にはされていないため、普通に生きている。まあ、突然の大火災に、大いに狼狽えたところじゃろうがな。実に愉快愉快。
妾は羽を羽ばたかせ、ゆっくりと神殿の目の前にまで着陸する。丁度、狼狽えていた兵士の1人が見えたので、妾は刀を首元に突き出し、動きを止める。
「おいお主、ここらに捕虜になった小さな女の子がいると聞いたが、それは本当か?」
「は、はひ……」
あまりに突然のことじゃったから、すぐには返事を返さんかと思っておったが、意外にもこの兵士はすぐに返事を返した。
「死にたくなければこの森を離れろ。質問に答えてくれた、妾からの慈悲じゃ」
「し、失礼しまァァァァァァす!」
兵士のくせにビビりな奴じゃのう。確かに、妾の姿は武人そのものに見えるかもしれんが、そんなにビビる必要は無かろう。ま、あの者にはもしかしたら妾の実力が見えとったのかもしれんな。
さて、女子がおることは分かったし、さっさと助け出して国のトップを殺さねばな。しかし、この神殿、雑魚兵士が慌てふためくのはよく見えるし滑稽ではあるが、トップらしき男か女は見えんのう。もしや、地下でも備え付けておるのか?神殿に?
……ま、妾が気にすることではないか。
「グランスキル・浮遊城」
一々地下を探すのは面倒なので、神殿をまるごと空中に持ち上げる。バランスを取れなかった兵士達がぽつりぽつりと落ちていったが、まあ気にすることではない。
とりあえず、地下があることは見えた。ただし、たったの1階だけで、そこに緑の装飾をした男と縄で椅子に縛り付けられた小さな女の子がいた。
「あれじゃな。輝月」
全ての時間を止め、箱庭のような地下にゆっくりと降り立つ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ国王とやらの顔を見てみるが、先の出来事のせいか大層なアホ面をしておった。
「ぶっ……!」
いかんいかん。いくら相手が動かぬとはいえど、笑いを零してはならんな。
さて、まずは女子の両手両足に縛り付けられている縄を刀でサッと斬る。少し拷問でもされたのじゃろうか?痛々しい傷跡が残っておるな。ちょっとだけ治しといてやるか。
「んで、このアホ面はどうするべきか」
正直、生き埋めにしようがこの場で切り伏せてしまおうが、妾には関係のないこと。じゃが、この国で起きている一連の騒動は、ほぼほぼこいつが原因と見た。殺してしまうにはちと勿体ないかもしれん。
「子奴も連れ帰るか」
地面に火属性魔法でさっと錬成陣を描き、そこからそこそこ頑丈なワイヤーを作り出す。材料が石と土というところに不安を感じなくもないが、帰りは行きと同じように空を飛ぶので、逃げ出す心配はせんでもええじゃろ。
ひとまず、少女はお姫様抱っこの容量で抱きかかえっと、重すぎやしないか?なんか、全然持ち上がらんのじゃが。
「……そういや、妾、力は0に等しかったな」
まさか、こんな小さな子1人運べないほどまでとは思っていなかったが、ポジティブに考えれば、こういうところで気づけて良かったと思う。まあ、こんな情報がどこで役に立つかは知らんが。
仕方ないので、少女の方は魔法で浮かし、アホ面は刀の先に引っかけて、少量の魔法で浮かばす。落ちはしなくとも、ぐわんぐわん揺れるので、さぞ怖いじゃろうな。
形を整えたところで、再び翼を広げ空へ飛び立つ。そして、神殿の位置も若干ズレはするが適当に元の位置に戻しておき、時間停止も解除する。
「な、何が起こーーうわぁぁぁぁぁぁ!」
「静かにしろ。バカタレが」
ほんのちょっととはいえど、こんなのと一緒に空を飛ばねばならぬとは、やはり殺しておくべきじゃったじゃろうか?
……
……
……
すぐにでもステイネスに乗り込んで、影という組織をボコボコにしてやりたいところですが、何事にも準備は大事。ヨミさんの勧めで、近くにある大自然の国、ラルレア王国で最後の準備!……を、しようと思っていたのですが……。
ラウス「なんじゃこりゃ……」
大自然の国は、前回訪れた時とは違い、緑溢れていた場所が赤赤と燃えており、まだ肉眼でそれが見えるだけの距離にいるというのに聞こえてくる悲鳴、そして、何やら黒い人影があちらこちらにいるように見えます。
接岸すらままならぬ状況。どうしましょう……?
モルガン「まさか、ステイネスでの内乱が飛び火したわけではなかろうな」
シャウト「分からん。もう少し近づいてみねばならんな」
「でも、そんなことしたら私たちも巻き込まれますよ?」
シャウト「だろうな」
いくらか策は立ててきましたが、流石にこの状況は誰もが予想外のことでした。
正直、ヨミさんの船酔いのこともありますから、適当にどこかへ接岸したいんですけどね……。本当、困っちゃってます。
ラウス「どうする。クズってる暇はねぇぞ?」
シャウト「それくらい分かっている。だが……」
ヨミ「お主らうるさいのう。さっさと接が……ぉぇ」
ダメみたいですね。早急にどうにかしないと、ヨミさんが使い物にならなくなります。
ヨミ「と、とりあえず、さっさと接岸せい。船くらい、妾の力で……まも……れ……」
……
「多分、信じられると思いますけど」
ラウス「でも、この状態だぞ?」
シャウト「だが、四の五のは言ってられない状況だ。ここは1つ、不安要素を抱えてしまってでもいいから、行動すべきだ」
ラウス「そっかー」
と、いうわけでヨミさんの言葉を信じ、私たちはラルレアの港へ接岸。前回の時のように、この国の兵士さんたちが出迎えてくれることはありませんでしたが、港は比較的平和でした。
ヨミ「うー、解放されたー!」
おや、回復が早いですね。まあ、海の上でしばらく止まっていましたし、酔いも若干収まっていたのでしょう。
ラウス「着けたはいいが、こっからどうするつもりだ?見ての通り、街は散々な有様だぞ」
ヨミ「そうじゃの。おっと、そこのお主、少し止まれ」
「ひぃっ!?」
ヨミさんは、私たちの存在に気づかないようにして走りすぎようとした少年の前に刀を突き出し、無理矢理足を止めさせました。
「あれ?」
一瞬、見間違いかと思いましたが、この少年の顔と格好は、どう見ても前回訪れた時に出会った、ミリオ少年そのものでした。
「もしや、ミリオくんではないですか?」
ヨミ「なんじゃお主。知り合いか?」
「ええ、まあ。知り合いっちゃ知り合いですけど」
この中でなら、私が1番話が出来そうですし、ヨミさんには刀を収めてもらって私はミリオ少年の前に立って話をしようと口を開きます。
「あの、何があったか話してもらえませんか?」
ミリオ「あ、え、えぇっと……」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ミリオ少年が話してくれた内容を大まかにまとめます。
この国は、つい先週ほどから内乱が勃発し、日を重ねるにつれて段々と深刻さを増していき、ついには海の上からでも見えるほどに赤赤と森林が燃えてしまうくらいにまで内乱が酷くなっていたとのことです。
内乱が勃発した原因は、もう予想しての通り、ミリオ含めた幼少病被害者がついに行動を起こした結果、だとのことです。
ミリオ「まさか、こんな事になるとは思ってなくて……」
でしょうね。私も、たかが子供がこんな事態を引き起こすとは思いませんでした。まあ、本人たち曰く、中身は20歳以上だとの事らしいですが(信じてませんけど)。
ラウス「こんなガキ共が、国一個燃え上がらせちまうほどの暴動か……」
シャウト「案外不思議な話ではないかもしれん。そこに、見た目はガキそのものだがとんでもない力を持った奴がいるからな」
ヨミ「それは妾のことか?」
ラウス「お前以外に誰がいんだよ……」
「まあ、とりあえずそれは置いておきましょう。で、前回お会いした時に、リアさんだったかがいた気がするんですけど、彼女は今どこに?」
ミリオ「……」
途端にミリオ少年の顔が暗くなりました。なんか、嫌な予感がしてきます。
ミリオ「……拐われた」
「もしかして……国あたりに?」
ミリオ「うん……」
あちゃー、そら、もう無理なんじゃないですかねー。多分、暴動の主犯格として適当に殺されてしまいますよ。
ラウス「どうすんだ?そんな余裕ないのは分かってるけど、見て見ぬふりってのもなぁ」
ヨミ「バカかお主ら。他所の事情に手を出しとる場合ではなかろうが」
ラウス「いや、分かってるんだけどさー」
ヨミ「ならばやるべき事は分かっておるじゃろ。……おいお主、この国のトップはどこにおる?」
ミリオ「え?え、えっと……多分、城からは出てると思うから……」
ヨミ「ハキハキ喋らんか、このクソガキが。妾らには時間が無いのじゃ」
ミリオ「あ、はい、えっと……多分、この国の奥の大森林に、神殿があるので、いるとしたらそこかと……」
ヨミ「神殿か。バカバカしい。まあよい」
ヨミさんは収めたはずの刀を再び抜き、ミリオ少年が指さした方に向けて目を合わせました。
「ヨミさんって、意外に優しい人なんですね」
ヨミ「……ここで放っといたら、お主らが戦いの時に真面目にならんじゃろうが。それじゃと、妾の策に狂いが出る。それだけじゃ」
最もらしいこと言いますけど、結局ヨミさんが優しい人であることに変わりはないんですよね。変な人であるということにも変わりませんけど。
ヨミ「大森林か……。空から行く方が早いな」
途端にヨミさんが、羽織っていた羽織を脱ぎ、こちらに投げ渡してきます。
咄嗟ではありますが、ちゃんと受け取ることが出来ました。肌触りが結構いいですね。流石は高そうな和服を着てるだけあります。
ヨミ「3分で戻る。お主らは死なんように待っておけ」
ヨミさんはそのまま上半身の服も適当にずり下ろすと、龍人にしてはかなり大きい羽を露わにして飛び去って行きました。
……てか、ヨミさんって龍人だったんですね。今更ですけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さてさて、面倒な事を受け持ってしもうたが、どうせ相手はたかだか人間。一瞬のうちに終わるじゃろう。まずは、リアという少女の位置を特定せねばな。
「ルフォー・ア・ヒューマノイドID……」
えっと、リアじゃから……
……
……
いや、リアとやらに会ったこともないのに、こんなんで検索出来るわけないか。バカか妾は。いいや、妾は天才じゃ。天才じゃからこそ、もっと賢いやり方で……
「めんどくせぇから燃やすか」
どうせ周りも燃えとるわけじゃし、多少木々を蹴散らしてから探してもええじゃろ。なんなら、後から時間を巻き戻せば全てを無かったことにして済む話じゃからな。
「フィア・テラ・オブ・テラ・マグナム・スクリーン・100・23・722・ディスチャージ」
巨大な炎の塊を森一帯に降り注ぎ、地獄の業火の如く、全てを燃え上がらせていく。
「ハッハッハっ!環境破壊は気持ちいいzoy!っとと、そんなことを言ったらあらぬところから怒られるな」
ある程度燃やし尽くしたところでコマンドの実行を終了させる。すると、さっきまでの緑は粗方消え去っており、代わりに真っ白な神殿が大きく見えた。
「本当にThe神殿って感じの見た目をしておるのう。どっかからデザイン丸パクリしたじゃろこれ」
まあどうでもいい。中にいる人間は、先程のコマンドの実行対象にはされていないため、普通に生きている。まあ、突然の大火災に、大いに狼狽えたところじゃろうがな。実に愉快愉快。
妾は羽を羽ばたかせ、ゆっくりと神殿の目の前にまで着陸する。丁度、狼狽えていた兵士の1人が見えたので、妾は刀を首元に突き出し、動きを止める。
「おいお主、ここらに捕虜になった小さな女の子がいると聞いたが、それは本当か?」
「は、はひ……」
あまりに突然のことじゃったから、すぐには返事を返さんかと思っておったが、意外にもこの兵士はすぐに返事を返した。
「死にたくなければこの森を離れろ。質問に答えてくれた、妾からの慈悲じゃ」
「し、失礼しまァァァァァァす!」
兵士のくせにビビりな奴じゃのう。確かに、妾の姿は武人そのものに見えるかもしれんが、そんなにビビる必要は無かろう。ま、あの者にはもしかしたら妾の実力が見えとったのかもしれんな。
さて、女子がおることは分かったし、さっさと助け出して国のトップを殺さねばな。しかし、この神殿、雑魚兵士が慌てふためくのはよく見えるし滑稽ではあるが、トップらしき男か女は見えんのう。もしや、地下でも備え付けておるのか?神殿に?
……ま、妾が気にすることではないか。
「グランスキル・浮遊城」
一々地下を探すのは面倒なので、神殿をまるごと空中に持ち上げる。バランスを取れなかった兵士達がぽつりぽつりと落ちていったが、まあ気にすることではない。
とりあえず、地下があることは見えた。ただし、たったの1階だけで、そこに緑の装飾をした男と縄で椅子に縛り付けられた小さな女の子がいた。
「あれじゃな。輝月」
全ての時間を止め、箱庭のような地下にゆっくりと降り立つ。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ国王とやらの顔を見てみるが、先の出来事のせいか大層なアホ面をしておった。
「ぶっ……!」
いかんいかん。いくら相手が動かぬとはいえど、笑いを零してはならんな。
さて、まずは女子の両手両足に縛り付けられている縄を刀でサッと斬る。少し拷問でもされたのじゃろうか?痛々しい傷跡が残っておるな。ちょっとだけ治しといてやるか。
「んで、このアホ面はどうするべきか」
正直、生き埋めにしようがこの場で切り伏せてしまおうが、妾には関係のないこと。じゃが、この国で起きている一連の騒動は、ほぼほぼこいつが原因と見た。殺してしまうにはちと勿体ないかもしれん。
「子奴も連れ帰るか」
地面に火属性魔法でさっと錬成陣を描き、そこからそこそこ頑丈なワイヤーを作り出す。材料が石と土というところに不安を感じなくもないが、帰りは行きと同じように空を飛ぶので、逃げ出す心配はせんでもええじゃろ。
ひとまず、少女はお姫様抱っこの容量で抱きかかえっと、重すぎやしないか?なんか、全然持ち上がらんのじゃが。
「……そういや、妾、力は0に等しかったな」
まさか、こんな小さな子1人運べないほどまでとは思っていなかったが、ポジティブに考えれば、こういうところで気づけて良かったと思う。まあ、こんな情報がどこで役に立つかは知らんが。
仕方ないので、少女の方は魔法で浮かし、アホ面は刀の先に引っかけて、少量の魔法で浮かばす。落ちはしなくとも、ぐわんぐわん揺れるので、さぞ怖いじゃろうな。
形を整えたところで、再び翼を広げ空へ飛び立つ。そして、神殿の位置も若干ズレはするが適当に元の位置に戻しておき、時間停止も解除する。
「な、何が起こーーうわぁぁぁぁぁぁ!」
「静かにしろ。バカタレが」
ほんのちょっととはいえど、こんなのと一緒に空を飛ばねばならぬとは、やはり殺しておくべきじゃったじゃろうか?
……
……
……
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる