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《Parallelstory》IIIStorys 【偽りの夢物語】
第12章2 【変わる関係性】
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トーキョーを目指して歩き始めた矢先、俺達は思わぬ人物に遭遇する。
「エレノア?」
街中を少し元気が無さげな感じで歩く彼女を見かけ、思わず歩みを止めてしまう。別に、特段気にするような相手ではなかったのだが、そういえば前の世界で生き残っていた連中の1人だったことを思い出し、ちょっと声をかけてみようと思う。
「おーい、エレノアー」
少し距離は離れてしまったが、それでもエレノアはピクっと肩を揺らし、辺りをキョロキョロとした後、こちらに気付いて近付いてきた。
エレノア「あー、ヴァルさんに……ネイさん……?」
「なんで疑問形?」
出会って早々、ネイの姿を見てエレノアは怪訝に眉をひそめる。
エレノア「いえ、その……」
なんだかハッキリとしねぇ態度だな。まあ、確かに今のネイは見た目に違和感大ありだが、セリカ達の反応からしてこれがデフォルトっぽいし、そう気にするようなもんじゃないだろう。
エレノア「あの、変なこと聞くようですけど、ネイさん1度死んだことはありませんか?」
「……え、おま……それって……」
ネイ「……」
エレノアの口から飛び出した衝撃の質問に、ネイではなく俺が思いっきり狼狽える。
ネイ「……そうですね。私は1度死にました。そして、どうやらエレノアさんは前の世界の記憶を持っていると見えますね」
エレノア「前の世界……確かに、言葉で言い表すならそういうことになります。もしかして、ネイさんと、ヴァルさんも……?」
「まあ、そういうことになるな。つっても、この世界が何なのかは俺達もよくは知らねぇんだが」
エレノア「そうですか……」
まさか、こんなところで同郷の奴と出くわすとはな。
「なあネイ。エレノアも記憶持ちって言うんなら、連れてってもいいんじゃねぇか?」
俺はふと思い立ったことを提言する。
エレノア「連れて行く?」
「俺ら、この世界がなんで出来ちまったのかってのを調べるために、これからトーキョーってとこに行くんだ」
エレノア「トーキョー?」
そういやこいつはあの時の面子に含まれてなかったな。
「ざっくり言うと異世界みてぇなもんだな。深海にあるでっけぇ街なんだけど、そこが1番怪しいってネイと話して決めたんだ」
エレノア「そ、うですか……」
早口に言い終えた説明に対し、エレノアは疑うような目でネイを見続け、そう呟いた。
ネイ「何か顔に付いてます?」
エレノア「いえ、別にそういうわけでは……」
なんだか落ち着かない空気だ。エレノアは何を気にしているのだろうか?やっぱり、こいつが生きていることに不気味さでも感じてんのかな?まあ、無理もねぇような気はするけど。
エレノア「……分かりました。私も連れて行ってください」
「よっしゃ、決まりだな」
エレノアは疑うような目をやめそう言った。だが、今度はネイの方が疑うような目付きでエレノアを見ている。
「……どうかしたか?」
小声でネイにそう尋ねる。
ネイ「……いえ、なぜ彼女が書き換えられる前の記憶を持っているのかなって」
まあ、不思議っちゃ不思議だよな。一応理由になるのかは知らねぇが、ネイは記憶に干渉する魔法は一切効かないっていうのがあるし、俺は無意識に炎でありとあらゆる魔法を焼き尽くしてるってのがある。だけど、エレノアにはそんな特別な力は何もない。ただの魔導士だ。そんな彼女が、なぜ記憶を持っているのか。
……あんまり疑いたくはねぇが、もしかしたらこの世界を作り出した張本人とかいう説も考えられんな。まあ、可能性は低い方だが。
ネイ「まあ、今は気にせず行きましょう。どうせ、この世界を生み出した張本人が分かれば自ずと私達の共通点も分かってくると思いますし」
「それもそうだな」
というわけで、改めて俺達は出発した。とは言っても、ネイの転移魔法でひとっ飛びなんたがな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー深海。
「うっひょー……マジで怪しさプンプンな研究所だな」
エレノア「こんな場所に無かったら、ヴァルさん達に言われなくてもここに来てたかもです」
研究所と呼ばれる場所は、白いドーム状の大きな建物で、元々は城があった場所ということもあってか、大きさもそれなりにデカい。
で、この街並みも見覚えのあるものだ。あの渋谷109とかいうデカい建物も健在だし、それだけじゃなく背の高い建物は前回来た時のとそのまんまだ。消えたはず……なんだよな。
ネイ「いつまでも突っ立ってないで、さっさと行きましょう」
「おう、それもそうだな」
ネイに言われ、俺達は研究所目指して歩き始める。道中、何か来てもおかしくないと警戒はしておいたが、それも杞憂に終わり、何の展開もなく研究所前にまで辿り着いてしまった。
「……さて、どうするよ」
エレノア「どうするも何も、中に入る以外の選択肢って無くないですか?」
「いや、それはそうなんだけどさ、この手の施設って、大抵侵入者を排除するようななんかがあるだろ。例えばさ、夢の城で見たあの罠軍団とか」
エレノア「あー、確かにありそうですね」
ここに来るまでは何も無かったが、それはあの夢の世界でもそうだった。何なら、城に入ってからもしばらくは特に何も無かった。でも、確実にこの手のやつには何かある。だから、少し尻込みしちまうな。
ネイ「だからって、入らないという選択肢はありませんよ。こういうのは正面突破でボスフロアまで駆け上がるのが定石です」
そう言い、ネイは躊躇うことなく門を開けて中に入っていった。
「まあ、それもそうだよな」
俺も後に続き、門を通った。エレノアも同じようにな。特にこの行為だけでは何も起きない。門前払いみたいなことはされなかった。
それから、『駐車場』と書かれた整えられすぎている道路を抜け、ガラス張りの扉を開けて中に入る。中に入ってすぐ、病院の待合室みたいな雰囲気のある大広間が続き、その側面に螺旋状の階段がオシャレな感じに設置してある。
「上に上がるしかないか……?」
ネイ「それ以外に道はありませんね」
「上から急に大岩が降ってきたりとかしない?」
ネイ「何に影響されてるのか知りませんけど、今のところそんな気配はしませんよ。何なら、私が前を行くんで罠があってもすぐに気付きますよ」
……なんか、今日のネイはやけに塩対応だな。もうちょっと甘い言葉で言ってくれてもいいのにな。
ネイ「なんか変なこと思ってませんか?」
「いいや、何も」
まあ、ネイだって少しはピリピリしてんだろう(何が原因かは知らんが)。俺はそれ以上何も言うことなく、ネイの後に続いて階段を上ってゆく。
冷静になって見れば、そういや、こんな螺旋状の階段なんて俺達の世界にはねぇなってことに気付く。トーキョーとかいう異世界は、どうやら俺達には想像もつかないほどに細かなところも発展してるっぽい。つか、この螺旋状の階段、略して螺旋階段便利だな。あんまり幅取らねぇのにちゃんと階段の役割を果たしてる。階段だけで幅を広く取ってるあの城に是非とも採用してみたいな。作れるかは知らんけど。
そうこうしてるうちにあっという間に階段を上り終え、今度は広い廊下と側方にたくさんのドアが付く階層に入る。本当、病院みてぇだな。
「なあ、もしかしてだけどこの扉という扉、全部開けて探し回んのか?」
「「 なんでそんな面倒なことするんですか 」」
俺がそう聞いた瞬間、2人の声が重なった。
エレノア「あ、ネイさんどうぞ」
ネイ「えー、ヴァル?この世界の親玉がわざわざそんなこじんまりとした一室にいると思います?」
「いいや。出来ればそんな奴には玉座で偉そうにぶんぞりかえってるところをボコボコにさせてほしいな」
あれ、言っといてなんだけど、今の俺のことじゃね?
ネイ「ですよね。なら、親玉はそれなりの場所にいるでしょう」
「まあそうだな。でも、案外その辺にいたりするかもしれねぇだろ」
ネイ「そう思うならそれでいいですし、私が検討付けてる場所が違ったらそうしますよ」
なぜか呆れられてるが、そのままネイは3階へと続く階段も上りだし、話を続けた。
ネイ「ヴァル、この施設、病院みたいだとか思ってませんか?」
「ああ。つっても、俺達の世界にあるようなもんとはまるで清潔感が違ぇけど」
ネイ「そうですよね。なら、病院というのなら、親玉がいそうな場所もそれとなく検討が着くでしょう?」
いそうな場所ねぇ……。生憎、病院には全然世話になんねぇから分かんねぇんだよな。つか、俺達の街にあったのは小さな個人経営のやつだけだし、ネイは見た目の問題で風邪ひいても連れてくこと無かったしでマジで検討付かねぇ。
エレノア「もしかして、院長室……とかですか?」
エレノアは検討が付いていたっぽい。
ネイ「エレノアさん正解です。私達が目指しているのはそこですよ、ヴァル」
「なるほど。院長室か……」
いや、そんなもんがあるってことを今この場で初めて知ったわ。
「じゃあ、その院長室に行けばいいんだな」
ネイ「そうなんですけど、ここまだ3階なんですよ」
「それがどうかしたか?」
そう聞くと、ネイは何も言わずに窓の外を指さした。何かあると思って窓の外を覗いてみたが、特にこれといって何も無い。
ネイ「ヴァル、上の方です」
「上?」
窓を開け、身を乗り出す形で上の方を見上げる。すると、上の方にはまだまだ建物の壁が続いていた。
ネイ「多分、5階まであると思うんですけど、次の階に向かうための階段が見当たらないんですよ」
「通りでなんか同じ場所グルグルとしてたんだな」
ネイ「迷ってないですよ」
いや、言われなくても階段が無いんだから仕方ねぇだろ。
「じゃあ、なんだ。どっかその辺の扉開けりゃ上に行くための階段が現れたりしねぇのか?」
ネイ「そんな簡単な話じゃありませんよ」
そうは言われたが、何事も試してみなけりゃ始まらないので、俺は適当にどっかその辺の扉を開けてみる。すると、何もない一室が広がったが、天井を見上げてみるといかにもな取っ手が見つかった。
その取っ手に手をかけ、強い力で引っ張ってみると梯子っぽいものが降りてくる。
「な、言ったろ?」
エレノア「そのドヤ顔やめてください」
「いいじゃねぇか。これくらい手柄にしたって」
ネイ「何でもいいです。先に進みましょう」
ネイは驚くこともなく先に進んで行ってしまった。やっぱ、どこか塩対応……というより、どこか冷てぇ感じがする。
俺も後を続いて梯子に手をかけ上を見上げる。すると、たまたま視界にスカートの中が映り込んでしまった。
「ピンクのパンツねぇ」
《ドカッ!》
「っ……痛って……!何すんだこの野郎!」
ヒールで思いっきり顔を踏まれ、俺はそのまま下の方に落下した。距離自体は全然無かったけど、踏まれた場所が凄く痛い。
ネイ「ヴァル。いくら夫婦でも、見ていいものと悪いものがあるんですよ」
凄い蔑むような目付きで見てくる……。え、なんか嫌われるようなことでもしたか?俺。
ネイ「触るのはオッケーですけど、ジロジロ見るのはやめてください。恥ずかしいんで」
なんか素直なのかどうなのかよく分かんねぇ言われ方した。つか、触るのはアリなのかよ……。
「ああもう、悪かったよ」
俺がそう言うと、ネイは翼を広げて飛ぶように上って行った。
エレノア「あんな感じでしたっけ?ネイさん」
「いいや。あんな感じじゃねぇよ。自分で言うのもなんだが、ネイはもっとデレデレしてくるような奴だったのにな。たまにそのデレデレが酷過ぎて恐ろしい思考になる時もあったが……」
エレノア「ですよね。やっぱり、なんだか違和感を感じます」
俺も、ちょっとだけ今のネイに違和感を感じている。ヒカリみてぇにツンツンしてるし、なぜかこの世界に対してそんな疑問を抱いていない……というより、答えを知ってるかってくらいに冷静な態度。
……そういや、この世界でまだヒカリには会ってねぇな。まさかだけど、ネイに統合されたとか……?
僅かな疑問を抱きつつも、俺達は先を急いだ。
「エレノア?」
街中を少し元気が無さげな感じで歩く彼女を見かけ、思わず歩みを止めてしまう。別に、特段気にするような相手ではなかったのだが、そういえば前の世界で生き残っていた連中の1人だったことを思い出し、ちょっと声をかけてみようと思う。
「おーい、エレノアー」
少し距離は離れてしまったが、それでもエレノアはピクっと肩を揺らし、辺りをキョロキョロとした後、こちらに気付いて近付いてきた。
エレノア「あー、ヴァルさんに……ネイさん……?」
「なんで疑問形?」
出会って早々、ネイの姿を見てエレノアは怪訝に眉をひそめる。
エレノア「いえ、その……」
なんだかハッキリとしねぇ態度だな。まあ、確かに今のネイは見た目に違和感大ありだが、セリカ達の反応からしてこれがデフォルトっぽいし、そう気にするようなもんじゃないだろう。
エレノア「あの、変なこと聞くようですけど、ネイさん1度死んだことはありませんか?」
「……え、おま……それって……」
ネイ「……」
エレノアの口から飛び出した衝撃の質問に、ネイではなく俺が思いっきり狼狽える。
ネイ「……そうですね。私は1度死にました。そして、どうやらエレノアさんは前の世界の記憶を持っていると見えますね」
エレノア「前の世界……確かに、言葉で言い表すならそういうことになります。もしかして、ネイさんと、ヴァルさんも……?」
「まあ、そういうことになるな。つっても、この世界が何なのかは俺達もよくは知らねぇんだが」
エレノア「そうですか……」
まさか、こんなところで同郷の奴と出くわすとはな。
「なあネイ。エレノアも記憶持ちって言うんなら、連れてってもいいんじゃねぇか?」
俺はふと思い立ったことを提言する。
エレノア「連れて行く?」
「俺ら、この世界がなんで出来ちまったのかってのを調べるために、これからトーキョーってとこに行くんだ」
エレノア「トーキョー?」
そういやこいつはあの時の面子に含まれてなかったな。
「ざっくり言うと異世界みてぇなもんだな。深海にあるでっけぇ街なんだけど、そこが1番怪しいってネイと話して決めたんだ」
エレノア「そ、うですか……」
早口に言い終えた説明に対し、エレノアは疑うような目でネイを見続け、そう呟いた。
ネイ「何か顔に付いてます?」
エレノア「いえ、別にそういうわけでは……」
なんだか落ち着かない空気だ。エレノアは何を気にしているのだろうか?やっぱり、こいつが生きていることに不気味さでも感じてんのかな?まあ、無理もねぇような気はするけど。
エレノア「……分かりました。私も連れて行ってください」
「よっしゃ、決まりだな」
エレノアは疑うような目をやめそう言った。だが、今度はネイの方が疑うような目付きでエレノアを見ている。
「……どうかしたか?」
小声でネイにそう尋ねる。
ネイ「……いえ、なぜ彼女が書き換えられる前の記憶を持っているのかなって」
まあ、不思議っちゃ不思議だよな。一応理由になるのかは知らねぇが、ネイは記憶に干渉する魔法は一切効かないっていうのがあるし、俺は無意識に炎でありとあらゆる魔法を焼き尽くしてるってのがある。だけど、エレノアにはそんな特別な力は何もない。ただの魔導士だ。そんな彼女が、なぜ記憶を持っているのか。
……あんまり疑いたくはねぇが、もしかしたらこの世界を作り出した張本人とかいう説も考えられんな。まあ、可能性は低い方だが。
ネイ「まあ、今は気にせず行きましょう。どうせ、この世界を生み出した張本人が分かれば自ずと私達の共通点も分かってくると思いますし」
「それもそうだな」
というわけで、改めて俺達は出発した。とは言っても、ネイの転移魔法でひとっ飛びなんたがな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ーー深海。
「うっひょー……マジで怪しさプンプンな研究所だな」
エレノア「こんな場所に無かったら、ヴァルさん達に言われなくてもここに来てたかもです」
研究所と呼ばれる場所は、白いドーム状の大きな建物で、元々は城があった場所ということもあってか、大きさもそれなりにデカい。
で、この街並みも見覚えのあるものだ。あの渋谷109とかいうデカい建物も健在だし、それだけじゃなく背の高い建物は前回来た時のとそのまんまだ。消えたはず……なんだよな。
ネイ「いつまでも突っ立ってないで、さっさと行きましょう」
「おう、それもそうだな」
ネイに言われ、俺達は研究所目指して歩き始める。道中、何か来てもおかしくないと警戒はしておいたが、それも杞憂に終わり、何の展開もなく研究所前にまで辿り着いてしまった。
「……さて、どうするよ」
エレノア「どうするも何も、中に入る以外の選択肢って無くないですか?」
「いや、それはそうなんだけどさ、この手の施設って、大抵侵入者を排除するようななんかがあるだろ。例えばさ、夢の城で見たあの罠軍団とか」
エレノア「あー、確かにありそうですね」
ここに来るまでは何も無かったが、それはあの夢の世界でもそうだった。何なら、城に入ってからもしばらくは特に何も無かった。でも、確実にこの手のやつには何かある。だから、少し尻込みしちまうな。
ネイ「だからって、入らないという選択肢はありませんよ。こういうのは正面突破でボスフロアまで駆け上がるのが定石です」
そう言い、ネイは躊躇うことなく門を開けて中に入っていった。
「まあ、それもそうだよな」
俺も後に続き、門を通った。エレノアも同じようにな。特にこの行為だけでは何も起きない。門前払いみたいなことはされなかった。
それから、『駐車場』と書かれた整えられすぎている道路を抜け、ガラス張りの扉を開けて中に入る。中に入ってすぐ、病院の待合室みたいな雰囲気のある大広間が続き、その側面に螺旋状の階段がオシャレな感じに設置してある。
「上に上がるしかないか……?」
ネイ「それ以外に道はありませんね」
「上から急に大岩が降ってきたりとかしない?」
ネイ「何に影響されてるのか知りませんけど、今のところそんな気配はしませんよ。何なら、私が前を行くんで罠があってもすぐに気付きますよ」
……なんか、今日のネイはやけに塩対応だな。もうちょっと甘い言葉で言ってくれてもいいのにな。
ネイ「なんか変なこと思ってませんか?」
「いいや、何も」
まあ、ネイだって少しはピリピリしてんだろう(何が原因かは知らんが)。俺はそれ以上何も言うことなく、ネイの後に続いて階段を上ってゆく。
冷静になって見れば、そういや、こんな螺旋状の階段なんて俺達の世界にはねぇなってことに気付く。トーキョーとかいう異世界は、どうやら俺達には想像もつかないほどに細かなところも発展してるっぽい。つか、この螺旋状の階段、略して螺旋階段便利だな。あんまり幅取らねぇのにちゃんと階段の役割を果たしてる。階段だけで幅を広く取ってるあの城に是非とも採用してみたいな。作れるかは知らんけど。
そうこうしてるうちにあっという間に階段を上り終え、今度は広い廊下と側方にたくさんのドアが付く階層に入る。本当、病院みてぇだな。
「なあ、もしかしてだけどこの扉という扉、全部開けて探し回んのか?」
「「 なんでそんな面倒なことするんですか 」」
俺がそう聞いた瞬間、2人の声が重なった。
エレノア「あ、ネイさんどうぞ」
ネイ「えー、ヴァル?この世界の親玉がわざわざそんなこじんまりとした一室にいると思います?」
「いいや。出来ればそんな奴には玉座で偉そうにぶんぞりかえってるところをボコボコにさせてほしいな」
あれ、言っといてなんだけど、今の俺のことじゃね?
ネイ「ですよね。なら、親玉はそれなりの場所にいるでしょう」
「まあそうだな。でも、案外その辺にいたりするかもしれねぇだろ」
ネイ「そう思うならそれでいいですし、私が検討付けてる場所が違ったらそうしますよ」
なぜか呆れられてるが、そのままネイは3階へと続く階段も上りだし、話を続けた。
ネイ「ヴァル、この施設、病院みたいだとか思ってませんか?」
「ああ。つっても、俺達の世界にあるようなもんとはまるで清潔感が違ぇけど」
ネイ「そうですよね。なら、病院というのなら、親玉がいそうな場所もそれとなく検討が着くでしょう?」
いそうな場所ねぇ……。生憎、病院には全然世話になんねぇから分かんねぇんだよな。つか、俺達の街にあったのは小さな個人経営のやつだけだし、ネイは見た目の問題で風邪ひいても連れてくこと無かったしでマジで検討付かねぇ。
エレノア「もしかして、院長室……とかですか?」
エレノアは検討が付いていたっぽい。
ネイ「エレノアさん正解です。私達が目指しているのはそこですよ、ヴァル」
「なるほど。院長室か……」
いや、そんなもんがあるってことを今この場で初めて知ったわ。
「じゃあ、その院長室に行けばいいんだな」
ネイ「そうなんですけど、ここまだ3階なんですよ」
「それがどうかしたか?」
そう聞くと、ネイは何も言わずに窓の外を指さした。何かあると思って窓の外を覗いてみたが、特にこれといって何も無い。
ネイ「ヴァル、上の方です」
「上?」
窓を開け、身を乗り出す形で上の方を見上げる。すると、上の方にはまだまだ建物の壁が続いていた。
ネイ「多分、5階まであると思うんですけど、次の階に向かうための階段が見当たらないんですよ」
「通りでなんか同じ場所グルグルとしてたんだな」
ネイ「迷ってないですよ」
いや、言われなくても階段が無いんだから仕方ねぇだろ。
「じゃあ、なんだ。どっかその辺の扉開けりゃ上に行くための階段が現れたりしねぇのか?」
ネイ「そんな簡単な話じゃありませんよ」
そうは言われたが、何事も試してみなけりゃ始まらないので、俺は適当にどっかその辺の扉を開けてみる。すると、何もない一室が広がったが、天井を見上げてみるといかにもな取っ手が見つかった。
その取っ手に手をかけ、強い力で引っ張ってみると梯子っぽいものが降りてくる。
「な、言ったろ?」
エレノア「そのドヤ顔やめてください」
「いいじゃねぇか。これくらい手柄にしたって」
ネイ「何でもいいです。先に進みましょう」
ネイは驚くこともなく先に進んで行ってしまった。やっぱ、どこか塩対応……というより、どこか冷てぇ感じがする。
俺も後を続いて梯子に手をかけ上を見上げる。すると、たまたま視界にスカートの中が映り込んでしまった。
「ピンクのパンツねぇ」
《ドカッ!》
「っ……痛って……!何すんだこの野郎!」
ヒールで思いっきり顔を踏まれ、俺はそのまま下の方に落下した。距離自体は全然無かったけど、踏まれた場所が凄く痛い。
ネイ「ヴァル。いくら夫婦でも、見ていいものと悪いものがあるんですよ」
凄い蔑むような目付きで見てくる……。え、なんか嫌われるようなことでもしたか?俺。
ネイ「触るのはオッケーですけど、ジロジロ見るのはやめてください。恥ずかしいんで」
なんか素直なのかどうなのかよく分かんねぇ言われ方した。つか、触るのはアリなのかよ……。
「ああもう、悪かったよ」
俺がそう言うと、ネイは翼を広げて飛ぶように上って行った。
エレノア「あんな感じでしたっけ?ネイさん」
「いいや。あんな感じじゃねぇよ。自分で言うのもなんだが、ネイはもっとデレデレしてくるような奴だったのにな。たまにそのデレデレが酷過ぎて恐ろしい思考になる時もあったが……」
エレノア「ですよね。やっぱり、なんだか違和感を感じます」
俺も、ちょっとだけ今のネイに違和感を感じている。ヒカリみてぇにツンツンしてるし、なぜかこの世界に対してそんな疑問を抱いていない……というより、答えを知ってるかってくらいに冷静な態度。
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