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《Parallelstory》IIIStorys 【偽りの夢物語】
第12章19 【黒薔薇の最期】
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アルト「僕は願ったんだ!」
巨大化して早々、大きな翼による羽ばたきで強風が発生する。それも、魔法の力が上乗せされて見た目以上に立っているのが辛くなる。
アルト「君達を幸せにする。そして、この世界を救いのあるものにする!」
今度はブレス攻撃が空から降り掛かってきたが、それはクロムの剣が跳ね返してくれた。
クロム「一応は邪龍を封印するための剣だ。あれの攻撃は俺に任せろ」
「無理すんなよ」
クロムが1人前に立ち、黄金の炎を全身に纏ってアルトと対峙する。
クロム「お前が本気だと言うのであれば、俺も本気でお前の本気を受け止めてやる!来い!」
アルト「いいよ。ここからが本番だと言ったのは僕だ。後悔させてあげるよ」
アルトが高く高くに飛び上がる。そして勢いを付けて真っ逆さまに降ってくる。
「お、おい!流石に1人じゃーー」
エレノア「1人じゃありません!」
自分達の何百倍もある図体を、クロムとエレノアが2人がかりで押さえた。
エレノア「私はあなたに救われました。でも!それは本当の意味で救われたわけじゃないんです!諦めるのはあなたです!アルト!」
剣が7色に光り輝き、その輝きがアルトの纏う黒い霧を打ち払う!
エレノア「虹・七色の決意!」
そして、クロムの炎と交わり、エレノアの強い輝きがアルトを打ち返した!
アルト「っ……中々やるね。君だって一度は僕の世界に共感してくれたのに」
エレノア「ええ。共感しました。でも、間違いに気付くのは人間がすることです!私はあなたの世界を間違いだとは思いません。でも、私にとってのあなたの世界は間違いなんです!」
アルト「……」
エレノア「全部忘れていられた方が幸せかもしれません。でも、過去を蔑ろにした幸せなんて、私が望む幸せじゃないんです!」
そう叫ぶと、エレノアはチラとネイの方を見た。
ネイ「ヴァル。私も彼女に習って全力を出します。あの邪龍を倒すためにはヴァルの炎しかありません。私達で隙を作るので、後は任せましたよ」
そう言って、ネイがエレノアの横に並んだ。
エレノア「私の幸せは、私が決めます!」
ネイ「そういうことじゃ、アルト。お主の世界は妾達にはちと早すぎたようじゃな」
アルト「ネイ君……。君だって、ヴァル君といられる世界を望むはずだろう!?なぜ反発するんだ!」
ネイ「それはのう、アルト。妾は他人を手のひらの上で転がすことは好きじゃが、自分が転がされることは嫌いじゃからじゃよ」
……やっぱ性格悪いな、こいつ。
ネイ「だから、私も自分の生は私で決めます。ーー月下の花畑に1人の旅人がいた。旅人は己の存在を探し、1人剣を振るっていた。だが、どれだけ己の強さを誇示しようと、旅人は己の存在を見つけられないでいた。月日は流れ、やがて旅人は知ることとなる。月下の花畑に咲く一輪の黒い薔薇。それは、旅人と同じであった。己の美しさを知らしめようと健気に咲く黒薔薇。しかし、その存在は誰にも気づかれることがない。哀れだ。しかし、それでも強く咲き続ける花を見て旅人は思った。己の存在とは、見つけるものではなく、作るものであると。旅人は剣を振るうことをやめ、黒い薔薇を愛で始めた。たった1人でも、その存在に気づいてやれる者がいるのなら、それが幸せなことではないのかと。その甲斐あってか、やがて黒い薔薇は美しさをただ旅人にだけ捧げるものとし、1つの剣になって旅人の鞘に収まることになる」
世界が塗り替えられる。宇宙のような景色だった空間が一転、白い花々に包まれた優しい、けど孤独な空間に変わる。
ネイ「精神世界:月下の花畑に咲く一輪の黒薔薇」
ネイの髪が真っ黒に染まった。あいつの世界が拡がったのか……。
ネイ「アルト。ようこそ私の世界へ。そして、チェックメイトです」
ネイは自らの足元に咲く黒薔薇を引き抜くと、それを刀のような形に変えた。
ネイ「皆さん。私があれを地上に落とします。そうしたら、ヴァルの攻撃が核を貫けるよう調整してあげてください!」
エレノア「任せてください!」
クロム「ああ、任せろ!」
ミューエ「今度こそ終わりにするのね」
セリカ「承知」
ゼイラ「了解」
シアラ「まっかせてくださーい!」
エフィ「はい!私も頑張ります!」
ミラ「なんだか燃えてくるわね!こういうの!」
アルテミス「頑張って!ネイ!」
皆の声援を受け、ネイが翼を大きく広げて飛び立つ。
ネイ「エターナル・アビス!」
ーーそして、ネイが一瞬にしてアルトの胴を2つに斬り、地上に素早く降りる。
アルト「なっ……!」
ミューエ「今よ!みんな!」
そこに続いてみんながアルトに懇親の一撃を畳み込み、凄まじい音を立ててアルトが落下した。
「核……あれか……!」
その落下の際に、俺はアルトの胸部分に赤く光るものを見つけた。きっとあれが核なのだろう。
あれを壊せば終わり。それが分かった途端に足が動かなくなる。本当に終わる。この世界が……ネイの命が……
ネイ「ヴァル、好きです」
しかし、動けなくなった俺の背をすぐさまネイが押し、俺はその勢いで前に踏み出した。ーーもう、後戻りは出来なくなった……。
「……俺も好きだったぜ!ネイ!」
距離を詰め、右腕を振り上げてこの手が燃え尽きてしまうほどの炎を灯す!
「滅龍奥義!夢の終わり!」
この世界を俺の世界に変え、炎を熱くなるだけ熱くし、この拳で全てを終わらせた。
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おわっと……!」
唐突に景色が切り替わり、辺り一面が本当に宇宙みたいな空間にやって来た。一応さっきまで戦ってた場所は地上から遥か上空ってだけで、別に宇宙で戦ってたわけじゃないんだが、こっちはガチで宇宙みたいな空間だ。
「なんだってこんなとこに……」
アルトの核をぶん殴ったらその勢いそのままにこっちに来たみたいな感じか。ってことは……?
アルト「やっぱり僕を倒すのは君だったようだね」
「アルト……」
背後からあいつの声が聞こえ、振り向いた先にはやつれた格好のアルトがいた。
「まだやるってのか」
アルト「いや。僕の負けだよ。君達の覚悟の方が強かった。これ以上戦っても、多分僕には君達を越えられない」
「……」
やけにあっさりと負けを認めるんだな。あんなデカブツの龍、多分あれでもまだ本気を出してなかったと思う。もっと力があるはずなのに、なんで俺達に勝ちを譲るようなことをしたのだろうか。
「なあアルト。お前、手ぇ抜いてただろ」
アルト「抜いてるつもりはなかったんだけどね。でも、やっぱり君達を殺しちゃうんじゃないかって怖くなっちゃってね。無意識だよ」
「無意識……」
アルト「そう、無意識だ」
まあ、一応理由にはなる……のか?
「……なあ、負けたついでに答えてもらいたいんだが」
アルト「なんだい?」
「何個かあるぞ。まずここなんだ?」
アルト「ここか……。ここは世界の核だよ。全てが始まり、全てが終わる場所。運命の集束点とでも言うべき場所かな?」
何言ってんだこいつ。
アルト「要は、君の世界の中心であり、僕の世界の中心でもある。みんなにとって、中心になる場所なんだ」
「イマイチ分かんねぇな」
アルト「もっと簡単に言うと、ここさえ押さえれば世界を自由に改変できるってとこかな。君が持ってる夢の世界の力なら、それが可能なんだ。なんせ、想像力次第で何でも出来ちゃう世界だったからね」
「それをお前は利用してくれたと」
アルト「悪かったよ。そんなに怒らないでくれ」
「お前がこんなことしなけりゃ、俺は余計に悲しまずに済んだんだぞ」
アルト「それはどうかな?」
「ああ?」
アルト「確かに悲しみが増えることはないかもしれない。でも、そのままだったら今の君は存在してないんじゃないかな?」
「立ち直らせたとでも言いてぇのかよ。クソっ」
事実立ち直ってしまったわけだし、こいつがやったことはあながち間違いではない。ただ、どうしても腑に落ちねぇというか、納得出来ねぇんだ。
アルト「……君は元の世界に帰ることを選んだ。後戻りする道はもう消えてしまった。そのことに後悔するかい?」
「正直言うとむっちゃ後悔してる。やっぱりな、どんだけ言葉をかけられたところで嫌なもんは嫌だし、納得出来ねぇもんは納得出来ねぇんだよ。でも、それでも無理矢理進むしかねぇ。止まってるだけじゃ何も変わらねぇからな」
アルト「……そうか。強いな、君は」
……全然、強かねぇよ。
「なあ、アルト」
アルト「なんだい?」
「お前はこの世界を救いのある世界にするとか言ってたな?」
アルト「言ったね」
「お前は誰のためにそんなことをしてるんだ?お前の言い方だと、自分のためってところはどこにもない。誰かのためだけにしかやってないと思うんだ」
アルト「……」
「黙るなよ。そして誤魔化すな。お前は負けたんだからな」
アルト「……君は怒るだろう。もしくは嘆くだろう」
「俺が怒る相手って誰なんだ?」
アルト「……後悔を重ねさせてしまうかもしれない。でも、それでも聞きたいというのなら、教えてあげよう」
「……ゴタゴタ言ってねぇで早く教えろ」
アルト「……」
アルトはそっと一息つき、俺の耳元にまで口を近づけて話した。
アルト「確か、こっちの世界じゃこう名乗ってたはずだよ」
「……?」
アルト「ヒカリ・スターフィリア。僕が救いたいのは彼女だ」
「………………」
は?ヒカリ?
アルト「詳しく話すには、この世界の時間はもう長くなさそうだ」
「……おい、アルト」
アルト「ただ、1つだけ言っておこう」
世界の景色が崩れ落ちる中、アルトが最後に怖い顔をして言った。
アルト「君は、大事なものを2人も手放すことになったんだ。それだけは知っておいてほしい」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……」
景色は切り替わってさっきまでの夜景が綺麗な景色。
「……ヒカリ?」
アルトが救いたい相手はヒカリ。どういう意味なんだ?
クロム「大丈夫か!?ヴァル」
ーーと、呆然としていると、後ろからどつくような強さで叩いて来た奴がいた。
クロム「急に固まるからビックリしたぞ」
「……ああ、悪かった」
クロム「……?どうかしたか?」
……そういや、確かヒカリはクロムと積極的な関わりがあったはずだが、言うべきなんだろうか?……いや、今はやめておくか。
「アルト……。あの龍はどうなった?」
ミューエ「消滅したわ。中にいるはずの人間諸共ね」
「そう……か」
……帰ったってことなのか?あいつが元いた世界に。いや、それは有り得ねぇ。この世界と他の世界との繋がりは完全に絶たれてるはずなんだから。
「……まあ、いいか。よし、帰ろうぜ。俺達の現実に」
よく分からないながらも、俺達は全てが終わったと帰路に着こうとした。だが、そんな中で1人だけ後ろの方で倒れた奴がいた。
「……っ!ネイ!」
音だけですぐに分かった。
見れば、ネイの体が消えかかっている。色が段々と抜け落ち、それと並行してこの世界の景色も色を徐々に落としていた。
セリカ「ネイりん!?」
倒れたネイをすぐさま介抱し、顔が見えるよう腕に抱き抱えた。
ネイ「……どうやら、ここまでみたいてす」
消え……る……。ネイが……消える……。
アルテミス「ちょ、ちょっとどういうこと!?」
エフィ「ネイさん!まさか……!」
ネイ「……」
みんなが何となく察したような表情になり、ネイは黙ってみんなの顔を見た後に頷いた。
ネイ「1人1人とお別れの挨拶が出来るほどに時間はありません。だから、手短に……」
「……っ」
クソっ……。分かってたはずなのに、涙が止まらねぇ……。泣くのはあれを最後にするはずだったのに……っ!クソっ!クソっ!
ネイ「ヴァル。そんなに泣かないでください」
「うるせぇ。うるせぇ!分かってても……っ!仕方ねぇだろ……!」
ネイ「私だって……っ。泣きたいのを……っ!必死に……抑えてる……のに……!」
ネイも大粒の涙を流しながら俺の涙を左手で拭ってきた。
ネイ「楽しかったです……。幸せ……でしたっ……!ヴァルと……みんなと……っ、会えて……。ありがと……う……ござい……ました……!」
最後に、ネイが俺の口に顔を近付けて、軽めのキスをしてきた。これで3回目か。クソっ……!
ネイ「幸せになってください……!私がいなくても、……ヴァルは幸せになってください……!それが、最後の……私の、願いです……」
色が完全に抜け落ち、そこにいたはずのものが無くなる。俺は大粒の涙を零し、ひたすらにあいつの名前を叫んだ。会いたくてももう会えない。会うことの出来ない未来を選んだのは俺自身だ。それでもーー
「やっぱ……辛ぇだろって……!」
涙を流さないなんて無理だし、幸せになれなんて以ての外だろ……。俺は、これからどうすりゃいいんだよ。お前のいない世界で、俺はどうすりゃいいんだよ!
(好きです。大好きです)
ーー黒い花弁が舞う。さっきまでネイを抱いていた俺の腕の中には、真っ黒に染まった黒薔薇の刀があった。
巨大化して早々、大きな翼による羽ばたきで強風が発生する。それも、魔法の力が上乗せされて見た目以上に立っているのが辛くなる。
アルト「君達を幸せにする。そして、この世界を救いのあるものにする!」
今度はブレス攻撃が空から降り掛かってきたが、それはクロムの剣が跳ね返してくれた。
クロム「一応は邪龍を封印するための剣だ。あれの攻撃は俺に任せろ」
「無理すんなよ」
クロムが1人前に立ち、黄金の炎を全身に纏ってアルトと対峙する。
クロム「お前が本気だと言うのであれば、俺も本気でお前の本気を受け止めてやる!来い!」
アルト「いいよ。ここからが本番だと言ったのは僕だ。後悔させてあげるよ」
アルトが高く高くに飛び上がる。そして勢いを付けて真っ逆さまに降ってくる。
「お、おい!流石に1人じゃーー」
エレノア「1人じゃありません!」
自分達の何百倍もある図体を、クロムとエレノアが2人がかりで押さえた。
エレノア「私はあなたに救われました。でも!それは本当の意味で救われたわけじゃないんです!諦めるのはあなたです!アルト!」
剣が7色に光り輝き、その輝きがアルトの纏う黒い霧を打ち払う!
エレノア「虹・七色の決意!」
そして、クロムの炎と交わり、エレノアの強い輝きがアルトを打ち返した!
アルト「っ……中々やるね。君だって一度は僕の世界に共感してくれたのに」
エレノア「ええ。共感しました。でも、間違いに気付くのは人間がすることです!私はあなたの世界を間違いだとは思いません。でも、私にとってのあなたの世界は間違いなんです!」
アルト「……」
エレノア「全部忘れていられた方が幸せかもしれません。でも、過去を蔑ろにした幸せなんて、私が望む幸せじゃないんです!」
そう叫ぶと、エレノアはチラとネイの方を見た。
ネイ「ヴァル。私も彼女に習って全力を出します。あの邪龍を倒すためにはヴァルの炎しかありません。私達で隙を作るので、後は任せましたよ」
そう言って、ネイがエレノアの横に並んだ。
エレノア「私の幸せは、私が決めます!」
ネイ「そういうことじゃ、アルト。お主の世界は妾達にはちと早すぎたようじゃな」
アルト「ネイ君……。君だって、ヴァル君といられる世界を望むはずだろう!?なぜ反発するんだ!」
ネイ「それはのう、アルト。妾は他人を手のひらの上で転がすことは好きじゃが、自分が転がされることは嫌いじゃからじゃよ」
……やっぱ性格悪いな、こいつ。
ネイ「だから、私も自分の生は私で決めます。ーー月下の花畑に1人の旅人がいた。旅人は己の存在を探し、1人剣を振るっていた。だが、どれだけ己の強さを誇示しようと、旅人は己の存在を見つけられないでいた。月日は流れ、やがて旅人は知ることとなる。月下の花畑に咲く一輪の黒い薔薇。それは、旅人と同じであった。己の美しさを知らしめようと健気に咲く黒薔薇。しかし、その存在は誰にも気づかれることがない。哀れだ。しかし、それでも強く咲き続ける花を見て旅人は思った。己の存在とは、見つけるものではなく、作るものであると。旅人は剣を振るうことをやめ、黒い薔薇を愛で始めた。たった1人でも、その存在に気づいてやれる者がいるのなら、それが幸せなことではないのかと。その甲斐あってか、やがて黒い薔薇は美しさをただ旅人にだけ捧げるものとし、1つの剣になって旅人の鞘に収まることになる」
世界が塗り替えられる。宇宙のような景色だった空間が一転、白い花々に包まれた優しい、けど孤独な空間に変わる。
ネイ「精神世界:月下の花畑に咲く一輪の黒薔薇」
ネイの髪が真っ黒に染まった。あいつの世界が拡がったのか……。
ネイ「アルト。ようこそ私の世界へ。そして、チェックメイトです」
ネイは自らの足元に咲く黒薔薇を引き抜くと、それを刀のような形に変えた。
ネイ「皆さん。私があれを地上に落とします。そうしたら、ヴァルの攻撃が核を貫けるよう調整してあげてください!」
エレノア「任せてください!」
クロム「ああ、任せろ!」
ミューエ「今度こそ終わりにするのね」
セリカ「承知」
ゼイラ「了解」
シアラ「まっかせてくださーい!」
エフィ「はい!私も頑張ります!」
ミラ「なんだか燃えてくるわね!こういうの!」
アルテミス「頑張って!ネイ!」
皆の声援を受け、ネイが翼を大きく広げて飛び立つ。
ネイ「エターナル・アビス!」
ーーそして、ネイが一瞬にしてアルトの胴を2つに斬り、地上に素早く降りる。
アルト「なっ……!」
ミューエ「今よ!みんな!」
そこに続いてみんながアルトに懇親の一撃を畳み込み、凄まじい音を立ててアルトが落下した。
「核……あれか……!」
その落下の際に、俺はアルトの胸部分に赤く光るものを見つけた。きっとあれが核なのだろう。
あれを壊せば終わり。それが分かった途端に足が動かなくなる。本当に終わる。この世界が……ネイの命が……
ネイ「ヴァル、好きです」
しかし、動けなくなった俺の背をすぐさまネイが押し、俺はその勢いで前に踏み出した。ーーもう、後戻りは出来なくなった……。
「……俺も好きだったぜ!ネイ!」
距離を詰め、右腕を振り上げてこの手が燃え尽きてしまうほどの炎を灯す!
「滅龍奥義!夢の終わり!」
この世界を俺の世界に変え、炎を熱くなるだけ熱くし、この拳で全てを終わらせた。
……
……
……
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「おわっと……!」
唐突に景色が切り替わり、辺り一面が本当に宇宙みたいな空間にやって来た。一応さっきまで戦ってた場所は地上から遥か上空ってだけで、別に宇宙で戦ってたわけじゃないんだが、こっちはガチで宇宙みたいな空間だ。
「なんだってこんなとこに……」
アルトの核をぶん殴ったらその勢いそのままにこっちに来たみたいな感じか。ってことは……?
アルト「やっぱり僕を倒すのは君だったようだね」
「アルト……」
背後からあいつの声が聞こえ、振り向いた先にはやつれた格好のアルトがいた。
「まだやるってのか」
アルト「いや。僕の負けだよ。君達の覚悟の方が強かった。これ以上戦っても、多分僕には君達を越えられない」
「……」
やけにあっさりと負けを認めるんだな。あんなデカブツの龍、多分あれでもまだ本気を出してなかったと思う。もっと力があるはずなのに、なんで俺達に勝ちを譲るようなことをしたのだろうか。
「なあアルト。お前、手ぇ抜いてただろ」
アルト「抜いてるつもりはなかったんだけどね。でも、やっぱり君達を殺しちゃうんじゃないかって怖くなっちゃってね。無意識だよ」
「無意識……」
アルト「そう、無意識だ」
まあ、一応理由にはなる……のか?
「……なあ、負けたついでに答えてもらいたいんだが」
アルト「なんだい?」
「何個かあるぞ。まずここなんだ?」
アルト「ここか……。ここは世界の核だよ。全てが始まり、全てが終わる場所。運命の集束点とでも言うべき場所かな?」
何言ってんだこいつ。
アルト「要は、君の世界の中心であり、僕の世界の中心でもある。みんなにとって、中心になる場所なんだ」
「イマイチ分かんねぇな」
アルト「もっと簡単に言うと、ここさえ押さえれば世界を自由に改変できるってとこかな。君が持ってる夢の世界の力なら、それが可能なんだ。なんせ、想像力次第で何でも出来ちゃう世界だったからね」
「それをお前は利用してくれたと」
アルト「悪かったよ。そんなに怒らないでくれ」
「お前がこんなことしなけりゃ、俺は余計に悲しまずに済んだんだぞ」
アルト「それはどうかな?」
「ああ?」
アルト「確かに悲しみが増えることはないかもしれない。でも、そのままだったら今の君は存在してないんじゃないかな?」
「立ち直らせたとでも言いてぇのかよ。クソっ」
事実立ち直ってしまったわけだし、こいつがやったことはあながち間違いではない。ただ、どうしても腑に落ちねぇというか、納得出来ねぇんだ。
アルト「……君は元の世界に帰ることを選んだ。後戻りする道はもう消えてしまった。そのことに後悔するかい?」
「正直言うとむっちゃ後悔してる。やっぱりな、どんだけ言葉をかけられたところで嫌なもんは嫌だし、納得出来ねぇもんは納得出来ねぇんだよ。でも、それでも無理矢理進むしかねぇ。止まってるだけじゃ何も変わらねぇからな」
アルト「……そうか。強いな、君は」
……全然、強かねぇよ。
「なあ、アルト」
アルト「なんだい?」
「お前はこの世界を救いのある世界にするとか言ってたな?」
アルト「言ったね」
「お前は誰のためにそんなことをしてるんだ?お前の言い方だと、自分のためってところはどこにもない。誰かのためだけにしかやってないと思うんだ」
アルト「……」
「黙るなよ。そして誤魔化すな。お前は負けたんだからな」
アルト「……君は怒るだろう。もしくは嘆くだろう」
「俺が怒る相手って誰なんだ?」
アルト「……後悔を重ねさせてしまうかもしれない。でも、それでも聞きたいというのなら、教えてあげよう」
「……ゴタゴタ言ってねぇで早く教えろ」
アルト「……」
アルトはそっと一息つき、俺の耳元にまで口を近づけて話した。
アルト「確か、こっちの世界じゃこう名乗ってたはずだよ」
「……?」
アルト「ヒカリ・スターフィリア。僕が救いたいのは彼女だ」
「………………」
は?ヒカリ?
アルト「詳しく話すには、この世界の時間はもう長くなさそうだ」
「……おい、アルト」
アルト「ただ、1つだけ言っておこう」
世界の景色が崩れ落ちる中、アルトが最後に怖い顔をして言った。
アルト「君は、大事なものを2人も手放すことになったんだ。それだけは知っておいてほしい」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……」
景色は切り替わってさっきまでの夜景が綺麗な景色。
「……ヒカリ?」
アルトが救いたい相手はヒカリ。どういう意味なんだ?
クロム「大丈夫か!?ヴァル」
ーーと、呆然としていると、後ろからどつくような強さで叩いて来た奴がいた。
クロム「急に固まるからビックリしたぞ」
「……ああ、悪かった」
クロム「……?どうかしたか?」
……そういや、確かヒカリはクロムと積極的な関わりがあったはずだが、言うべきなんだろうか?……いや、今はやめておくか。
「アルト……。あの龍はどうなった?」
ミューエ「消滅したわ。中にいるはずの人間諸共ね」
「そう……か」
……帰ったってことなのか?あいつが元いた世界に。いや、それは有り得ねぇ。この世界と他の世界との繋がりは完全に絶たれてるはずなんだから。
「……まあ、いいか。よし、帰ろうぜ。俺達の現実に」
よく分からないながらも、俺達は全てが終わったと帰路に着こうとした。だが、そんな中で1人だけ後ろの方で倒れた奴がいた。
「……っ!ネイ!」
音だけですぐに分かった。
見れば、ネイの体が消えかかっている。色が段々と抜け落ち、それと並行してこの世界の景色も色を徐々に落としていた。
セリカ「ネイりん!?」
倒れたネイをすぐさま介抱し、顔が見えるよう腕に抱き抱えた。
ネイ「……どうやら、ここまでみたいてす」
消え……る……。ネイが……消える……。
アルテミス「ちょ、ちょっとどういうこと!?」
エフィ「ネイさん!まさか……!」
ネイ「……」
みんなが何となく察したような表情になり、ネイは黙ってみんなの顔を見た後に頷いた。
ネイ「1人1人とお別れの挨拶が出来るほどに時間はありません。だから、手短に……」
「……っ」
クソっ……。分かってたはずなのに、涙が止まらねぇ……。泣くのはあれを最後にするはずだったのに……っ!クソっ!クソっ!
ネイ「ヴァル。そんなに泣かないでください」
「うるせぇ。うるせぇ!分かってても……っ!仕方ねぇだろ……!」
ネイ「私だって……っ。泣きたいのを……っ!必死に……抑えてる……のに……!」
ネイも大粒の涙を流しながら俺の涙を左手で拭ってきた。
ネイ「楽しかったです……。幸せ……でしたっ……!ヴァルと……みんなと……っ、会えて……。ありがと……う……ござい……ました……!」
最後に、ネイが俺の口に顔を近付けて、軽めのキスをしてきた。これで3回目か。クソっ……!
ネイ「幸せになってください……!私がいなくても、……ヴァルは幸せになってください……!それが、最後の……私の、願いです……」
色が完全に抜け落ち、そこにいたはずのものが無くなる。俺は大粒の涙を零し、ひたすらにあいつの名前を叫んだ。会いたくてももう会えない。会うことの出来ない未来を選んだのは俺自身だ。それでもーー
「やっぱ……辛ぇだろって……!」
涙を流さないなんて無理だし、幸せになれなんて以ての外だろ……。俺は、これからどうすりゃいいんだよ。お前のいない世界で、俺はどうすりゃいいんだよ!
(好きです。大好きです)
ーー黒い花弁が舞う。さっきまでネイを抱いていた俺の腕の中には、真っ黒に染まった黒薔薇の刀があった。
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支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
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