グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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IIIStorys 【勝利の女神】

第12章3 【創作の世界】

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 ギルドが崩壊し、視界を覆い尽くすほどの埃が舞う。

「なに……」

 爆発……それも、私を中心にして起きた。そして、今のは魔法じゃない。ヒカリちゃんがお得意とする化学製のもの。だからなのか、無警戒だった私に大きなダメージが入った。

 ふくらはぎの皮膚が爛れ、服もボロボロになってる。でも、死んでない。それどころか、傷もすぐに治りだしてる。当たり前だ。この体には邪龍の血が通ってる。自殺でもしない限りは死なないのだから。

 でも、確実にダメージを入れられた。後もうちょっと威力が高いものだったら修復不可能な程になっていたかもしれない。

「……グランフィールド・遡行」

 時間を巻き戻し、ギルドが壊れた、仲間が傷ついたという時間を無くす。しかし、その直後にまた爆発が起こる。

 今度はみんなを守ることは出来たが、ギルドハウスは粉々。流石にもう戻すことは出来ない。

ヴェルド「クソっ、何だってんだよこんな時にっ!」

 瓦礫の山からヴェルドが顔を出し、辺りに漂う埃を氷の風で払った。

「なぁんだ失敗しちまったのかぁ……ま、神様相手だし初陣はこんなもんか」

 寝ぼけたような声が扉があった場所から聞こえる。目を向けてみると、そこには坊主頭で大砲を片手に担いだ男がいた。

「あ、俺デン。星王会っつー組織に属してる人間でよー、とりあえずそこにいる神様殺しに来たからよろしくなー」

 そう言うと、デンと名乗った男が、手にしていた大砲をこちらに向けて巨大な弾丸を放つ。

ヒカリ「ネイ!避けなさい!」

「え、ひゃい!」

 反射で翼を広げ、上空に逃げる。すると、その直後に真下の方でまた大きな爆発が広がる。ヒカリちゃん、多分LoverOrbisで打ち返しましたね。

ヒカリ「変な奴に恨まれたものね。あんた何かした?」

「私よりヒカリちゃんの方が恨み買ってそうですよ」

ヒカリ「それもそうね!」

 ヒカリちゃんがまた引き金を引き、私は発射された弾丸と並んで走り、剣を抜く。大丈夫、戦いの感覚は体に残ってる。忘れてなんかない。

「五龍王ーー」

「おっと、君の相手は私だ」

 突如として目の前に白いタキシード姿の男が現れ、私が前に突き出していた剣先を人差し指で押さえ、そのまま男は悪戯っぽく笑う。

「っ……!」

 力の発動もままならず、後ろへと飛び退く。

「初めまして。私の名前はネロ。先程彼が名乗った星王会のリーダーさ」

グリード「リーダーだがなんか知らねぇがァ!人様のギルドに殴り込みたァいい度胸してんじゃねぇかァ!」

 後ろからグリードがネロに向かって飛びつく。だが、またしても指1本で押さえられ、グリードは後ろのギリギリ形を保っていたギルドの壁に向けて飛ばされ、そのまま後ろの建物さえも貫通して飛んで行った。

 指1本であのグリードを……

フウロ「何者だ!貴様ら!」

 フウロが私の隣に並び、剣先をネロ達に向かってそう叫ぶ。

ネロ「先程名乗ったと思うんですけどねぇ」

フウロ「言葉が足りなかったようだな。貴様ら、何の用があってこんな事をーー」

デン「それもさっき言ったと思うぜ」

 今度は右の方で爆発が起きた。どうやら、弾の軌道が逸れてそっちの方で爆発したっぽい。

セリカ「ありがとうホウライ」

ホウライ「またお呼びを」

 なるほど。ホウライの力か。

デン「俺達はそこにいる神様を殺す!最初は交渉しようぜだとかなんだとか仲間内で話し合ってたんだけどなー」

ネロ「そんな事をしてもここの人間がそれに応じるわけが無い。そう結論付けて、今日この日に挨拶に来たわけだよ」

ヒカリ「挨拶?」

ネロ「そう挨拶だ。まあ、挨拶ついでに目的を達成出来れば良かったんだけども、流石は力を失ったとしても神は神だ」

「……」

 冷たい瞳だ。なんて、なんて冷たい目をしているの。

ネロ「……君は、なぜ悲しそうな目をする?」

「……あなたの方こそ、なんで、そんな悲しそうな目を」

ネロ「私が……?」

 しばらくの沈黙が訪れる。そしてーー

ネロ「……消えろ」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「……何……が……」

 一瞬にして目の前が真っ暗になり、全身を包み込むような気だるさがある。

 光がちょっとずつ差し込む。誰かが泣き叫ぶような声が耳元でジワジワと大きくなってくる。

ヒカリ「ネイ!」

「ヒカリ……ちゃん……」

 視界が鮮明になり、辺りが段々とハッキリしてくる。

「……痛てて」

ミラ「あら、動いちゃダメ!まだ血が止まんないんだから」

 全身にでも巻いてるんじゃないかと思うくらいに自分の体を見てると包帯だらけになっている。それに、ここはどこ?なんだかどこかの建物っぽいけど。

ミラ「ギルドもあなたももう本当にダメになっちゃってねー。ここは王都の宿。王女様の計らいでとりあえずここにいるって状況かしら」

ヒカリ「ちなみに、あんたが倒れてから1週間は経った」

「その間ずっと叫んでたんですか?」

ヒカリ「んなわけないでしょ。ついさっきからあんたが呻き声を上げ始めたから起こしてあげたのよ」

「……」

 1週間も寝てたのか……。

ミラ「でも不思議よねぇ。王女様ったらあなたの顔を見るなりすぐにこうやってくれたんだから。まあ、私もあなたを見てると何だかほっとけないって気分になってくるのだけれど」

ヒカリ「多分、記憶の片隅に思い出が残ってるのよ。それを上手く思い出せないから不思議な感覚になってるだけ。多分、ゼイラ王女もそんな感じね」

 ……記憶の片隅に残る思い出。ゼラとの思い出だったらいくらでも思い出せる。でも、あの人との記憶は、あの人との思い出だけはどうやっても思い出せなかった。思い出したい。何を差し出してもいいから思い出したい……!

「ヒカリちゃん。もし、私が神様本来の力を取り戻せたとしたら、あの人を蘇らせられると思いますか」

 顔だけヒカリちゃんの真反対に向け、小さな声でそう尋ねる。

ヒカリ「……分かった。少しだけ調べてみる。世界の書庫ワールドアーカイブはまだ使えるでしょうから」

 そう言ってヒカリちゃんは外に出て行った。

ミラ「あ、そうそう。ギルド、しばらくはこっちでする事になったから、何か家から持ってきたいものがあったら言ってね。グリードかシアラが持ってきてくれるから」

「……特に無いです。あの家、思い返してみればほとんどもぬけの殻でしたから」

ミラ「……そう」

 きっと、あの人が絡んでるものが全て消えてるって状況なんだろう。そもそも私の指にだって指輪が着いてなかった。……いや、指輪はそもそも貰った記憶が無い。これだけは忘れたとかじゃなくてそもそもそんな時間が存在してない。

 ーーじゃあ、何か、あの人と繋がるような思い出の物は……。

「……!あの場所なら……!」

 血をぽたぽたと落としながらベッドから飛び降り、裸足のままで私は駆け出した。多分、あの場所になら何かがある。そんな気がした。だから、私は扉を開き、思い出の場所に接続して空間を超える。ミラさんの静止なんて聞かずに、自分の体のことも考えずに、私は必死で駆け抜けた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「……っ!はっ!」

 扉を潜り抜けた先で思いっきり血を吐き出した。いくら邪龍の血が流れていようと、そろそろこの再生力も期限切れが近いのかな。それか、もしくはあの男が最後に放った攻撃に何かがあるか。いや、この際どっちでもいい。

「あの……あの丘なら……」

 ぼんやりとした記憶に残る、創真にある何の変哲もない丘。街が一望できる観光スポットで、ここで私は彼からのプロポーズを受けた。墨がかかってて顔が思い浮かばないし、その時の情景も深くは思い出せない。けれども、この場所で……この場所なら……

「……やっぱり、何も思い出せない……」

 丘の上に立っても感じられるのは寂しい風の音だけ。包帯から滲み出る血が地面に零れ落ち、虚しさだけを語る。

 そうだよ。分かっていたとも。場所を変えたところで彼のことは思い出せないって。彼は私よりも強力な権限で存在を抹消してしまったのだから。

「でも、諦められない……」

 方法はあるはず。彼ともう一度会うための方法が、どこかに必ず……

「あれ?そこにいるのはもしかしてネイ君じゃないかい?」

「……っ!え……アルト……?」

 丘の下からこちらを見上げるようにして、そこに白衣に身を包んだアルトがいた。

アルト「もしかして、今度こそ僕にも解けそうな無理難題かな」

 両の目から涙が零れ落ちた……。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

アルト「なるほどね。想い人の名前か……」

「……誰も覚えてないんだからどうしようもないですよ。それこそ、私が本当の意味で神様にでもならない限り」

 数分に渡り、私は泣きながら彼のことを知ってもらおうと必死に話した。正直、途中から何を話してるのか自分でも分からなくなったし、そもそも何を話してたんだっけって状況にもなったけど、まずは落ち着けた。ってか、なんで泣いてたんだろ……私。

アルト「つまり、神様になれば解決ということか」

「方法でも分かるんですか。ただの人間が」

アルト「ははは。ただの神様が泣いてたってんだから、ただの人間にでもそれなりの方法は考えられるだろう」

「今その話関係無くないですか?」

アルト「そうかもしれないね」

 相変わらず掴みどころの分からない男だ。でも、話してるとなぜか安心できる。彼の次くらいにだけど。

アルト「人間の世界ってのはね、色々な伝承とか神話ってものがある」

「ただの創作でしょう。そんなものに頼ったところでーー」

アルト「君は書庫の神だろ?なら、1度は考えたことは無いのかい?」

「……何を」

 私、この男に書庫の神なんて言ったことあったっけ?

 若干の警戒心でアルトを見つめる。

アルト「全ての創作物は、必ず原点が存在する。その物語が生まれた理由が存在する。伝承として現代にまで伝わるもの。それは、過去に実際にそれと同じものがあったからこそ伝わることなんじゃないかな?よく言うだろう?無から有は生み出せない。なら、それは物語も同じだ」

「……そんなこと……」

 考えもしなかった。

 私はただそこにあるだけの物語を見るだけの人物。自らで物語は生み出さない。もう生み落とされてたものを、そこにあるのが当たり前のようにして読んできた。でもーー

「そんなことを言ったら、物語なんて全部ーー」

アルト「そう。この世に作り話ってのは無くなってしまう。もし、そんなものが存在するのだとしたら、きっとそれは僕らが傍観者でいるからだろうね。僕らはこうして世界の上に立っているが、もしかしたら今ここで僕と君が交わす言葉を外から見ている人達がいるかもしれない。実はそっちの方が本当の神様で、この世界に神様なんてものはただ与えられた設定に過ぎないのかもしれない」

「……」

アルト「話を戻そう。僕はこの国の伝承を調べていてね。過去にこの国の現国王が戦ったとされる裏の世界という場所に、キミが求めるものがあるのかもしれないよ」

 それだけ言うと、アルトは「ばいばい」と手を振りながら颯爽と立ち去って行った。

「この世界すら、創作物の可能性……」

 私が読んでいた物語だって、それは本当に存在した世界の話で、何かの奇跡でそんなどこなのかすらも分からない場所の物語を書き上げた人物がいる。いや、書いた本人は自分の作品だと胸を張っているが、それが全部どこかに存在した物語の贋作だったなんて考えると……

「恐ろしい……」

 そうなれば、もしかしたらその物語を書き上げている人物こそがその世界の神様であり、ここで文字を重ねるだけの私達はその人の操り人形。その人にとって都合のいいように物語が組まれ、私達はその文字をなぞるだけ。そんなの……そんなの……

「あんまり……だ……」

 でも、有り得ない話じゃない。自分が生きてる世界が実は誰かが書いてる物語だなんて可能性は冗談半分で考えたことがある。でも、そんなふざけた話しあってたまるかって、投げ出した。

「裏の世界……デルシアさん達と共に、リエンドと戦ったあの世界……」

 その世界に行けば、彼を取り戻すための何かが手に入るのだろうか。

「……分からない……でも、行ってみるだけの価値は……」

「やぁやぁ神様。俺、アメンっつーだけどもーー」

 後ろから声……!?それも、私のことを指して神様……

アメン「こんなところで会ったのもなんかの縁ってことで、死んでくれねぇか!」

 咄嗟に剣を抜き、奴からの攻撃に応戦する。

(なんて酷い世界……)
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