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Veritas1章 【運命の少女】
Veritas1章2 【裏切り者の決意】
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ヴァル「覚えてる……か」
噛み締めるように彼はそう言った。質問の意図は分からないはず。だから、彼には答えようがないと思っていた。しかしーー
ヴァル「何を指して言ってんのかは知らねぇが、何も覚えてねぇ。そう言っとくぜ」
「……」
悲しい気分になる。けれども、どこか腑に落ちたような気分になる。求めていた答えではない。けれど、それだけで私は振り向き、そのまま彼に抱き着いた。
「……場所はここでいい。全部話す」
ヴァル「……」
彼は何も言わず、そっと優しく頭を撫でてくれた。きっと、私が涙していることに気づいたからだろう。
本当、彼を目の前にすると行動が鈍くなる。鈍くなるし、変な感情に支配される。どうしてなのか。その答えは知っているけれど、口に出すことは出来ない。
だって、彼は私のーー
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……以上が全てよ。私がこの世界に来て、あんた達に銃口を向けてしまった経緯」
コーヒーカップに口をつけ、息を飲むように苦味が走る液体を口の中に注ぐ。乾いた舌先にほんのりと温かな感触が広がる。うん、苦い。
ヴァル「すまん、全部聞かなかったことにしていいか?」
「なわけにはいかないでしょ。はぁ……」
みんながどう思うかは知らないが、少なくとも私が敵ではないことを伝えられたはず……かどうかは若干怪しいかな。でも、私の気持ちは伝えられた。これは確かだと思う。でなければ、警戒心剥き出しだったヴェルドとグリードが、こうも大人しくなるはずないから(まあ、その原因の半分くらいはフウロなのでしょうけど)。
フウロ「……その、だな」
フウロが困ったような顔をして私の隣に立って見下ろしてきた。
フウロ「事情はなんとなくだが飲み込めた。しかし、私にはどうしても分からないことがある」
「何かしら」
私は見上げもせず、彼女の質問を待った。
フウロ「お前は1度、ヴァルに向けて弾丸を放った。しかし、なぜその後敵……いや、味方であったライガをなぜ殺したんだ」
「……」
そら、ご最もな疑問のことで。
私にだって分からない。殺すことは無かったんじゃないかとも思う。それに、ヴァルに向けて放った弾丸。小さな後悔でも、私が1歩を踏み出すことを大きく鈍らせた一撃。
「自分にだって分からない。そう答えておきましょうか」
フウロ「分からない……か」
「ええ。分からないのよ、自分が。私が何をしたくてここにいるのか。何のためにこの世界に来たのか。で、何であんた達を裏切るような素振りを見せた後にあいつらに攻撃したのか。なーんにも分からない。分からないことだらけで頭がごっちゃごちゃなのよ」
もう一度コーヒーを口に含み、その後全てを吐き出すように深呼吸してから、コートの中にあるものを机に並べた。
グリード「こいつァ……」
ヴェルド「グランメモリ……とか言ってたやつだな」
当たり前の話だけど、4人の関心が私が取り出した6本のメモリに向けられる。
「これを作り出したのが間違いだったかもしれない」
ヴァル「作り出した?」
疑念を込めた赤い瞳がこちらを向き、思わずドキッとしてしまった。怖かったわけじゃない。ただ、その……いいえ、何でもないわ。
「そう、私が作り出してグランメモリと命名した。名の由来は創界の記憶。この世界が創られし時から積み重ねた記憶を、魔法の小箱に閉じ込めたもの。これを使えば、まあ見たから分かるでしょうけど、この箱に閉じ込められた記憶を解放出来る」
フウロ「ハカイ、それとタイガー」
グリード「あと、俺様はビートルを使う奴とも戦ったなァ。少年のロマンが詰め込まれた良いボディだったぜェ」
そら、カブトムシは少年みんな1度は追いかけたものでしょうね。私だって、昔一緒に追いかけたものよ。
チラとヴァルの方を見る。何も変わらない。昔から、何も変わらない。でも、それでいいのかもしれない。私のことなんか忘れたままでも、彼は上手くやって来たのだから。ワガママを言ってるのは私の方なのだから。
「他にも、バード、ユニコーン、ドラゴン、そして、あいつらのボスであるキングがあるわ。どいつもこいつも、一筋縄じゃいかない奴らよ」
ヴァル「つっても、これを作ったってんなら倒し方も知ってるんだろ?」
「ーーええそうよ。それぞれの弱点を私は知っている。そして、このメモリを壊す方法も知っている」
ヴェルド「……嘘はつかねぇよな?」
「今更?」
グリード「そうだぞヴェルドォ。ここまで敵側の情報を渡してくれたってのに、今更嘘つくかよォ。まあ、俺様なら適当に信じ込ませて最後に最悪の爆弾を投下するってのもありだけどなァ!」
この人元軍人なのかしら?やけに他3人より落ち着きがあるのよね。それに、ビートルと戦ったっていうのにほぼ無傷だし。まあ、ビートルが相手ならって考えられなくもないけど。
フウロ「はぁ。それで、メモリの壊し方というのは?」
「……出来るかどうかは分からないけど、メモリを体に挿せば、必ずその場所が核となる。その場所に向けて、強い一撃を与えれば、メモリ諸共バーンよ」
ヴァル「なるほどな、よく分からん。けど、殴れば解決ってことで良いだろ?」
「具体的にどれだけの威力が必要かを示すと、私が昼間にライガを殺した時のあれと同じくらいね」
「「「 …… 」」」
そんな難しい話をしたわけでもないのに、みんなが一斉に黙り込んでしまった。
「おいっすー!ヴェルド様ぁー!頼まれてた引きこもりセット、買い揃えてきましたよー!ってあれ?なんか暗くないですか?」
ーーと、そんな空気を数秒と持たせず、1人の青髪の少女がぶち壊した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シアラ「なるほどなるほど。全っ然分かりませんね!」
ヴェルド「お前、もう黙ってろよ……」
シアラ「いえっさー!ヴェルド様!」
なんだろう。人が真面目に話してるのにイチャつくのやめてもらっていいですか?
物凄くそう言いたい気持ちだったが、それを言ってしまえば私も同類になる。ここはグッと我慢だ。
シアラ「で、このメモリがうんたらかんたらって話でしたね」
ヴェルド「お前理解出来てんのか?」
シアラ「出来てませんけど、要はこのメモリを壊せるほどの攻撃をすればいいってことですよね。なら、ヴァルさん辺りのパンチでどうにかなるんじゃないですか?」
「「「 その手があったかー! 」」」
あっけらかんと答えたシアラに対して、全員がもがき回りたそうになんかクネクネとしている。何、ヴァルってそんなに強いの?
私はその答えを求めてヴァルの方を見る。
ヴァル「まあ、昔から物壊すのは得意だったしな。そこら辺の建物なら一撃でぶっ壊せる」
「……普通に足りるわね」
何なら、メモリは壊せなくともそのパンチだけでビートルの外装すら壊せそう。あれが壊せるほどのパンチを叩き込めるのなら、期待は出来る。けど……
「問題はどうやってあいつらと戦うか……」
ヴェルド「そんなもん、適当にぶん殴れば終わりだろ。基地の場所も知ってんだろ?ならーー」
「バカね。昼間みたいに舐めプかまして来るような連中じゃないのよ。特に、ミラーとラースは要警戒。あと、お兄ちゃん……」
ヴァル「……兄貴がいるのか?」
「うん。シヴァ兄ちゃん。血は繋がってないけど、姉ちゃんが死んで、身寄りが無くなった私を引き取ってくれた。そして、私は兄ちゃんのためだけに解放軍で色んな人殺しのための兵器を開発してきた」
出来ることなら、兄ちゃんはなんとしてでも説得したい。敵になってほしくない。でも、先に敵になってしまったのは私。それでも、兄ちゃんは許してくれるかな。
そんな思いが滲み出ていたのだろうか。ヴァル達は私を安心させるかのようにしてこう言った。
ヴァル「とりあえず、ヒカリの情報を元にしてシヴァ以外の奴ら全員をぶっ殺す」
グリード「そんな簡単に行くわけねぇと思うが、こっちにはお前と、後は自分から盛大にやったバカがいるからなァ」
「誰がバカよ。私は天才よ?」
ヴェルド「それを自分で言うのもどうかとは思うがな。ーーでも、その天才がいるなら、兄貴1人を連れ出すくらいは出来るんじゃねぇのか?」
……確かに、たった1人を説得するだけならそこまで苦労はしないか。幸い、なんとか蟠りも解けた連中がここにいるわけだし。
いや待て。ここにいるだけがこのギルドの全員ではない。他にも、セリカとかミラとかライオスとか、この事件を知っている人物はたくさんいる。特に、ライオスあたりはなんか融通が効かなそうなんだよなぁ。何、あの堅物。
フウロ「……とりあえず、今日ここであった話は私達だけのものにしておこう」
私の苦悶の表情を察して、フウロがそう言ってくれた。
フウロ「ヒカリが裏切ったというのは敵も知っている事だが、逆に私達に対しても1発弾丸を入れてるんだ。戦闘に参加しなければ、自ずと奴らも私達側にヒカリが着いたとは早々に思わないはずだ」
グリード「そうなりゃァ、敵さんの動きもちぃたァ鈍るかもしれねぇなァ。まあ、そこら辺気にする連中だったらって条件付きだがァ」
フウロ「ヒカリの奇襲性は高くなるはずだ。それで、なるべく多くのメモリ使用者を倒す。作戦はそれで行こう。……あ、ヴァルとヴェルド。特にお前らに言っておくが、他の奴らにはこの事を話すなよ。いいか、絶対だぞ。話したら……そうだな、その首を跳ねる」
フウロが両眼を光らせ、鞘から抜きかけの剣を僅かな明かりに光らせる。
「「 いきなり怖ぇよ! 」」
「ふっ……」
なんだろうな、この感じ。まるで、先生とか師匠と一緒に、魔法とか錬金術を学んでた頃みたい。
ヴァル「良い顔するようになったな」
「え?」
ヴァル「だってお前、ここに来た頃はずーっと暗い顔してたからな。あ、ここに来た頃って1週間くらい前のことだぞ」
なんだ、ヘッタクソな演技してたんだな、私。表情で悟られるようじゃ、まだまだかな。
シアラ「話をまとめると、シアラは黙っとけってことでいいですか?」
グリード「ああ、その通りだァ。お前さんは黙っとけ。それが作戦成功の秘訣だ。あ、ただヴェルドの野郎に対していつも通りのアピールは結構だぞォ」
シアラ「いえっさー!グリード様ぁ!ヴェルド様、ご公認ですよ!」
ヴェルド「何も嬉しくねぇよ!バカ!」
ーーこんな日常も、私がいたら消えちゃうのかな。
どうしても不安になる。やっぱり私は死ぬべきなんじゃないかって思う。ううん、死ぬんじゃなくて、さっさとネイを呼び出した方がいいんじゃないかなって思う。
ネイはネイで辛い思いをするけど、それでもみんなを幸せに導く。私なんかと違って、周りを笑顔にせている。私は、ラクシュミーって幸運の名前があるのに、何も幸せに出来ない。
助けてください、先生、師匠……。私、どうしたらいいんですか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夜が開ける。
私の覚悟を示すための戦いが、今始まる……!
噛み締めるように彼はそう言った。質問の意図は分からないはず。だから、彼には答えようがないと思っていた。しかしーー
ヴァル「何を指して言ってんのかは知らねぇが、何も覚えてねぇ。そう言っとくぜ」
「……」
悲しい気分になる。けれども、どこか腑に落ちたような気分になる。求めていた答えではない。けれど、それだけで私は振り向き、そのまま彼に抱き着いた。
「……場所はここでいい。全部話す」
ヴァル「……」
彼は何も言わず、そっと優しく頭を撫でてくれた。きっと、私が涙していることに気づいたからだろう。
本当、彼を目の前にすると行動が鈍くなる。鈍くなるし、変な感情に支配される。どうしてなのか。その答えは知っているけれど、口に出すことは出来ない。
だって、彼は私のーー
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……以上が全てよ。私がこの世界に来て、あんた達に銃口を向けてしまった経緯」
コーヒーカップに口をつけ、息を飲むように苦味が走る液体を口の中に注ぐ。乾いた舌先にほんのりと温かな感触が広がる。うん、苦い。
ヴァル「すまん、全部聞かなかったことにしていいか?」
「なわけにはいかないでしょ。はぁ……」
みんながどう思うかは知らないが、少なくとも私が敵ではないことを伝えられたはず……かどうかは若干怪しいかな。でも、私の気持ちは伝えられた。これは確かだと思う。でなければ、警戒心剥き出しだったヴェルドとグリードが、こうも大人しくなるはずないから(まあ、その原因の半分くらいはフウロなのでしょうけど)。
フウロ「……その、だな」
フウロが困ったような顔をして私の隣に立って見下ろしてきた。
フウロ「事情はなんとなくだが飲み込めた。しかし、私にはどうしても分からないことがある」
「何かしら」
私は見上げもせず、彼女の質問を待った。
フウロ「お前は1度、ヴァルに向けて弾丸を放った。しかし、なぜその後敵……いや、味方であったライガをなぜ殺したんだ」
「……」
そら、ご最もな疑問のことで。
私にだって分からない。殺すことは無かったんじゃないかとも思う。それに、ヴァルに向けて放った弾丸。小さな後悔でも、私が1歩を踏み出すことを大きく鈍らせた一撃。
「自分にだって分からない。そう答えておきましょうか」
フウロ「分からない……か」
「ええ。分からないのよ、自分が。私が何をしたくてここにいるのか。何のためにこの世界に来たのか。で、何であんた達を裏切るような素振りを見せた後にあいつらに攻撃したのか。なーんにも分からない。分からないことだらけで頭がごっちゃごちゃなのよ」
もう一度コーヒーを口に含み、その後全てを吐き出すように深呼吸してから、コートの中にあるものを机に並べた。
グリード「こいつァ……」
ヴェルド「グランメモリ……とか言ってたやつだな」
当たり前の話だけど、4人の関心が私が取り出した6本のメモリに向けられる。
「これを作り出したのが間違いだったかもしれない」
ヴァル「作り出した?」
疑念を込めた赤い瞳がこちらを向き、思わずドキッとしてしまった。怖かったわけじゃない。ただ、その……いいえ、何でもないわ。
「そう、私が作り出してグランメモリと命名した。名の由来は創界の記憶。この世界が創られし時から積み重ねた記憶を、魔法の小箱に閉じ込めたもの。これを使えば、まあ見たから分かるでしょうけど、この箱に閉じ込められた記憶を解放出来る」
フウロ「ハカイ、それとタイガー」
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そら、カブトムシは少年みんな1度は追いかけたものでしょうね。私だって、昔一緒に追いかけたものよ。
チラとヴァルの方を見る。何も変わらない。昔から、何も変わらない。でも、それでいいのかもしれない。私のことなんか忘れたままでも、彼は上手くやって来たのだから。ワガママを言ってるのは私の方なのだから。
「他にも、バード、ユニコーン、ドラゴン、そして、あいつらのボスであるキングがあるわ。どいつもこいつも、一筋縄じゃいかない奴らよ」
ヴァル「つっても、これを作ったってんなら倒し方も知ってるんだろ?」
「ーーええそうよ。それぞれの弱点を私は知っている。そして、このメモリを壊す方法も知っている」
ヴェルド「……嘘はつかねぇよな?」
「今更?」
グリード「そうだぞヴェルドォ。ここまで敵側の情報を渡してくれたってのに、今更嘘つくかよォ。まあ、俺様なら適当に信じ込ませて最後に最悪の爆弾を投下するってのもありだけどなァ!」
この人元軍人なのかしら?やけに他3人より落ち着きがあるのよね。それに、ビートルと戦ったっていうのにほぼ無傷だし。まあ、ビートルが相手ならって考えられなくもないけど。
フウロ「はぁ。それで、メモリの壊し方というのは?」
「……出来るかどうかは分からないけど、メモリを体に挿せば、必ずその場所が核となる。その場所に向けて、強い一撃を与えれば、メモリ諸共バーンよ」
ヴァル「なるほどな、よく分からん。けど、殴れば解決ってことで良いだろ?」
「具体的にどれだけの威力が必要かを示すと、私が昼間にライガを殺した時のあれと同じくらいね」
「「「 …… 」」」
そんな難しい話をしたわけでもないのに、みんなが一斉に黙り込んでしまった。
「おいっすー!ヴェルド様ぁー!頼まれてた引きこもりセット、買い揃えてきましたよー!ってあれ?なんか暗くないですか?」
ーーと、そんな空気を数秒と持たせず、1人の青髪の少女がぶち壊した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シアラ「なるほどなるほど。全っ然分かりませんね!」
ヴェルド「お前、もう黙ってろよ……」
シアラ「いえっさー!ヴェルド様!」
なんだろう。人が真面目に話してるのにイチャつくのやめてもらっていいですか?
物凄くそう言いたい気持ちだったが、それを言ってしまえば私も同類になる。ここはグッと我慢だ。
シアラ「で、このメモリがうんたらかんたらって話でしたね」
ヴェルド「お前理解出来てんのか?」
シアラ「出来てませんけど、要はこのメモリを壊せるほどの攻撃をすればいいってことですよね。なら、ヴァルさん辺りのパンチでどうにかなるんじゃないですか?」
「「「 その手があったかー! 」」」
あっけらかんと答えたシアラに対して、全員がもがき回りたそうになんかクネクネとしている。何、ヴァルってそんなに強いの?
私はその答えを求めてヴァルの方を見る。
ヴァル「まあ、昔から物壊すのは得意だったしな。そこら辺の建物なら一撃でぶっ壊せる」
「……普通に足りるわね」
何なら、メモリは壊せなくともそのパンチだけでビートルの外装すら壊せそう。あれが壊せるほどのパンチを叩き込めるのなら、期待は出来る。けど……
「問題はどうやってあいつらと戦うか……」
ヴェルド「そんなもん、適当にぶん殴れば終わりだろ。基地の場所も知ってんだろ?ならーー」
「バカね。昼間みたいに舐めプかまして来るような連中じゃないのよ。特に、ミラーとラースは要警戒。あと、お兄ちゃん……」
ヴァル「……兄貴がいるのか?」
「うん。シヴァ兄ちゃん。血は繋がってないけど、姉ちゃんが死んで、身寄りが無くなった私を引き取ってくれた。そして、私は兄ちゃんのためだけに解放軍で色んな人殺しのための兵器を開発してきた」
出来ることなら、兄ちゃんはなんとしてでも説得したい。敵になってほしくない。でも、先に敵になってしまったのは私。それでも、兄ちゃんは許してくれるかな。
そんな思いが滲み出ていたのだろうか。ヴァル達は私を安心させるかのようにしてこう言った。
ヴァル「とりあえず、ヒカリの情報を元にしてシヴァ以外の奴ら全員をぶっ殺す」
グリード「そんな簡単に行くわけねぇと思うが、こっちにはお前と、後は自分から盛大にやったバカがいるからなァ」
「誰がバカよ。私は天才よ?」
ヴェルド「それを自分で言うのもどうかとは思うがな。ーーでも、その天才がいるなら、兄貴1人を連れ出すくらいは出来るんじゃねぇのか?」
……確かに、たった1人を説得するだけならそこまで苦労はしないか。幸い、なんとか蟠りも解けた連中がここにいるわけだし。
いや待て。ここにいるだけがこのギルドの全員ではない。他にも、セリカとかミラとかライオスとか、この事件を知っている人物はたくさんいる。特に、ライオスあたりはなんか融通が効かなそうなんだよなぁ。何、あの堅物。
フウロ「……とりあえず、今日ここであった話は私達だけのものにしておこう」
私の苦悶の表情を察して、フウロがそう言ってくれた。
フウロ「ヒカリが裏切ったというのは敵も知っている事だが、逆に私達に対しても1発弾丸を入れてるんだ。戦闘に参加しなければ、自ずと奴らも私達側にヒカリが着いたとは早々に思わないはずだ」
グリード「そうなりゃァ、敵さんの動きもちぃたァ鈍るかもしれねぇなァ。まあ、そこら辺気にする連中だったらって条件付きだがァ」
フウロ「ヒカリの奇襲性は高くなるはずだ。それで、なるべく多くのメモリ使用者を倒す。作戦はそれで行こう。……あ、ヴァルとヴェルド。特にお前らに言っておくが、他の奴らにはこの事を話すなよ。いいか、絶対だぞ。話したら……そうだな、その首を跳ねる」
フウロが両眼を光らせ、鞘から抜きかけの剣を僅かな明かりに光らせる。
「「 いきなり怖ぇよ! 」」
「ふっ……」
なんだろうな、この感じ。まるで、先生とか師匠と一緒に、魔法とか錬金術を学んでた頃みたい。
ヴァル「良い顔するようになったな」
「え?」
ヴァル「だってお前、ここに来た頃はずーっと暗い顔してたからな。あ、ここに来た頃って1週間くらい前のことだぞ」
なんだ、ヘッタクソな演技してたんだな、私。表情で悟られるようじゃ、まだまだかな。
シアラ「話をまとめると、シアラは黙っとけってことでいいですか?」
グリード「ああ、その通りだァ。お前さんは黙っとけ。それが作戦成功の秘訣だ。あ、ただヴェルドの野郎に対していつも通りのアピールは結構だぞォ」
シアラ「いえっさー!グリード様ぁ!ヴェルド様、ご公認ですよ!」
ヴェルド「何も嬉しくねぇよ!バカ!」
ーーこんな日常も、私がいたら消えちゃうのかな。
どうしても不安になる。やっぱり私は死ぬべきなんじゃないかって思う。ううん、死ぬんじゃなくて、さっさとネイを呼び出した方がいいんじゃないかなって思う。
ネイはネイで辛い思いをするけど、それでもみんなを幸せに導く。私なんかと違って、周りを笑顔にせている。私は、ラクシュミーって幸運の名前があるのに、何も幸せに出来ない。
助けてください、先生、師匠……。私、どうしたらいいんですか。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
夜が開ける。
私の覚悟を示すための戦いが、今始まる……!
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