417 / 434
Veritas3章 【運命の分岐点】
Veritas3章7 【世界の行く果ては】
しおりを挟む
グランアーク王城3階大広間。アポカリプスの襲撃があったものの、奇跡的に被害を免れたこの城で、今回起きた出来事の状況説明会が行われている。参加者は各ギルドのマスターと王国議会の議員、あとは騎士団の人間だったり私達みたいな状況を深く知る人物だったりと結構大所帯だ。
ヨルハ「謎の龍ことアポカリプス。未来を知る龍人。僅か一晩で起きたにしては頭の整理が追いつかん内容ですね。ふむ、グランメモリーズのマスター。その龍人を私のところへ預けなさい。私が徹底的に調べ尽くします」
少しだけ静かになったこの会議で、次に口を開いたのはマジックアルケミストのギルドマスターヨルハ。亜人趣味の変わり者で、早速ネイを寄越せと言い出している。しかも隠す気がないくらいに目を輝かせて。
ヴァハト「誰がくれてやるかこの変人。うちのガキ共は誰1人としてくれてやらん!」
シロー「少々やかましいぞ貴様ら。この場に議論以外の会話は余計だ」
ヨルハ「新参者が私達に余計な口出しをしないでください」
シロー「なんだと?」
ユカリ「あ、あのあの、け、喧嘩はよくないと思います!」
火花をバチバチと鳴らすのがハイドロオーシャンズのシロー。そしてそんな雰囲気をどうにかしようとビクビクしながらも口を開いたのはトゥインクルアスタロトのユカリ。両方ともギルドマスターであることはわざわざ説明するまでもないか。……で、シローは特に特徴のない仙人って感じだけど、ユカリの方は鬼人ね。本人がコンプレックスに思ってるのか、特徴的な角は隠してるっぽいけど見る人が見れば分かるわ。
ユカリ「み、未来の話がどうとか、邪龍が現れたとか、そ、そんな難しい話は私にはよく理解できませんが、少なくとも今は皆さんが協力するべき時ではないでしょうか」
センリ「協力か。この毎年のように集っては悪態をつきあう集団かが」
ユカリ「……」
リアム「センリ爺さんの言う通りだぜ。そりゃ、一部仲のいいギルドはあるかもしれねぇがほとんどはお互いに嫌味しか言い合わねぇ集団だ。少なくとも、俺達コールドミラーは協力する気になんかなれねぇ。それも、グランメモリーズが関わってるいざこざなら尚更な」
白ひげを生やしたワンピースにでも登場しそうなお爺さんがシェミスターライトのギルドマスターセンリ。そしてなぜかこの場にいるコールドミラーの龍殺しリアム。……まあ、いる理由ってのはギルドマスター不在による代理ってだけだから理解出来ない話じゃないんだけど、こいつの顔見てるとなんか腹立つのよね。
リアム「俺は許さねぇぞグランメモリーズ」
ヴァル「ああ?何がだよ」
リアム「準決勝の事件に始まり、過去にお前らがうちにやってくれた数々の迷惑行為。今ここでハッキリ恨み晴らさせてもらおうか!」
そう言ったリアムは、ここに大勢のお偉いさんが集まっているというにも関わらず立ち上がり、ヴァルの方へと詰め寄る。だがーー
ネイ「……」
瞬間、立ち上がったはずのリアムはなぜか腹を押さえて地面に蹲っていた。
ユカリ「り、リアムさん!?」
リアム「が……ぁ……。なん……だ……」
少し間を空けて場がザワザワと騒ぎ出す。そりゃそうよ。自分達には見えない敵が現れたと誰もが思う場面でしょうから。
ネイ「私がやりました。なんか腹が立ったので」
「「「 …… 」」」
すごく個人的な理由。まあらしいっちゃらしいけど。
ネイ「今の話、信じてもらわなくて結構です。ただの魔導士如きに難しい話が理解出来るとは思っていませんから」
ヨルハ「ただの魔導士……か。気に障る言い方をするな」
ネイ「私から見ればここにいる魔導士は全員ただの魔導士です。全員が束になってかかって来ても、誰1人として私に傷を付けることは出来ないでしょうから。……この時代の魔導士は弱すぎます」
リアム「んだどォ!?」
ユカリ「あ、あのあの、ですからここは皆さんで協力を!」
リアム「出来るかよ!こんな龍人共相手に!」
……あーあ。ちゃんとした敗北をしなかったせいで拗れちゃってるわ。
センリ「事を軽く見ることの出来ない状況だというのは分かっている。だが、我としても、そこのギルドと協力するなどということは出来ぬな。……忘れたとは言わせんぞ。今回の騒動の中心がそちらにあるということを」
ヴァハト「むぅ……。(2代目。どうにか言ってもらえんか)」
ネイ「……はい。今回の騒動。私に非があるのは全面的に認めます。大変申し訳ございませんでした」
何か言い返すかと思ったけど、意外にも素直に腰を折ってネイは謝った。それも、余計な一言すらも付けずに、きちんと謝罪の意志を見せたのだ。
精神年齢だけはちゃんと成長してるのね。
ネイ「……聞くかどうか、それを聞いてどう感じるかは皆さんにお任せします。これは、今からそう遠くない未来の話です」
それからネイは、絶望の未来と勝利を掴んだ未来の2つを事細かに話した。今まで身内以外には絶対に話さなかったことを、まだ私達にすら聞かされていない話を。そしてーー
ネイ「この世界は何度も繰り返されている。ようやく突破したと思った未来でも、歯車1つ足りなかっただけで消滅させられている。私がいた未来は歯車が足りなかったが故に消滅させられた。そしてこの世界も、いつ歯車が欠けてしまうか分からない状況にあります。誰か1人でも死んでしまえば未来が訪れなくなるかもしれない。誰か1人でも敵だとして殺してしまえばそれを気に食わない誰かによって未来が消されるかもしれない。運命は、常に私達の手の中にあります。でも、両手にすくった砂みたいに、ほんのちょっとの隙間からでもこぼれ落ちるようになっている。だから、今は信じなくても構いません。でも、お願いですから死なないでください。そして敵を敵だと割り切らないでください。皆さんの、未来のために」
「「「 …… 」」」
シロー「敵を敵と割り切るな……か。それが、あのアポカリプスという厄災を生け捕りにした理由か」
ネイ「……はい。彼も、未来を描くために必要な人物です。僅か数分でこの街を破壊してしまいましたが、彼にも彼なりの理由があっての行動です。ーーゼイラさん。アポカリプスは私に、グランメモリーズ2代目ギルドマスターのツクヨミである私に任せてください」
ネイがそう言い放った直後、これまでの比にならないほど場が騒々しくなる。
そりゃそうか。未来人と言っていたのに急に1000年も前の人物を名乗るんだもの。ちゃんと知っている人間ならちゃんと混乱するわ。
ゼイラ「ツクヨミ……様……ですか」
ネイ「はい。姿は……こうすれば分かりますかね」
ネイは一時的に着物ロリっ子のヨミへと姿を変え、みんなから、特にゼイラ王女からの信頼を得ようとする。
ユカリ「え、えーっと、未来人なのに過去の偉人?あれ?過去の人が未来人?あれれ?」
ネイ「ツクヨミという人間は時を操る魔法を使います。それに魔女でもあるので寿命は非常に長いです」
長いって言うか不老不死じゃない。
ネイ「かつての世界では私は過去の人間として過ごしていました。それが今、そんな未来からやってきたせいで未来人になっているだけです。どの道皆さんよりは歳上なのであまり調子に乗りすぎた言動を行わないように。特にコールドミラーの代理マスターさん」
リアム「うるせぇ」
ネイ「……それで、ゼイラさん。アポカリプスはーー」
ゼイラ「……あ、はい。その件については議会の方でも揉めていましたので、引き取って頂けるのならお願いします。ただし、再び彼が暴れるようなことがあれば……」
ネイ「大丈夫です。強制的に契約させてますから」
ゼイラ「……。他、皆様何か話し合うことはないでしょうか。無ければこの会議は終わりにしたいと思います」
ユカリ「あ、で、でしたら私いいでしょうか」
ゼイラ「ユカリさん。どうぞ」
ユカリ「近頃私達トゥインクルアスタロトのギルドがある、王都南部クロロルの街で、近頃異形の怪物が目撃されています」
ヨルハ「異形の怪物……」
ユカリ「はい。形は煙……のようなものでしょうか。特に危害を加えに来るわけでもなく、ただ突然現れてはあっという間に消えてしまう生物……です。何か情報がある方は、また後でお願いします」
煙のような生物で神出鬼没か……。
ネイ「……」
ネイがチラとこちらを見てきた。考えるまでもないって事ね。後で話を聞きに行きましょうか。
ゼイラ「それでは皆さん。長く時間を取ってしまい申し訳ございませんでした。これにて閉幕としたいと思います」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「はぁー、やっと終わったー!……俺必要だったか?」
「要らなかったかもね。変に暴れ出す人間なんていなかったし、そもそもそんなのいたとしてもネイがどうにかしちゃうんだし」
ヴァハト「2代目には頭が上がらんわい」
ネイ「……」
ギルドのテントがある場所に向けて、若干片付けはされてるもののまだまだ世紀末感漂わせる瓦礫道を歩きながら、そっと一息。戦いが予想以上に早く終わってしまったのはいいのだけれど、私にはどうしても気になっていることがある。
それは、今回の騒動でヴェリアが一切関わってこなかったことだ。
歴史の矯正点って言うくらいなんだから、これだけ歴史が変わろうとしている状況なら躊躇わず茶々を入れてくるはず、と思っていたのだけれど、実際に来たのはエンマだけ。どうにも腑に落ちない。
「ねえ、ネイ」
ネイ「……」
「ネイ?」
ネイ「……、あ、えっと、何ですか?」
またボーっとしてる。そんなにこの時代に来たのが嫌なのかしら。
「気にならないの?ヴェリアが今回の騒動に関わってこなかったってこと」
ネイ「ヴェリア……。えーっと、確かにそうなんですけど……」
……妙に歯切れが悪いわね。
ネイ「出来れば、ラナにも聞いてほしい話なんですけど」
ラナ「僕がどうかしたかい」
ーーと、タイミングよくラナ登場。しかも私の後ろから。
ネイ「……この世界が繰り返している。前の世界では何もかもが失敗に終わった。それが、今ここにいる皆さんの認識。それでいいですよね」
ヴァハト「爺には何言っとるんか分からんが、まあそういうことなんじゃろう」
ヴァル「俺もだ。正直よく分かんねぇ」
まあ、一般人はそうでしょうね。
ラナ「僕の認識だと、概ねその通りで合っている。僕はそんな世界から時間を遡ってここにやって来た」
「私は未来のあんた……この場合過去になるのかしら?まあどっちでもいいけど、呼ばれた時に読んだ本で知ってる。まだ経験したわけじゃないけど、なぜか経験した気になってる……うん」
ネイ「それは、前回の出来事だと認識してますか?」
ラナ「前回も何も、僕はその時間から遡ってきたんだ。僕の知らないうちに繰り返しているだなんて有り得ない」
ネイ「そうでしょうか?」
ラナ「……何?」
ネイは静かにそっとため息をついてから話し出した。
ネイ「確かにラナの記憶ではこの世界は前回と地続きになっているかもしれません。ラナの記憶なら。でも、私の記憶は違います。ヒカリちゃんが生き残り、ヴェリアが現れるようになってからのこの世界。私は、この世界、この時間を6万回以上繰り返しました」
「「 …… 」」
6……万回……?
ラナ「待て。有り得ない。この世界を6万回だと?そんなに繰り返してれば僕が気付かないわけがない」
ネイ「気付けるはずありません。ラナと同じです。失敗する度に自分だけが過去に渡り、また新しく歴史を描き始めるのですから、ラナもヒカリちゃんも、未来を知っているとは言えただの登場人物にしか過ぎません」
「……なんか腹立つ言い方ね」
ネイ「どうとでも思ってください。少なくとも、私だけがまたこの時間を6万回繰り返している。それを知ってもらえれば……いえ、あともう1つ大切なことがあります」
ラナ「……これ以上何を言い出すつもりだ」
ネイ「私の命。私の魂の期限。それが、あと3ヶ月しかないということです」
……
……
……え。
ヨルハ「謎の龍ことアポカリプス。未来を知る龍人。僅か一晩で起きたにしては頭の整理が追いつかん内容ですね。ふむ、グランメモリーズのマスター。その龍人を私のところへ預けなさい。私が徹底的に調べ尽くします」
少しだけ静かになったこの会議で、次に口を開いたのはマジックアルケミストのギルドマスターヨルハ。亜人趣味の変わり者で、早速ネイを寄越せと言い出している。しかも隠す気がないくらいに目を輝かせて。
ヴァハト「誰がくれてやるかこの変人。うちのガキ共は誰1人としてくれてやらん!」
シロー「少々やかましいぞ貴様ら。この場に議論以外の会話は余計だ」
ヨルハ「新参者が私達に余計な口出しをしないでください」
シロー「なんだと?」
ユカリ「あ、あのあの、け、喧嘩はよくないと思います!」
火花をバチバチと鳴らすのがハイドロオーシャンズのシロー。そしてそんな雰囲気をどうにかしようとビクビクしながらも口を開いたのはトゥインクルアスタロトのユカリ。両方ともギルドマスターであることはわざわざ説明するまでもないか。……で、シローは特に特徴のない仙人って感じだけど、ユカリの方は鬼人ね。本人がコンプレックスに思ってるのか、特徴的な角は隠してるっぽいけど見る人が見れば分かるわ。
ユカリ「み、未来の話がどうとか、邪龍が現れたとか、そ、そんな難しい話は私にはよく理解できませんが、少なくとも今は皆さんが協力するべき時ではないでしょうか」
センリ「協力か。この毎年のように集っては悪態をつきあう集団かが」
ユカリ「……」
リアム「センリ爺さんの言う通りだぜ。そりゃ、一部仲のいいギルドはあるかもしれねぇがほとんどはお互いに嫌味しか言い合わねぇ集団だ。少なくとも、俺達コールドミラーは協力する気になんかなれねぇ。それも、グランメモリーズが関わってるいざこざなら尚更な」
白ひげを生やしたワンピースにでも登場しそうなお爺さんがシェミスターライトのギルドマスターセンリ。そしてなぜかこの場にいるコールドミラーの龍殺しリアム。……まあ、いる理由ってのはギルドマスター不在による代理ってだけだから理解出来ない話じゃないんだけど、こいつの顔見てるとなんか腹立つのよね。
リアム「俺は許さねぇぞグランメモリーズ」
ヴァル「ああ?何がだよ」
リアム「準決勝の事件に始まり、過去にお前らがうちにやってくれた数々の迷惑行為。今ここでハッキリ恨み晴らさせてもらおうか!」
そう言ったリアムは、ここに大勢のお偉いさんが集まっているというにも関わらず立ち上がり、ヴァルの方へと詰め寄る。だがーー
ネイ「……」
瞬間、立ち上がったはずのリアムはなぜか腹を押さえて地面に蹲っていた。
ユカリ「り、リアムさん!?」
リアム「が……ぁ……。なん……だ……」
少し間を空けて場がザワザワと騒ぎ出す。そりゃそうよ。自分達には見えない敵が現れたと誰もが思う場面でしょうから。
ネイ「私がやりました。なんか腹が立ったので」
「「「 …… 」」」
すごく個人的な理由。まあらしいっちゃらしいけど。
ネイ「今の話、信じてもらわなくて結構です。ただの魔導士如きに難しい話が理解出来るとは思っていませんから」
ヨルハ「ただの魔導士……か。気に障る言い方をするな」
ネイ「私から見ればここにいる魔導士は全員ただの魔導士です。全員が束になってかかって来ても、誰1人として私に傷を付けることは出来ないでしょうから。……この時代の魔導士は弱すぎます」
リアム「んだどォ!?」
ユカリ「あ、あのあの、ですからここは皆さんで協力を!」
リアム「出来るかよ!こんな龍人共相手に!」
……あーあ。ちゃんとした敗北をしなかったせいで拗れちゃってるわ。
センリ「事を軽く見ることの出来ない状況だというのは分かっている。だが、我としても、そこのギルドと協力するなどということは出来ぬな。……忘れたとは言わせんぞ。今回の騒動の中心がそちらにあるということを」
ヴァハト「むぅ……。(2代目。どうにか言ってもらえんか)」
ネイ「……はい。今回の騒動。私に非があるのは全面的に認めます。大変申し訳ございませんでした」
何か言い返すかと思ったけど、意外にも素直に腰を折ってネイは謝った。それも、余計な一言すらも付けずに、きちんと謝罪の意志を見せたのだ。
精神年齢だけはちゃんと成長してるのね。
ネイ「……聞くかどうか、それを聞いてどう感じるかは皆さんにお任せします。これは、今からそう遠くない未来の話です」
それからネイは、絶望の未来と勝利を掴んだ未来の2つを事細かに話した。今まで身内以外には絶対に話さなかったことを、まだ私達にすら聞かされていない話を。そしてーー
ネイ「この世界は何度も繰り返されている。ようやく突破したと思った未来でも、歯車1つ足りなかっただけで消滅させられている。私がいた未来は歯車が足りなかったが故に消滅させられた。そしてこの世界も、いつ歯車が欠けてしまうか分からない状況にあります。誰か1人でも死んでしまえば未来が訪れなくなるかもしれない。誰か1人でも敵だとして殺してしまえばそれを気に食わない誰かによって未来が消されるかもしれない。運命は、常に私達の手の中にあります。でも、両手にすくった砂みたいに、ほんのちょっとの隙間からでもこぼれ落ちるようになっている。だから、今は信じなくても構いません。でも、お願いですから死なないでください。そして敵を敵だと割り切らないでください。皆さんの、未来のために」
「「「 …… 」」」
シロー「敵を敵と割り切るな……か。それが、あのアポカリプスという厄災を生け捕りにした理由か」
ネイ「……はい。彼も、未来を描くために必要な人物です。僅か数分でこの街を破壊してしまいましたが、彼にも彼なりの理由があっての行動です。ーーゼイラさん。アポカリプスは私に、グランメモリーズ2代目ギルドマスターのツクヨミである私に任せてください」
ネイがそう言い放った直後、これまでの比にならないほど場が騒々しくなる。
そりゃそうか。未来人と言っていたのに急に1000年も前の人物を名乗るんだもの。ちゃんと知っている人間ならちゃんと混乱するわ。
ゼイラ「ツクヨミ……様……ですか」
ネイ「はい。姿は……こうすれば分かりますかね」
ネイは一時的に着物ロリっ子のヨミへと姿を変え、みんなから、特にゼイラ王女からの信頼を得ようとする。
ユカリ「え、えーっと、未来人なのに過去の偉人?あれ?過去の人が未来人?あれれ?」
ネイ「ツクヨミという人間は時を操る魔法を使います。それに魔女でもあるので寿命は非常に長いです」
長いって言うか不老不死じゃない。
ネイ「かつての世界では私は過去の人間として過ごしていました。それが今、そんな未来からやってきたせいで未来人になっているだけです。どの道皆さんよりは歳上なのであまり調子に乗りすぎた言動を行わないように。特にコールドミラーの代理マスターさん」
リアム「うるせぇ」
ネイ「……それで、ゼイラさん。アポカリプスはーー」
ゼイラ「……あ、はい。その件については議会の方でも揉めていましたので、引き取って頂けるのならお願いします。ただし、再び彼が暴れるようなことがあれば……」
ネイ「大丈夫です。強制的に契約させてますから」
ゼイラ「……。他、皆様何か話し合うことはないでしょうか。無ければこの会議は終わりにしたいと思います」
ユカリ「あ、で、でしたら私いいでしょうか」
ゼイラ「ユカリさん。どうぞ」
ユカリ「近頃私達トゥインクルアスタロトのギルドがある、王都南部クロロルの街で、近頃異形の怪物が目撃されています」
ヨルハ「異形の怪物……」
ユカリ「はい。形は煙……のようなものでしょうか。特に危害を加えに来るわけでもなく、ただ突然現れてはあっという間に消えてしまう生物……です。何か情報がある方は、また後でお願いします」
煙のような生物で神出鬼没か……。
ネイ「……」
ネイがチラとこちらを見てきた。考えるまでもないって事ね。後で話を聞きに行きましょうか。
ゼイラ「それでは皆さん。長く時間を取ってしまい申し訳ございませんでした。これにて閉幕としたいと思います」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
ヴァル「はぁー、やっと終わったー!……俺必要だったか?」
「要らなかったかもね。変に暴れ出す人間なんていなかったし、そもそもそんなのいたとしてもネイがどうにかしちゃうんだし」
ヴァハト「2代目には頭が上がらんわい」
ネイ「……」
ギルドのテントがある場所に向けて、若干片付けはされてるもののまだまだ世紀末感漂わせる瓦礫道を歩きながら、そっと一息。戦いが予想以上に早く終わってしまったのはいいのだけれど、私にはどうしても気になっていることがある。
それは、今回の騒動でヴェリアが一切関わってこなかったことだ。
歴史の矯正点って言うくらいなんだから、これだけ歴史が変わろうとしている状況なら躊躇わず茶々を入れてくるはず、と思っていたのだけれど、実際に来たのはエンマだけ。どうにも腑に落ちない。
「ねえ、ネイ」
ネイ「……」
「ネイ?」
ネイ「……、あ、えっと、何ですか?」
またボーっとしてる。そんなにこの時代に来たのが嫌なのかしら。
「気にならないの?ヴェリアが今回の騒動に関わってこなかったってこと」
ネイ「ヴェリア……。えーっと、確かにそうなんですけど……」
……妙に歯切れが悪いわね。
ネイ「出来れば、ラナにも聞いてほしい話なんですけど」
ラナ「僕がどうかしたかい」
ーーと、タイミングよくラナ登場。しかも私の後ろから。
ネイ「……この世界が繰り返している。前の世界では何もかもが失敗に終わった。それが、今ここにいる皆さんの認識。それでいいですよね」
ヴァハト「爺には何言っとるんか分からんが、まあそういうことなんじゃろう」
ヴァル「俺もだ。正直よく分かんねぇ」
まあ、一般人はそうでしょうね。
ラナ「僕の認識だと、概ねその通りで合っている。僕はそんな世界から時間を遡ってここにやって来た」
「私は未来のあんた……この場合過去になるのかしら?まあどっちでもいいけど、呼ばれた時に読んだ本で知ってる。まだ経験したわけじゃないけど、なぜか経験した気になってる……うん」
ネイ「それは、前回の出来事だと認識してますか?」
ラナ「前回も何も、僕はその時間から遡ってきたんだ。僕の知らないうちに繰り返しているだなんて有り得ない」
ネイ「そうでしょうか?」
ラナ「……何?」
ネイは静かにそっとため息をついてから話し出した。
ネイ「確かにラナの記憶ではこの世界は前回と地続きになっているかもしれません。ラナの記憶なら。でも、私の記憶は違います。ヒカリちゃんが生き残り、ヴェリアが現れるようになってからのこの世界。私は、この世界、この時間を6万回以上繰り返しました」
「「 …… 」」
6……万回……?
ラナ「待て。有り得ない。この世界を6万回だと?そんなに繰り返してれば僕が気付かないわけがない」
ネイ「気付けるはずありません。ラナと同じです。失敗する度に自分だけが過去に渡り、また新しく歴史を描き始めるのですから、ラナもヒカリちゃんも、未来を知っているとは言えただの登場人物にしか過ぎません」
「……なんか腹立つ言い方ね」
ネイ「どうとでも思ってください。少なくとも、私だけがまたこの時間を6万回繰り返している。それを知ってもらえれば……いえ、あともう1つ大切なことがあります」
ラナ「……これ以上何を言い出すつもりだ」
ネイ「私の命。私の魂の期限。それが、あと3ヶ月しかないということです」
……
……
……え。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
[完結]7回も人生やってたら無双になるって
紅月
恋愛
「またですか」
アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。
驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。
だけど今回は違う。
強力な仲間が居る。
アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
2度死んだ王子は今度こそ生き残りたい
緑緑緑
ファンタジー
王太子ロイは、かつて二度の革命によって祖国を崩壊させてしまった過去を持つ。命を落とすたび、彼はある時点へと巻き戻される。そして今、三度目の人生が静かに幕を開けようとしていた。
――自分は民を理解しているつもりだった。
だが実際には、その表面しか見えていなかったのだ。
その痛烈な自覚から、物語は動き始める。
革命を回避するために必要なのは、制度でも権力でもない。「人を知る」ことこそが鍵だと、ロイは気付く。
彼はエコール学園での生活を通じ、身分も立場も異なる様々な人間と深く関わっていく。
そこで出会う一人ひとりの想いと現実が、やがて国の未来を大きく左右していくことになるとは、この時のロイはまだ知らない。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる