グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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Maledictio4章 【物語の罰】

Maledictio4章2 【煙の化け物】

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サテラ「……はぁ」

「どうした。ため息つくなんて、普段のテンションからは考えられんぞ」

サテラ「そりゃため息くらいつきますよ~人間だもの」

「……どうかしたか?」

サテラ「いえ、なぁんであんなに子供達に嫌われなきゃならないのかなぁって。ちょっと不思議じゃないですか?」

「まあ、不思議と言えば不思議だが……」

サテラ「そうですよね!そうに決まってますよね!こんな美少女なのになんであんな破壊神より人気が無いんですか!なんであんなオッサンの方が人気なんですか!おかしいでしょ!」

 真っ暗な夜の道に、サテラの悲痛(?)な叫び声が木霊する。確かに、アリスの方が人気なのはちょっと意外だったが、別に何かそこに謎があるようにも見えんしな。

サテラ「やっぱり見た目なんですかね……この大きな翼が邪魔なんですかね!」

「と、私に問われてもだな……」

 翼と言えば、あのアリスも龍人らしく大きな翼はあったがな。まあ、広げた時はサテラの方が遥かに大きいが。

 天翼族フリューゲル。この世界じゃ最早絶滅危惧種とまで言われる希少種だが、それは単に数が少ないだけで今すぐにでも絶滅するような種族ではない。天翼族は寿命が数千年にも及ぶと言われ、その命の長さからなのかあまり子孫を残さない種族。死にはしないが、増えることもないというわけだな。

「にしても、お前そんな目立つ格好をしててよく今まで無事だったな」

サテラ「へ?なんでです?」

「なんでかって、世の中変な性癖を持った奴らは大勢いる。とりわけ、亜人は種族にもよるが天翼族ともなれば超が付くほどの希少種だ。見たところ1人旅のようだが、そうなれば賊にでも捕まるのがオチだろう」

サテラ「あー、確かにそうですね~。まあ、こんな身なりしてると何度か危ない目に遭うこともありますよ。最近なんて、ちょっとワケあってザガルの国境越えようとした時に向こうの兵士さんに捕まりそうになりましたからね!天翼族だからってこの扱い酷いでしょ!」

「……」

 いや、それ多分でしかないが正規の方法で越えようとしなかったからなのでは?

サテラ「あーあ、そのせいで無駄な時間取らされるわ大切な形見も落としちゃうわ、本当良いことないですね!」

「……形見はグランアークで落としたんじゃないのか?」

サテラ「あ、しまった!色んなものとごっちゃになってました!」

 ……いわゆる不思議ちゃんというやつなのだろうが、よく分からない奴だな。ただの依頼人。そう思って個人に関わることは何も聞いてこなかったが、少しくらいは彼女のことを知っておいた方がいいか?

「……お前、何歳だ?」

 ーーとは言っても、何を聞くべきかは咄嗟に思い浮かばず、さっきの天翼族は長寿というところから発想し、私はそう問いかけた。

サテラ「お、女の人の年齢聞くとか失礼ですよ!」

「私は19歳だ」

サテラ「……わ、若いですねぇ……流石人の子……」

「で、お前は何歳なんだ?」

サテラ「……に、273600歳です」

「……」

 長命だとは聞いていたが、20万超えだと?それは……流石に不老不死とかそういう類を疑いたくなるな……。

サテラ「正直、有り得ない時間を生きてるって自覚はあります。でも、天翼族って、本気で生きようとすればこれくらいは生きれる……らしいです」

「……その、なんだ。すまなかったな」

サテラ「人に年齢聞いといて勝手に罪悪感感じるのやめてくれません!?」

 20万か……。それだけ生きていれば、それ相応の悩みもありそうなものだが……。まあいいか。

サテラ「長生きなんてするもんじゃありませんよ。自分が見てる世界はどんどん変わっちゃって寂しくなりますし、仲良くなった人達も気付けば死んじゃってる。それでも寂しいのが嫌だからって、その時代その時代に適応して色々とやってきましたけど、結局心の中にあるものは虚無。……何話してるんですかね」

「……もしや、魔法探偵というのは……」

サテラ「ああ、この時代での設定ですよ。フウロさんだけには言っておきますけど、私そんなに頭良くないですし、探偵の仕事もしたことありませんよ」

「……それは、何となくそうだろうなと思ってた」

サテラ「え、なんでですか」

「あくまでイメージでしかないが、探偵と言えばもっとコソコソするもんだろう」

サテラ「すごい偏見!……まあ、私が思う探偵もそんな感じなんですけど、でもコソコソ人の後着けてく探偵なんて嫌じゃないですか。だから、どうせならって魔法でなんでも解決!この時代に現れた美少女魔法探偵!ってのをやってたんですけど……」

「正直笑いものでしかないぞ」

サテラ「……胸が痛いです」

「……それで、なんで私にそんな話をしてきたんだ?」

サテラ「何でって、フウロさんが私の年齢聞いてきたからじゃないですか」

 ん?そうだったか?

サテラ「まあでも、今日話したことは忘れておいた方がいいです。どうせ私、そのうちブラーっと消えちゃいますんで」

「残念だが、うちのギルドは依頼人の情報を永久保存する場所だ。忘れんぞ」

サテラ「……まあ何でもいいですよ。で、ちょっと本題に戻るんですけど……」

「ん?本題?」

サテラ「ほら、トゥインクルアスタロトの皆さんを探してる真っ最中だったじゃないですか。それで、なんですけど……」

 サテラが路地の奥の方を指さし、何やら困ったような表情を浮かべてくる。

「路地の先……広場みたいだな?何かあるのか?」

サテラ「いえ、何かあるも何も……」

 イマイチ要領を得ない回答で、サテラは路地の先を進んでいく。私も、サテラの明かり無しじゃろくに辺りを見渡すことも出来ないので後をついて行くが、着いた先の広場にあったものは……。

「これは……」

 噴水とベンチが置いてあるだけの殺風景な広場だが、サテラの明かりに照らされて不気味なものが浮び上がる。

「人……それも、十字架に張られてる?」

 やはり暗いのでよくは見えない。しかし、噴水をぐるっと取り囲むように設置されたその顔1つ1つを照らしてもらうと、うち1つ見覚えのある顔があった。

「……ソアラ?」

 金髪小柄な少女ソアラ。大会の時は手合わせすることの無かった相手だが、その威勢の良さと何とも言えない運の悪さはよく覚えている。そんな彼女が他と同様十字架に張られている。……ということは、他もまさか……。

「これ、全部あのギルドの者か」

サテラ「ギルドの紋章もちゃんと全員ありますし、間違いないですね。にしても不気味です。こんな光景……あー、3000年くらい前に1回見ました。あの時は大変でしたね~。新しい宗教が生まれたけど都合が悪いから断罪せよとか何とか。まあ、結局断罪出来なくて後世に続く大型宗教になっちゃったんですけど」

「そんなくだらないことを言ってる場合か!助けるぞ!」

 私はソアラが張られている十字架に掴み乗り、強く巻き付けられた縄を解いてゆく。強く巻き付けられているとは言ったが、縄は特別頑丈に結ばれているわけでもなく、ただぐるぐる巻きにしてあるだけだったのですんなりと解放することは出来たのだが、そこでサテラが何かを察して辺りをキョロキョロと見渡す。

「どうかしたか?」

サテラ「しっ。何か来ます」

「何かってーー」

サテラ「フウロ!後ろ!」

 サテラが叫ぶと同時に、噴水が勢いよく水を噴射し、その直後地響きがしたかと思えば噴水が割れて中から獣?が飛び出した。

サテラ「危ない!」

 大型の獣がこちらに着地する手前、サテラが勢いよく飛びついて来たおかげで難を逃れることが出来たが、代わりにサテラ以外のこの場にいた人間は、全員獣に踏みつけられたり、爆発で吹き飛ばされたり、果ては獣に食われてる者までいたりと、全員がろくでもない状況になっていた……。

サテラ「死んじゃった人を見ちゃダメです!今は自分の命優先!フウロ!」

「あ、ああ!すまない」

 少し呆気に取られてしまっていたが、すぐに剣を抜いて獣と向き合う。

「にしても何だ?この化け物は」

サテラ「もしかしたら、ユカリさんが言っていた化け物……なんてこと……」

「そうであってほしいが、このサイズであってほしくはなかったな!行くぞ!」

サテラ「はい!」

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ん?爆発……?」

 暗がりを特に会話もなくユカリさんと歩いていると、小さな地響きの後に大きな爆発音が響いてきた。

ユカリ「あちらは……サテラさん達が行った方向では?」

「2人が何かと出会したってとこかしら」

 何だか凄く嫌な予感がするわね……。

「行きましょ。もしかしたら、厄介なことになってるかもしれない」

ユカリ「はい!」

 ーーというわけで、暗がりを道が見えないにも必死に走ること数分。なんか妙にぼんやりとした明かりが見えてきたなと思ったところだった。

フウロ「暴風剣!」

 ……今のはフウロの声?しかも何かと戦ってる?

 まずいわね。暗がりな上にランタンの明かりも心許ないせいで全然状況が分かんない。こんなことならヴァルでも連れて来てれば良かった。

「フウロ!どこ!」

フウロ「っ!ヒカリか!?」

 声は届いてる。そんなに遠くはないどころか、多分現場に着いた感じか。

「何と戦ってんの!」

フウロ「煙の化け物だ!思った以上にデカい割にすぐ姿を晦ますせいで戦いづらい!気を付けろ!」

 煙の化け物……ヴェリアのお出ましってとこか。

「ユカリさん。ここからは私達がーー」

ユカリ「い、いえ!私も戦います!これでもトゥインクルアスタロトのギルドマスターですから!」

「守れないわよ、私目悪いし」

ユカリ「自分の身くらい自分で守ります!いざとなったら逃げます!」

「よしそれで完璧よ!」

 ユカリさんはそのまま地上へ、私は屋根の上に上り、そこから銃で応戦の構えをとる。だけど、こんなにも暗いんじゃ本当に何も見えない。しかも、あの煙の化け物とやら、音もほとんど出さないせいで音で判別することが出来ない。

 ……厳しいけど、みんなの音を頼りに位置を割り出すしかないわね。

フウロ「爆炎剣!」
ユカリ「蝶々乱舞!」

 フウロの爆炎、ユカリさんの蝶の形をした紙吹雪的な魔法。どちらも煙の化け物に当たってるっぽいけど、当たったっていう音がしない。まあでも攻撃方向くらいは見えたし、そっちの方に1発撃ってみるか。

「シャイン・トルネード・フレイム・クリスタル装填完了!バーストライズ・テラドライブ!」

 最大出力でドカンと1発撃ってみたけど、果たしてどうなることやら。

サテラ「ぎゃぁぁぁぁ!!熱い熱い!」

 ……なんか巻き添え喰らった人がいたような。

「フウロー!当たったー?」

フウロ「当たった!……だが、効果はほとんど無いようだ」

「そっか……」

 まあ、当たった音がしない時点でそんな気はしてたわ。

 あれがヴェリアと同種だって言うのならまず普通の攻撃は効かない。唯一攻撃可能なのがネイだけなんだけど、生憎今はそのネイを探してここに来たわけだし当然ここに彼女はいない。

 もう少し考えとくべきだったわね。今までヴェリアは邪魔してくるだけで、直接危害を加えてくることは無いって話だったし、油断してたわ。

「よっと……」

 上から狙っても意味無しと私は下に降りてフウロ達と合流する。

フウロ「どうする?このまま戦っても闇雲に体力を消費するだけだ」

「そうね。出来ればここは一時撤退したいところだけど……」

サテラ「あの、私への謝罪無しですか!?思いっきり爆炎当たったんですけど!謝罪無しですか!?」

「……」

 あんな敵意丸出しの化け物、今ここで始末しとかないと後々面倒なことになりそうだし、いつもみたいに向こうから退散してくれるのならまだしも、まだやる気だってんならこっちも相手しなきゃだし……。

 頭をフルで回転させても、相手が悪いとしか答えが返ってこない。そもそもなんでネイならヴェリアに攻撃出来るのかしら?まずそこが不思議なのよね。同じ存在であるはずの私には出来ないのに、ネイには、ネイだけには出来る……。

「……」

サテラ「あの、無視ですか。無視は悲しいんですけど何か言ってくれません!?」

「うるさいわよ。どうせ光り輝くだけでろくに戦ってないくせに」

サテラ「仕方ないじゃないですか!あんな攻撃の効かない相手に無駄に魔法使いませんよ!」

「みんながせっせと戦ってるのにサボりね」

サテラ「うぐ……分かりました!じゃあ私がやってやりましょう!どうせ無駄でしょうけどやってやりましょう!」

 ……別にやらなくていいんだけどね。

サテラ「やい!煙の化け物!我が名はサテラ・アイリフラット!天翼族随一の頭脳にして、この国1番の美少女魔法探偵である!」

ユカリ「あ、サテラさん!危ない!」

サテラ「人が自己紹介してるんですから邪魔しないでください!」

フウロ「いや、サテラ!逃げろ!」

 何やらみんなが慌ててサテラの痛い自己紹介を止めようとしてるが、暗くて本当に何が起きてるのか分からない。でも、みんながそう叫ぶってことは予想出来る展開はただ1つ。

 ヴェリアの攻撃がすぐそこまで迫っている。でも悠々自適と自己紹介をするサテラ。その答えは……。

サテラ「あ、止まれ!化け物!」

 そんな止まれって言ったところで向こうが大人しくするわけないじゃない。さっさと逃げなさいよ。……もう手遅れかしら?何も聞こえなかったけど。

フウロ「……これは……?」

ユカリ「へ……サテラ……さん?」

 2人がなんだか困惑したような声を上げる。

「え、何?何が起きたの?見えないから説明欲しいのだけれど」

サテラ「あー、なら私から説明しますね。簡単に言うと、あの化け物の動き止めちゃいました」

 ……止めた?

「え、何?あんた時魔法でも使えるタチなの?」

サテラ「時魔法じゃないですね~。えーっと、言霊の魔法ってとこですかね。声に意志を込めればその通りのことが起きちゃうんですよ。いやでも、死ねって言っても死んでくれませんし、私に出来るのはこれが精一杯ですかね~」

 言霊の魔法……?聞いたことないわ。

サテラ「こんなの倒せっこないですよ。大人しく救援呼ぶか、私が止めてるうちにみんなで逃げちゃうかして対策練らないと」

「……え、ええそうね。ここは一時撤退……と行きたいのだけれど、その言霊の魔法。この場合、あれの動きってどれくらい止めてられるの?」

サテラ「今まで正確に時間測ったことないから何とも言えませんけど、まあ大体半日くらいですかね。もちろん、向こうが必死で抗おうとした場合もっと時間は短くなりますし、逆に向こうに意思が無ければもっと長くもなりますよ~」

 ……とりあえず、2、3時間は余裕があると見ていいかしら。なら、あれに対抗出来そうな戦力……もしかしたら、ヴァルならどうにか出来るかもしれない。

「分かったわ。私とサテラで一旦ギルドに戻る。男ども連れて戻ってくるから、それまで変な動き見せないか監視してて」

ユカリ「わ、分かりました!」

フウロ「任せておけ」

 奇妙な相手だけれども、とりあえず打開の糸口を掴んだ私達は、一旦トゥインクルアスタロトのギルドへと舞い戻ることになった。
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