グランストリアMaledictio

ミナセ ヒカリ

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Maledictio4章 【物語の罰】

Maledictio4章1 【ギルド兼孤児院】

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サテラ「グランアーク南部、程々に恵まれた温暖な気候と災害の少ない平野。危険な魔物も大しておらずごくごく平凡で、悪く言うと退屈な街!それがここ!クロロル!」

「テンション高いわね……あんた……」

 馬車に揺られること約半日。意外と早く着いたはいいものの、この時点で私の体力はゴッソリと減っていた。なんでかって?そりゃ今ここでテンション高めなバカのせいよ。

 吐くのはもういい。乗り物に弱い人だっているだろう。無理をさせるわけにもいかない。問題は、吐く度にお腹が空いたとか言って食料を口にしちゃ、数分後に吐くというのを繰り返す学習能力の無さ。おかげで馬車は常に大変な状態。外に吐け、出来ないのならずっと外向いてろと言っても、ふと内側を向いたタイミングで吐くもんだからもうてんやわんや。……貰いゲロしなかっただけ私頑張ったと思うわ。あとフウロ達も。

 まあ、そんなこんなで一応クロロルには着けたことだし、さっさとトゥインクルアスタロトのギルドにでも行きましょうか。

フウロ「そう言えば、よく考えたら私達、何の連絡もなしに訪問ということにならないか?」

「大丈夫よ。先にマスターの名義で手紙送ってるし、この国の速達便使えば1時間もかからず到着してるはずよ」

グリード「準備は万端ってことだなァ」

「ええ。あとは予想外の事態さえ起きなければだけどね」

 アリスは今のところ大人しくサテラの後ろを付いて行ってるし、ヴァルもようやく頭痛は収まったっぽい。まあ、その代わりに今度は難しそうに考え事をしてるけど、もうどうでもいいわ。

 ーーそんなこんなで、トゥインクルアスタロトのギルドハウス前。

グリード「こいつァ……また愉快な形のギルドだなァ」

 ギルドハウス前にて、まず私達はその特異な形に目を奪われる。正面からいきなり可愛らしいデザインの妖精?をイメージしたかのような女の子の顔がお出迎えし、祭りでもなんでもないのに派手にライトアップしてある。オマケに看板は『とぅいんくるあすたろと☆』とまさかの平仮名書き……。

サテラ「入るのを一瞬躊躇うギルドですね!」

「みんなが思ってても口に出さないことを言うな!」

サテラ「まあまあ、入らないことには話が進みませんよー。頼もー!」

 ドーン!っと力強く扉を蹴破るサテラ。文字通りギルドの戸をなんの躊躇いもなく蹴破った。……は?

「ちょ、あんた何してんのよ!」

サテラ「あ、しまった!つい癖で!」

 どんな癖よ。うちに来た時は凄く大人しい感じで開けてきたじゃない……。

「あ、大会に出てた剣の姉ちゃんだー!」
「銃の姉ちゃんもいるー!」
「見たことないでっかい翼だー!」

 ーーと、サテラの行動を非難してると、それと同時に子供?達が私達を取り囲むようにやって来る。ざっと見て30人?随分と多いわね……。

「お待ちしておりました。グランメモリーズの皆さん」

 そして、子供達が駆け寄って来てから少し遅れて、頭頂部から生える小さな角をお団子ヘアーで隠す女の子、ユカリが現れた。

「手紙でもう大体は分かってると思うけど……」

ユカリ「ええ。遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。まずは少し休憩して行きませんか?」

 ……あの場だと面と向かって話すことが苦手って感じがしたのに、この場だと凄く落ち着いて話してくれる。ただ雰囲気に押されてただけかしら?

ユカリ「ささ、どうぞどうぞ」

 私達は、ユカリに促されるままに子供達に取り囲まれた状態で足を踏み入れた。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

ユカリ「なるほど。ネイさんが行方不明になってしまわれたと……」

「ええ。今回の目的はそれだけ。いや、ちゃんとあの煙の化け物ってのも調査するんだけど、ぶっちゃけで言うとそれはただのオマケ。悪いのだけれどーー」

ユカリ「ええ分かっています。私達も無理にとお願いするわけではありません。今のところあの煙達から何かしらの危害を加えられたということはありませんし、順番は後回しにしてもらっても構いません」

 ……凄く話しやすい相手だけれど、自分の主張が弱いわね。これじゃ、私相手ならいいけれど簡単に騙されるわ。それこそ、少しでも圧をかけてくるような人相手なら、すぐ丸め込まれそう。

 ーー私、フウロ、ユカリの3人で机を囲み、まずは情報共有、そしてこれからの予定を組む。ユカリさんは私達のやりたいようにやっていいと言ってくれるので、言葉に甘えて私はもうネイを見つけることだけを考えてプランを組んだ。……と言っても、どの道鍵を握ってそうなのはあの煙達ことヴェリアだけ。自ずとこの街で発生している煙の化け物の調査にも繋がる。まあ、元からそのつもりで来たんだけど。

「……気になるのは煙の化け物ってところだけか」

 1つ、少し引っかかっていたことがある。確かに、ヴェリアは初めて目にする人からすれば化け物に見えるかもしれない。しかし、見た目は本当にただの煙。特別何かの形を形成することもなければ、個の意識を持って動くようなこともない。でも、この人が言う気味の悪い化け物ってなると何かしら特徴があるんじゃないかと思う。

「ねぇ、煙の化け物って具体的にはどんな感じだったの?」

 頼むから普通の見た目のものを化け物と思っていてほしい。これ以上厄介なことは起こさないでくれと祈ってみたが……。

ユカリ「うーん、狼?みたいな姿だったでしょうか。神出鬼没で、突然横を走り去って行ったかと思えば後ろにはただの壁があることも」

 まあ、それはヴェリアの特性的に不思議ではないのだけれど。

「狼……ねぇ……」

フウロ「今までには見た事のない形だな」

「そもそも形持ってる奴自体初めてよ」

 狼か。それ、誰かが幻影魔法かなんかでイタズラしてるってオチじゃないでしょうね。

「まあいいわ。現地を見てみれば分かる話だし。……ねぇ、この辺でその化け物をよく見る場所教えてくれないかしら?」

ユカリ「やる気ですね。それは全然構わないのですけど……」

 ユカリはちょっと申し訳なさそうに部屋を1周するように見渡す。あちらこちらで子供達がキャッキャと声を上げて楽しそうに遊んだり勉強したり何だりとしている。ヴァルと私達以外のみんなはそれぞれ子供達の相手をしているのだけれど、1番懐かれてるのはなぜかアリス。無愛想に「近寄ってくんな」と一蹴する彼だが、それを面白がった子供達がエンドレスについて行くという、まあいいようにからかわれてるわねって感じ。逆に1番人気が無いのはサテラ。サテラ本人は子供達と仲良くなろうと奮闘してるようだけれど、なぜか子供達には避けられている状態。普通逆じゃないかしらね?どうでもいいけど。

フウロ「子供達が心配か?」

ユカリ「……ええ。ここ、ギルド兼孤児院なんです」

フウロ「ここにいる子供達が全員孤児?」

 見渡す限りには30人どころか50人くらいはいそうに見えるけれど、そんな数を今はユカリさん1人だけで相手をしてる。他のメンバー達はどこに行ったのかしら。

ユカリ「普段はもっとたくさん仲間達がいるんですけど、今日はたまたま皆さん席を外されてしまいまして。まあ、あと数時間もすれば帰ってくるでしょうけど、それまでの間ここを開けるわけには……」

 まあそうよね。これだけたくさん子供がいたんじゃ、自分が離れるわけにはいかないわよね。

「仕方ないわ。他の人達が帰ってくるまで、私達も相手してあげましょ」

フウロ「そうだな」

ユカリ「あの、いいのですか?」

「どうせ今すぐ調査を始めたってすぐに見つかる保証は無いわよ。急がば回れっていうやつよ」

 それに、私も昔は孤児を経験しちゃったわけだし、そんな子供達を相手にするのは大変だろうなってのは何となく分かってる。……先生、あんたは今何を企んでるのかしら。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

グリード「っだァ!疲れたァ~!」

ユカリ「皆さんお疲れ様です。いい遊びっぷりでしたよ」

 かれこれ数時間。日もすっかりと沈み切り、気付けば子供達を寝かしつけるところまでしてようやく解放された。子供って意外と寝ないのね。いや、私が言えた義理じゃないけど。

アリス「……散々だ」

フウロ「お前が1番懐かれてたな。案外向いてるんじゃないか?この仕事」

アリス「冗談よせ。俺に人間のガキをあやす力はねぇ」

サテラ「えー、思った以上に向いてると思いますよー!アリスお兄ちゃん!」

アリス「殺すぞお前」

グリード「逆におめェは全然懐かれてなかったなァ。翼の姉ちゃんこわーい(ガチめのトーン)だっけか?」

サテラ「ひ、人が気にしてるところ突かないでください!」

 ーーとまあ、ここまでは何の変哲もないただの会話。コーヒーを飲みながらするにはちょっと茶菓子でも欲しくなる感じ。でも、外はもう真っ暗で今日は月明かりも照らしてくれない新月。……なんか変ね。

「ねぇ、他の人達も数時間すれば帰ってくるんじゃなかったの?」

ユカリ「そ、そのはずなのですが……確かに帰ってきません……」

「連絡は?誰かしらの行方を知ってるとかないの?」

ユカリ「……子供達の相手が忙しくて、あまり把握してません。というか、全員どこに行ったかってのも知らないです」

 ギルドマスターが聞いて呆れるわね。

「忙しいのは分かるけど、せめて誰がどこに行ったかの把握はちゃんとしときなさいよ。うちのジジイでも掲示板に行先書いとけって口酸っぱく言うくらいにはちゃんとしてるんだから」

ユカリ「……はい」

フウロ「……にしても、こんな夜遅くまで誰も帰って来ないとは、少々不気味だな」

 不気味なんてもんじゃないわね。流石に誰も帰ってこないのは何かしらの事件事故に巻き込まれてるとしか思えないわ。

「ユカリさん。流石に探しに行った方がいいわよ」

ユカリ「そ、そうですね。でも子供達は……」

グリード「ぐっすり寝てんだろ?なら俺とアリス。ついでにほとんど役に立たねぇがヴァルの野郎とで見といてやるよ」

アリス「おい、俺は付き合わんぞ」

グリード「1番懐かれてんのに利用しねぇ手はねぇだろ。それに、どうせ自由にうろつけねぇんだから大人しくしとけって」

アリス「……好きにしろ」

 うん、グリードがいるならいざって時は安心かな?ヴァルが未だに上の空なのが気になるけど。

「じゃあ、女性陣でちょっと探しに行きましょうか。私とユカリさん。フウロとサテラでペアを組んで手分けしましょ」

フウロ「それが1番効率的だな」

サテラ「えー、私眠いんですけどー」

「どうせ子供達相手に嫌われてんだからこういうところで役に立ちなさい。……美少女魔法探偵さん(笑)」

サテラ「おいなんか今心の中でひっそりと笑ったな」

「気のせいよ」

サテラ「むぅ……分かりました!昼間活躍できてない分この美少女魔法探偵がちゃちゃっと皆さんの行方を探し当ててみせます!ほら行きましょう!さあ行きましょう!今すぐ行きましょう!」

 ちょっとだけムスッとしたサテラは、フウロの手を強く引っ張って先に出て行った。

ユカリ「あの、何から何まですみません」

「いいのよ。しばらく衣食住を提供してもらうわけだし、その対価よ」

ユカリ「じゃあ、その、よろしくお願いします」

「ええ。さっさと見つけましょ」

 私達も、月明かりすらないこの暗闇の中に飛び出した。
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