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第二章
第三話
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俺は目を瞬かせる。紫ノくんは昔から、たまに、俺を見透かしたような発言をするのだ。まるで、俺の好意に気づいてるみたいに。
でも、そんな都合のいい話があるわけないから、俺はまた、へらりと笑う。
「大丈夫、ずっとそばにいるよ。結婚式だって、友人代表で読むし」
すると紫ノくんは、悪戯な目になった。
「うん。でも、日生くんの席は俺の隣だよ」
「……え?」
「俺が新郎、日生くんは新婦ね。反対でもいいよ」
そしてまた、涼しげな顔でコーヒーを飲む紫ノくんに、俺は理解が追いついていかなかった。
「え、っと……」
「日生くんは、ずっと僕と一緒に居たらいいよ。絶対、傷つけたりしないから」
「え、いや、でも、紫ノくん」
ノンケだよね?
そう質問しようとして、口をつぐんでしまう。
だってこの質問は、自分がそうじゃないことを伝えることに他ならない。それでもし、紫ノくんに拒絶されたら? 頭では理解している。紫ノくんが俺を馬鹿にしたり、傷つけたりしないことは。
『ホモ野郎!』
違う、紫ノくんはそんなこと言わない。
それなのに、俺の手は僅かに震えていた。
「俺、日生くんのこと、そういう目で見てるよ」
紫ノくんの言葉に、俺は勢いよく顔を上げた。
その顔には、緊張なんてない。いつものマイペースな紫ノくんがいる。
でも俺は気づいていた。紫ノくんの瞳が、不安に揺れていることに。どうしてわかるのか、本人に昔聞かれたことがあるけど、勘としか言いようがない。
「……、紫ノくんは、ゲイってこと?」
「うん、日生くん限定だけど」
「えっと、俺も、そうなんだけどさ。俺は、紫ノくん以外もそういう目で、見れるんだよね」
そういうと、紫ノくんは眉を顰めた。俺は何か不快にしてしまったかと思って、謝ろうとしたけど、その前に紫ノくんが口を開く。
「じゃあ、恋敵はたくさんってわけだ」
「恋、敵」
「そうだよ、俺は日生くんにずっと恋してるんだもん」
当たり前のことを言うみたいに、紫ノくんは言うから、俺はフリーズしてしまう。
こいがたき。コイガタキ。
え、恋敵?
紫ノくんみたいなイケメンが? それも経済学部って、めちゃくちゃ頭良くなかったっけ。容姿端麗頭脳明晰、運動はちょっぴり苦手なことは知ってるけど、壊滅的と言うわけでもない。
そんな優良物件が、俺を好きだと言っている。
俺はまずアイスティーを飲んで、冷静になろうとした。うん、アイスティーの味がする。
そしてチョコレートケーキを食べてみる。いつもの味がする。
現実だ。
俺は、白昼夢を見ているわけではないらしい。
「い、いつから俺のこと好きだったの?」
俺の声は裏返っていた。動揺が隠せない。仕方ないだろう、幼い頃恋していた相手に、いまでも好きだと言われたのだ。初恋の記憶が蘇っていく。紫ノくんを好きだった俺が蘇ってくる。
ダメだ、もう俺は誰にも恋しないと決めた。
それなのに、あの時、二人でただ、公園のベンチで座っているだけで幸せだった時間を思い出してしまうのだ。
木の葉の擦れる音を聞いて、なんでもないことを一言二言話して、俺たちは五年間、ずっと一緒にいた。
紫ノくんは俺の動揺具合に何を感じているんだろう。また、アイスコーヒーを口にしている。紫ノくんも緊張しているのだろうか。
「小学生の頃から」
窓の外を見ながらそう答えた友達に、俺は頭を抱えそうになる。両片思い、と言うやつだったのか。
確かに俺が他の男子を褒めたりしたら、よく不機嫌にはなっていたけど、俺の隣を離れようとしなかったし、隣に誰がいても紫ノくんは割り込んできて、絶対、誰にも俺に触れさせようとしなかったけど。
どれもこれも、紫ノくんの恋心の現れ、と言うわけだった。今になればわかる。紫ノくんは嫉妬していたのだ。
でも確かに俺も、紫ノくんが女子と少しでも話していたら、不機嫌になっていたな。それから、紫ノくんはあまり女子と話さなくなった。俺はそれに謝った。気にしなくていいと。でも、紫ノくんは首を横に振った。
『日生くんの方が大事』
あれほど、自分を大切に扱ってくれた友達は、後にも今にも、紫ノくんしかいなかった。紫ノくんに恋をしていた時が、やっぱり一番幸せだったなと思い出した。
「……俺も、小学生の頃、紫ノくんのこと好きだったよ」
でも、そんな都合のいい話があるわけないから、俺はまた、へらりと笑う。
「大丈夫、ずっとそばにいるよ。結婚式だって、友人代表で読むし」
すると紫ノくんは、悪戯な目になった。
「うん。でも、日生くんの席は俺の隣だよ」
「……え?」
「俺が新郎、日生くんは新婦ね。反対でもいいよ」
そしてまた、涼しげな顔でコーヒーを飲む紫ノくんに、俺は理解が追いついていかなかった。
「え、っと……」
「日生くんは、ずっと僕と一緒に居たらいいよ。絶対、傷つけたりしないから」
「え、いや、でも、紫ノくん」
ノンケだよね?
そう質問しようとして、口をつぐんでしまう。
だってこの質問は、自分がそうじゃないことを伝えることに他ならない。それでもし、紫ノくんに拒絶されたら? 頭では理解している。紫ノくんが俺を馬鹿にしたり、傷つけたりしないことは。
『ホモ野郎!』
違う、紫ノくんはそんなこと言わない。
それなのに、俺の手は僅かに震えていた。
「俺、日生くんのこと、そういう目で見てるよ」
紫ノくんの言葉に、俺は勢いよく顔を上げた。
その顔には、緊張なんてない。いつものマイペースな紫ノくんがいる。
でも俺は気づいていた。紫ノくんの瞳が、不安に揺れていることに。どうしてわかるのか、本人に昔聞かれたことがあるけど、勘としか言いようがない。
「……、紫ノくんは、ゲイってこと?」
「うん、日生くん限定だけど」
「えっと、俺も、そうなんだけどさ。俺は、紫ノくん以外もそういう目で、見れるんだよね」
そういうと、紫ノくんは眉を顰めた。俺は何か不快にしてしまったかと思って、謝ろうとしたけど、その前に紫ノくんが口を開く。
「じゃあ、恋敵はたくさんってわけだ」
「恋、敵」
「そうだよ、俺は日生くんにずっと恋してるんだもん」
当たり前のことを言うみたいに、紫ノくんは言うから、俺はフリーズしてしまう。
こいがたき。コイガタキ。
え、恋敵?
紫ノくんみたいなイケメンが? それも経済学部って、めちゃくちゃ頭良くなかったっけ。容姿端麗頭脳明晰、運動はちょっぴり苦手なことは知ってるけど、壊滅的と言うわけでもない。
そんな優良物件が、俺を好きだと言っている。
俺はまずアイスティーを飲んで、冷静になろうとした。うん、アイスティーの味がする。
そしてチョコレートケーキを食べてみる。いつもの味がする。
現実だ。
俺は、白昼夢を見ているわけではないらしい。
「い、いつから俺のこと好きだったの?」
俺の声は裏返っていた。動揺が隠せない。仕方ないだろう、幼い頃恋していた相手に、いまでも好きだと言われたのだ。初恋の記憶が蘇っていく。紫ノくんを好きだった俺が蘇ってくる。
ダメだ、もう俺は誰にも恋しないと決めた。
それなのに、あの時、二人でただ、公園のベンチで座っているだけで幸せだった時間を思い出してしまうのだ。
木の葉の擦れる音を聞いて、なんでもないことを一言二言話して、俺たちは五年間、ずっと一緒にいた。
紫ノくんは俺の動揺具合に何を感じているんだろう。また、アイスコーヒーを口にしている。紫ノくんも緊張しているのだろうか。
「小学生の頃から」
窓の外を見ながらそう答えた友達に、俺は頭を抱えそうになる。両片思い、と言うやつだったのか。
確かに俺が他の男子を褒めたりしたら、よく不機嫌にはなっていたけど、俺の隣を離れようとしなかったし、隣に誰がいても紫ノくんは割り込んできて、絶対、誰にも俺に触れさせようとしなかったけど。
どれもこれも、紫ノくんの恋心の現れ、と言うわけだった。今になればわかる。紫ノくんは嫉妬していたのだ。
でも確かに俺も、紫ノくんが女子と少しでも話していたら、不機嫌になっていたな。それから、紫ノくんはあまり女子と話さなくなった。俺はそれに謝った。気にしなくていいと。でも、紫ノくんは首を横に振った。
『日生くんの方が大事』
あれほど、自分を大切に扱ってくれた友達は、後にも今にも、紫ノくんしかいなかった。紫ノくんに恋をしていた時が、やっぱり一番幸せだったなと思い出した。
「……俺も、小学生の頃、紫ノくんのこと好きだったよ」
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