引退ヒーローの日常

糸川壮一郎

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引退

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「この世を闇に葬るのに貴様は邪魔だ。ここで死ね。」
わっかりやすい悪役だなぁ。まぁその方が、
「やりやすい!」
対峙する悪と正義。人類の命運が決まろうとしていた。
数分後、お互いに肩で息をするほどのダメージをうけ、力の差はなしに等しかった。
しゃぁねぇか。人類のためだ。
「こめんな、相棒。あばよ。」
彼は自身のベルトに語りかけ、エネルギーをありったけ注いだ。それに答えるようにベルトは
「スーパーノバーエクスプロージョン!」
と叫び、あたりをまばゆい光で包んだ。
次の瞬間、悪は消え、生身の正義は跪いた。遠くから、
「星月!せーいーがー!」
名前を呼ばれた正義は、両手を広げて彼女を受け止め、
「ありがとう。ヒテン。」
と、呟いた。


5年後ーーーーーーーーーーーー
戦いに勝利したヒーロー、児島星月(こじませいが)は、現在ヒロイン、雨宮飛天(あまみやひてん)と結婚し、一軒家に住んでいる。悪の組織を壊滅させ、地球を守ったことで各国首脳から、人生を3周ほど遊んで暮らせるほどの報奨金を得ていた。しかし、その90%以上を戦いで傷ついた地域へ寄付した。彼は幸せな人生を投げ出した
「ん~幸せだなぁ」
訳ではなかったようだ。何しろ彼の幸せとは、コーヒーが飲めること。漫画が読めること。サバ缶を食うこと。などなど、たいっへんに庶民的なのだ。唯一の悩みと言えば、
「ん~暇だなぁ」
暇であることだ。日夜戦いに明け暮れていた星月にとって、戦う必要がなくなったと言うことは、大量の時間が余る、と言うことである。
「ねぇヒテン、なんかしよ?」
「いいわよ。なにする?」
「・・・・・・さぁ」
毎日こんな感じである。
「わかった!じゃあ手で飛ばした水滴の数を当てるゲームでもしょう!」
「なにが分かったのよ。てゆうか何の修行よそれ!」
「先攻は俺ね。」
「聞け。」
セイガは、水の入った器に手を入れ、空中で指をはじいた。
「はい!いくつでしょう?」
「200億」
「ぶっぶー!3671滴でしたー!次はヒテンね。」
ヒテンも同じように指をはじいた。
「4702滴!」
「・・・・・・」
「答えは?」
「知らないわよ。」
もう一度言うが、いつもこんな感じである。
「・・・出かけてこようかな。」
「ついでに牛乳も買ってきて。」
「りょーかい」
なんだかんだうまくいっているようだ。
本屋でお気に入りの漫画の最新刊を購入し、近くのスーパーでひいきにしている牛乳、「おもしろい牛乳」の青と白のパックをかごに入れ購入。報奨金が10%しか残っていないとは言え、並の生活が送れるほどの額は残っている。いかんせん、元が大きすぎる。
「ただいまー」
「ん、おかえりー」
二人とも、地球を守ったとは思えないような暮らしぶりだが、それでもヒーローとヒロインである。一つだけ変わったことは、セイガが変身できないと言うことのみだ。
これは、引退したヒーローの超平凡で愉快な日常の記録である。
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