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第2章 ギルド体験週間編―初日
ギルド体験週間初日① パーティー結成!
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「えー、本日から『魔法基礎学』の授業を担当するエレミ・ファンダルです。よろしくお願いします。本日は魔力の色と特性、使える魔法の関係性に関する授業です。今まで家族から教えてもらったり、独学で学んできたかも知れませんが、この授業を通してしっかりとした知識を身につけていきましょう」
フィダラリア魔法学院の新入生たちは入学式の次の日から、早速魔法に関する授業を受けていた。初日ということもあってみな真剣な面持ちで先生の話に耳を傾けていた。
「優れた魔法使いになるためには、自分の使える魔法についてだけ知っていればよいというわけではありません。自分の弱点となる魔力や、逆に自分の方が優位な魔力、また味方の魔法特性などを知って補い合わなければなりません。ですので、魔法に関する幅広い知識を身につけることが必要です」
新入生の一人(厳密には事情により転入生だが)ルーシッド・リムピッドも、興味深げに授業に耳を傾けていた。彼女は独学によりかなりの魔法に関する知識をつけてきたつもりだが、この魔法界最高峰の学校で、魔法に関する叡智を勉強できるということに関しては、彼女も少なからずわくわくしていたのだった。
この学院に入ることにあまり気乗りしなかった彼女ではあるが、勉強自体は好きだったので、入れたからには楽しもうと思っていたのだった。最もあまり感情を表に出すほうではないので、表面的にはただ黙って聞いているように見えるのだが。
「では、本日はまずそれぞれの魔力を見ていくことにいたしましょう。私の方には、入試の際の魔力測定の結果がありますが、自己紹介がてら皆で見ていきましょう」
あー、やっぱりそういう流れか、とルーシッドは内心ため息をついた。そう、彼女にはある秘密があった。通常であれば魔力は何かしらの色が着いているのだが、彼女の魔力は無色なのだった。無色透明、無味無臭ゆえに、どの妖精からも好かれず、魔法を一つも使うことができないのだ。ルーシッドはその持って生まれた特異な魔力のせいで、今までずっと落ちこぼれのレッテルを貼られてきたのだ。どんなに弱い魔法でもいいから普通の魔法が使えればよかったのに、自分も普通の魔法使いなら良かったのに、彼女はずっとそう思って生きてきたのだった。
「はい、ルビアさん、ありがとうございました。非常にすばらしい魔力ですね」
「ありがとうございます」
「魔力測定の結果から見ても、入試の点数から見ても、ルビアさんは新入生の中では一番の実力でしょうね。皆さんもルビアさんから学ぶことは多いと思いますよ」
「光栄です。ですが、私よりもルーシィの方が優れていると思います」
急に自分がやり玉に挙がったので、ルーシッドはどきっとした。
「ルーシッドさん……まぁ、魔法の知識はそれなりにあるようね。でも、実際に魔法が使えないのでは、優れているとは言えないんじゃないかしら…」
「る、ルーシィは普通の魔法が使えないだけで、無能なわけではありません!先生も見たでしょう!?あの入学試験のときのルーシィの力を!ルーシィはもっと評価されるべきだわ!」
「ちょ、ちょっと、ルビィ、何熱くなってるの?」
「だって!ルーシィはくやしくないの!?」
「私はまぁ…そういう扱いには慣れてるから…」
ルーシッドはこれまでの人生でずっと「落ちこぼれ」と言われてきたので、こういう扱いには慣れてしまっていた。しかし今はこうして、自分のために本気で怒ってくれる友達がいる。そう思うと胸が熱くなるのを感じた。だから、自分のためというわけではなく、友のためにルーシッドは口を開いた。
「あー…確かに私には皆さんのような色がついた魔力というものはありません。ですが、私には魔力がないわけではありません。色がついていないだけで、魔力は確かに持っています」
「魔法が使えないのだから、魔力がないのと同じことではなくて?」
先生はあきれたように答えた。
「それは違いますよ、先生。大きな違いがあります。どの妖精にも好かれないということは、詠唱によって生み出された魔力はそのままそこに残留するということです。では、この妖精に拒絶された魔力は誰のものになるのでしょうか。それは魔力を生み出した本人のものです。この意味がわかりますか?」
誰も答えなかったので、ルーシッドは話を進めた。
「実際に見せましょう、と言っても無色なので見えないんですがね」
そういうとルーシッドは右手を手のひらを上にして出した。
「この手の上に無色の魔力を生み出しました。今はだいたい手のひらサイズの球体にしています。硬さは柔らかめです。触れますよ、ルビィ触ってみる?」
「ホントだ…なにかある…これが魔力…」
ルビアは手を伸ばしてルーシッドの手のひらにあるものに触れた。確かにそこにはふにふにとしたものがあった。
「ちょっと先生、その手に持っている教科書を体の横に掲げてもらえますか?」
先生が促されてしぶしぶ教科書を掲げると、ルーシッドは振りかぶってボールを投げる素振りをした。すると、確かに教科書に何かが当たり、教科書は手から弾かれて床に落ちた。先生は床に落ちた教科書を見つめ、ごくりと唾を飲んだ。
「今は柔らかい球体にしましたのでこの程度ですが、これを鋭い針状にして同じことをしたらどうなるでしょうね?」
そこにいる全員がぞっとした。ルーシッドはいわば自分は透明な凶器でいつでもあなた達を刺し通せますよと言っているようなものだった。
「まぁやらないので安心してください。色がついた魔力は妖精のお菓子の食材になる。私から言わせれば、ただそれだけです。でも無色の魔力は、私が自由に使えます。工夫次第で色々な事に使えます。別に私だってこんな魔力望んだわけじゃありません。普通の魔力が欲しかったですよ。でもまぁ、無色の魔力もそれなりには便利ですよ。それなりにはね」
ちょうどその時終了のチャイムが鳴り、「今日の授業はこれまで」と言い残して逃げるようにして教室を後にした。
授業が終わると、フェリカがルーシィに抱き着きついてきた。
「ルーシィ、かっこよかった~!惚れ直しちゃう!」
「いい気味だわ!先生のあの顔、傑作だったわ!」
「ははは、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
そう言いつつも、ルーシッドも少し気分が晴れた気がした。
昼食前の授業の終わりに担任の先生からこう連絡があった。
「お伝えしていたように、これから一週間は午前授業となり、午後からは新入生スクールギルド体験週間となります。ギルドでは卒業後の仕事にもつながるような技術や技能を実践的な形で学ぶことができますので、入ることをお勧めします。これから一週間は、それぞれのギルドがブースを作って展示したり、デモンストレーションをしたりしているので、それぞれ自由に回って見学してください。
あ、あと、来週までにこのクラス内でパーティーを決めておいてくださいね。この一週間でクラスのメンバーと十分親しくなると良いでしょう。我が校は自主性を重んじますので、こちらでパーティーを決めることは致しません。パーティーは3~5名で編成してください。実践授業や課外活動、パーティーでの試験を行ったりするときにはこのメンバーで臨むことになりますので、よく考えて選んでください。特に決まりはありませんが、パーティーのバランスを考えて組まないと後々大変ですよ。それと、このパーティーメンバーは学生寮の部屋も原則的には同室になりますので、男女混合パーティーにする場合にはその点、十分注意してください」
ルーシッドは担任の先生からこう言われて憂鬱になった。授業や試験などもこのパーティーで行うとなると、普通の魔力を持たない自分は足手まといになる可能性が高い。パーティーは3人からと聞いて、ルビアとフェリカの顔が真っ先に浮かんだが、評価に影響するとなると、やはり2人だって自分とは組んでくれないんじゃないか、そう思ったのだ。でも、そうすると自分はどうすれば…ルーシッドの気持ちは先生の話を聞きながらみるみる沈んでいった。
昼休みが始まるとすぐにルビアのところには人がどっと押し寄せて来た。ルビアの強さから言えば当然といえば当然だろう。ルビアを獲得できれば、今後の授業や試験ではかなり有利になる。
「ルビアさん、お願い!私たちと組んで!」
「いや、俺たちのところに!」
フェリカもすぐに声をかけられていた。
フェリカは容姿も可愛いし、コミュ力も高いので、男女共に人気がありそうだ。
ルーシッドは色々な感情が渦巻いて、その場にいられなくなり、教室をかけ出した。
「あ、ちょっと、ルーシィ!」
後ろから声がしたが、ルーシッドには届かなかった。
「どうしようかな…」
ルーシッドは、とぼとぼと廊下を歩いていた。
サラに相談しようか。でも上級生のサラとパーティーを組むことはできない。先生にパーティーを組まなくても良いか聞こうか。そうだ、そうしよう。自分だけだったら、赤点だとしても、誰かに迷惑をかけることもない。そうだ、今までもそうやって一人でやってきたじゃないか。
『ルビア様とフェリカ様に尋ねなくて良いのですか?』
エアリーがそう尋ねた。周りに人がいる時はエアリーも怪しまれないよう話しかけないようにしていたので、ルーシッドが一人になったのを見計らって話しかけてきたのだ。
「……だって…二人に迷惑かかるから…」
『ルーシッド様はお二方とパーティーを組みたくないのですか?』
「組みたいよ…あの二人と組みたい…」
ルーシッドの目には涙が浮かぶ。
『では自分の気持ちに正直になってはいかがですか?
……もう自分の気持ちを偽って、感情を殺して生きるのはやめにしない?ルーシィ』
「…えっ、今、あたしのことルーシィって…?」
「いたっ!ルーシィ!」
後ろから自分を呼ぶ声がした。
「突然、教室出ていくんだもの、心配したわよ!」
そこには心配そうな顔をしたルビアとフェリカの姿があった。
「ごめん……あの…」
「ルーシィ、パーティーのことだけど?」
「待って!私から言わせて!」
ルーシッドはルビアの話をさえぎった。
「あの……ルビィ…リカ……その……わっ、わたっ、わたしと……ぱっ、パーティーを組んでください!わたし…魔法使えないし…迷惑かけると思うけど…その…知識とかで…フォローする…から…だから…」
「……ルーシィ、何言ってるの?」
「えっ…?」
「ルーシィが足手まといなわけないでしょ」
「そうだよ、ルーシィは魔法なんて使えなくても十分すごいよ。むしろ私が足引っ張らないか心配。私Dランクだよ?」
「そ、それは大丈夫!リカにはルーン魔術もあるし!あれはランクに反映されてない!それにリカは魔法力に関してもランクでは測れない何かを感じてる、私の技術で補えば必ずランク以上の強さになる!」
「何よ、ルーシィ、パーティー組む気満々じゃない?」
ルビアは少し冷やかすように言った。
「あっ、いや…」
それを聞いてルーシッドは気まずそうに言葉を濁す。それを見てクスクスとフェリカは笑った。
「いい、ルーシィ、よく聞いて。私は子供のころから天才、天才と言われてきたけど、そう言われるのは好きじゃなかったわ。自分の魔法力の強さは人の何倍も努力してきた結果だと思っていたから。でも、サラ・ウィンドギャザー、サラ先輩について知って、その強さに憧れると同時に、嫉妬したわ。自分の努力を全て否定されたような気分になったわ。本当の天才の前ではどんなに努力しても意味がないんだと思ったわ。でもあなたに出会えた。無色の魔力のあなたが実技試験で魔法を使っているのを見て、いったいどれだけ努力してきたんだろうと思ったわ。その姿を見て、私が今までしてきた努力も絶対に無駄じゃなかったと思えたわ。もう一度本気で頑張ろうと思えたわ。だから、ルーシィ、自分が足手まといだなんて二度と言わないで。それはあなたの努力を否定することだから。そんなことは私が絶対に許さない。それは私自身も否定することになるから」
「ルビィ……あ、ありがとう……うぅ……」
「うっ、うぇぇ~ん!!」
「えっ、ちょっ、なんでリカが泣くの!?ここはルーシィが泣く流れでしょ!?」
「だってぇ…感動だよ~…二人とも最高すぎ~…私も頑張るよぉ~」
「あはは、うん、一緒に頑張ろう」
ここに、ルーシッド・リムピッド、ルビア・スカーレット、フェリカ・シャルトリューという、個性的な3人が集まって結成されたパーティーが誕生したのだった。
フィダラリア魔法学院の新入生たちは入学式の次の日から、早速魔法に関する授業を受けていた。初日ということもあってみな真剣な面持ちで先生の話に耳を傾けていた。
「優れた魔法使いになるためには、自分の使える魔法についてだけ知っていればよいというわけではありません。自分の弱点となる魔力や、逆に自分の方が優位な魔力、また味方の魔法特性などを知って補い合わなければなりません。ですので、魔法に関する幅広い知識を身につけることが必要です」
新入生の一人(厳密には事情により転入生だが)ルーシッド・リムピッドも、興味深げに授業に耳を傾けていた。彼女は独学によりかなりの魔法に関する知識をつけてきたつもりだが、この魔法界最高峰の学校で、魔法に関する叡智を勉強できるということに関しては、彼女も少なからずわくわくしていたのだった。
この学院に入ることにあまり気乗りしなかった彼女ではあるが、勉強自体は好きだったので、入れたからには楽しもうと思っていたのだった。最もあまり感情を表に出すほうではないので、表面的にはただ黙って聞いているように見えるのだが。
「では、本日はまずそれぞれの魔力を見ていくことにいたしましょう。私の方には、入試の際の魔力測定の結果がありますが、自己紹介がてら皆で見ていきましょう」
あー、やっぱりそういう流れか、とルーシッドは内心ため息をついた。そう、彼女にはある秘密があった。通常であれば魔力は何かしらの色が着いているのだが、彼女の魔力は無色なのだった。無色透明、無味無臭ゆえに、どの妖精からも好かれず、魔法を一つも使うことができないのだ。ルーシッドはその持って生まれた特異な魔力のせいで、今までずっと落ちこぼれのレッテルを貼られてきたのだ。どんなに弱い魔法でもいいから普通の魔法が使えればよかったのに、自分も普通の魔法使いなら良かったのに、彼女はずっとそう思って生きてきたのだった。
「はい、ルビアさん、ありがとうございました。非常にすばらしい魔力ですね」
「ありがとうございます」
「魔力測定の結果から見ても、入試の点数から見ても、ルビアさんは新入生の中では一番の実力でしょうね。皆さんもルビアさんから学ぶことは多いと思いますよ」
「光栄です。ですが、私よりもルーシィの方が優れていると思います」
急に自分がやり玉に挙がったので、ルーシッドはどきっとした。
「ルーシッドさん……まぁ、魔法の知識はそれなりにあるようね。でも、実際に魔法が使えないのでは、優れているとは言えないんじゃないかしら…」
「る、ルーシィは普通の魔法が使えないだけで、無能なわけではありません!先生も見たでしょう!?あの入学試験のときのルーシィの力を!ルーシィはもっと評価されるべきだわ!」
「ちょ、ちょっと、ルビィ、何熱くなってるの?」
「だって!ルーシィはくやしくないの!?」
「私はまぁ…そういう扱いには慣れてるから…」
ルーシッドはこれまでの人生でずっと「落ちこぼれ」と言われてきたので、こういう扱いには慣れてしまっていた。しかし今はこうして、自分のために本気で怒ってくれる友達がいる。そう思うと胸が熱くなるのを感じた。だから、自分のためというわけではなく、友のためにルーシッドは口を開いた。
「あー…確かに私には皆さんのような色がついた魔力というものはありません。ですが、私には魔力がないわけではありません。色がついていないだけで、魔力は確かに持っています」
「魔法が使えないのだから、魔力がないのと同じことではなくて?」
先生はあきれたように答えた。
「それは違いますよ、先生。大きな違いがあります。どの妖精にも好かれないということは、詠唱によって生み出された魔力はそのままそこに残留するということです。では、この妖精に拒絶された魔力は誰のものになるのでしょうか。それは魔力を生み出した本人のものです。この意味がわかりますか?」
誰も答えなかったので、ルーシッドは話を進めた。
「実際に見せましょう、と言っても無色なので見えないんですがね」
そういうとルーシッドは右手を手のひらを上にして出した。
「この手の上に無色の魔力を生み出しました。今はだいたい手のひらサイズの球体にしています。硬さは柔らかめです。触れますよ、ルビィ触ってみる?」
「ホントだ…なにかある…これが魔力…」
ルビアは手を伸ばしてルーシッドの手のひらにあるものに触れた。確かにそこにはふにふにとしたものがあった。
「ちょっと先生、その手に持っている教科書を体の横に掲げてもらえますか?」
先生が促されてしぶしぶ教科書を掲げると、ルーシッドは振りかぶってボールを投げる素振りをした。すると、確かに教科書に何かが当たり、教科書は手から弾かれて床に落ちた。先生は床に落ちた教科書を見つめ、ごくりと唾を飲んだ。
「今は柔らかい球体にしましたのでこの程度ですが、これを鋭い針状にして同じことをしたらどうなるでしょうね?」
そこにいる全員がぞっとした。ルーシッドはいわば自分は透明な凶器でいつでもあなた達を刺し通せますよと言っているようなものだった。
「まぁやらないので安心してください。色がついた魔力は妖精のお菓子の食材になる。私から言わせれば、ただそれだけです。でも無色の魔力は、私が自由に使えます。工夫次第で色々な事に使えます。別に私だってこんな魔力望んだわけじゃありません。普通の魔力が欲しかったですよ。でもまぁ、無色の魔力もそれなりには便利ですよ。それなりにはね」
ちょうどその時終了のチャイムが鳴り、「今日の授業はこれまで」と言い残して逃げるようにして教室を後にした。
授業が終わると、フェリカがルーシィに抱き着きついてきた。
「ルーシィ、かっこよかった~!惚れ直しちゃう!」
「いい気味だわ!先生のあの顔、傑作だったわ!」
「ははは、ちょっとやりすぎちゃったかな?」
そう言いつつも、ルーシッドも少し気分が晴れた気がした。
昼食前の授業の終わりに担任の先生からこう連絡があった。
「お伝えしていたように、これから一週間は午前授業となり、午後からは新入生スクールギルド体験週間となります。ギルドでは卒業後の仕事にもつながるような技術や技能を実践的な形で学ぶことができますので、入ることをお勧めします。これから一週間は、それぞれのギルドがブースを作って展示したり、デモンストレーションをしたりしているので、それぞれ自由に回って見学してください。
あ、あと、来週までにこのクラス内でパーティーを決めておいてくださいね。この一週間でクラスのメンバーと十分親しくなると良いでしょう。我が校は自主性を重んじますので、こちらでパーティーを決めることは致しません。パーティーは3~5名で編成してください。実践授業や課外活動、パーティーでの試験を行ったりするときにはこのメンバーで臨むことになりますので、よく考えて選んでください。特に決まりはありませんが、パーティーのバランスを考えて組まないと後々大変ですよ。それと、このパーティーメンバーは学生寮の部屋も原則的には同室になりますので、男女混合パーティーにする場合にはその点、十分注意してください」
ルーシッドは担任の先生からこう言われて憂鬱になった。授業や試験などもこのパーティーで行うとなると、普通の魔力を持たない自分は足手まといになる可能性が高い。パーティーは3人からと聞いて、ルビアとフェリカの顔が真っ先に浮かんだが、評価に影響するとなると、やはり2人だって自分とは組んでくれないんじゃないか、そう思ったのだ。でも、そうすると自分はどうすれば…ルーシッドの気持ちは先生の話を聞きながらみるみる沈んでいった。
昼休みが始まるとすぐにルビアのところには人がどっと押し寄せて来た。ルビアの強さから言えば当然といえば当然だろう。ルビアを獲得できれば、今後の授業や試験ではかなり有利になる。
「ルビアさん、お願い!私たちと組んで!」
「いや、俺たちのところに!」
フェリカもすぐに声をかけられていた。
フェリカは容姿も可愛いし、コミュ力も高いので、男女共に人気がありそうだ。
ルーシッドは色々な感情が渦巻いて、その場にいられなくなり、教室をかけ出した。
「あ、ちょっと、ルーシィ!」
後ろから声がしたが、ルーシッドには届かなかった。
「どうしようかな…」
ルーシッドは、とぼとぼと廊下を歩いていた。
サラに相談しようか。でも上級生のサラとパーティーを組むことはできない。先生にパーティーを組まなくても良いか聞こうか。そうだ、そうしよう。自分だけだったら、赤点だとしても、誰かに迷惑をかけることもない。そうだ、今までもそうやって一人でやってきたじゃないか。
『ルビア様とフェリカ様に尋ねなくて良いのですか?』
エアリーがそう尋ねた。周りに人がいる時はエアリーも怪しまれないよう話しかけないようにしていたので、ルーシッドが一人になったのを見計らって話しかけてきたのだ。
「……だって…二人に迷惑かかるから…」
『ルーシッド様はお二方とパーティーを組みたくないのですか?』
「組みたいよ…あの二人と組みたい…」
ルーシッドの目には涙が浮かぶ。
『では自分の気持ちに正直になってはいかがですか?
……もう自分の気持ちを偽って、感情を殺して生きるのはやめにしない?ルーシィ』
「…えっ、今、あたしのことルーシィって…?」
「いたっ!ルーシィ!」
後ろから自分を呼ぶ声がした。
「突然、教室出ていくんだもの、心配したわよ!」
そこには心配そうな顔をしたルビアとフェリカの姿があった。
「ごめん……あの…」
「ルーシィ、パーティーのことだけど?」
「待って!私から言わせて!」
ルーシッドはルビアの話をさえぎった。
「あの……ルビィ…リカ……その……わっ、わたっ、わたしと……ぱっ、パーティーを組んでください!わたし…魔法使えないし…迷惑かけると思うけど…その…知識とかで…フォローする…から…だから…」
「……ルーシィ、何言ってるの?」
「えっ…?」
「ルーシィが足手まといなわけないでしょ」
「そうだよ、ルーシィは魔法なんて使えなくても十分すごいよ。むしろ私が足引っ張らないか心配。私Dランクだよ?」
「そ、それは大丈夫!リカにはルーン魔術もあるし!あれはランクに反映されてない!それにリカは魔法力に関してもランクでは測れない何かを感じてる、私の技術で補えば必ずランク以上の強さになる!」
「何よ、ルーシィ、パーティー組む気満々じゃない?」
ルビアは少し冷やかすように言った。
「あっ、いや…」
それを聞いてルーシッドは気まずそうに言葉を濁す。それを見てクスクスとフェリカは笑った。
「いい、ルーシィ、よく聞いて。私は子供のころから天才、天才と言われてきたけど、そう言われるのは好きじゃなかったわ。自分の魔法力の強さは人の何倍も努力してきた結果だと思っていたから。でも、サラ・ウィンドギャザー、サラ先輩について知って、その強さに憧れると同時に、嫉妬したわ。自分の努力を全て否定されたような気分になったわ。本当の天才の前ではどんなに努力しても意味がないんだと思ったわ。でもあなたに出会えた。無色の魔力のあなたが実技試験で魔法を使っているのを見て、いったいどれだけ努力してきたんだろうと思ったわ。その姿を見て、私が今までしてきた努力も絶対に無駄じゃなかったと思えたわ。もう一度本気で頑張ろうと思えたわ。だから、ルーシィ、自分が足手まといだなんて二度と言わないで。それはあなたの努力を否定することだから。そんなことは私が絶対に許さない。それは私自身も否定することになるから」
「ルビィ……あ、ありがとう……うぅ……」
「うっ、うぇぇ~ん!!」
「えっ、ちょっ、なんでリカが泣くの!?ここはルーシィが泣く流れでしょ!?」
「だってぇ…感動だよ~…二人とも最高すぎ~…私も頑張るよぉ~」
「あはは、うん、一緒に頑張ろう」
ここに、ルーシッド・リムピッド、ルビア・スカーレット、フェリカ・シャルトリューという、個性的な3人が集まって結成されたパーティーが誕生したのだった。
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