16 / 153
第3章 ギルド体験週間編―2日目
ギルド体験週間2日目③ 昼休み
しおりを挟む
余裕を持って教室に着いたので、3人はキリエの魔法属性などについて聞くことにした。ルーシッドやフェリカについては、話すと長くなるので、夜にでも話そうということになった。
「えっと、私の魔力は青と緑と白の『薄青緑(ペイルターコイズ)』だよ。ランクはBランク。得意なのは『雷嵐』かな」
「3属性使えるのは便利ね。組み合わせによって色々な魔法が使えるわ」
「その分、それぞれの魔力の純度が下がるから、器用貧乏って感じだけどね~」
担任の先生が来て、パーティーにキリエを加えてもいいかと尋ねたところ、快く了承してくれた。部屋はどうするかと尋ねられたので、今の部屋は3人で使うには広すぎるくらいなので、今の部屋にキリエを入れる形で良いということになった。今日の夕方にはキリエが今の部屋の荷物をまとめて、ルーシッドたちの部屋に引っ越してくることになるだろう。
2日目の午前の授業は『基礎魔法薬学』と『魔法具理論』の2つの授業が行われた。
魔法学院の授業は『座学』と『実技』があり、1年のうちは座学は基礎学が多い。魔法薬学は授業が進むにつれて、実際に魔法植物採取に行ったり、魔法植物を育てたり、魔法薬を調合したりする授業も行うことになる。魔法工学も魔法具の設計や実験を行う。
『実技』は魔法を実際に使用し技術の向上を目指す授業で、屋内修練場や闘技場などで行ったり、ディナカレア王国の北部に広がる大森林で行われたりする。大森林で行われる屋外訓練や模擬戦は、何日間か泊まり込みで行われることもあり、キャンプ気分も味わえて学生たちにとっては非常に人気の授業である。
ちなみにここディナカレア魔法学院は6年制の学校であり、13歳から入学を許されている。年齢的には日本で言うところの中学校から高校にあたるが、この魔法界においては高等教育機関に位置する学校である。入学資格も厳しく、学費も安くはないので、入ることができない魔法使いも少なくない。
魔法学院に進学しない魔法使いたちは、各町に設けられた普通の学校で読み書きや計算、生活魔法などを学んだあとで、そのまま仕事に就くことになる。また、裕福な家庭ではそういった学校に行かせずに、家庭教師を雇うところもある。
午前の授業が終了し、ルーシッドはサラに連絡を取って、2人で会っていた。ルーシッドは1年前、サラがこの学院に入学する時に、サラにも『リムレット』とフェリカによって名付けられた魔法具を渡していた。たまたまその時に『魔力波』の存在を発見していたルーシッドは、サラがルーシッドと1年間も離れ離れになるのは辛すぎると言うので、離れたところにいても意思疎通ができる方法に応用できるのではないかと思い、このメールやトークの機能を開発したのだった。
「なるほどね…事情はだいたいわかったわ…」
「協力してくれる?サリー?」
しばし考えてからサラが口を開く。
「…クレアの言っていることが嘘だという可能性は?」
「ゼロじゃないけど…私は信じたいかな…クレア先輩のレイチェル先輩に対する気持ちは本当だと信じたい。重なるんだよね、私のサリーに対する気持ちと…」
ルーシッドはうっすらと微笑んだ。
「ルーシィ…そうね。どちらにしろ、純血の過激派が何かやってくるのは間違いないわけだし。話に乗るしかないようね」
「うん。まぁもしクレア先輩が嘘をついてたら、その時は容赦しないよ。まとめて倒す」
「……あまり無理はしないでね…相手が可哀想だから」
最強と揶揄される、レイチェルとクレアを相手にして、相手が可哀想などと思えるのは、ルーシッドくらいのものだろう。ルーシッドの強さを十分に知っているサラは、ルーシッドが負けるということなど、これっぽっちも考えてはいなかった。
「まぁ、レイチェルを倒した後の、純色の魔法使いたちの処理に関しては、生徒会ギルドが責任を持って扱うわ。ルーシィはただ存分に戦いなさい。レイチェルが抱えてる、しがらみやら重荷やらごとまとめて、ぶち壊してやりなさい」
「うん、ありがとう」
ルーシッドはにっこりと笑った。
その後の昼食は昨日と同じメンバーで取ることになった。
ルーシッドはサラたちにもキリエを紹介し、みなが温かくキリエを歓迎した。
「へぇ…ルーシィってサラ先輩と友達だったんだね」
キリエはルーシッドと、この学院一番の有名人と言ってもいいサラの関係性について知って驚くのだった。
食事を取りながら、フランチェスカがルーシッドたちに話しかける。
「ねぇ、今日私、非番なの。ギルドホームに待機してるから、顔出してよ?」
「え、いいんですか?昨日みたいなことになったりしませんかね?」
魔法剣術ギルドのギルド長に入団を断られたことを思い出してそう尋ねる。
「昨日は嫌な思いをさせて、本当に申し訳なかった。せっかく顔を出してもらったのに」
ライカが頭を下げる。
「かっ、顔を上げてください!ライカ先輩!ライカ先輩は何にも悪くないです。逆にライカ先輩も巻き込んでやめる流れになってしまって申し訳ないです」
「それに関しては何の問題もない。もともと風紀ギルドとの掛け持ちで客員みたいな扱いだったしね。気にしないでくれ。風紀ギルドのギルド長は何ていうか…その…変な人だけど、悪い人ではないので、多分大丈夫だよ」
ライカは苦笑いして風紀ギルドのギルド長について述べた。
「…ものすごい引っかかる言い方ですね?」
「私も一応、ルーシィのことは話したのよ?そしたら、本選に進んだ生徒は全員一通りマークしてたらしくて、是非手合わせ願いたい、この目で実力を見定めたいって…何ていうかその…ちょっと戦闘狂なところがあって、変な人だけど、根はいい人よ」
フランチェスカもちょっと困った顔で話す。
「風紀ギルドのギルド長ってあれでしょ?魔力が全部筋力に変わってんじゃないかって噂されてる、脳筋バーサーカーのマーシャ先輩よね?」
それを見ていたベルベットが半笑いで話す。
「なにそれ怖い…」
「まぁ…あれでも、ランクS、この学院で3本の指に入る強さなのよ?性格はともかく実力は確かよ…確かにマーシャ先輩ならルーシィのこと気にいるかもね…」
ルーシッドたち3人は複雑な気持ちになりながらも、とりあえず今日は風紀ギルドのギルドホームに行くことにしたのだった。
「えっと、私の魔力は青と緑と白の『薄青緑(ペイルターコイズ)』だよ。ランクはBランク。得意なのは『雷嵐』かな」
「3属性使えるのは便利ね。組み合わせによって色々な魔法が使えるわ」
「その分、それぞれの魔力の純度が下がるから、器用貧乏って感じだけどね~」
担任の先生が来て、パーティーにキリエを加えてもいいかと尋ねたところ、快く了承してくれた。部屋はどうするかと尋ねられたので、今の部屋は3人で使うには広すぎるくらいなので、今の部屋にキリエを入れる形で良いということになった。今日の夕方にはキリエが今の部屋の荷物をまとめて、ルーシッドたちの部屋に引っ越してくることになるだろう。
2日目の午前の授業は『基礎魔法薬学』と『魔法具理論』の2つの授業が行われた。
魔法学院の授業は『座学』と『実技』があり、1年のうちは座学は基礎学が多い。魔法薬学は授業が進むにつれて、実際に魔法植物採取に行ったり、魔法植物を育てたり、魔法薬を調合したりする授業も行うことになる。魔法工学も魔法具の設計や実験を行う。
『実技』は魔法を実際に使用し技術の向上を目指す授業で、屋内修練場や闘技場などで行ったり、ディナカレア王国の北部に広がる大森林で行われたりする。大森林で行われる屋外訓練や模擬戦は、何日間か泊まり込みで行われることもあり、キャンプ気分も味わえて学生たちにとっては非常に人気の授業である。
ちなみにここディナカレア魔法学院は6年制の学校であり、13歳から入学を許されている。年齢的には日本で言うところの中学校から高校にあたるが、この魔法界においては高等教育機関に位置する学校である。入学資格も厳しく、学費も安くはないので、入ることができない魔法使いも少なくない。
魔法学院に進学しない魔法使いたちは、各町に設けられた普通の学校で読み書きや計算、生活魔法などを学んだあとで、そのまま仕事に就くことになる。また、裕福な家庭ではそういった学校に行かせずに、家庭教師を雇うところもある。
午前の授業が終了し、ルーシッドはサラに連絡を取って、2人で会っていた。ルーシッドは1年前、サラがこの学院に入学する時に、サラにも『リムレット』とフェリカによって名付けられた魔法具を渡していた。たまたまその時に『魔力波』の存在を発見していたルーシッドは、サラがルーシッドと1年間も離れ離れになるのは辛すぎると言うので、離れたところにいても意思疎通ができる方法に応用できるのではないかと思い、このメールやトークの機能を開発したのだった。
「なるほどね…事情はだいたいわかったわ…」
「協力してくれる?サリー?」
しばし考えてからサラが口を開く。
「…クレアの言っていることが嘘だという可能性は?」
「ゼロじゃないけど…私は信じたいかな…クレア先輩のレイチェル先輩に対する気持ちは本当だと信じたい。重なるんだよね、私のサリーに対する気持ちと…」
ルーシッドはうっすらと微笑んだ。
「ルーシィ…そうね。どちらにしろ、純血の過激派が何かやってくるのは間違いないわけだし。話に乗るしかないようね」
「うん。まぁもしクレア先輩が嘘をついてたら、その時は容赦しないよ。まとめて倒す」
「……あまり無理はしないでね…相手が可哀想だから」
最強と揶揄される、レイチェルとクレアを相手にして、相手が可哀想などと思えるのは、ルーシッドくらいのものだろう。ルーシッドの強さを十分に知っているサラは、ルーシッドが負けるということなど、これっぽっちも考えてはいなかった。
「まぁ、レイチェルを倒した後の、純色の魔法使いたちの処理に関しては、生徒会ギルドが責任を持って扱うわ。ルーシィはただ存分に戦いなさい。レイチェルが抱えてる、しがらみやら重荷やらごとまとめて、ぶち壊してやりなさい」
「うん、ありがとう」
ルーシッドはにっこりと笑った。
その後の昼食は昨日と同じメンバーで取ることになった。
ルーシッドはサラたちにもキリエを紹介し、みなが温かくキリエを歓迎した。
「へぇ…ルーシィってサラ先輩と友達だったんだね」
キリエはルーシッドと、この学院一番の有名人と言ってもいいサラの関係性について知って驚くのだった。
食事を取りながら、フランチェスカがルーシッドたちに話しかける。
「ねぇ、今日私、非番なの。ギルドホームに待機してるから、顔出してよ?」
「え、いいんですか?昨日みたいなことになったりしませんかね?」
魔法剣術ギルドのギルド長に入団を断られたことを思い出してそう尋ねる。
「昨日は嫌な思いをさせて、本当に申し訳なかった。せっかく顔を出してもらったのに」
ライカが頭を下げる。
「かっ、顔を上げてください!ライカ先輩!ライカ先輩は何にも悪くないです。逆にライカ先輩も巻き込んでやめる流れになってしまって申し訳ないです」
「それに関しては何の問題もない。もともと風紀ギルドとの掛け持ちで客員みたいな扱いだったしね。気にしないでくれ。風紀ギルドのギルド長は何ていうか…その…変な人だけど、悪い人ではないので、多分大丈夫だよ」
ライカは苦笑いして風紀ギルドのギルド長について述べた。
「…ものすごい引っかかる言い方ですね?」
「私も一応、ルーシィのことは話したのよ?そしたら、本選に進んだ生徒は全員一通りマークしてたらしくて、是非手合わせ願いたい、この目で実力を見定めたいって…何ていうかその…ちょっと戦闘狂なところがあって、変な人だけど、根はいい人よ」
フランチェスカもちょっと困った顔で話す。
「風紀ギルドのギルド長ってあれでしょ?魔力が全部筋力に変わってんじゃないかって噂されてる、脳筋バーサーカーのマーシャ先輩よね?」
それを見ていたベルベットが半笑いで話す。
「なにそれ怖い…」
「まぁ…あれでも、ランクS、この学院で3本の指に入る強さなのよ?性格はともかく実力は確かよ…確かにマーシャ先輩ならルーシィのこと気にいるかもね…」
ルーシッドたち3人は複雑な気持ちになりながらも、とりあえず今日は風紀ギルドのギルドホームに行くことにしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました
ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。
王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。
しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
ありふれた聖女のざまぁ
雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。
異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが…
「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」
「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる