魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

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第3章 ギルド体験週間編―2日目

ギルド体験週間2日目③ 昼休み

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余裕を持って教室に着いたので、3人はキリエの魔法属性などについて聞くことにした。ルーシッドやフェリカについては、話すと長くなるので、夜にでも話そうということになった。

「えっと、私の魔力は青と緑と白の『薄青緑(ペイルターコイズ)』だよ。ランクはBランク。得意なのは『雷嵐サンダーストーム』かな」
「3属性使えるのは便利ね。組み合わせによって色々な魔法が使えるわ」
「その分、それぞれの魔力の純度が下がるから、器用貧乏って感じだけどね~」

担任の先生が来て、パーティーにキリエを加えてもいいかと尋ねたところ、快く了承してくれた。部屋はどうするかと尋ねられたので、今の部屋は3人で使うには広すぎるくらいなので、今の部屋にキリエを入れる形で良いということになった。今日の夕方にはキリエが今の部屋の荷物をまとめて、ルーシッドたちの部屋に引っ越してくることになるだろう。


2日目の午前の授業は『基礎魔法薬学』と『魔法具理論』の2つの授業が行われた。
魔法学院の授業は『座学』と『実技』があり、1年のうちは座学は基礎学が多い。魔法薬学は授業が進むにつれて、実際に魔法植物採取に行ったり、魔法植物を育てたり、魔法薬を調合したりする授業も行うことになる。魔法工学も魔法具の設計や実験を行う。
『実技』は魔法を実際に使用し技術の向上を目指す授業で、屋内修練場や闘技場などで行ったり、ディナカレア王国の北部に広がる大森林で行われたりする。大森林で行われる屋外訓練や模擬戦は、何日間か泊まり込みで行われることもあり、キャンプ気分も味わえて学生たちにとっては非常に人気の授業である。

ちなみにここディナカレア魔法学院は6年制の学校であり、13歳から入学を許されている。年齢的には日本で言うところの中学校から高校にあたるが、この魔法界においては高等教育機関に位置する学校である。入学資格も厳しく、学費も安くはないので、入ることができない魔法使いも少なくない。
魔法学院に進学しない魔法使いたちは、各町に設けられた普通の学校で読み書きや計算、生活魔法などを学んだあとで、そのまま仕事に就くことになる。また、裕福な家庭ではそういった学校に行かせずに、家庭教師を雇うところもある。


午前の授業が終了し、ルーシッドはサラに連絡を取って、2人で会っていた。ルーシッドは1年前、サラがこの学院に入学する時に、サラにも『リムレット』とフェリカによって名付けられた魔法具を渡していた。たまたまその時に『魔力波』の存在を発見していたルーシッドは、サラがルーシッドと1年間も離れ離れになるのは辛すぎると言うので、離れたところにいても意思疎通ができる方法に応用できるのではないかと思い、このメールやトークの機能を開発したのだった。

「なるほどね…事情はだいたいわかったわ…」
「協力してくれる?サリー?」
しばし考えてからサラが口を開く。
「…クレアの言っていることが嘘だという可能性は?」
「ゼロじゃないけど…私は信じたいかな…クレア先輩のレイチェル先輩に対する気持ちは本当だと信じたい。重なるんだよね、私のサリーに対する気持ちと…」
ルーシッドはうっすらと微笑んだ。
「ルーシィ…そうね。どちらにしろ、純血ピュアブラッドの過激派が何かやってくるのは間違いないわけだし。話に乗るしかないようね」
「うん。まぁもしクレア先輩が嘘をついてたら、その時は容赦しないよ。まとめて倒す」
「……あまり無理はしないでね…相手が可哀想だから」
最強と揶揄される、レイチェルとクレアを相手にして、相手が可哀想などと思えるのは、ルーシッドくらいのものだろう。ルーシッドの強さを十分に知っているサラは、ルーシッドが負けるということなど、これっぽっちも考えてはいなかった。
「まぁ、レイチェルを倒した後の、純色の魔法使いたちの処理に関しては、生徒会ギルドカウンサルが責任を持って扱うわ。ルーシィはただ存分に戦いなさい。レイチェルが抱えてる、しがらみやら重荷やらごとまとめて、ぶち壊してやりなさい」
「うん、ありがとう」
ルーシッドはにっこりと笑った。


その後の昼食は昨日と同じメンバーで取ることになった。
ルーシッドはサラたちにもキリエを紹介し、みなが温かくキリエを歓迎した。

「へぇ…ルーシィってサラ先輩と友達だったんだね」
キリエはルーシッドと、この学院一番の有名人と言ってもいいサラの関係性について知って驚くのだった。

食事を取りながら、フランチェスカがルーシッドたちに話しかける。
「ねぇ、今日私、非番なの。ギルドホームに待機してるから、顔出してよ?」
「え、いいんですか?昨日みたいなことになったりしませんかね?」
魔法剣術ギルドブレイドアーツのギルド長に入団を断られたことを思い出してそう尋ねる。
「昨日は嫌な思いをさせて、本当に申し訳なかった。せっかく顔を出してもらったのに」
ライカが頭を下げる。
「かっ、顔を上げてください!ライカ先輩!ライカ先輩は何にも悪くないです。逆にライカ先輩も巻き込んでやめる流れになってしまって申し訳ないです」
「それに関しては何の問題もない。もともと風紀ギルドサーヴェイラとの掛け持ちで客員みたいな扱いだったしね。気にしないでくれ。風紀ギルドサーヴェイラのギルド長は何ていうか…その…変な人だけど、悪い人ではないので、多分大丈夫だよ」
ライカは苦笑いして風紀ギルドサーヴェイラのギルド長について述べた。
「…ものすごい引っかかる言い方ですね?」
「私も一応、ルーシィのことは話したのよ?そしたら、本選に進んだ生徒は全員一通りマークしてたらしくて、是非手合わせ願いたい、この目で実力を見定めたいって…何ていうかその…ちょっと戦闘狂なところがあって、変な人だけど、根はいい人よ」
フランチェスカもちょっと困った顔で話す。
風紀ギルドサーヴェイラのギルド長ってあれでしょ?魔力が全部筋力に変わってんじゃないかって噂されてる、脳筋バーサーカーのマーシャ先輩よね?」
それを見ていたベルベットが半笑いで話す。
「なにそれ怖い…」
「まぁ…あれでも、ランクS、この学院で3本の指に入る強さなのよ?性格はともかく実力は確かよ…確かにマーシャ先輩ならルーシィのこと気にいるかもね…」

ルーシッドたち3人は複雑な気持ちになりながらも、とりあえず今日は風紀ギルドサーヴェイラのギルドホームに行くことにしたのだった。
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