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第3章 ギルド体験週間編―2日目
ギルド体験週間2日目⑥ スクールギルド:サーヴェイラ(風紀ギルド)③ マーシャ対ルーシッド、そして…
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「それでは、はじめ!」
ズンッ!!!!!!
それは一瞬の出来事だった。
試合開始の合図と同時。マーシャは地面に押しつぶされ、そのまま動かなくなった。
「……あのー?」
ルーシッドが、フランチェスカの方を見て、コールを促す。
「え?
あぁ、しょ、勝者!ルーシッド!」
一瞬のこと過ぎて、呆然としていたフランチェスカは慌てて勝利コールをした。
「……あんた、容赦なさすぎでしょ…」
倒れて動かないマーシャを置き去りにして自分たちのところに戻ってきたルーシッドに対して、ルビアはあきれたように言った。
「え、だって、ルビィが見せてやりなさいっていうから…」
しばらくして意識を取り戻したマーシャは、負けたにも関わらずすごく楽しそうだった。
「あの上から突然押し潰してきたのが、『無色の魔力』を使った魔術ってやつかい!?」
「まぁ、あれは無色の魔力そのものを固めて上から押し潰しただけですが…」
「無色の魔力ってのは一体何なんだい?」
「基本的にはみなさんが持ってる魔力と同じものですよ。色が無いだけで。なので、妖精用のお菓子を作る要領で大きさや形を変えることができます。その魔力にさらに追加詠唱の要領で指令を与えると自由に動かせるんですよ」
「でも、見えないのにどうやって操作しているの?それともルーシィには見えているの?」
フランチェスカはそう尋ねた。見えないものを感覚だけで操作して相手に当てることなど可能なのだろうかと思ったのだ。
「いえ、見えませんよ。いつもは魔法具を使って、自分の視覚情報をもとに照準補正してますが…今日は押し潰すだけだったんで、とりえずフィールド一帯を覆うぐらいの量の魔力を固めて落としたんで、細かい調整はしてないですけど」
「フィールド一帯を覆う魔力を一瞬で?…ルーシィの魔力生成速度ってどのくらいなの?」
ルビアはそう尋ねた。入学試験の時の魔力検査の時は、『Fランク』という発表がなされた後、うやむやになってしまったので、ルーシッドの正確な魔力測定の結果は、本人以外は誰も知らないのだ。
「12500ですけど」
「いっ、1万!?魔力生成速度が1万を超えている人なんて聞いたことないわ…1万って言ったら超高位魔法レベルに使用する魔力量じゃない…その魔力量を一瞬で作り出せるというの?」
「わ…わたしの2倍…!?」
「あぁ…Sランクの私でも8200だ…」
「ち、ちなみに最大魔力量は…?」
「31万4000だよ」
「30万!?」
「桁が1つおかしい…」
「ルーシッド君は、私やルビア君と同じSランク…いや、サラ君と同じSSランクなのでは?」
「魔力の色が無いからというだけでFランク…不当な評価ですね…」
マーシャとフランチェスカのその言葉にルーシッドは肩をすくめた。
「さて、ルーシッド君、ルビア君、フェリカ君!キミたちの実力は十分過ぎるくらいにわかった!
ぜひ風紀ギルドに入って欲しいと思うがどうだろう?」
4人は顔を見合わせる。
「私の事は気にしなくていいよ?」
キリエは自分が風紀ギルドに向いていないことはよくわかっていたのでそう言った。
「まぁ、焦って決める必要もないんじゃない?体験週間はあと2日残ってるし」
ルビアはそう提案する。
この魔法界では1週間は7日ではなく6日で、曜日も基本属性からとった『地水火風光闇』となっている。人々は地水火風の4日仕事をしたり学校で授業を受けたりし、光闇の2日は休む。今日は週の2日目『水の日』なので、新入生ギルド体験週間はあと2日残っている。次の週にはどのギルドに入るかを決めて入団届を提出しなくてはならない。
「だね。他にも色々見て回ってからにしよう?」
「マーシャ先輩、ありがたいお話ですが、少し考えさせてください」
フェリカもそう言ったので、ルーシッドが代表してそう答えた。
「わかった!良い返事を期待しているよ!」
マーシャは爽やかな笑顔でそう言った。確かにマーシャは少し変わってはいるが、裏表のない性格で、誰に対しても差別することなく公平に接し、しっかりと実力を見定めることができる信頼のおける人物だと4人は思った。さすがに風紀ギルドのギルド長だけのことはある。
決闘が終わり、観戦者たちも見応えがあった決闘に満足し、口々に感想を言い合いながら去っていく。マーシャたちもギルドホームに戻ってくると、ちょうど校内の巡回に行っていた団員たちが戻ってきたところだった。
「マーシャさん、報告です!」
「おう!ご苦労!何か変わったことはあったか?」
「はい。昨日ほどの騒ぎではありませんが、今日も純血のメンバーたちによる決闘が3件ほどありました。どれも正式なルールに基づく決闘だったので、適正に処理しましたが…」
「やはり予想通り決闘が増加しているな。それでどっちが勝った?」
「3件とも純血の圧勝でした。何というかその…自分たちの力をギャラリーに見せつけるかのような勝ち方でしたね…」
「まぁそれがやつらの決闘の目的だからな…あと2日、さらに数も規模も増えることが予想される!それに不気味なほどに沈黙を保っているレイチェルの動向も気になる!引き続き警戒を怠るなよ!」
「はっ!!」
「あっ、あのぅ!!」
突然ギルド長室の入り口から声がして、全員がそちらに目をやる。するとそこには、何とも可愛らしい女生徒が立っていた。身長はキリエと同じくらいで非常に小柄で、茶色の髪を三つ編みにして左の肩から垂らしていた。
「おや、見学の子かい?ようこそ風紀ギルドへ!名前を教えてくれるかい?」
「えっと、新入生じゃないです。2年生です。わたし、オルガ・シュタインです。あ、いや、本名はオリガ・シュタインなんですけど…」
「ん?オルガ・シュタイン…?どっかで聞いたことあるような…」
「ほら、純血のメンバーと同じ名前じゃないですか?」
マーシャに対してフランチェスカがそう答えた。
そう、オルガ・シュタインは、昨日の魔法剣術ギルドへの純血乱入騒動の時に、ゲイリー・シュトロームと共にいた大柄な男子生徒の名だった。
「同じ名前ではなく、本人です。わたしが、あのオルガ・シュタインです。この前は本当に申し訳ありませんでした」
オリガはぺこりと頭を下げる。
「…………はぁあぁあぁぁぁぁ!!?」
全員の声がギルドホームにこだました。
ズンッ!!!!!!
それは一瞬の出来事だった。
試合開始の合図と同時。マーシャは地面に押しつぶされ、そのまま動かなくなった。
「……あのー?」
ルーシッドが、フランチェスカの方を見て、コールを促す。
「え?
あぁ、しょ、勝者!ルーシッド!」
一瞬のこと過ぎて、呆然としていたフランチェスカは慌てて勝利コールをした。
「……あんた、容赦なさすぎでしょ…」
倒れて動かないマーシャを置き去りにして自分たちのところに戻ってきたルーシッドに対して、ルビアはあきれたように言った。
「え、だって、ルビィが見せてやりなさいっていうから…」
しばらくして意識を取り戻したマーシャは、負けたにも関わらずすごく楽しそうだった。
「あの上から突然押し潰してきたのが、『無色の魔力』を使った魔術ってやつかい!?」
「まぁ、あれは無色の魔力そのものを固めて上から押し潰しただけですが…」
「無色の魔力ってのは一体何なんだい?」
「基本的にはみなさんが持ってる魔力と同じものですよ。色が無いだけで。なので、妖精用のお菓子を作る要領で大きさや形を変えることができます。その魔力にさらに追加詠唱の要領で指令を与えると自由に動かせるんですよ」
「でも、見えないのにどうやって操作しているの?それともルーシィには見えているの?」
フランチェスカはそう尋ねた。見えないものを感覚だけで操作して相手に当てることなど可能なのだろうかと思ったのだ。
「いえ、見えませんよ。いつもは魔法具を使って、自分の視覚情報をもとに照準補正してますが…今日は押し潰すだけだったんで、とりえずフィールド一帯を覆うぐらいの量の魔力を固めて落としたんで、細かい調整はしてないですけど」
「フィールド一帯を覆う魔力を一瞬で?…ルーシィの魔力生成速度ってどのくらいなの?」
ルビアはそう尋ねた。入学試験の時の魔力検査の時は、『Fランク』という発表がなされた後、うやむやになってしまったので、ルーシッドの正確な魔力測定の結果は、本人以外は誰も知らないのだ。
「12500ですけど」
「いっ、1万!?魔力生成速度が1万を超えている人なんて聞いたことないわ…1万って言ったら超高位魔法レベルに使用する魔力量じゃない…その魔力量を一瞬で作り出せるというの?」
「わ…わたしの2倍…!?」
「あぁ…Sランクの私でも8200だ…」
「ち、ちなみに最大魔力量は…?」
「31万4000だよ」
「30万!?」
「桁が1つおかしい…」
「ルーシッド君は、私やルビア君と同じSランク…いや、サラ君と同じSSランクなのでは?」
「魔力の色が無いからというだけでFランク…不当な評価ですね…」
マーシャとフランチェスカのその言葉にルーシッドは肩をすくめた。
「さて、ルーシッド君、ルビア君、フェリカ君!キミたちの実力は十分過ぎるくらいにわかった!
ぜひ風紀ギルドに入って欲しいと思うがどうだろう?」
4人は顔を見合わせる。
「私の事は気にしなくていいよ?」
キリエは自分が風紀ギルドに向いていないことはよくわかっていたのでそう言った。
「まぁ、焦って決める必要もないんじゃない?体験週間はあと2日残ってるし」
ルビアはそう提案する。
この魔法界では1週間は7日ではなく6日で、曜日も基本属性からとった『地水火風光闇』となっている。人々は地水火風の4日仕事をしたり学校で授業を受けたりし、光闇の2日は休む。今日は週の2日目『水の日』なので、新入生ギルド体験週間はあと2日残っている。次の週にはどのギルドに入るかを決めて入団届を提出しなくてはならない。
「だね。他にも色々見て回ってからにしよう?」
「マーシャ先輩、ありがたいお話ですが、少し考えさせてください」
フェリカもそう言ったので、ルーシッドが代表してそう答えた。
「わかった!良い返事を期待しているよ!」
マーシャは爽やかな笑顔でそう言った。確かにマーシャは少し変わってはいるが、裏表のない性格で、誰に対しても差別することなく公平に接し、しっかりと実力を見定めることができる信頼のおける人物だと4人は思った。さすがに風紀ギルドのギルド長だけのことはある。
決闘が終わり、観戦者たちも見応えがあった決闘に満足し、口々に感想を言い合いながら去っていく。マーシャたちもギルドホームに戻ってくると、ちょうど校内の巡回に行っていた団員たちが戻ってきたところだった。
「マーシャさん、報告です!」
「おう!ご苦労!何か変わったことはあったか?」
「はい。昨日ほどの騒ぎではありませんが、今日も純血のメンバーたちによる決闘が3件ほどありました。どれも正式なルールに基づく決闘だったので、適正に処理しましたが…」
「やはり予想通り決闘が増加しているな。それでどっちが勝った?」
「3件とも純血の圧勝でした。何というかその…自分たちの力をギャラリーに見せつけるかのような勝ち方でしたね…」
「まぁそれがやつらの決闘の目的だからな…あと2日、さらに数も規模も増えることが予想される!それに不気味なほどに沈黙を保っているレイチェルの動向も気になる!引き続き警戒を怠るなよ!」
「はっ!!」
「あっ、あのぅ!!」
突然ギルド長室の入り口から声がして、全員がそちらに目をやる。するとそこには、何とも可愛らしい女生徒が立っていた。身長はキリエと同じくらいで非常に小柄で、茶色の髪を三つ編みにして左の肩から垂らしていた。
「おや、見学の子かい?ようこそ風紀ギルドへ!名前を教えてくれるかい?」
「えっと、新入生じゃないです。2年生です。わたし、オルガ・シュタインです。あ、いや、本名はオリガ・シュタインなんですけど…」
「ん?オルガ・シュタイン…?どっかで聞いたことあるような…」
「ほら、純血のメンバーと同じ名前じゃないですか?」
マーシャに対してフランチェスカがそう答えた。
そう、オルガ・シュタインは、昨日の魔法剣術ギルドへの純血乱入騒動の時に、ゲイリー・シュトロームと共にいた大柄な男子生徒の名だった。
「同じ名前ではなく、本人です。わたしが、あのオルガ・シュタインです。この前は本当に申し訳ありませんでした」
オリガはぺこりと頭を下げる。
「…………はぁあぁあぁぁぁぁ!!?」
全員の声がギルドホームにこだました。
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