魔法学院の階級外魔術師

浅葱 繚

文字の大きさ
25 / 153
第3章 ギルド体験週間編―2日目

ギルド体験週間2日目⑫ 一つの区切り

しおりを挟む
無事にゲイリーを連れ戻したルーシッド達は、来た時と同じでフランチェスカが抜け道を作って学院内に戻った。ちょうどその頃、ルーシッドが例の倉庫に仕掛けた花火が打ち上がったこともあり、ルーシッド達が外にいることを気にするものなど誰もいなかった。


「さて、今後のことを少し話そう」

ギルドホームに戻ったマーシャは、全員をねぎらってから、そう話を切り出した。

「ゲイリー君とオリガ君は、今後どうするつもりだ?純血ピュアブラッドに戻るつもりか?」

「…いえ…もうあのギルドの中に私の居場所はないでしょう…それにもう戻りたいとも思いません…」
「私もゲイリーをこんな目に合わせたギルドには戻りたくないです!」

「そうか、まずは良かった。もし戻ると言えば、こちらとしても、はいそうですか、と返すわけにはいかなかったからね。
では2人に改めて聞こう。君たちの純色以外の魔法使い達に対しての感情は?」

「その…今回の件では本当にご迷惑をおかけしました。そして、本当にありがとうございました。皆さんは命の恩人です。こうしてここにいられるのはみなさんのおかげです。皆さんは…あんな無礼な態度を取っていた私のために戦ってくれた…何とお礼を言ったらいいか…失礼な言動を心から謝ります。私は自分が純色であることを誇りに思っていました…いえ、それは今も変わりありませんが、でも純色以外の魔法使いの人たちを下に見るような考えは間違っていました。魔法使いには純色も混色も関係ありません。すぐに許してくれとは言いませんが、どうかチャンスをください…」
ゲイリーは深々と頭を下げた。
「私もゲイリーと同じ気持ちです。今回の件で自分の無力さを改めて実感しました。そして混色と無色の魔力のすごさ、そして色々な力を持った魔法使いが協力して戦うことの素晴らしさを知りました。色々な能力を持った人がいることでどんな問題にも対処できます。私一人、純色一人ではゲイリーは絶対に助けられませんでした。本当に感謝しています。このご恩は必ず返します。私たちにチャンスを下さい」
オリガも同じように頭を下げる。
「君たちの気持ちは私には十分伝わったよ。みんなはどうだい?」
みんなは優しく微笑んで頷く。

「よろしい。ではゲイリー君、オリガ君。君たちは風紀ギルドサーヴェイラに入りたまえ」


「……え…いいんですか?」

「もちろんだとも!もちろん、しっかり筋肉をつけて働いてもらうよ?」
「いや、筋肉は関係ないでしょ…」
フランチェスカが突っ込む。
「まぁ、それはともかく、人は誰でも間違うし失敗もする。あなたたちは十分に反省しているようだから、そのことを責めたりはしないわ。大事なのは失敗から学んで、それをどう行動で示すかよ。自分たちが信頼に足る者だと言うことを私たちに見せて頂戴。期待してるわ」
「ありがとう、フランチェスカ」
「フラニーでいいわ」
フランチェスカは優しく微笑んだ。
「フラニー、今までごめんね。必ず答えるわ」

「さて、後は、今回の件に純血ピュアブラッドが絡んでいたことを明るみに出せば、純血ピュアブラッドは解体。純色の魔法使いたちもただでは済まんだろう。これで一件落着だな!」
「あー、そのことなんですが…公表は少し待ってもらえますか?」

ルーシッドはそう言って、クレアから持ち掛けられている、純血ピュアブラッドのギルド長レイチェルに関する話をした。


「なるほど…そんな話が…」
「どうりでギルド長と副ギルド長に選ばれてから、レイチェルとクレアがあんまり顔を出さないと思ったら、そういうことだったんですね」
オリガが納得したように言った。

「多分、選ばれた時にはすでに、実質的に名前だけの状態で、実験を握ってるのは別の人だったんじゃないですかね?」

「レイチェル…私たちはレイチェルのこと、この学校に入る前から知ってますけど…
確かにこの学校に入る前は、純色の魔法使いたちの意識を変えてやるって意気込んでいました。その頃は、その…私はそういう風には思っていなかったのでよくぶつかり合っていましたけど…
1年の時に純血ピュアブラッドに入った時もそんな感じでしたけど、確かにレイチェル達が表立って出てこなくなった辺りから、純血ピュアブラッドの思想も、昔ながらの純色至上主義が色濃く出てきた感じがしますね…もしそうなら…昔のレイチェルに戻って欲しい…私がこんなこと言うのもおこがましいですが…
今となってはレイチェルの言っていたことがよくわかります。私もレイチェル達に協力したいです」
ゲイリーは過去のレイチェルに対する反応に後悔をにじませながらも、しっかりと気持ちは前を向いているようだった。

「でも…ルーシィ、相手はあのレイチェルよ?勝算はあるの?」
ゲイリーのその問いに対して、ルーシッドは答えた。

「勝つこと自体は簡単です」

「……すごい自信だね。歴代最強との呼び声高いレイチェル相手に、勝つのは簡単とは…私には言えないかな」
マーシャは苦笑いする。

「まぁ、火属性相手に勝つのは簡単なんですよ、正直。ただし…観戦している全員がはっきりとわかるような圧倒的な感じで相手を倒すにはどうすれば良いか…そこを悩んでいます」
「相変わらず別次元ね…」
フランチェスカはもはやあきれたように言う。

「まぁ…レイチェルのことはルーシッド君に任せるとしよう。では風紀ギルドサーヴェイラとしては、ルーシッド君がレイチェルを倒したタイミングを見計らって、純血ピュアブラッドを一斉摘発する準備を整えることにしよう!くぅ~…盛り上がってきたなぁ!?」
「ギルド長…不謹慎ですよ…まぁ、ちょっと面白そうではありますが…」
にこにこしながら言うマーシャをたしなめつつも、ちょっとわくわくするフランチェスカだった。

「まぁ、多分、最終日になると思いますけど、明日中にはクレア先輩から連絡が入ると思うので、入り次第伝えますね。それまではくれぐれもこのことは内密にお願いします」
みんなが静かに頷く。

「さて…では今日はもう自室に戻ることにしようか」
マーシャがそう告げる。
「ですね。サリー達には一応伝えてはきましたが、心配してるでしょうし」

「私たちも部屋へ帰ろ?ゲイリー」
「そうね…もうへとへとだわ…」
「そういえばあなたたちって、ほかのパーティーメンバーは誰なの?」
「私たちは2人パーティーですよ?」
フランチェスカの質問にオリガが何の気なく答える。

「いや…パーティーは3人以上っていう決まりでしょ…?」
「あぁ、オルガを入れて3人です」
「いや、オルガは人形じゃない…生徒じゃないでしょ?」
「でも、それで申請したら通ったので…」
「通っちゃうんだ…」


「そういえば、キリィってもう部屋に行ってるんだよね。何かここにいて普通に会話してるから忘れてた」
『そうだよ~。部屋で待ってるよ~今日はもう遅いから、荷物は明日にしようかなー』
キリエは眠そうに答えた。

「あ、そういえばベッド…どうしようかしら…」
ルビアが思い出したように言う。
「あー、そういえば、別室に1個あるんだっけ。誰がそこに寝るかだね」
「えー、そんなのさみしすぎるじゃん。あのベッドもくっつければ4人で寝れるくない?」
「いや…さすがに別の部屋からベッドを移動させるのは無理でしょ…」
フェリカの提案に、ルビアは首を横に振った。

「……さっきフェリカが使ってた『ライド』のルーンって『車輪』だったよね…?」


「「……それだ、さすがルーシィ!!」」



こうして長かったギルド体験週間2日目の夜も更けていく。
ギルド体験週間も折り返し地点、残すところあと2日である。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……? ~ハッピーエンドへ走りたい~

四季
恋愛
五人姉妹の上から四番目でいつも空気だった私は少々出遅れていましたが……?

治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました

山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。 生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

処理中です...